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香港編1.「カメラ忘れた」と気づいた瞬間の話|出発〜1日目 前編

空港へ向かう電車の中で、気づいた。

カメラを、忘れた。

戻れない。出発まで時間がない。

窓の外を見ながら、何も言えなかった。


日記:2002年9月 出発の朝


起床、朝6時。早すぎる。
しかも昨晩は飲みに行って寝たのが3時。
本当にバカだ。

1ヶ月に2回のペースで海外旅行をしているのも我ながらどうかしていると思うが、それでも旅が楽しみなことには変わりなく、朝から軽く酒でも飲んだような(二日酔いだが)晴れやかな気分。

今回は前回の教訓を活かして、
①早めに出発する
②日記をちゃんと書く
③荷物を軽くする
④お金を大切に使う
を心がけるつもりだ。
毎回なんだかんだと出発ギリギリに書き始めることになるのだが、今回も出発前に空港で時間の余裕は無さそうなので電車の中でペンを走らせている。結局いつもこんな感じだ。

荷物を軽くしたのはいいが、なんとカメラを忘れてきた。
今日の時点ですでにかなりへこんでいる。


今回は一人旅ではなく、バイトの先輩Yさんと一緒だ。
そう、友達ではなく、まさかのバイトの先輩だ。
今までの学校生活とかでは、先輩と旅行だなんて考えたことも無かった。
思えばタイ旅行のきっかけは、飲み会で「象にでも乗っちゃう?」とか発した言葉だった。

香港行きは決めていたが、元々は一人旅の予定だった。バイト中にY さんから「最近楽しかった事ある?」と聞かれ、タイ旅行の話、そして次は香港に行くという話で盛り上がった。

「楽しそうだな!俺も今度行こうかな!」とY さんが言った瞬間、僕は無意識にこう返していた。

「あ、一緒に行きます?」

未来は、何かの些細な一言でも変わるのかもしれない。

今回、旅仲間がいる安心感がある一方、お互いに遠慮もある。でもきっと楽しくなるはずだ。

空港へ向かう道中、Yさんの挙動がどことなくそわそわしていて面白い。約1ヶ月前の自分もこうだったかな、と思いながら眺める。
向こうに着いたら、テンションが一気に上がるはずだ。それだけが楽しみだった。


44歳の今、振り返って。

カメラを忘れたのに、記憶は残った。

Yさんのカメラを借りながら旅した4日間に、失われた写真よりずっと多くのものが残った。
計画どおりにいかないことが、旅を豊かにする。

【アンリ・ベルクソン:『笑い』より】

「秩序とは、期待していたものが実現することだ。しかし驚きとは、期待していなかったものが実現することである」

荷物が軽くなった分、足が動いた。

カメラがなかった分、目が動いた。

失ったものの代わりに、何かが増えていたのかもしれない。

【サミュエル・スマイルズ:『自助論』より】

「準備に失敗した人は、失敗に準備している」

手厳しい言葉だ。でも続きがある。失敗から立ち直る力こそが、人を鍛えると彼は言う。カメラを忘れても旅を続けたあの僕は、小さな「立ち直り」を積み重ねていた。


次回は「香港1日目 中編」。

到着早々バスで迷子、そして現れた救世主。

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タイ編から読む方はこちら→
https://note.com/siokomepapa/m/mb05d5a2339ea


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