METsへの違和感——「4METsまで大丈夫」は本当に正しいのか
心リハの現場でよく耳にする言葉があります。
「この患者さんは4METsまでです」
私は新人の頃からこの言い方に引っかかりを感じていました。4METsという数字は、患者さんの生活指導に本当に使えるのでしょうか。
METsとは何か
METsは運動強度を表す指標です。安静状態を1METとして、活動の強さを相対的に示します。普通歩行は約3〜4METs、階段昇降は約4〜8METs、ジョギングは約7METs以上といった具合です。
つまりMETsが示すのは「その活動がどれくらいきついか」という強度の情報です。
METsだけでは見えないもの
普通歩行は約4METsです。しかし5分歩くのと30分歩くのでは、身体への負担は全く異なります。さらに荷物を持つ、坂道を歩く、暑い日に歩くといった条件が加われば負荷はさらに変わります。それでもMETsの値は同じ4METsのままです。
ここに根本的な限界があります。METsは強度しか教えてくれません。
ExはMETsの限界を補えるか
そこで登場するのがEx(エクササイズ)という考え方です。Exは「運動強度 × 運動時間」で計算します。4METsを30分行えば2Ex、60分行えば4Exとなります。METsだけでは見えなかった時間の要素を加えた指標です。
しかしExにも限界があります。「2METsを2時間」と「4METsを1時間」はどちらも4Exで計算上は同じ活動量です。しかし循環器患者にとって、この2つが同じ負荷とは限りません。運動強度が高くなれば、血圧反応・心拍応答・症状出現リスクもそれぞれ異なる挙動をとります。
心リハで本当に見ているもの
実際の心リハで安全性を判断する根拠は、ATや心拍数、血圧反応、Borgスケール、自覚症状です。METsやExの数値だけで患者さんの安全性を保証することはできません。
それでもMETsがなくならない理由
METsは患者さんの個別の能力を直接示す指標ではありません。しかし「活動の強さ」を医療者間で共有する共通言語としては、非常に実用的です。普通歩行は約4METs、階段昇降は約6METs前後という共通認識があるからこそ、活動負荷を客観的に比較・伝達できます。
まとめ
METsは運動強度を示す指標であり、Exはそこに時間を加えた活動量の指標です。ただしどちらも、患者が実際に何分続けられるか、安全に実施できるかは教えてくれません。
「4METsだから大丈夫」ではなく、「その活動を実際に行ったときに症状や血圧反応はどうか」を見ることが心リハの本質です。
METsは患者を評価するための答えではありません。活動負荷を考えるための地図として使う——それが正しい付き合い方なのかもしれません。
医療に関するご注意
本記事は理学療法士による教育・情報提供を目的としたものです。症状がある場合や具体的な診断・治療については、必ず担当医・専門医にご相談ください。
