フリーランスライターが遭遇した解せぬ人々~フリーランスライターが同業者に取材してみたら~
●はじめに
この作品は、フリーランスライターが同業者であるフリーランスライターに取材を行い、そのエピソードをもとに執筆したフィクションです。
私がフリーランスライターとして活動を始めてから15年以上が経過しました。
その間、フリーランスで働く人々を取り巻く環境は大きく変わり、法整備なども進みました。
ただ、個人的にフリーランスならではの苦労というのは今も昔も変わっていないと感じています。
私自身もこれまで本当にたくさんの相談や取引を経験してきましたが、その中で「解せぬ……」と思ったことは一度や二度ではありません。
きちんと十分な対価が支払われた上で多少嫌な思いをするのは仕事として当然なのでしょうが、そもそもの対価が支払われない、支払われたとしても不十分でしかない状態でとんでもなく嫌な思いをするというのはやはりいただけません。
嫌な思いをした分に対して不足している対価、かつて支払われなかった対価をどうにか自分で補ってやろうではないかと、実はもともと私個人の体験談を本にまとめようと思っていました。
そんなとき、たまたま元同業者だという方から話を聞く機会があったのです。
やはり仕事の話をするとだいたい同じようなところで苦労をしていましたが、「そんな職業の人から相談が!?」「そんな内容の依頼が!?」とお互いに驚くことも多くありました。
ちなみに、私たちにも守秘義務があり、個人が特定されるような話はしておりませんので、その点はご安心ください。
自分の持っている過去のエピソードもなかなかのものだろうと自信を持っていた私は、他の方の話を聞いてまさに「井の中の蛙大海を知らず」だったのだと気づかされました。
それをきっかけに私個人の体験談ではなく、いろいろな方に話を聞いて、それを本にしようと思うようになったのです。
この作品を書き上げるにあたっては、SEOライターにルポライター、コピーライターにセールスライター、シナリオライターにテクニカルライター……と、古今東西、老若男女、現役の方から引退された方まで、ありとあらゆるフリーランスライターの皆様に取材協力をいただきました。
今回はとにかくフリーランスライターの皆様が「解せぬ……」と感じたエピソードを集め、その経験から学んだご本人様なりの反省点と教訓もお伺いしました。
そして、それらをまとめたのが今回の「フリーランスライターが遭遇した解せぬ人々~フリーランスライターが同業者に取材してみたら~」です。
もちろん、個人が特定されることのないように相談者や依頼者の職業、性別、相談内容や依頼内容、具体的な発言内容等の細かな情報は大幅に変更した上で文章的モザイクを施しています。
また、同じような仕事をしていると同じようなエピソードも出てきますので、いくつかの似たエピソードについては贅沢にたっぷりと混ぜ合わせ、さらに濃いめに味付けをしました。
つまり、これは実在しているようで実在し得ない世にも珍妙なフィクションなのです。
この作品は世のフリーランスライターの恨み辛みをぶちまけるような重苦しいものではなく、あくまでもフリーランスライターという職業から見た、人間の一面をお伝えするものです。
取材協力をいただいた皆様を保護する観点から……という体で、それぞれのエピソードについてはあえてふざけたお嬢様言葉でご紹介させていただきます。
クラウドソーシングサイト編
クラウドソーシングサイトとは、仕事を発注したい方と受注したい方のマッチングをするサービスのようなものです。
受注者として利用する場合、「メッセージ等で相談を受ける→依頼内容や取引条件等を双方で確認する→問題がなければ取引を開始する→取引終了後に評価もらう」というような流れが一般的かと思います。
フリーランスという働き方を選択している方であれば、クラウドソーシングサイトを利用することも多いでしょう。
実際に取材をさせていただいたフリーランスライターの方々もそのほとんどがどこかしらのクラウドソーシングサイトを利用していました。
まずは「クラウドソーシングサイト編」ということで、クラウドソーシングサイト経由の相談者や依頼者についてのエピソードからご紹介したいと思います。
●語尾の一文字が地雷になった占い師
これはもうずいぶん前のお話でして、ちょうど某クラウドソーシングサービスがサービスを開始して間もなくのことでしてよ。
わたくしも初心者ながらライティングのサービスを提供しておりましたの。
当時は今ほどガチガチのビジネスという感じではなくて、少なくともわたくしの周りでは「こういうことってできますかね?」「できますよ~」といった砕けた感じでやり取りをすることが多かったと記憶しておりますわ。
そんな中、占い師だという方からご依頼をいただきましたのよ。
配布予定のチラシに載せる文章を書いてほしいということでしたわ。
お相手の方とはご相談の際にも「うちの近くに○○って有名なお店があるんですけど、知ってます? おすすめですよ~」「知ってます、知ってます。テレビで見ましたよ~」といった雑談もしておりましたし、お取引開始後も「じゃあこの内容でお願いしますね~」「は~い、お伝えいただいた内容で作成しますね~」といった具合で、本当にとても和やかにやり取りをさせていただいておりましたの。
事態が一変したのは、納品のときでしたわ。
わたくし、それまでのやり取りと同じ感覚で「文章作成が完了しましたので、納品いたしますね」と納品物をお送りしましたの。
そうしましたらね、お相手の方の態度が急変しましたのよ。
てっきり納品物の内容にご満足いただけなかったのかと思っておりましたら、お相手の方はこのようにおっしゃられましたわ。
「『納品いたしますね』の『ね』は失礼じゃないですか? 舐めてるんですか?」
わたくしも思わず「えぇっ!?」と某海産物一家で巻貝の夫をされている方のような声を出してしまいましたけれども、お相手の方のおっしゃる通りだと思いまして、すぐに謝罪の言葉をお送りしましたの。
ただ、お相手の方のお怒りは一向に収まらず、メッセージで延々とお叱りを受けましたのよ。
その後は最低評価とともに評価コメントが送られてきましたのですけれど、そこには目を覆いたくなるような罵詈雑言が書き連ねられておりましたわ。
確かに、お仕事であることを考えればわたくしの言葉遣いは不適切でしたわよね。
けれども、それまでわたくしたち、お互いに砕けたやり取りをしていたではありませんの!
あんなに楽しくおしゃべりをしていたではありませんの!
納品のときだけは許されなかったなんて、わたくし、知りませんでしたのよ。
どうかお許しくださいまし……。
余談にはなりますけれど、このときの納品物にはまったく問題はなかったそうですのよ。
むしろ、納品物には大変ご満足いただけていたらしいのですけれど、わたくしの不用意な語尾の「ね」ですべてが台無しになってしまったというとても悲しいお話ですの。
【反省点】
仕事であるのにもかかわらず、不適切な言葉遣いをしてしまった点。
【教訓】
仕事においては基本的に事務的な言葉遣いで統一し、砕けた言葉遣いは避ける。
自分は良くても相手は駄目という人間はどこにでもいる。
文字でのやり取りにおいてはたった1文字が相手の地雷になることもある。
●市民受けする政策を適当に書いてくれとのたまった関西の政治家
これはわたくしも衝撃だったのですけれど、政治家の方からご相談をお受けしたことがございますのよ。
選挙活動にあたって、ホームページに掲載する政策を書いてほしいということでしたわ。
当然、ご自身でお考えのこともあるでしょうからと、詳細をお伺いしましたら、このようにおっしゃいますのよ。
「全部お任せします。市民受けする政策なら何でもいいです。適当に書いてください」
わたくし、画面に向かって思わず「はい?」と声を出してしまいましたわ。
その後、気を取り直して、ご自身が力を入れていること、また力を入れたいと思っていること、政治信条などもお伺いしましたけれども、何をお尋ねしても「ない」というお答えしかいただけませんでしたの。
とにかく「市民受けする政策なら何でもいい」の一点張りでしたので、わたくし、お断りさせていただきましたわ。
このような方を熱心に支持している方がいるのですから、本当に人間というのはよくわかりませんわよね。
【反省点】
なし。
【教訓】
本当にまったく中身のない政治家はいる。
●都合の悪いことだけ都合良く耳に入らないウェディングハイの花嫁
わたくし、長年ライターとしてお仕事をしておりますけれども、その中で「絶対に受けない」と心に決めたものがございますの。
そのひとつが結婚式のお手紙ですわ。
結婚式のお手紙に関しましては、基本的にはどのようなものであってもすべてお断りすることにしておりますの。
なぜ結婚式関連のお手紙をお受けしないと心に決めたのか、そのきっかけとなった出来事をお話しさせていただきますわね。
もう10年以上も前のお話になりますでしょうか。
近いうちに結婚式を挙げる花嫁だという方からご依頼をお受けしましたのよ。
結婚式で花嫁として読み上げる予定のお手紙がございまして、そのお手紙を短くした上で内容のチェックをしてほしい、ということでしたわ。
結婚式という人生における一大イベントに関するご依頼ということで、わたくし、ご相談の段階からかなり細かなすり合わせをさせていただきましたのよ。
実際のお手紙も添付をお願いしまして、拝読しましたわ。
確かにお伺いしていた読み上げ時間から考えますと長すぎるお手紙でしたし、いわゆる忌み言葉もたくさんお使いになっておられましたの。
正直に申しますとね、せっかくの晴れの日のお手紙ですのに、人様を貶めるようなことも書かれておりまして、内容のほうもかなり問題がありましたのよ。
お手紙を拝読しまして、わたくしも「もしかして香ばしいお方なのかしら……」と思いましたけれども、淑女たるもの、先入観で判断してはいけませんわ。
「ウェディングハイ」という言葉があるくらいなのですから、きっと今この一瞬だけ、何かが違うというだけかもしれませんもの。
そのままお話を進めさせていだきまして、すり合わせの段階で「読み上げ時間を考えると、いくつかのエピソードを削らなければいけないこと」「不適切な内容や表現は修正しなければいけないこと」を含めて具体的な作業内容もお伝えしまして、きちんとご同意をいただいてからお取引を開始いたしましたの。
無事に納品することはできたのですけれど、納品後、お相手の方からは一切のお返事をいただけませんでしたのよ。
納品物に問題がなかったか、修正箇所はあるか等をこちらからお尋ねをしてもすべて既読無視をされてしまいまして、ようやくお相手の方から反応をいただけたかと思いましたら、悪口雑言が添えられた最低評価が送られてきましたわ。
ご不満があったのでしたら、せめて一言おっしゃってくださいまし……。
「女は黙って最低評価」じゃありませんのよ!
わたくし、某麦ジュースのキャッチコピーを思い出してしまいましたわ。
まぁそれはさておき、納品後の対応と評価内容を踏まえまして、その後、わたくしもさすがにそのお方をクラウドソーシングサイト上でブロックさせていただきましたの。
ここまででもなかなかなお話だと思うのですけれど、ここで幕引きとならないのがウェディングハイの花嫁クオリティーですわ。
何をお思いになったのか、そのお方、わざわざ別のアカウントを取得してこのようなメッセージを送信してきましたのよ。
「あなたが私をブロックしていることは知っています」
ちなみに、わたくしの利用しているクラウドソーシングサイトでは同一人物が複数アカウントを取得するのは規約違反となりますわ。
お相手の方はその規約違反を犯してまでも、わたくしにメッセージを送られてきたわけですわね。
並々ならぬ熱意に、わたくしも胸がときめきましたわ!
ただ、お取引はすでに完了しておりますし、そもそも納品後から一切のお返事をしてくださらなかったのはお相手の方ですわよね。
おまけにあの評価内容ですから、わたくしがお相手の方をブロックすること自体は別に責められるようなことではないと思いますの。
もちろん、それをそのままお伝えしてしまうと大変なことになってしまいますので、「評価内容を拝見して、今後のお取引は難しいと判断したため、ブロックとさせていただきました」という風にお返事をいたしましたのよ。
そうしましたら、お相手の方はさらにこのようなメッセージを送信してきましたわ。
「人が書いたエピソードを勝手に削るってどういう了見ですか? 内容のチェックもろくにしてないですよね? これなら時間オーバーしても最初の手紙のまま読み上げるわ」
わたくし、絶句いたしましたわ。
エピソードを削ることについては事前にご同意をいただいておりましたし、不適切な内容や表現については間違いなく修正させていただいておりますもの。
すぐにお返事にて、エピソードを削ることについては事前にご同意をいただいている旨をお伝えしまして、内容のチェックについては具体的な箇所を引用した上で改めまして修正内容をご説明させていただきましたわ。
けれども、お相手の方にとってご都合の悪いことはまったくお耳に入らないようで途中からは「サイトに通報した」「返金しろ」とそればかりを繰り返すようになりましたのよ。
「サイトに通報した」
「返金しろ」
「サイトに通報した」
「返金しろ」
「サイトに通報した」
「返金しろ」
……もはや完全なホラーですわね。
お取引完了後のキャンセルや返金には対応できない旨についても事前にご同意をいただいていたはずなのですけれど、壊れた機械のように繰り返し同じメッセージをお送りになる様子にわたくしも恐怖を感じまして結局は返金対応をさせていただくことにしましたの。
返金はクラウドソーシングサイトを経由して行われたのですけれど、サイトもサイトで「事前に同意の上での取引なので返金の必要はない」というくらいの毅然とした態度がほしかったところですわね。
約束を反故にする人間の言いなりでは、治安が悪化する一方ですもの。
今頃どうされているのかわかりませんけれども、あのお手紙が原文のまま読み上げられていたとしたら、花婿様を含め、その場にいた方全員がさぞかしゾッとしたことでしょう。
もしかしたら、「不幸な結婚式」としてどこかのまとめブログに掲載されているかもしれませんわね。
【反省点】
香ばしいと感じた自分の直感を信じなかった点。
【教訓】
ウェディングハイの花嫁とは関わらない。
都合の悪い情報だけ都合良く耳に入らない人間とは正常な会話は成り立たない。
自分の思い通りになるまで壊れた機械のように自分の要求を繰り返す人間もいる。
●依頼を絶対に受けると約束しないと詳細を明かさないという謎の人物
謎の人物としか表現のしようのない方からご相談をお受けしたことがありますの。
性別も年齢も身分も、とにかく自分に関する情報は明かせないという方でしたわ。
わたくしは別にご相談者様やご依頼者様の情報がなくともまったく問題はありませんでしたので、そのままお話を進めましたのよ。
シナリオをご希望だったようなのですけれども、そのお方、このようにおっしゃいますの。
「絶対に情報が漏れてはいけないので、詳細は明かせないんです」
わたくし、あらすじか何かがお決まりになっていて、その詳細が明かせないという意味だと思っておりましたけれども、実際には本当に「シナリオ」という情報以外の一切の情報を明かせないということでしたの。
何に使うシナリオなのかというところから、ジャンルやシナリオの文字数、納期に至るまで、とにかく情報を明かせないとおっしゃいますのよ。
情報漏洩をご心配されるお気持ちはわかるのですけれども、「シナリオ」以外の情報がわからない状態ではわたくしで対応できるジャンルなのかも判断できませんし、お見積りの算出も難しいですわよね。
その旨をお伝えしましたら、お相手の方、このようにおっしゃいましたわ。
「この依頼を絶対に受けるとお約束していただけるなら、取引開始後にすべてをお伝えしましょう……」
……怖いですわよね?
ここでお受けしてみるのもひとつのお大冒険かもしれませんけれども、お受けしたあとで対応できないということになってしまいますと、わたくしもどうなってしまうのかわかりませんわ。
それでお断りをさせていただきまして、お相手の方も「今回はご縁がなかったということで……」とおっしゃってこのお話は終わりましたのよ。
ただそれだけのお話なのですけれども、こういうケースは意外に多くございますの。
もしかしたら危険な内容のご相談だったのかしら……と、わたくしたまに思い出しますのよ。
【反省点】
なし。
【教訓】
詳細を明かせない、また依頼を絶対に受けると約束しない限り詳細を教えないという相談は意外に多い。
●学生という身分なら何でも許されると思っている学生
今の学生様は皆様AIをお使いになるのでしょうけれども、まだAIがそこまで浸透していなかった時期のお話になりますわ。
とある学生様から提出予定の課題の校正をしてほしいというご相談をお受けしたことがございますの。
その学生様はこのようにおっしゃられましたのよ。
「キャンセルを前提にした取引ってできますか? できれば全部自分でやったことにしたいんで」
おそらく皆様もよく意味がおわかりにならないかと思いますけれども、当時のわたくしもよく意味がわかりませんでしたわ。
どういうことなのかお尋ねしてみますと、どうやらこちらの学生様、「とりあえず購入して取引を開始する→校正作業後のデータを見て、きちんと校正作業がなされていることを確認してから取引をキャンセルする→キャンセルして全額返金を受け取った上で校正作業後のデータは自分で修正したものとしてそのまま使う」という風にお考えだったようですのよ。
某芸人様の「ちょっと何言ってるかわからないです」の台詞がよぎりましたわ。
もはやそれはお取引ではないですわよね……?
さすがにそれは対応できませんわ、ということを優しく丁寧にオブラートにお包みしてお伝えしましたところ、学生様はこのようにおっしゃられましたわ。
「えっ、でも僕、学生ですよ? お金もないし、可哀想だと思わないんですか?」
まぁ、まるでネットミームにでもなりそうな台詞をお吐きになりますのね!
その後、本性をお現しになった学生様は「もういいから、とりあえず無料で校正してください! 今すぐ! 困ってる学生を助けたくないんですか!?」と、かなりしつこくメッセージを送ってこられましたわ。
申し訳ありませんけれども、それらのメッセージには一切お答えしませんでしてよ。
わたくしも一応、学生様ということでお見積りについてはサービスをさせていただいておりましたけれども、まさか一切のお支払いもされずに納品物だけをお求めになるとは思いもしませんでしたわ。
学生時代はわたくしも多少アレではありましたけれども、さすがのわたくしも学生だからといって有料のものを無料にしろだなんて奇抜な発想は持ち合わせておりませんでしたわよ。
ちなみに、こちらの学生様、国と蜜月関係にある、とある大企業を目指していらっしゃるようでしたの。
こういうすさまじい神経をお持ちの学生様が目指す大企業……さすがですわね。
【反省点】
なし。
【教訓】
学生の身分であれば何でも許されると思っている学生もいる。
有料のものをなぜか無料で手に入れられると思っている人間もいる。
●自分に興味を持ってもらいたかっただけの男
いつの頃でしたでしょうか。
あるとき、新商品のネーミングを考えてほしい、と殿方からご相談をいただきましたの。
ご相談の段階ではごく普通のお方だったのですけれど、いざお取引が始まりますとお相手の方がこのようなことをおっしゃいましたのよ。
「納得できる名前が決まるまで、あなたは私に一生付き合ってくれるんですよね?」
わたくし、最初は本当に冗談でおっしゃっているものだとばかり思っておりましたの。
なぜって、たったの数百円で人様の一生を拘束するおつもりの方がいらっしゃるなんて夢にも思いませんもの!
ただ、ご本人様は本気でおっしゃっていたようでしたのよ。
もちろん、改めましてわたくしで対応できる範囲のことについてはご説明させていただきましたけれども、お相手の方にどこまでご理解いただけたのかまではわかりませんでしたわ。
ここでお断りをしておけばよかったのでしょうけれども、お断りをするのもかえって怖い気がいたしましたし、存外にぱぱっとお名前がお決まりになるかもしれませんし……と考えまして、お取引を進めましたの。
詳細をお伺いしながら新商品のネーミング案を考えていきましたけれども、途中からお相手の方がお一人で盛り上がってしまいまして、いわゆるご自分語りが始まってしまいましたのよ。
ご自身の幼少期から現在に至るまでのお話、さらには武勇伝から苦労話まで、際限なくお話しされておりましたわ。
ちなみに、これらはすべて新商品のネーミングにはまったく関係のないお話でしたのよ。
わたくし、それをきちんとお聞きして、お返事もしながら、新商品のネーミングのお話に戻していたのですけれども、そのうち、お相手の方はこのようなことをおっしゃいましたの。
「コミュニケーションの意味、わかってます? きちんとコミュニケーションをとってくださいよ。自分の話したい内容だけ書き込んでくるのは人としてどうかと思いますよ」
わたくし、思わず「ふぁっ!?」と、はしたない声を上げそうになりましたわ。
どのお口でその台詞をおっしゃっておられるのかしら……?
わたくしとしてはお話しいただいたことをきちんとお聞きした上でお返事もしておりましたし、ご依頼いただいた新商品のネーミングのほうもきちんと進めるつもりでいたのですが……とご説明させていただきましたらね、お相手の方がようやく本音をお話しくださいましたの。
お相手の方がご主張されたことをおまとめしますと、このようになりましたわ。
「自分はこれだけ素晴らしくて魅力的な人間なのだから、そっちのほうからもっと自分に興味を持って根掘り葉掘りあれこれと質問してくるのが筋だろう」
ちょ、ちょっとお待ちになって……新商品のネーミングのお話は……?
わたくし、混乱しながらも「今回は新商品のネーミングのご依頼でしたので……」とお伝えしましたら、「まずは何日もかけて、お互いを知るところから始めないと」というようなことをおっしゃいますのよ。
あらまぁ、どうしましょう……と思っておりましたら、お相手の方がキャンセルをご希望されましたので、ここは素直にキャンセルをお受けすることにいたしましたわ。
正直なところ、わたくしもこのときばかりはキャンセルになってほっといたしましたのよ。
もし今回の新商品がご自身で開発されたもので、並々ならぬ情熱を注がれていて……というご事情がおありだったのでしたら、まだ理解できるのですけれども、仮にそうだったとしても数百円でお求めになるような内容ではないと思いますの。
そもそもネーミングの必要な新商品など最初から存在せず、別の目的が……などというのはさすがに考えすぎでしょうかしら。
【反省点】
「納得できる名前が決まるまで~」の言葉が出たときに断っておくべきだった点。
【教訓】
相談時は普通でも取引開始後に豹変するパターンはよくある。
どの口が言うのかということを平然と言う人間もいる。
相談や依頼に別の目的がある可能性もある。
●どちらにしても失礼な経営コンサルタント
ちょうどインバウンドという言葉をよく見聞きするようになった頃でしょうか。
経営コンサルタントをお名乗りになる殿方から海外向けの記事についてご相談をお受けしましたの。
真面目なお仕事のやり取りのはずですのに絵文字満載で、わたくしのことをご友人か誰かと誤解されているのかしらと思ってしまうほどにノリの軽い文面でしたのが少し気になりましたけれども、やり取り自体はスムーズでしたのでそのままお話を進めることにいたしましたのよ。
もちろん、わたくしの危険センサーが少し反応しておりましたので、事前のご相談の段階でしっかりみっちりとすり合わせをさせていただきましたわ。
いざお取引を開始しまして、執筆したものを納品させていただきましたらね、お相手の方がこうおっしゃいましたの。
「1つだけ・・・1つだけお願いしたいのですが・・・ご依頼時に明記させていただいたと思うのですが、画像をお願いします」
わたくし、こういうやり取りで「…」ではなく、あえて「・・・」をお使いになる方にはあまり良い思い出がないのですけれども、それは置いておきましょう。
さて、完全に執筆のみのご依頼として認識しておりましたわたくしは、「なんてこと! わたくしとしたことが、ご依頼内容を見落とすだなんて!」と、慌ててご依頼内容やご相談時のやり取りを見直しましたの。
ただ、やはり画像のご用意についてはどこにも書かれておりませんでしたのよ。
わたくし、画像のご用意を含めましてライティング以外の作業については別途費用をいただいているのですけれども、どうやらお相手の方は画像のご用意についてご依頼もお支払いもすべて済ませているおつもりでお話をされていらっしゃるようでしたの。
お相手の方も人間様でいらっしゃいますから、お間違いになることもございましょう。
もちろん、それは仕方のないことなのですけれど、問題はお相手の方が完全にわたくしがご依頼内容の一部を失念しているという風にお受け取りになっている点ですわ。
人として器が小さいとお叱りを受けてしまうかもしれませんけれども、やはり自分のミスではないことについてはハッキリとさせておきたいと思ってしまいますのよ。
ですので、わたくし、「ご依頼内容やご相談時のやり取りを見直したところ、画像のご用意については記載が確認できなかったこと」「今から追加の作業として対応することは可能ではあるけれど、今の時点で追加費用をお支払いいただいていないのでその分のお支払いが発生すること」をお伝えしましたわ。
そうしましたらね、お相手の方はこうおっしゃいましたの。
「記事自体はすごく素敵だと思うんですよね~。ご依頼時にお伝えしていた通り、画像だけお願いできればと思っております。継続でお願いしたいと思っておりますんで」
おかしいですわね、わたくしがお伝えしたことに対するお返事になっておりませんわ……。
てっきり、ご依頼内容やご相談時のやり取りを見直したあとに「ああ、本当ですね。伝えるのも支払うのも忘れてました」といったお返事をいただけるものと思っていたのですけれど、そうは問屋が卸さない、ということですのね。
わたくしもフリーランスとしてお仕事をするようになりまして、すっかり人間という生き物を信用できなくなっておりますもので、もしかして、このお方、継続をちらつかせながら、とぼけて追加費用を払わずに作業をさせようとお考えなのかしら……と思ってしまいましたの。
そこで、わたくし、もう一度お伝えしましたのよ。
これまでのやり取りで画像のご用意については触れられておらず、その分のお支払いも反映されていないようですので、ご確認をお願いできますか、と。
それに対するお返事がこちらですわ。
「あら? 書いてなかったですか? 記事の依頼、本当は他にも100人ぐらいにお願いしてるんで~」
この期に及んで、まだご自身がお送りになった内容をご確認いただけないなんて!
お支払いの件は華麗にスルーされておりますし、他の方へのご依頼に至っては今はまったく関係のないお話ですわ。
大勢いるライターの一人でしかないのだから身の程を弁えろというおつりなのかしら……?
本当にご依頼の上でお支払いになったつもりでいらっしゃったのか、それとも追加費用のお支払いをごまかすためにとぼけていらっしゃったのか、わたくしにはわかりかねますけれども、もし前者でしたら謝罪の言葉があるでしょうから、おそらく後者なのでしょうね。
ただ、このお方の場合ですと前者だったとしても謝罪の言葉は期待できない気がいたしますわ。
どちらにしても失礼でしてよ。
ちなみに、このお取引ではわたくし、今回はサービスでという形でご希望通り画像をご用意させていただきましたけれども、継続のご依頼はいただけませんでしたわ。
まったく世知辛い世の中ですわね。
【反省点】
自分の危険センサーを信じなかった点。
【教訓】
ノリの軽い人間からの相談や依頼は警戒したほうがいい。
自分の非を絶対に認めない人間もいる。
●時間にだらしない上にしつこいメンタルトレーナー
クラウドソーシングサイトを利用していると本当にいろいろなお立場の方からお声がけをいただくのですけれども、わたくし、メンタルトレーナーの方からご相談をいただいたことがありますのよ。
教材を作成したい、ということでしたわ。
ただ、このお方というのがとにかく時間にだらしなく、それでいてしつこい方でしたのよ。
まずはすり合わせをしてまいりましょうということで質問をさせていただくのですけれど、そのご回答をいただくのに2週間かかるというような具合でしたの。
いくら納期に余裕があったとしても、これではお話を進めることはできませんわ。
それで一度お断りをさせていただいたのですけれど、お断りをするとその日のうちに慌てた様子で「次からはちゃんと連絡をします」とお返事を送られてきますのよ。
それならば……と、そのままお話を進めていたのですけれど、結局はそれでも2週間に1回だったご連絡がかろうじて1週間に1回になっただけでしたの。
仮にお取引開始後もこのペースですと、お取引完了までにどれだけの時間がかかるのかしらと思いまして、やはり改めましてお断りをさせていただきましたのよ。
そうしましたら、また「次からはちゃんと連絡をします」とおっしゃいますの。
こうして、わたくしがお断りするたびに「次からは」とおっしゃることが3回ほど続きましたわ。
そこで、わたくしのほうからこのようにご提案することにいたしましたのよ。
「このままお話を進めるということであれば、確実にやり取りができる日時を教えてください。そこである程度まとまった時間を確保してお話を進められるのであれば、お取引に向けてのすり合わせを続けましょう」
そうしましたら、お相手の方が「この日のこの時間なら確実にやり取りができます」とおっしゃいましたので、ご指定いただいた日時までお待ちして、お話を進めることにいたしましたの。
ただ、もうお察しの方もいらっしゃるかと思いますけれども、やはりこのお方、やり取りができるとおっしゃっていた日時になっても結局ご連絡をいただけませんでしたのよ。
それがまた3回ほど続きましたので、改めましてお断りをさせていただきましたらまた「次からは」とおっしゃいますの。
もうこれ以上のお付き合いはできません、とハッキリ突っぱねましたら、「今まですり合わせができている分だけでもいいからとにかくお願いしたい。費用はすぐに全額支払う」とおっしゃるではありませんか。
わたくしもここでやめておけばよかったものを、その言葉を信じてしまいましたの。
金額と納期等を確認させていただいたあと、お相手の方がお支払いをいただけるように、クラウドソーシングサイト上で諸々の手配を済ませ、お待ちしておりましたわ。
案の定、待てど暮らせどご購入はされませんでしたわね。
ご購入の意思がないということで何度目かわからないお断りのメッセージをお送りしましたら、そこで初めて「なんかクレジットカードが使えなくて……」というお返事をいただきましたのよ。
それをもう少し早くにお伝えいただいておりましたら、また違っていたのかもしれませんけれども、さすがにもう無理ですわよね。
これ以上はお付き合いできません、と改めまして正式にお断りをしましたら、ようやく謝罪の上で受け入れてくださいましたけれども、わたくし、この方とのやり取りだけで4か月ほどの時間を無駄にしましたわ。
……あとになって知ったのですけれども、このお相手の方、個人的に人の心理について研究をされていたらしいのですわよ。
もしかしたらわたくし、「クラウドソーシングサイトのユーザーにストレスをかけたらどういう反応を見せるか」といったテーマで実験対象にされていたのかもしれませんわね……。
【反省点】
だらしない上にしつこい相手のことを信じようとしてしまった点。
【教訓】
信じられないほど時間にだらしない上にしつこい人間はいる。
人生を無駄にしないため、そういう類の人間とは関わらない。
●払う気はないのに「いくらでも払う」と言う男
ある日の深夜、とある殿方からこのようなメッセージが送られてきましたの。
「1時間以内に仕上げてほしい急ぎの仕事です。予算はお任せするので、見積りをお願いします」
確か、校閲か何かのご相談だったと記憶しておりますわ。
わたくしも、もうお布団に入ろうかしら……というところでしたけれども、お急ぎならばと、すぐにお見積りを算出いたしまして返信をさせていただきましたの。
そうしましたら、そのお方からこのようなお返事が届きましたのよ。
「急ぎというのは言葉のあやで、実際には急ぎじゃありません。急ぎじゃない見積りをください」
まぁ、1時間以内というとてもお急ぎのお仕事だったはずですのに、なぜかお急ぎではなくなったらしいですわ。
わたくしのサービスではお急ぎの場合には追加の費用をいただいておりますので、きっとご予算の問題なのでしょうねと思いまして、だいたいどれくらいのご予算でお考えだったのかを改めましてお尋ねしましたの。
そうしましたらね、このようにおっしゃいますのよ。
「予算に上限は設けていません。言い値でいくらでも払いますので、お任せします」
あらまぁ、ご予算に上限がなく、いくらでもお任せとおっしゃるのであれば、最初のお見積りでよかったはずですわよね、と思いつつも、わたくしはお口にチャックをいたしましたわ。
それから再度お見積りを算出させていただくために、そのお仕事がお急ぎではなくなったにしてもどれくらいの納期を想定されているのか等をお尋ねしましたけれど、既読無視をされてしまいましたのよ。
それ以降、そのお方からご連絡が来ることはございませんでしたわ。
最初のお見積りがご予算に合わなかったのでしょうけれども、具体的なご予算をお聞かせいただければ、すり合わせもできましたのに。
「言い値でいくらでも払います」なんて見栄を張るからいけませんのよ。
【反省点】
なし。
【教訓】
払う気がない人間ほど、「いくらでも払う」と言う。
予算で無駄に見栄を張ろうとする人間は意外に多い。
具体的な予算を妙に言いたがらない人間は警戒したほうがよい。
●一切譲らず値引きだけさせたい理髪店
ずいぶんと昔の話になりますけれども、理髪店をやっていらっしゃるという方からご相談をお受けしましたの。
店長様のブログに掲載する記事で、基本的には毎日更新で月に30記事がご希望とのことでしたわ。
お相手の方ができるだけコストを抑えたい、と強調されるものですから、まずはご予算をお尋ねしましたの。
ここではわかりやすくするために仮の金額でお話をさせていただきますけれども、お相手の方は3000円くらいを考えているとおっしゃいますのよ。
お伺いする限りですと1記事あたりがちょうど3000円になるようなご相談内容でしたので、コストを抑えたいとは言いつつも正規の金額できちんとお支払いいただけるのですわね、とほっとしておりましたの。
1記事あたり3000円であれば対応可能である旨をお伝えしましたら、そのお方、このようにおっしゃいましたのよ。
「1記事3000円ではなく、30記事で3000円は可能でしょうか?」
あら、きっと単価をご確認いただいていなかったのでしょうね、と思いまして、わたくし、改めまして単価についてご案内をさせていただきましたのよ。
その上で基本料金として1記事が3000円になる旨をお伝えしましたの。
そうしましたらね、お相手の方、このようにおっしゃいましたのよ。
「ありがとうございます。承知しました。30記事で3000円にするためには、どうすればいいでしょうか?」
ええと、このお方、一体何を承知されたのかしら……?
一応、わたくしも1記事あたりの文字数を減らす、更新頻度を落とす等のご提案をいくつかさせていただきましたけれども、お相手の方、「どうすればいいでしょうか?」とおっしゃりながらも、ご依頼内容については一切譲る気はないようですのよ。
文字数も記事数も納期も内容も、ご依頼内容はすべてそのままに、とにかく値引きだけしてほしいとご主張されますもので、残念ながらお断りをさせていただきましたわ。
とことん安くしたい……けれども、そのために譲る気は一切ないという姿勢は清々しいくらいでしたわね。
【反省点】
なし。
【教訓】
非常識な値引き交渉をしてくる人間はやはりどこか次元が違う。
●断られること自体が許せない男
フリーランスの方であれば大きく頷いていただけると思いますけれども、きちんと単価を設定していても、その単価を無視して独自の計算でご相談をしてくるという方は結構な割合でいらっしゃいますのよね。
あるとき、殿方からお急ぎで記事作成のご相談をお受けしましたの。
記事の文字数がかなりございましたので基本料金のみで1万円してしまうようなご相談内容でしたけれども、お相手の方は何をどのように計算されたのか、かなりの文字数がある記事をお急ぎで1000円でお願いしたいとおっしゃいますのよ。
さすがのわたくしも1万円以上するものを1000円でというのは難しいですわ。
それで、わたくしのほうで設定している単価とお急ぎでの追加費用をご案内した上で、申し訳ないのですが、お考えのご予算では対応が難しいです、という風にお伝えしましたの。
ただ、そのお方、そもそも断られるという行為自体が許せないタイプだったようでして、すぐにこのようなメッセージが送られてきましたのよ。
「何が不満なんですか? 予算は十分ですし、断られる筋合いはないですよね? 人をケチみたいに言うの、やめてもらっていいですか? 断るなら、その理由を今すぐここでわかるようにきちんと説明してください」
きっと断られたことで頭に血が上って、わたくしからお送りしたメッセージをお読みになられていないか、お読みになっても理解ができなくなっていたのでしょうね。
ああ、落ち着いて、先ほどわたくしがお送りしたメッセージをお読みになってくださいまし……と思いつつも、わたくし、淑女として先ほどのメッセージ内容をさらにかみ砕いてお伝えしましたの。
設定単価、お急ぎでの追加費用、そこからお見積りをどのように算出するかという計算式と具体的なお見積り金額まで、お伝えしましたのよ。
そうしましたらね、このようにおっしゃられましたわ。
「そこまで言うなら具体的な金額を教えてもらえます?」
お願いですから……わたくしの……メッセージを……お読みになってくださいまし……。
ここでもそう言いたくなるのをぐっと堪えて、改めて金額をお伝えしましたわ。
それに対するお返事がこちらでしてよ。
「他のライターに相談します」
ええ、ええ。
よくあることですわ。
結局、お取引には至りませんでしたけれども、この件、それだけでは終わりませんでしたのよ。
このやり取りからしばらく経ってからのことですわ。
同じお相手の方から、またメッセージが届きましたの。
「あなたに記事を書いてほしい」
前回のやり取りが頭をよぎりまして、あまり気は進みませんでしたけれども、きちんとお返事をさせていただきましたわ。
ご依頼予定の記事の詳細をお伺いできればと思います、と。
すぐに既読はついたのですけれど、お相手の方からそれに対するお返事が来ることはございませんでしたわ。
まぁ、こういうこともありますわよねと思っておりましたら、またしばらくしてまったく同じメッセージが届きましたの。
「あなたに記事を書いてほしい」
嫌な予感しかしませんでしたけれども、前回同様に……いえ、前回以上にきちんと丁寧なお返事をさせていただきましたわ。
ただ、やはりお相手の方は既読はつけるものの、お返事はしていただけませんでしたの。
試しに、わたくしのほうからもいくつかご相談内容についてお尋ねするメッセージをお送りしてみましたけれども、何一つお答えいただけず、すべて華麗なる既読無視でございましたわ。
皆様もお察しの通り典型的な嫌がらせでございますわよね。
こういうことがさらに何回か続きましたのでさすがに気持ち悪くなってしまいまして、そのお方については申し訳ないのですけれど、ブロックとさせていただきましたわ。
最初にお断りしたことが許せなかったのでしょうけれども、ここまでしつこくされるほどのことでしょうかしら……。
【反省点】
なし。
【教訓】
条件が合わないから断るという当たり前の行為でも逆恨みされることがある。
●予算が腐るほどあっても金を出したくない男
ある日の深夜の2時頃でしたかしら。
同じ方から一度に何十通というメッセージが届いておりましたのよ。
若干の恐怖を感じながら確認させていただいたのですけれど、メッセージの中身自体はご相談内容の詳細でそうおかしなものではございませんでしたわ。
ただ、よくよく確認させていただきますと、ご想定されているご予算がどう考えても設定している単価と合いませんのよ。
かなりの文字数でのご相談でしたので、基本料金で10万円はするところなのですけれど、ご予算としてご入力いただいているのは1000円でしたの。
文面からはお値引き交渉の印象はございませんでしたので、ご入力の際にお間違いになったのかしらと思いまして、改めまして設定単価と基本料金で10万円になる旨をお伝えしましたのよ。
そうしましたらね、お相手の方、このようにおっしゃいましたの。
「1000円で可能であれば、ぜひ」
まぁ、10万円になるとお伝えしているのに、なぜ1000円で可能だとお思いになったのかしら!
きっとわたくしとは別の宇宙軸で生きていらっしゃるのねと思いまして、もう一度、設定単価とそこから算出したお見積りの金額をお伝えしましたの。
そうしましたらね、お相手の方、何とおっしゃったと思います?
「ではここは私が一肌脱いで10万円出して差し上げましょう。ちなみに、私の予算は50万円です」
一瞬、わたくしにご自身の戦闘力をお伝えになったのかと思いましたけれども、それは置いておきましょう。
出して差し上げましょう、ではありませんわよ!
わたくし、基本料金で10万円になりますと最初からお伝えしておりますでしょう?
一肌脱ぐ振りをして、さも譲歩したかのようにおっしゃるものですから、わたくしもうっかり気を開放しそうになりましたわ。
それにしても、ご予算が50万円もあって、最初に1000円という金額をお伝えいただいたのはなぜですの……?
もちろん、お気持ちはわかりますわよ。
できる限り、安くというのは現代人の性ですもの。
ただ、それでも程度というものがありますわよね。
【反省点】
なし。
【教訓】
金持ちほどケチ。
●質問しただけで怒る会社員
とある企業に勤めている会社員だという方から、自社のサイトに掲載する記事を書いてほしいというご相談をお受けしましたの。
詳細をお伺いしていたのですけれども、そのお方、一度お話が始まりますと止まらなくなってしまわれるタイプでしたのよ。
送られてきたメッセージにお返事しようにも、お返事を書いている間に新しいメッセージが届いてしまいますので、本当に通知が止まらない状態でしたわ。
そのままお一人でどんどん盛り上がってしまいまして、当初は1記事のみというお話でしたのに、「そうなるとやっぱり○○の記事と、○○の記事もあったほうがいいから……」とご依頼内容がどんどん増えていきましたのよ。
1記事のみだったはずのご依頼は気づいたときには10記事まで膨れ上がっておりましたの。
これは一旦整理させていただかないと……と思いまして、お話がようやく一段落しましたかしらというところでわたくし、お尋ねしましたのよ。
「改めてご依頼内容について確認させていただければと思うのですが、今回は○○について1記事、○○について1記事、○○について1記事……(以下略)の合計10記事のご依頼ということでお間違いないでしょうか?」と。
そうしましたらね、このようなお返事が来ましたの。
「は? 意味わかんないんですけど、何怒ってるんですか?」
……それはもう驚きましたわ。
わたくし、本当にご依頼内容を確認させていただきたかっただけですのよ。
まさかお尋ねしただけで怒っているとお思いになるなんて!
それに文面からお受けする印象ですと、お怒りになっているのはご本人様でいらっしゃるのでは……?
おそらくですけれど、わたくしにお話を遮られたとお思いになって、それがご不快だったのでしょう。
それにしても、お怒りになっているご本人様ほど、ご自身ではなく相手が怒っているのだとご主張されるのは実に不思議なことですわね。
さて、まったく怒りなど感じていないわたくしは「怒っていないこと」「ご依頼内容を正確に把握するために必要なお尋ねだったこと」をお伝えしましたの。
それでもお相手の方が「いや、怒ってますよね? わかってますから」とおっしゃられるのには辟易いたしましたわ。
どちらにしましても、まだお伺いしなければいけないことはたくさんありますのに記事数の確認をさせていただいただけでああいった反応をされてしまうと困ってしまいますわよね。
ですから、「お話を進めていくためには他にもお尋ねしなければならないことがいくつも発生すること」「しかし、わたくしのお尋ねの仕方ではご不快な思いをさせてしまうかもしれないこと」をお伝えした上で、ご相談については丁重にお断りさせていただくことにしましたの。
そうしましたらね、最後にこのようにおっしゃられましたわ。
「です・ます調っていうか、敬語っていうか、そういう話し方、失礼ですよ」
……世の中、本当にいろいろな方がいらっしゃいますわね。
【反省点】
強いて言えば、もっと早いタイミングで依頼内容の確認をすべきだった点。
【教訓】
自分が怒っているのに人が怒っていることにする人間はどうしようもない。
ビジネスシーンにおいて「です・ます調」や敬語が失礼だと感じる社会人もいる。
●「了承した」と絶対に言いたくない営業担当
あるとき、とある企業で営業を担当しているという方からご相談をお受けしましたの。
実はわたくし、このお方には最初から香ばしさを感じておりましたの。
なぜかといいますと、送られてきたメッセージの中にこのような文章があったからですわ。
「他のライターに依頼していたんですが、逃げられたんですよね。それで今、新しいライターを探してるんです」
ご事情はお察ししますけれども、初対面でやり取りをさせていただくことを考えますと、もう少し他の言い方もあるのではないかしらとわたくしは思いますのよ。
それはさておき、まずはご相談内容についてお伺いしなければなりませんわ。
ただ、詳細をお伺いしていきますと、そのお方、ますます香ばしさが増していきましたの。
というのも、とにかく同業他社をこき下ろして、自社がいかに素晴らしいかを延々とお話しされますのよ。
正直なところ、他のライター様が逃げ出したくなってしまうお気持ちもわかる気がいたしましたわ。
けれども、それがビジネスですものね。
わたくし、できる限り事務的にお話を進めさせていただきましたの。
どうにかお話を進めまして、ご購入前の最終確認をさせていただくときのことでしたわ。
お取引においてはご了承いただかなくてはならない内容もございますので、最終確認ということで改めて「お取引にあたって、以上の内容にご了承いただけますか?」とお尋ねしましたの。
たいていの方は「はい、了承しました」とお答えいただけるのですけれども、そのお方はこのようにお返事をされましたわ。
「確認しました」
わたくし、このお返事を拝見したときに、ある出来事を思い出しましたの。
大昔のお話になりますけれど、同じようにお取引の最終確認で「ご了承いただけますか?」というお尋ねに対して「確認しました」とお返事をされた方がいらっしゃいましたのよ。
もちろん、今回ご相談いただいている方とは別のお方ですわ。
ただ、そのお方、お取引開始後に「確認したとは言ったが、了承したとは言っていない」と、それまでまとまっていたはずのお話をすべて反故にされてしまいましたの。
あのときと同じ香りがいたしますわね……と、わたくし、改めましてお伺いしましたのよ。
「ご確認の上、ご了承いただけたということでよろしいでしょうか?」と。
そうしましたらね、そのお方、また「確認しました」と、先ほどとまったく同じお返事を送られてきましたの。
わたくし、逆にワクワクしてきてしまいまして、また改めまして「ご了承のお返事をいただいてから、お取引に向けて具体的なお手続きに入りたいと思っております」とお伝えしましたのよ。
そうしましたら、今度はこのようなお返事をくださいましたの。
「拝見しました」
頑なに「了承しました」というお返事を避けられているようですわね。
「見た」けれども、「受け入れた」とは言っていないといったところでしょうか。
そこで、わたくし、過去に明確なご了承のお返事をいただけなかったことでトラブルになったケースがあるので……と正直にお伝えしましたの。
そうしましたらね、とうとうお相手の方からお返事が来なくなりましたのよ。
ちなみに、わたくしが確認させていただいておりました内容は「お取引完了後のキャンセルや返金には対応しておりません」といったごく一般的なものですわ。
ご了承いただくのにそうハードルの高いものではないと思うのですけれど、了承してしまうと何かお困りになることがあったのでしょうね。
【反省点】
なし。
【教訓】
逃げ道を残すため、意地でも「了承した」と言わない人間もいる。
●納品後にすべてを覆した自称神聖な男
オンラインでお仕事をしておりますと、本当にいろいろな方々からのご相談やご依頼をお受けすることになりますわよね。
その中でも特に印象に残っているのが、とある殿方からのご依頼ですわ。
官能小説のご依頼だったのですけれども、細かなご要望が多くございまして、事前のご相談の段階で何をどこまで描写するのか、どのような表現にするのかも含めて、かなり綿密なすり合わせをさせていただきましたのよ。
比較的スムーズにやり取りを進めることができましたので、そのままお取引を開始することにいたしましたの。
途中経過も何度かお見せしながら、最後まで書き上げまして納品をさせていただきましたわ。
そうしましたらね、お相手の方、このようにおっしゃいましたのよ。
「この神聖な私には、性的なものは相応しくない」
わたくし、本当に時が止まったかと思いましたわ。
いえ、刻が見えると言ったほうがよろしいのかしら。
その神聖なご本人様が性的なものを多分に含む官能小説をご依頼されたのでは……?
内心ではわたくし、それはもう大混乱でしたけれども、淑女として落ち着いてお相手の方に「もともとが官能小説のご依頼であったこと」「ご相談時には細かなご要望を踏まえて、どこまで描写するのか、どのような表現にするのかも含めて、事前にすり合わせを行い、その通りに執筆をしていること」を改めましてお伝えしましたの。
現にそのやり取りも履歴としてハッキリと残っておりますのよ。
ただ、わたくしがお送りした内容に対するお相手のお返事はたった一言でしたわ。
「キャンセルで」
ええ、ええ。
お相手の方の中ではキャンセルは決定事項でしたので、わたくしが何を言ったところで一切聞き入れてはもらえませんでしてよ。
当時、クラウドソーシングサイトのほうにもご相談しましたけれども、「双方で話し合いをしてください」という、お尻をお拭いになるちり紙にもなりませんようなご回答しかいただけませんでしたわ。
それができないからご相談しているのですけれども……という旨をお伝えしましたけれども、サイト側は本当に一切何もしてくださいませんでしたの。
結局、もうこうなってしまっては仕方がありませんわ……と、わたくしはキャンセルを受け入れざるを得ませんでしたのよ。
当時はずいぶんと落ち込みましたけれども、わたくしの書いた文章ではご満足いただけないほどに不埒な殿方でいらっしゃったのか、逆にわたくしの圧倒的かつ鮮麗な描写にご本人様がムラムラしすぎてしまったのかのどちらかなのでしょうね。
【反省点】
強いて言えば、相談を受けてしまった点。
【教訓】
どれだけ入念に事前相談をしても、取引開始後に平然とすべて覆されることもある。
何かあればクラウドソーシングサイトに相談すればよいなどという甘い考えを持っていてはいけない。
●褒められないと返事をしない自称チャネラー
チャネラーだという方からご依頼をお受けしたことがありますのよ。
確か、ご自身で作品集のようなものを作成しているのでその手伝いをしてほしい、といったご依頼だったかと思いますわ。
ご相談から実際のお取引後まで、一貫して機嫌の良いときには絵文字満載のメッセージを、機嫌が悪くなると絵文字なしの句読点のみのメッセージを送られてくるタイプのお方でしたの。
その時点で「おやおや?」という感じがいたしますけれども、意外なことにお取引自体は無難に終了しましたのよ。
問題が発生しましたのは、お取引後のやり取りでのことでしたわ。
お取引後、お相手の方の判断でわたくしの名前もクレジット表記していただけることになりまして、発表前に最終原稿をお送りいただけるということになりましたの。
それから半年ほど経過して、お相手の方から最終原稿が送られてきましたのよ。
ただ、拝見しましたところ、最終原稿には誤字脱字がいくつかございましたの。
その旨をお伝えしまして、今回はわたくしの名前をクレジット表記していただけるということでしたので、もしよろしければ誤字脱字の修正もわたくしのほうで行いましょうか、とお尋ねしましたのよ。
ただ、既読はつくものの、お相手の方からはまったくお返事をいただけませんのよ。
何度かメッセージをお送りしましたけれどもお返事のないまま1週間も2週間も経過してしまいまして、さすがに困りましたわねと途方に暮れていたのですけれど、ふとお取引中のことを思い出しましたの。
お相手の方、ご自身に対する褒め言葉が少しでもあると、そのときだけ異常なほどにお返事が早くていらっしゃいましたのよ。
もしや……と思いまして、同じ内容で文末に「本当に素晴らしい才能をお持ちでうらやましい限りです」というようなことを少し付け加えましたら、1分も経たずにすぐにお返事をいただけましたの。
それもハートマーク満載のお返事でしてよ。
その後、わたくしのほうに誤字脱字の修正をお任せいただけることになりまして、お相手の方とのやり取りの中でわたくしがお尋ねすることもそれなりにあったのですけれども、やはり質問のみのメッセージではお返事をいただけませんでしたわ。
質問に対するお返事をいただくためには毎回褒めるところをお探しして、褒めて差し上げなければいけませんでしたので少々苦労いたしましたわね。
褒めて差し上げないとお返事をいただけないというのも困りましたけれども、それと同じくらいに悩みましたのが、誤字脱字の修正について受け入れていただけなかったことですの。
あくまでも例えばのお話ですけれども、「腐っても鯛」という表現がございますわね。
お相手の方はこれを「腐ってもったいない」という風に覚えてしまわれておりまして、わたくしが正しい表記として「腐っても鯛」と修正しても、お相手の方の中では「腐ってもったいない」が正解ですので修正を受け入れていただけないというようなことが多々ございましたのよ。
せっかく修正をしても、それを受け入れていただけないのでしたら意味はありませんわよね。
それでわたくし、クレジット表記のほうを取り下げていただくようお願いいたしましたの。
誤字脱字が修正されないまま発表される作品にライターとしてクレジットされてしまいますと、やはりよろしくないかと思いましたのよ。
無事にクレジット表記の取り下げは受け入れていただけましたので、これでもうやり取りをすることはありませんわねと、ほっとしていたのですけれど、その後、しばらくしてまたお相手の方からメッセージが届きましたわ。
「次の作品集も手伝ってほしいんですけど、いいですか?」
あまり気は進みませんでしたけれども、気に入っていただけてご依頼をいただけるならと思いまして、お見積り算出のために詳細をお伺いできれば、とお返事をさせていただきましたのよ。
そうしましたらね、まさかのお返事が届きましたわ。
「え? 何でお金払わなきゃいけないんですか?」
……詳しくお伺いしてみますと、どうやらお相手の方、一度でもお取引をすれば以降は何でも言うことを聞いてもらえるという風にお考えだったようですのよ。
まったく、どのような思考回路をされていらっしゃるのかしら!
もちろん、丁重にお断りをさせていただきましたけども、それに対して最後にはこのようなメッセージが送られてきましたのよ。
「ああ、はいはい。そうですか。それはどうもすみませんでした~」
わたくし……とても疲れましたわ。
【反省点】
返事がないなら放っておくという判断ができなかった点。
だらだらと相手に付き合ってしまった点。
【教訓】
初対面の相手に絵文字の有無でいちいち自分の機嫌の良し悪しをアピールしてくる人間は警戒したほうがよい。
褒められないと返事をしてこない人間については無視できるなら無視したほうがよい。
一度でも取引をすればフリーランスは何でも言うことを聞くと思っている人間もいる。
●すべてをイラストレーターのせいにして逃げた古書店
もう何年も前のお話になってしまうのですけれど、古書店をされているという方から自費出版予定の本の文章を書いてほしいというご依頼をお受けしましたの。
お取引もスムーズに完了しまして、わたくしが納品した文章も大変気に入っていただけたようでしたのよ。
お取引から3年ほど経った頃でしょうか。
お相手の方からこのようなメッセージが届きましたの。
「お久しぶりです。これから出版をするのですが、あなたの名前をクレジットに記載してもいいでしょうか? 出版前の最終データも添付しましたので、忌憚なきご意見をお願いします!」
さすがにこのメッセージだけではどのお方とのお取引のことなのかわたくしもわからず、過去のメッセージやお取引の履歴を確認させていただきましたわ。
それで「ああ、あのときの」と合点がいきましたのよ。
やはり携わったお仕事でクレジットに記載していただけるのはとても嬉しいことですので、わたくしも満面の笑みでデータを確認させていただきましたの。
ただ、そのデータというのがわたくしが執筆して納品させていただいたものとはまったくの別物になっておりましたのよ。
お伺いしてみますと、わたくしが納品させていただいたものを3年かけてご本人様なりにアレンジしたということでしたわ。
もちろん、ご本人様が出版される本なのですからアレンジは問題ないのですけれども、当時わたくしが執筆させていただいた文章については本当に欠片も残っていない状態でしたし、そもそも内容自体が大きく変わっておりましたのよ。
それに加えて誤字脱字も散見されましたので、わたくし、本当にとても悩みましたわ。
悩みに悩み抜いた結果、「ご本人様のアレンジによって、素敵な作品に生まれ変わったと思っていること」「その状態で名前をクレジットに記載していただくのは申し訳ないので、今回はお気持ちだけ受け取りたいと考えていること」「誤字脱字があるようなので、最後にもう一度チェックをしたほうがいいかもしれないこと」をオブラートに厳重にお包みした上でお伝えしましたの。
けれども、これがお相手の方のお気に障ってしまったようで、このようなメッセージが送られてきましたのよ。
「確かにアレンジはしましたが、こうなったのは全部イラストレーターのせいです。文句ならイラストレーターに言ってください」
おそらくわたくしがアレンジ後の仕上がりに不満があってクレジットへの記載を断ったという風にお受け取りになったのでしょうね。
その上で誤字脱字をご指摘してしまったわけですから、それもご不快だったのでしょう。
実際のところ、アレンジ後の文章ではわたくしが絶対に使わない表現などもたくさんございましたし、内容もまるっきり変わってしまっておりましたので、わたくしが書いたものとしてクレジットへの記載されるのは困ってしまうというのが本音でしたのよ。
ちなみに、イラストレーターの方は確か表紙とほんの少しの挿絵を任されていただけのはずですから、完全なとばっちりですわよね。
さて、これはどのようにお返事をすべきかしらと悩んでおりましたら、お相手の方、その間にアカウントを削除されてしまったようで以降は完全な音信不通となってしまいましたのよ。
……ただ、実はわたくし、この件の裏話をのちに耳にする機会がございましたの。
どうやら一連の流れは、このようなことだったらしいですのよ。
「忌憚なきご意見を……」と言いつつも、ご本人様的にはこれ以上ないほど完璧に仕上げたつもりの最終データを自信満々でライターに送る
↓
大絶賛してもらえると思っていたのに、いざ確認してもらったらクレジットへの記載は断られるわ、ご本人様が見落としていた誤字脱字等が多数発覚するわで恥ずかしくなる
↓
「恥じ」が「怒り」の感情に変わり、無関係のイラストレーターに勢いで全責任を擦り付ける
↓
ただ、万が一ライターが本当にイラストレーターへ文句を言おうものなら間違いなくトラブルになるので、巻き込まれまいとアカウントを削除して逃亡
イラストレーターの方とは一度もお会いしておりませんし、お話をしたこともないのですけれども、文句を言うどころか「お互いに大変ですわね」と心の中で思っておりますわ。
【反省点】
なし。
【教訓】
自分も知らないうちにどこかで何かを擦り付けられているかもしれない。
●泳がせてみたら二度と戻ってこなかったエロ漫画家
フリーランスライターの方でしたら、よほど有名な方でない限り、やはりゴーストライターとしてのお仕事が多いのではないでしょうか?
わたくしもそうでして、いわゆるエロ漫画の原案をゴーストライターとしてお受けしていた時期がございますの。
複数人いらっしゃるのですけれども、そのうちのお一人がとても時間にだらしのない方でしたのよ。
業務連絡だから困ります、ということは何度もお伝えしておりましたけれども、お約束した期日を守ってもらえたことは一度もございませんでしたわ。
早くて期日の3日後、遅いと期日から1週間後といったところでしょうか。
毎回わたくしのほうからご連絡をして、ようやく必要なやり取りができるといった具合でしたのよ。
お取引前のやり取りで多少お時間がかかってしまう分にはまだどうにかという感じでしたけれども、そのうち、お取引開始後、それも納品後のお返事にもお時間がかかるようになってしまいましたの。
わたくしが納品をさせていただくとほぼ即時に既読はつくのですけれど、実際に内容をご確認いただけるのはそこから1週間後、さらにご確認の作業に1週間かかり、その後、ようやくご連絡をいただけるといったこともございましたの。
また、クラウドソーシングサイトではお取引において依頼者側で必要になるお手続きもございまして、お取引自体はすでに完了しているのにお相手がいつまでもお手続きをしてくださらないために、正式に入金がなされないということも頻発しておりましたのよ。
わたくしが早めに納品をすれば少しは状況も変わりますかしらと試してみたのですけれど、わたくしがどれだけ早めに納品をしても、その分、お相手の方が余計にだらだらとするだけで何も変わりませんでしたわ。
何度か期日を守っていただけるように、またご連絡をもう少し早くにいただけるように、とお伝えもしたのですけれど、暖簾に腕押しでしたの。
それでわたくし、あるとき、お取引の際にこのようにお伝えすることにしましたのよ。
「入金は生活に直結するものなので、入金に関するお手続きだけは期日までにお願いできますか?」
通常の業務連絡にも確認作業にも、もうどれだけお時間をかけてもよいので、せめてこれだけは……という思いでお送りしましたのよ。
ただ、お送りしたこのメッセージにも既読がつくのみで、お返事はいただけず期日も守ってもらえませんでしたわ。
もちろん、最終的にお手続きはしていただけたのですけれど、そのタイミングにわたくしは脱力してしまいましたの。
というのも、期日だった日が終わり、日付が変わったそのわずか5分後のお手続きでしたのよ。
ご本人様としては期日を守ったつもりでいらっしゃったのか、わたくしに対する抗議のつもりでいらっしゃったのか、それとも本当に何もお考えになっていないだけなのか……わたくしにはもう何もわかりませんわ。
その後、お相手の方からは何事もなかったかのようにこのようなメッセージが送られてきましたの。
「次回作は〇月〇日から始めましょう」
もちろん、おっしゃっていた期日になってもご連絡はありませんでしたわ。
今まででしたらわたくしのほうからご連絡して、やり取りを進めていたのですけれども、今回はわたくし、あえてお相手の方をとことん泳がせてみることにしましたの。
そうしましたらね、その後は一切ご連絡がありませんのよ。
もう5年になりますわ。
まぁ、どこまで泳ぎにいってらっしゃるのでしょうかしら。
【反省点】
最初から相手に合わせてしまった点。
【教訓】
時間や約束を守ろうという意識がまったくなく、一切の罪悪感を抱かない人間もいる。
●盛大な後出しをしてきた自称オタク
あるとき、とあるニッチな分野についてお詳しくていらっしゃるという自称オタクの方からご相談をお受けしましたの。
そのニッチな分野について世間にもっと認知してもらうために自作の小説を執筆したい、ということでしたわ。
全100話の超大作ということで事前のご相談の段階からしっかりとすり合わせをさせていただいたのですけれど、その中でこのお方、少し引っかかる部分もございましたの。
というのも、どうやらお相手の方、わたくしのことをネットでお調べになったようですのよ。
当時のわたくしは、卒業した大学については確かにクラウドソーシングサイトのほうでも公開しておりましたけれども、卒業年や学部までは記載をしておりませんでしたの。
卒業年や学部については一部のビジネスSNSのみで公開しておりまして、それも公開範囲を制限した上での公開したのよ。
お相手の方はそれをお調べになった上で、わたくしにこのようなメッセージを送ってこられましたの。
「失礼ながらあなたのことを調べさせていただきました。○○大学の○○学部を卒業されていますよね? ○○学部で○○年に卒業ということであれば、当時は○○キャンパスに通われていたのかと思います。あのあたりには○○という店がありますが……」
これがご相談内容に関係のあることでしたらまだ納得できるのですけれど、まったく関係のないただの雑談でしたのよ。
少しモヤモヤしたものを感じながらも、それ以上は踏み込んでこられないようでしたので、そのままお取引を開始することにいたしましたの。
世界観やあらすじ、登場人物の設定などはすべて事前にご共有いただいてから執筆を開始しまして、80話あたりまでは滞りなくお取引が完了したのですけれど、それ以降のお取引で問題が発生いたしましたの。
残りの20話の執筆に入りまして、しばらく経った頃にお相手の方がこのようなことをおっしゃいましたのよ。
「実はこのキャラ、○○の設定なんですよね。それを踏まえて、よろしくお願いします」
ええ、ええ、もちろん初耳の設定でしたわよ。
80話まで書き終えて、20話もだいぶ書き進めて、このタイミングで新しい設定が出てくるという盛大な後出しにわたくしも驚いてしまいましたの。
しかも、その設定ですとすでに執筆済みの80話も含めまして展開や台詞のニュアンスなどもずいぶんと変わってまいりますのよ。
わたくし、最初にお伝えいただきたかったのですが……という言葉を呑み込んで、波風を立てぬよう「事前に設定等をご共有いただいておりましたが、もしまだご共有いただいていない設定や新しく追加された設定がございましたら改めてお伺いしてもよろしいでしょうか?」とお尋ねしましたの。
そうしましたらね、おそらくわたくしの言葉がお気に障ったのでしょうね。
このようなメッセージが送られてきましたのよ。
「こっちは大枚はたいて依頼しているんだからいちいち文句を言うな」
「そもそもお前の書いた今までの話も大して面白くないし、よくわからなかったんだよ」
まぁ、おっしゃりたいことはわかりますのよ。
ただ、最初から「こういう設定で」という前提で執筆している作品で物語そのものが大きく変わるような新しい設定を後出しされるのはやはり困りますわ。
それに、すでに執筆を終えたお話についても途中経過を何度もご確認いただいて、問題がないということでお取引を完了させていただいておりますのよ。
きっと「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という状態になってしまわれたのでしょうね。
ああ、もうこれは仕方がないかしらと思いまして、わたくし、大して面白くないし、よくわからなかったとおっしゃられた80話までについても、新しい設定を踏まえて修正させていただくことにいたしましたの。
その旨をお伝えしましたらね、おそらくお相手の方、ふっと我に返ったのだと思いますけれど、取り繕うようにこうおっしゃいましたのよ。
「まぁまぁまぁ、そうおっしゃらず。冗談ですよ~。お互い気持ちよく取引しましょうよ~」
まぁ、どのお口がおっしゃるのかしらと思いましたけれども、わたくしは粛々と執筆させていただきましたわ。
以降は言い訳めいたメッセージやわたくしの執筆したものを今度は大絶賛するようなメッセージも送られてきまして、情緒が大変でいらっしゃるようでしたわね。
結局、後出しの設定についてはそれを反映させてしまうとこれまでの物語の整合性が取れなくなってしまうということにご本人様がお気づきになったようで、なかったことになりましたわ。
お取引自体は無事に完了となりましたけれども、やはり最後までモヤっとしたものが残りましてよ。
【反省点】
気持ち悪いと感じた自分の直感を信じなかった点。
【教訓】
気まぐれの後出しは本当に困る。
角のない言葉を選んでも、勝手に角を作る人間もいる。
●「自由に書いてほしい」と言いつつ自由に書かせる気のない女
今まで本当にたくさんの方とやり取りをさせていただきましたけれども、その中で何度もご相談をお受けしてはそのたびにお断りをして……ということを繰り返していたご婦人がいらっしゃいましたの。
ご相談いただく内容は毎回同じで、ご自身で企画されたBL作品を書いてほしいということでしたわ。
もちろん、対応できるものであればお受けするのですけれども、そのお方からのご相談内容は毎回細かな設定があまりにも多くございまして、わたくしのほうでは対応が難しいものでしたのよ。
何度目のことだったか、とうとうそのお方が「指定するのは最低限の設定のみで、それ以外の細かな条件はすべて任せるので、とにかく自由に書いてほしい」とおっしゃいましたの。
ご指定されるという設定も含めまして詳細をお伺いしてみますと、わたくしにも対応できそうな内容でしたので、一度お受けすることにいたしましたのよ。
ただ、お取引開始後にいざ納品させていただいたくと、お相手の方の反応はとても微妙でして、間髪入れずに怒涛の質問攻めが続きましたわ。
「このあとはどのあたりまで物語を進めるご予定でしょうか?」
「○○についてのエピソードはどのあたりで書かれるご予定でしょうか?」
「○○はいつ使うご想定でしょうか?」
「○○についてはいつ言及するご想定でしょうか?」
「○○はいつ登場させるご想定でしょうか?」
ご質問いただいたことにはすべてお答えしましたけれど、それに対して今度はこのようなメッセージが届きましたのよ。
「実は、私の原案で進行中の企画ってたくさんあるんですよ。本当に忙しくて忙しくて、細かく口出ししたくとも、そもそも口出しする暇がないんです。だから、自由に書いてもらってるんです。今回はサイコホラー系のBL作品を生み出すために考えた企画なんですけど、やっぱり怖いですよね。私も怖くて気分が落ち込んでしまったので、気分転換したいんです。もっとハッピーな企画で書き直してもらえませんか?」
さりげない多忙アピールが少々気になりましたけれども、それは置いておきましょう。
つまり、このお方、ご自身でホラー系の企画を考案されて、その企画でいざ小説を書かせてみたら、やはり怖くて落ち込んでしまったのであくまでもご自身の気分転換のためだけにまったく別の作品を書いてほしい、ということでしたのよ。
ご満足、ご納得いただけていないのはそれまでのやり取りで十二分に伝わってきておりましたので、それならばとキャンセルを申し出たのですけれども、キャンセルは頑なに拒否されますの。
かといって、追加のお支払いをされるつもりもないとおっしゃいますのよ。
ただ、追加のお支払いをしていただけないのでしたら、わたくし、1作品分の費用で2作品を執筆することになりますわよね。
このお方がやっていらっしゃることというのは、例えるのでしたら、飲食店で冷たいジュースを注文後に「このジュース、冷たいわ。手が冷えたので気分転換に温かいスープをちょうだい」と温かいスープの提供を無償で求めるような行為ですわ。
さすがにそういう対応はできなくてよ、と追加費用なしで新規に執筆することはできない旨をお伝えしまして、どうにかキャンセルを受け入れてもらいましたわ。
ようやくキャンセルが成立しましてほっとしておりましたら、キャンセル成立から1分も経たずに、このお方からまたメッセージが届きましたのよ。
「今度はこちらの企画でお願いできませんか? とにかく自由に書いてください」
添付されていた企画内容を拝見しましたところ、それはもう細かな設定が書き連ねられておりましたの。
もちろん、お断りをさせていただきましたけれども、なぜそこまでわたくしにこだわるのか……意味がわかりませんわ。
【反省点】
なし。
【教訓】
「自由に」と言いつつも、実は最初から自由に書かせる気のない人間は意外に多い。
最初からなかなか話がまとまらない取引は進めないほうがいい。
●高らかにブロック宣言をしてきた芸術家
あるとき、芸術家だとおっしゃる方から、自分のフェティシズムを満たすような作品を書いてほしい、というご相談をお受けしましたの。
ただ、詳細をお伺いしてみますと、わたくしには縁遠い世界でしたのよ。
そのため、そういった分野には詳しくないので……とお断りをさせていただいたのですけれど、お相手の方はこのようにおっしゃいましたの。
「この分野に詳しくない人が大半だということは理解しています。そもそも詳しい人がほとんどいないのです。もちろん、詳しくないという分野についてご依頼するのですから、仕上がりに問題があっても絶対に文句は言いません。どうしても、あなたにお願いしたいのです」
そこまでおっしゃっていただけるのでしたら、お受けしないわけにはいきませんわよね。
わたくしもできる限り、その分野についてお調べします、ということでご依頼をお受けすることにしましたの。
けれども、いざお取引が始まりましたら、それはもう残念なことの連続でしたわ。
お急ぎでのご依頼として納品日をご指定いただいておりましたので、その期日よりも早めに納品をさせていただいたのですけれど、お相手の方はこのようにおっしゃいましたの。
「今、あんまり気が乗らないんで確認はあとでいいですか?」
文面からお受けする印象が以前とずいぶんと違うような気もしましたけれども、それは置いておきましょう。
わたくしが勝手に早めに納品をさせていただいたわけですから、ご確認いただけないのも仕方がありませんわ。
ただこのあと、いくらお待ちしても、なかなかご確認いただけませんでしたのよ。
実際にご指定をいただいていた納品日を過ぎて、さらにそこから長期間、放置されてしまいましたの。
ようやくご確認いただけたと思いましたら、お相手の方はこのようにおっしゃいましたわ。
「ああ、この程度ですか。イメージと全然違いますね。あまり役に立ちそうにないですけど、まぁ依頼したのはこっちですし。参考資料になればラッキーくらいですかね」
ですから、最初にお断りしたではないですか……という言葉を呑み込みまして、できる限りの修正はさせていただきますとメッセージをお送りしたのですが、「もういいです」と冷たくあしらわれてしまいましたの。
その後の評価については、お察しの通りでしてよ。
匿名の評価でひどく罵られてしまいましたの。
このようにとても残念な形でお取引が終わりまして、さすがにもうお声がけいただくこともないでしょうと思っておりましたら、まさかの2回目のご相談をいただきましたのよ!
何を思ってご相談いただいたのか、わたくし、まったくわかりませんでしたわ。
正直なところ、先のお取引の評価として記載いただいた内容はわたくしとしては恐怖を感じるようなものでしたので、申し訳ありませんけれども、お断りをさせていただくことにいたしましたの。
もちろん、「あなたとはもうお取引したくありません」などとは口が裂けても言えませんから、一応ご相談内容をお伺いした上で「今回のご相談内容で求められる知識などを考えますと、こちらでは対応が難しいかと思います」という形でお断りをさせていただきましたのよ。
ただ、お相手の方にも思うところがおありになったのでしょうね。
わたくしがお断りの旨をお伝えしますと、すさまじい勢いで噛みつかれてきましたのよ。
「は? 断るんですか?」
「理由は?」
「今後、私からの相談はすべて断るつもりですか?」
あらまぁ……と思いましたけれども、わたくしは冷静に「今回のご相談内容で求められる知識などをこちらでは持ち合わせていないため、対応が難しいこと」「今後の取引をすべて断ると言っているわけではなく、対応可能な内容のものについては対応をさせていただきたいと思っていること」をお伝えしましたの。
結果的にわたくしも嘘をつくことにはなりますけれど、これは致し方ないと思いますのよ。
そうしましたらね、お相手の方、こうおっしゃいましたの。
「ああ、はいはい。そうですか、そうですか。私が全部悪いんですね。どうもすみませんでした。相談して悪うございましたね。ブロックします」
どのようなお顔をされていたのか、まるで目に浮かぶようですわね。
まるで創作物に登場するキャラクターのようなお方でしたわ。
【反省点】
依頼者の希望通りの仕上がりにならない可能性のほうが高いとわかっていながら依頼を受けてしまった点。
【教訓】
人を待たせて平気な人間は基本ろくでもない。
「絶対に文句を言わない」という人間は絶対に文句を言う。
●まるで会話にならなかった男
あるとき、ある程度お年を召した殿方から確かスピーチ原稿か何かだったかと思うのですけれども、とにかく原稿のチェックをしてほしいというご相談をいただきましたのよ。
実際に原稿も添付していただけておりましたので、その原稿を拝見した上で具体的な作業内容として誤字脱字と文法的な間違い、言葉の誤用を修正することになる旨をお伝えしましたわ。
そうしましたらね、このようなお返事をいただきましたの。
「わかります。私の書く文章は、あなたが書くそれよりも素晴らしいですよね。大丈夫ですよ。いつかあなたも私のようになれます。さて、原稿に関しては修正する箇所はまったくないということで、どうもありがとうございました。どうかお元気で」
もうわたくし、本当に自分の眼球がどこかに飛んで行ってしまったのではないかと思いましたわ。
まるで会話になっていませんもの!
原稿の中には言葉の誤用で誤解を招くような表現もありましたので、修正は絶対にしたほうがよろしかったと思うのですけれど、きっとお相手の方は修正箇所があったというその事実自体を受け入れることができなかったのでしょうね。
あの原稿のままお読みになったとして、その場はどのような空気になりましたのかしら……と、時々ふと思い出しますのよ。
【反省点】
なし。
【教訓】
まるで会話にならない人間もいる。
文章の修正という些細なことですら受け入れられない人間もいる。
●値切り交渉に失敗して逆ギレしたホテルマン
あるとき、ホテルマンをしているという方から記事作成のご相談をお受けしましたのよ。
丁寧な言葉遣いに紳士的な振る舞いはさすがホテルマンという感じがいたしましたわ。
わたくしも安心してやり取りをさせていただいたのですけれども、設定している単価をご説明させていただいたあと、ご予算のお話になりますと様子がおかしくなってまいりましたの。
今回は設定している単価から算出しますと、最低3万円はするご依頼内容ですのよ。
けれども、そのお方は「予算が3000円しかないので3000円でお願いします」とおっしゃいますの。
申し訳ございません、その金額では……とお断りしたのですけれども、そのお方、しつこく食い下がってきますのよ。
「初回だけ。初回だけサービスで。2回目以降は正規の金額を払いますから」
このお方がホテルマンというのもありまして、わたくし、このメッセージを拝見して、宿泊施設前で「先端だけ」とおっしゃる殿方を思い浮かべてしまいましたわ。
ちなみに、長年フリーランスライターとしてお仕事をさせていただいておりますけれども、2回目以降は正規の金額を支払うからと初回のお値引きをご希望される方で2回目のご依頼をしてきた方は今までお一人もいらっしゃいませんのよ。
ですので、丁重にお断りをさせていただいたのですけれど、そのあとには捨て台詞のようなメッセージが送られてきましたわ。
「薄情な人ですね。あなたには人の心がないんですか?」
「もういいです。あなたには金輪際、相談してあげません」
「大した文章も書けない底辺ライターのくせに」
短時間で複数回のメッセージが送られてきましたけれども、その速さには目を見張るものがございましたのよ。
大した文章も書けない底辺ライターだとお思いになりながらご相談いただいたのは、きっとこのお方なりのご慈悲だったのでしょう。
わたくしとは違って、情に厚い方でしたのね。
【反省点】
なし。
【教訓】
非常識な値引き交渉をしてくる人間はやはりまともではない。
●数百円の依頼でごねにごねた男
これはサブスクサービスが一般的なものとなって比較的すぐの頃でしたでしょうか。
とある殿方からサブスク関連の記事を書いてほしいというご相談をお受けしましたの。
かなり細かな条件の多いご相談内容でしたので慎重に詳細をお伺いしていたのですけれど、そのお方、何を思ったのか、事前のご相談のやり取りが完結しないうちに、いきなりご購入のお手続きをお進めになってしまいましたの。
今は依頼者側からの一方的な購入を制限するための機能がクラウドソーシングサイトにも用意されているのですけれど、当時はまだそういった機能がない時期でしたのよ。
そのため、わたくしもご相談でのやり取りが完結してからのご購入をお願いしていたのですけれど、完全に虚をつかれてしまいましたわ。
ただ、ご購入されてしまったのであれば仕方ありませんものね。
改めまして、ご相談時にお伝えいただいた内容をおまとめして、このご依頼内容でお間違いないでしょうかとお尋ねしましたの。
そうしましたらね、そのお方、こうおっしゃいましたのよ。
「今から正式な依頼内容を送りますね」
わたくし、とても嫌な予感がしましたわ。
ご相談の段階でかなりの詳細なやり取りをさせていただいておりましたのよ?
今から正式な依頼内容をお送りになるとおっしゃられるのであれば、事前のご相談でやり取りをさせていただいていた内容は一体何だったのでしょう。
そして、実際に送られてきた正式なご依頼内容の詳細を拝見して、わたくし固まってしまいましたわ。
なぜって、ご相談でやり取りをした内容とまったくの別物なのですもの!
ご購入後に対応できないからとキャンセルすることがないように、事前にご相談をお願いしている旨もお伝えしていたはずなのですけれど、まったく本当に何のためのご相談だったのでしょうかしら。
しかも、その別物になってしまったご依頼内容というのが一部専門的な知識が求められるようなもので、わたくしでは対応が難しいものでしたのよ。
それで申し訳ありませんけれども、お断りの上でキャンセルをさせていただくことにしましたの。
そうしましたら、お相手の方はこうおっしゃいましたわ。
「僕のこと、めんどくさい男だと思ってますよね?」
そういう……お話では……ありませんのよ……。
ただ、そういうお尋ねをされる時点でめんどくさいか、めんどくさくないかで言えば間違いなくめんどくさいタイプの殿方でしょうね。
わたくし、面倒だからお断りしているわけではなく、対応できない内容なのでお断りをさせていただいておりますのよ。
ご相談時の内容であれば対応はできましたけれども、ご購入後にお伝えいただいた内容では専門的な知識が求められるため現実的にわたくしでは対応ができないのです、ということを優しく丁寧な言葉で改めてお送りしましたの。
それに対するお返事がこちらですわ。
「でも、キャンセルだと手数料とか返金されないですよね?」
まぁ、どこまでもご自分のことしかお考えにならない、めんどくさい殿方ですわねと思いつつも、淑女としてエレガントに微笑みを絶やしませんでしたわ。
ひとまず、ここは確認が必要ですわと、わたくしはキャンセル時の手数料の扱いがどうなるのかクラウドソーシングサイト側に問い合わせをすることにいたしましたの。
その旨をお相手の方にご連絡しまして、サイト側からの返事はおそらく数日かかるのでお待ちくださいとお伝えしたのですけれど、お相手の方はお取引が思い通りにならないことにとにかくイライラされているようで小分けにして小言をわたくしに送ってこられましたのよ。
「そもそも相談途中でも購入できるようにしているお前が悪い」
「これでも妥協してやってるのに断るなんてあり得ない」
「キャンセルを言い出したのはお前なんだから、サイトとの対応は責任をもって全部お前がやれ。返金がすべてスムーズにされるならキャンセルを受けてやる。もし1円でも返金されない金額が発生するならキャンセルは絶対に受け入れないから覚悟しろ」
「サイトからの返事に時間がかかるのはわかっているが、こうして待っている状態でも僕が支払った金はお前のせいで拘束されているということを理解しろ」
わたくしがクラウドソーシングサイトに問い合わせをして、その返事を待っている数日間、延々とこういったお口の悪いメッセージが送られてきましたの。
ちなみに、手数料や支払った金が拘束されている云々おっしゃっておりますけれども、このお方がお支払いになった金額は手数料込みでも数百円でしたのよ。
結局、数日後にクラウドソーシングサイトから正式にキャンセルは手数料も含めての返金だという返事が来ましたので、その旨をお伝えして、ようやくキャンセル成立となりましたわ。
数百円でごねるような殿方がオンライン上ではそれらしいアイコンでそれらしい振る舞いをしていらっしゃるのですから、本当に世の中というのは怖いものですわね。
【反省点】
なし。
【教訓】
自分のことをめんどくさいと思うかどうか尋ねてくる人間は基本的にめんどくさい。
数百円でもごねにごねる人間もいる。
少額の取引ほど、因縁をつけてくる人間が多い。
●勘違いで人を詐欺師呼ばわりした広報担当
クラウドソーシングサイト上でお取引する際には、基本的にご依頼者様のほうで先にお支払いをしていただくことになりますわね。
その際にはわたくしのような受注者に直接お支払いいただくのではなく、あくまでもクラウドソーシングサイト側にお支払いいただくことになるのですけれど、まれにご依頼者様のほうでお支払いの際にミスをされることがございますのよ。
いろいろなパターンがございますけれども、わたくしの場合ですと、ご依頼者様のほうで実際にはお支払いが完了していないのに完了したと勘違いされてしまった、というパターンが多かったような気がいたしますわ。
そういった勘違いでわたくしが詐欺師呼ばわりされてしまったことがありますのよ。
あるとき、とある企業の広報担当だという方からセールスライティングのご相談をお受けしましたの。
自社の商品に関するセールスライティングだということでしたわ。
早い段階でお話がまとまりまして、そのお方もすぐにお支払いのお手続きを進めてくださいましたのよ。
ただ、通常であればお支払いは当日か翌日に反映されるはずですのに、翌日を過ぎましてもなかなかお支払いが反映されませんでしたの。
システムの関係か、もしかしたらご依頼者様のご都合でお支払いのタイミングが変わってしまったのかもしれませんわね、と思っておりましたら、お相手の方がこのようにおっしゃいましたのよ。
「これ、詐欺ですよね? あなた、詐欺師ですよね? あなたを訴えます」
まさかいきなりこういう展開になるとは想像もしておりませんでしたので、さすがのわたくしも狼狽えてしまいましたわ。
それでも「断じて詐欺等ではないこと」「お支払いはクラウドソーシングサイトに対するものなので、システムトラブル等の可能性があるかもしれないこと」「こちらからもクラウドソーシングサイト側に問い合わせをして確認するので、ご依頼者様のほうでもサイト側に問い合わせをしてみてほしいこと」をどうにかお伝えしましたけれども、お相手の方の中ではわたくしが詐欺師で確定しているものですから、それはもうすさまじい勢いで怨念のこもった長文のメッセージが送られてきましたのよ。
その翌日、わたくしのほうにクラウドソーシングサイト側から、依頼者側で支払い手続きをした履歴は確認できない、といった返事が届きましたの。
ちょうど同じタイミングでお相手の方からの怒涛のメッセージもピタリと止まりましたので、お相手の方のほうにもサイト側から何かしらの返事があったのだと思いますわ。
その日のうちに、お相手の方からはこのようなメッセージが届きましたわ。
「私のほうで支払いができていなかっただけでした。いやぁ、うっかりですね。今から支払いをし直しますね」
ただ、勘違いだったとはいえ、詐欺師扱いされて訴えるとまで言われてしまいますと、もうお取引は難しいですわよね。
一言も謝罪せずに、しれっとやり直そうとしているその姿勢もいただけませんわ。
そこで改めまして、申し訳ないのですが、今回のご相談についてはお断りをさせていただきたいと思います、とお伝えしましたのよ。
そうしましたら、それでお相手の方にまた火がついてしまいましたの。
「詐欺師とか訴えるとか、気にしてます? あんなの冗談に決まってるじゃないですか」
「頭固すぎるでしょ。そういう頭の固さで人を不愉快にさせてるって自覚ある?」
「書くしか能がないのに何を偉そうなこと言ってんだ。文句を言わずに書け」
お言葉遣いもどんどん悪くなられて、人が豹変していく様子を文章でまざまざと見せつけられているかのようでしたわ。
どうしたものかしらとかなり悩みましたけれども、「セールスライティングはビジネスにおいて重要な意味を持つものです。これから自社の商品を売ろうというときに、詐欺師の疑いがかかった者にセールスライティングを任せるのは縁起が悪いとお感じになる方も社内にはいらっしゃるのではないでしょうか」というようなことをお伝えしましたら、それ以降、メッセージは届かなくなりましたの。
このお方との数日間は本当に生きた心地がしませんでしたわ。
【反省点】
なし。
【教訓】
どれだけひどいことを言っても冗談で済まそうとする人間とは関わらない。
絶対に謝罪しようとしない人間とも関わらない。
●間違いなくファンではないのにファンだと言い張る女
わたくしの周りのフリーランスライターの皆様は何かしらのSNSをおやりになっていたり、ご自身のブログやサイトをお持ちになっていたりするのですが、実はわたくしはそういったものを一切しておりませんの。
クラウドソーシングサイトにニックネームで登録しているだけで、お受けするご依頼も完全な無記名の記事やゴーストライティングのみですのよ。
当然、実績やポートフォリオもない状態ですので、完全な無名のフリーランスライターということになりますわね。
「○○というニックネームでライターをしている」というお話をどなたかにしたこともありませんので、わたくしがライターをしていることを知っているのはわたくし自身とクラウドソーシングサイト、過去のお取引相手だけということになりますわ。
そんなわたくしのもとへ、見知らぬご婦人から突然このようなメッセージが送られてきましたのよ。
「あなたのファンです。ぜひあなたに書いていただきたいものがあります」
わたくし、メッセージの送信先をお間違いになっているのだと思いまして、その旨を返信しましたけれども、お相手の方は送信先は間違えていない、間違いなくわたくしに向けて送ったメッセージだ、とおっしゃいますのよ。
無記名の記事やゴーストライティングのご依頼のみをお受けしているわたくしに、ファンの方がいらっしゃるわけがありませんわ。
その旨をお伝えしましたけれども、それでもファンだとおっしゃいますのよ。
ただ、お伺いする限り、過去のお取引相手からのご紹介でもないようでしたので、「何がきっかけでファンになってくださったのでしょうか?」とお尋ねしましたの。
そうしましたらね、お相手の方、「そんなことどうでもいいじゃないですか」と、ごまかすようにご相談内容のお話をされましたのよ。
気持ちが悪いとは思ったのですけれども、一応そのまま詳細をお伺いしまして、具体的なお見積りのお話になったときのことでしたわ。
お相手の方の狙いがわかりましたのよ。
「何度も言いますけど、私、本当にあなたのファンなんです。なので、ファンだからこそのサービスとか割引とかないですか?」
今までもサービスや割引をご希望の方はいらっしゃいましたけれども、ここまで露骨な嘘をついてまでという方は初めてでしてよ。
当然、お断りをさせていただきましたけれども「そこを何とか」と、しつこくメッセージが送られてきましたわ。
あまりにもしつこいものですから、それならばと「本当にこちらで対応できる内容のものなのかを確認させていただきたいので、先に資料等を拝見できますか?」とお伝えしましたの。
お相手の方は出し渋る様子がありまして「怪しいですわね……」と思っておりましたけれども、どうにか資料データを添付してくださいましたわ。
ただ、そのデータを確認して驚きましたの。
なぜかと申しますと、2000文字でご相談いただいていたはずですのに、実際のご依頼内容は7000文字でしたのよ!
お見積りが全然違ってきてしまいますわ!
最初からごまかすおつもりだったのでしょうね。
けれども、わたくしは淑女として落ち着いて冷静に、そして上品にお尋ねしましたの。
「2000文字でご相談いただいておりましたが、今回は7000文字のご依頼ということでお間違いないでしょうか?」
わたくしがお送りしたこのメッセージを最後に、このお相手の方からはお返事をいただけなくなってしまいましたわ。
せっかくファンだとおっしゃっていたのに、寂しいですわね。
【反省点】
あり得ないのに一瞬でも「ファン」という言葉に反応してしまった点。
【教訓】
嘘つきとは関わらない。
文字数をごまかして安く済ませようとする人間もいる。
●特殊能力を持つ女
10年以上前でしょうかしら。
特殊能力を持つというご婦人からご相談をお受けしたことがありますのよ。
どのような特殊能力かと申しますと、人の心が読めるという能力なのだそうですわ。
面と向かってお話をしているときはもちろん、メールでのやり取りなど遠隔でも常に相手の心が読めてしまうということでしたの。
ご相談をお受けしたときに「こちらの心も常に読まれてしまうのですか?」とお尋ねしましたところ、「おっしゃる通りです。私に嘘をつくことはできません」というようなお返事をいただきましたわ。
わたくし、「このような機会は二度とないですわね!」とドキドキしてしまいまして、そのまま心を読まれてしまうことを承知でお話を進めることにいたしましたの。
ただ、お相手の方、そもそものご依頼内容がお決まりになっていないようですのよ。
「健康に関する記事にしようかな……いや、グルメに関する記事にしようかな……いやいや、やっぱりおすすめの美容アイテムとか紹介したほうがいいかな……」
お話がまとまりそうになってもすぐに振出しに戻ってしまうといった具合でして、記事のジャンルすらお決まりになりませんのよ。
延々とそれが繰り返されるものですからわたくしもお付き合いするのに疲れてきてしまいまして、途中からお断りさせていただこうかと考えておりましたの。
「はっ! もしかしたらこう思っていることもすでに読まれているのかしら……」と心配になりましたけれども、お相手の方はわたくしの心については一切触れられませんでしたのよ。
おそるおそる「ご依頼内容がお決まりになってから、またご相談いただければと思うのですが、いかがでしょうか?」とご提案いたしましたところ、「えっ、何でですか?」とおっしゃいましたわ。
思わず「人の心が読めるのではないですか」とお尋ねしたくなりましたけれども、それをぐっと堪えまして、ご依頼内容がお決まりになってからのほうがお見積り等もスムーズである旨をお伝えしましたら、お相手の方もご納得いただけたようでしてよ。
別に何をされたというわけでもないのですけれども、わたくしの疲れた心の声はお相手の方に届いていましたかしら……と今でも気になっておりますの。
【反省点】
もう少し付き合ってみてもよかったかもしれない点。
【教訓】
世の中にはいろんな人がいる。
●悪意を持って人を傷つける言葉を選んだ母親
あるとき、子育て中だというお母様からご相談をいただきましたの。
お子様が通っておられる塾で保護者様向けの課題が出されたのでそれを手伝ってほしい、ということでしたのよ。
その課題というのが「絵本について保護者視点で感想をまとめる」というものでして、絵本については指定はないとのことでしたわ。
お母様がどの絵本を選ぶかというところから一緒に考えてほしいとおっしゃいますので、わたくしもお付き合いすることにいたしましたの。
ただ、そのお方、お話になりたいことがたくさんおありになるようで、絵本をお選びにならなければいけませんのに、とめどなくいつまでもご自分語りをされますのよ。
ご結婚前のお話からご結婚後のお話まで、お話の途中ではわたくしへの謎のアドバイスも挟まれてきますものですから、本当に大変でしたわ。
ようやく本題の絵本のお話に戻りまして、わたくしが定番の絵本作品の中からいくつか候補を挙げてまいりましたところ、そのうちのひとつがどうやらそのお方にとっての危険なスイッチだったようですのよ。
ちなみに、わたくしも大好きな某あおむしの有名作品ですわ。
その作品の名前を挙げたところ、お相手の方が豹変してしまいまして、このようなメッセージが送られてきましたのよ。
「はぁ? 私、虫嫌いなんですけど。それくらい言わなくても察するもんでしょ。もういいです。あなたみたいな人じゃなくて、常識のある真っ当な『家族を持っている人』に頼みますから」
わたくし、このメッセージを拝見して、本当に悲しい気持ちになりましたの。
わざわざご自身で強調されているわけですから、悪意を持って、人を傷つけるための言葉を選びになっているわけでしょう?
世の中には不妊治療をされている方もいらっしゃいますし、ご事情があってお相手がいてもご家族になれないという方もいらっしゃいますわ。
それにご家族と呼べるようなお相手がいないことで思い悩んでいるという方もいらっしゃるはずですわよね。
そう考えますと、このお方のご発言は人様の命を奪いかねないものだと思いますのよ。
こういった言葉をお選びになる方が子育てをされているのですわね……と思いますと、やはり胸が苦しくなりましたわ。
いじめ問題をはじめ、今の世の中で問題になっているありとあらゆるものがこちらに凝縮されているような気がいたしますわね。
【反省点】
なし。
【教訓】
世の中は理不尽に満ちている。
●なぜか戸惑う男
とある殿方から、動物の記事を書いてほしいというご依頼をお受けしましたの。
「今回は犬について書いてください」という明確なご指示がありまして、その他の構成面でもしっかりとお打ち合わせをしまして、お取引を開始しましたわ。
お取引開始後、書き上げた記事を納品させていただいたところ、なぜかお相手の方の反応が芳しくありませんのよ。
情報に不足があるか、情報に間違いがあるか、修正箇所があるか……もう本当に思いつく限りのことをお尋ねしましたけれども、お相手の方は「別に……」と某有名女優のようなお返事をされるだけでしたの。
最終的には、このように本音をお話しくださいましたわ。
「よくわからないけど、なんとなく気に入らないんですよねぇ~」
お相手の方、お取引完了に向けてのお手続きを進めるご様子もございませんでしたので、それならばとキャンセルと申し出ましたところ、すんなりと受け入れてくださいましたのよ。
ある意味、誘い受けですわね。
キャンセルが成立しまして、わたくしもこのお取引についてはさっさと忘れてしまいましょう、と思っていたのですけれども、そのお相手の方、お取引のキャンセル成立後、ご丁寧にもメッセージをお送りくださいましたのよ。
「キャンセルはしましたけど、お支払いするつもりはあったんですよぉ? でもぉ~正直、犬について記事を書くとは思ってなくてぇ……僕、戸惑っちゃってぇ~……」
わたくし、思わずこのメッセージを二度見してしまいましたわ。
ご相談の段階で「犬について書く」という明確なご指示をいただいた上で、構成面でもお打ち合わせを行っておりましたのよ?
その旨をお伝えしましたけれども、お相手の方からいただけたのはこのようなお返事のみでしたわ。
「キャンセルしないで済むような記事を書けるようになりましょうねぇ~」
このお返事が最後でしたけれども、わたくし、本当に意味がわかりませんでしたわ。
【反省点】
なし。
【教訓】
世の中にはわけのわからない人間もいる。
●絶対にモテない自称モテ男
あるとき、自称モテ男だという殿方からご依頼をいただきましたの。
わたくしも最初はご冗談をおっしゃっていらっしゃるのかと思いましたけれども、ご本人様は至って本気でいらっしゃいましたわ。
ご自身をご自身でどのようにご判断されるかはご自由ですものね。
「世のすべてのモテない哀れな男たちのために、私のようなモテ男が直々にモテるためのテクニックを伝授すべく満を持してセミナーを開講します」というようなことをおっしゃっておりまして、今回はご自身が開講されるセミナーで使う資料を作成してほしいということでしたわ。
他のフリーランスライターの皆様がどのような形でお仕事をされているのかはわからないのですけれども、わたくしは大まかに2つのプランをご用意しておりましたの。
ひとつは「修正対応をしない代わりに低単価のプラン」、もうひとつは「修正対応無制限の高単価のプラン」ですわ。
それとは別に「修正1回○○円」といったオプションのようなものもご用意しておりましたのよ。
プランとオプションについてご説明させていただきました上でご希望をお伺いしましたところ、「お金かけたくないんで、低単価のプランで。修正も自分でしますし、オプションもいらないです」ということでしたのでオプションなしの低単価のプランでお取引を開始することにいたしましたの。
正直なところを申しますとね、本当におモテになる殿方でしたらこういう言い方はなさらないのでは……とは思いましたのよ。
けれども、そこはエレガントにスルーさせていただきまして、お取引開始後、わたくしはすぐに資料の作成に取りかかりましたわ。
資料作成が完了しまして、納品させていただきましたところ、お相手の方、まさかのご発言をなさいましたのよ。
「○○のところと○○のところと○○のところと……(以下略)、今言ったところ、全部修正お願いします」
あまりにも堂々とおっしゃるものですから、わたくし、てっきりお相手の方がご相談時のやり取りをお忘れになってしまわれたのだと思いまして、今回は修正対応のない低価格プランをご選択されており、修正についてはご自身でされるということでオプションもご利用いただいていない旨をお伝えしましたの。
そうしましたらね、このようなお返事をいただきましたわ。
「……あのねぇ、確かに私は修正は自分でするって言いましたけどね、これ仕事でしょ? 依頼者が修正してって言ったら、素直に言うこと聞くのが普通でしょ? プランに含まれてないからやりません、オプションを利用してないから対応しません、なんて通用しませんよ」
わたくし、まぁこのお方をどのようにして差し上げましょうかしらと思いましたけれども、深呼吸をして心を落ち着けましたわ。
お相手の方がご希望されているような対応をしてしまうとそもそものプランやオプションの意味がなくなってしまいますし、今までルールを守ってお取引いただいた方々にも失礼にってしまいますわよね。
そのあたりとやんわりとお伝えしましたけれども、お相手の方にはまったく通じませんでしたの。
改めまして「今からオプション分を追加いただいて、まずは1回のみ修正対応をするという形であれば対応は可能です」とお伝えしましたけれども、お相手の方、このようにおっしゃいますのよ。
「はい? 追加でお金を払えって言うんですか? そういうの、ぼったくりって言うんですよ。悪徳業者みたいなこと言わないでください。そもそもねぇ、私だってそれなりの文章を書く人には最初からそれなりのお金を払うんですよ」
もう本当にわたくし、ため息しか出ませんでしたわ。
「修正1回○○円」というオプションについては事前にご説明しておりますし、具体的な金額も数百円とご依頼内容全体を考えてもかなり控えめに設定をしておりましたの。
その上、それなりのライター様には最初からそれなりのお支払いをされるとおっしゃられるわけですから、わたくしの心もぽっきりと折れてしまいましたのよ。
それで「わたくしではお役に立てないようですので……」とキャンセルを申し出ましたの。
皆様にはお叱りを受けてしまうかもしれませんけれども、わたくし、とにかくこのお方との縁を早くに切りたいと思ってしまいましたのよ。
ですので、全額返金の上、わたくしのほうで作成した資料で使える部分がありましたら、そのままお使いになられても構いませんと、損して得取れの精神でお伝えしましたの。
喜んで受け入れてくださるでしょうねと思っておりましたけれども、お相手の方、なぜかここで急に怖気づいてしまいましたのよ。
「いや、別にそこまでしてほしいわけではなくて……。あなたに悪意がないのはわかりましたから、キャンセルなんて言わないで。ね? 修正もよく考えたら必要なかったですし、このまま平和的にお取引完了といきましょう」
「ね?」じゃありませんわよ!
先ほどまでのあの勢いは何でしたの?
急に怖気づかないでくださいまし!
お気張りになって!
……ただ、お相手の方はなぜかキャンセルだけは避けたいようで、どういうご提案をしてもキャンセルは絶対にしないと頑なになられてしまいましたのよ。
仕方がありませんでしたので、わたくしもそのままお取引を完了させるしかなくなってしまいましたの。
お取引完了後、お相手の方は匿名で最低評価をくださいましたわ。
もちろん、そこには長々とわたくしへの呪いの言葉が書かれておりましてよ。
まぁ、どこが平和的でいらっしゃるのかしら。
「1回くらい修正対応をしてもよかったのでは?」という方もいらっしゃるでしょうけれども、このお方の場合、1回で終わるとも思えませんでしたし、何よりもお選びになる言葉がいただけませんわ。
それから……このお方、間違いなくおモテになるタイプの殿方ではないと思いますの。
【反省点】
なし。
【教訓】
早く縁を切りたい相手に限って、なかなか縁が切れない。
●何かを察した相談員
相談員をしているという殿方からご相談をお受けしたことがございますの。
「女性をターゲットにしているので、女性が集まってくるように自分がいかに魅力的な男であるかをアピールしたい。そのための宣伝文を作ってほしい」というようなことをおっしゃっておりましたわ。
そこからは間髪入れずに、そのお方のご自分語りが始まりましたのよ。
身長、体重、股下、似ている芸能人、学歴、職業、趣味、声質、性格……と、ご自身のプロフィールをお話しされるのですけれども、どうも引っかかりますの。
もちろん、ご本人様のおっしゃるプロフィールが本当である可能性もございますけれども、どうもご婦人方に好まれるような「設定」をお話しになっているような気がいたしますのよ。
こちらからのお返事も待たずに、お相手の方から次から次へと送られてくるメッセージを拝見しながら、わたくし考えましたの。
もし、このお方がお話しされているプロフィールがすべて嘘で、単なる「設定」だったとしたら、それはこのお方がターゲットにされているご婦人方を騙すことになってしまうかもしれませんわよね。
もちろん、世の中には「嘘も方便」という言葉がございますし、「優しい嘘」というものもございますわ。
ご婦人方の中には「相談に乗ってくれるなら喜んで騙されるわ!」という方もいらっしゃるかもしれませんわね。
ただ、どうにもわたくしの中では消化しきれないものがございましたのよ。
長文のメッセージを一方的に何度もお送りになりながらも、お相手の方は「私は本当に優しい性格で、思いやりがあるので……」と、ご自身のことをお高く評価されているわけですから、ご発言に信憑性があるのかというと微妙なところですわね。
そういうこともございまして、わたくしがどのようにお返事をいたしましょうかと悩んでおりましたら、お相手の方、突然「やっぱり今回の相談はなしにしてください」とおっしゃいましたの。
その理由については、すぐにご本人様が教えてくださいましたわ。
「あなたには私の魅力がわからないようなので」
どうやら、わたくし一方的に振られてしまったようですわ。
けれども、そのお察しのよさは魅力かもしれませんわね。
【反省点】
なし。
【教訓】
気づかぬうちに人を騙すことに加担させられている可能性もある。
●謎のセラピスト
これはとても珍しいケースだと思うのですけれども、わたくし、まったく同じ内容のご相談とご依頼を立て続けに5回もお受けしたことがございますの。
最初にご相談いただいたのを仮にA様としましょう。
A様のご相談内容は「Xというセラピストを紹介する文章を書いてほしい」というものでしたわ。
そのX様という方についてお調べしてみますと、X様ご自身で作成されたと思われる自己紹介のページが1件表示されるのみで、それ以外にはSNS等も含めまして一切の情報が見つかりませんでしたのよ。
その旨をお伝えしまして、「現状ですとX様をご紹介する記事を作成するとしても情報源がX様の自己紹介のページのみとなってしまいますので、リライトになってしまうかと思います」とご案内しましたところ、A様は「リライトで構わないので、すぐに依頼したい」とおっしゃいましたわ。
それならばとご依頼をお受けしましたの。
お取引開始後、すぐにリライトのほうを進めまして、納品をさせていただきましたわ。
けれども、納品物にご満足いただけなかったようで、A様は「これじゃ何も変わらない! Xさんをもっと褒めなさい!」とまるでご相談時とは別人のようにすさまじい勢いでメッセージを送られてきましたのよ。
わたくし、A様の剣幕に気圧されてしまいまして、慌ててX様を褒める文章を追加いたしましたの。
例えばのお話ですけれども、X様の自己紹介のページにモデル様のような全身のお写真が掲載されていたとしましたら「モデルのようなスタイルで……」と、ご趣味の欄にお料理と書かれていたとしましたら「その自慢の手料理で周りを笑顔にし……」といったイメージで無難な褒め言葉を書かせていただきましたわ。
それでどうにかご満足いただけたようで、お取引は無事に終了しましたのよ。
A様とのお取引が終了したその翌日のことでしたわ。
今度はB様という方からご相談をいただきましたの。
もうおわかりかと思いますけれど、ご相談内容は「Xというセラピストを紹介する文章を書いてほしい」というものでしたわ。
A様との刺激的なお取引のこともありまして、わたくし、少々疲労感が残っておりましたので、このご相談についてはお断りをさせていただきましたの。
B様はご不満をお漏らしになられましたけれども、一応、わたくしがお断りすることについては受け入れてくださいましたわ。
さらにその翌日、C様という方から同じ内容でご相談をいただきまして、その翌日にはD様という方から、もひとつおまけにE様という方から……という具合でしたのよ。
ちなみに、A様、B様、C様、D様、E様の5名様については性別も年代もバラバラでございましたけれども、少々エキセントリックな印象をお受けしました点については共通しておりましたわね。
そういうわけでして、このように5日連続で5名様の方々からX様という謎のセラピストについて、まったく同じ内容のご相談とご依頼をお受けしたという実に奇妙な出来事でしたのよ。
X様ご自身が複数のアカウントを操られていたのか、それともX様のファンの方々が有志で行っておられたのかはわかりませんわ。
ただ、なぜわたくしだったのでしょう……。
【反省点】
なし。
【教訓】
よく知らない人物についての相談や依頼は安易に受けないほうがよい。
世の中にはすさまじく熱心な人もいる。
●突然、小学生になった女
ある日、クラウドソーシングサイトを初めて利用するというご婦人からご相談をお受けしましたの。
「初めてなので、何か失礼があったらごめんなさい」とおっしゃっておられまして、まぁ今時珍しく丁寧な方でいらっしゃいますわね、とわたくしもすっかり安心しておりましたわ。
ただ、お話を進めていけば進めていくほど、ご依頼内容が二転三転してしまいますのと。
最初はペットの記事をご依頼されるというお話だったはずなのですけれども、それが保険の記事に変わり、さらにそれが投資の記事に変わり……と、わたくし、改めまして数えてみましたけれども、10回も記事の内容が変わっておりましたのよ!
ああ、このままでは終わりのない輪舞曲に巻き込まれてしまいますわ……どうしましょう……と、思案しておりましたところに、わたくしのお祖母様から連絡が入りましたの。
「ポチが逃げた。探すのを手伝ってくれ」
ポチはお祖母様のお家で飼われているお犬様のことでしてよ。
「渡りに船ですわ!」とわたくし、ポチとお祖母様に深く感謝いたしましたわ。
わたくしは一旦席を外すための正当な理由を手に入れたのですもの。
さすがに犬を探しに行くという理由についてはお伝えしないほうがよろしいかと思いまして、「こちらの都合で申し訳ないのですが、これから少し席を外します。夜までには戻りますので、お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」という形でお尋ねしましたのよ。
少しお時間を置けば、お相手の方のお考えも整理されるかしらと思っておりましたの。
ただ、お相手の方、わたくしの言葉を婉曲的な拒絶だとお受け取りになったようで、このようにおっしゃいましたのよ。
「私がめんどくさいから取引をキャンセルするってことですか?」
ご自身がご面倒でいらっしゃることは自覚がございますのね……と思ってしまったことはさておき、お相手の方、何か誤解をされていらっしゃるようでしたからクラウドソーシングサイト利用の流れについて簡単にご説明をしました上で「まだご相談の段階でお取引開始には至っていないため、これはお取引のキャンセルではないこと」「ご相談についてもキャンセルではなく、戻り次第、引き続きの対応をさせていただくつもりでいること」をお伝えしましたのよ。
けれども、お相手の方は収まらず「それなら席を外す理由を言え」とおっしゃいますの。
この状況ですと「犬を探しに行く」という本当の理由をお伝えますと、ふざけているのかと逆効果になりかねませんわよね。
かと言って、「家族が体調不良で……」等の真面目な理由をお伝えしても今の状況ではいかにも嘘くさい気がいたしますのよ。
悩みに悩んで、わたくし、結局は本当の理由をお伝えすることにいたしましたの、ポチの写真も添えて……。
けれども、人間の怒りという感情の前にはすべては無に帰すのですものですわね。
「へぇ~え、お祖母様の家がお近くで? たまたまこのタイミングで飼ってる犬が逃げたと? 不思議なこともあるもんですねぇ」
お相手の方はこのようにおっしゃいまして、わたくしの選択は完全に裏目に出てしまいましたわ。
もうこうなってしまっては……と、わたくしが項垂れておりましたら、お相手の方はさらにこのようなメッセージを送られてきましたのよ。
「このこと、言いつけますからね。言いふらしますからね」
きっとクラウドソーシングサイト側に言いつけて、周りのご友人方に言いふらすというという意味なのでしょうけれども、わたくし、こういった表現を見聞きするのは本当に小学生以来でしたの。
きっと童心にお返りになったのでしょうね。
ちなみに、その後、本当にポチを探す手伝いに行ったわたくしは当時嗜んでおりました某SNSでポチが見つかるまでの実況中継のようなものをさせていただきましたのよ。
お相手の方が少しでも信じてくださればと思ったのですけれども、残念ながらお相手の方とはそれっきりでしたわ。
【反省点】
3回目の記事内容の変更あたりで依頼内容の整理を促しておけばよかった点。
【教訓】
嘘みたいな出来事は実際にあるが、信じてもらえない可能性のほうが高い。
今の時代は幼稚な大人が増えている。
●逃げ出した女社長
あるとき、「女社長をしております」というご婦人からご相談をいただきましたの。
「私のことはこちらでご確認ください」とご案内いただいたのが某有名SNSのアカウントでして、そこではまぁ贅沢三昧されている様子を自慢げに頻繁に更新されておりましたわ。
正直なところ、あまり品のよろしい方だとは思いませんでしたけれども、お仕事ですものね……と割り切ってやり取りをさせていただきましたの。
肝心のご相談内容なのですけれども、「とあるテーマについて、顔と本名を出した上で記事を寄稿してほしい」というものでしたのよ。
そのテーマについては十分に対応可能だったのですけれども、わたくし、事情がありまして顔や本名を出しておらず、これまでもそういったご相談やご依頼はすべてお断りしておりましたの。
その旨をお伝えしましたら、お相手の方、「顔と本名を出すことは必須ではないので、どうしても記事の寄稿をお願いしたい」とおっしゃいましたのよ。
改めまして、本当にそれで問題がないのかをお尋ねしまして「まったく問題ない」とお答えいただけましたので、ご依頼をお受けして、お取引を開始いたしましたわ。
納品後、記事についてはとてもご満足いただけたようで、お褒めの言葉もたくさんいただきましたのよ。
ああ、気持ち良くお取引を終えることができますわね、と思っておりましたら、お取引終了後に最低評価が送られてきましたの!
そのコメントには「顔も名前も出してくれなかったので」というようなことが書かれておりましたわ。
さすがにこれは……と思いまして、お相手の方にメッセージをお送りしましたのよ。
そうしましたらね、お相手の方、このようにおっしゃいましたわ。
「記事は本当に100点満点なんですよ~。いや、120点くらい? 本当に素晴らしい記事でありがたいんですけど、やっぱり顔と本名を出してもらえないのがちょっと。記事が100点、120点でも、顔と本名を出してもらえないので0点ってところですかね」
もうわたくし、本当に腸が煮えくり返るような思いがしまして、「事情があって顔や本名を出しておらず、それを理由に一度お断りしたはずであること」「『顔と本名を出すことは必須ではない』とおっしゃっていたこと」「最後に本当に問題がないのかをお尋ねして、『まったく問題ない』とお答えいただいて、お取引を開始していること」をお伝えしましたの。
それから、わたくしの事情についてもお話をさせていただきましたわ。
わたくし、わかりやすく申しますと顔に目立つ大きな特徴がございますのよ。
例えば、痣があるだとか、傷があるだとか、そういったものだとお考えいただければ問題ありませんわ。
それで過去に嫌な思いをしたことがございまして、顔も本名も出さないようにしておりましたの。
「最初からこの事情を詳しく話しておけばよかったのでは?」というご意見もあるかとは思うのですけれども、事情をお話しするとそこからさらに根掘り葉掘りお尋ねされることも多くございましたので、基本的に「事情がある」という表現でご理解いただける方とのみお取引を行っておりましたのよ。
そういうことをすべてお伝えした上で「こういった事情があったとしても、記事の内容に関係なく顔と本名を出さなければ0点というお考えなのでしょうか?」とお尋ねしましたら、ご都合が悪くなってしまわれたのでしょうね。
お相手の方、そのままアカウントを削除してしまいましたのよ。
できれば評価についての取り消し等のお話し合いをしたかったのですけれども、本当にひどいお方ですわ。
【反省点】
最初から詳しい事情を話しておけばよかったかもしれない点。
【教訓】
自慢げにSNSを見せてくる人間はろくでもない。
社長など立場のある人間はむちゃくちゃなことを平気で言ってくることが多い。
直接取引編
クラウドソーシングサイト以外に、直接取引を行っているというフリーランスライターの方もそれなりにいます。
ライターを募集している求人情報を見つけて応募したという方もいれば、自分のサイトやブログなどに問い合わせフォームや連絡先を掲載しておき、そこからの相談や依頼に対応しているという方もいました。
依頼内容や取引条件等を双方で確認して問題がなければ取引を開始する、という基本的なところはクラウドソーシングサイトとの取引と変わりませんが、支払いのタイミングや契約書の有無等の部分で違いが出てきます。
クラウドソーシングサイトではどうしてもかなりの手数料を引かれることになるため、直接取引のほうがよいという方も多いのですが、直接取引だからこそより大きなトラブルに発展したり、より大きなダメージを受けたりすることもあります。
ここでは「直接取引編」ということで、直接取引をした依頼者についてのエピソードをご紹介したいと思います。
●秘書の女と蜜月関係にある企業代表
とある企業の代表をされているという殿方から、新しくインテリア事業を始めるのでインテリア関連の記事を書いてほしいと直接取引のご依頼をお受けしましたの。
ご依頼内容やお取引条件等もしっかりと確認をさせていただきまして、お取引を開始いたしましたわ。
お取引は某有名なチャットツール上で行われまして、そこでは代表の方とその秘書の女性の方、そしてわたくしという3名でのやり取りをさせていただいておりましたの。
基本的には「代表の方がキーワードを選定する→ライターが選定されたキーワードをもとに記事を執筆する→秘書の方が内容を確認する→代表の方が最終確認をして、記事を掲載する」という流れで進めておりましたわ。
しばらくはまったく問題なくスムーズにお取引ができていたのですけれども、秘書の方の何気ないご質問から歯車が狂っていきましたのよ。
ある日、いつものように秘書の方がわたくしの執筆した記事をチェックされていたのですけれども、チェック後に秘書の方がこんなことをお尋ねになりましたの。
「すみません。クッションって何ですか?」
わたくし、最初は本当に何かの間違いかと思いましたのよ。
記事内では確かに「クッション」という単語を使っておりますけれども、ごく一般的な洋風座布団の意味で使っておりましたし、それまでのやり取りの中で秘書の方も当たり前に「クッション」という単語をお使いになっておられましたの。
そのため、秘書の方が「クッション」という単語をご存じないはずはありませんのよ。
ですので、今までのやり取りで使っていた「クッション」と同じ意味である旨をお伝えしましたけれども、秘書の方はこのようにおっしゃいましたわ。
「クッション……私が知らないだけでしょうか? 一般的に使われる言葉なのかわからないので修正してください」
ただ、「クッション」は一般的にも使われている言葉ですし、そもそも記事の内容を考えますと「クッション」を修正してしまうと逆に違和感が出てきてしまいますのよ。
それに、このお取引は「低単価で大量に執筆をする代わり、修正対応は依頼者側が行う」という契約内容でお話を進めておりましたの。
その旨をお伝えしましたところ、一旦このお話は終わりになりましたのよ。
結局、その記事は修正されずにそのまま掲載されたのですけれど、秘書の方とのこの一件以降、ご依頼主である代表の方のほうがわたくしに対して、ひどく理不尽なことをおっしゃるようになりましたの。
例えば、代表の方から「ルームシューズについての記事をこのキーワードで書いてほしい」とご指示がありましたので、その通りに記事を執筆しましたら「僕、ルームシューズなんて言いましたっけ? いつ言いました?」とおっしゃられる……といった具合ですわ。
ツール上にそれまでのやり取りの履歴がしっかりと残っているのに、そういったことを平然とおっしゃいますのよ。
そういったことが続きまして、そのうちご依頼はぱったりと途絶えてしまいましたの。
あとになって知ったのですけれども、代表の方と秘書の方というのがいわゆる「ただならぬ関係」にあったそうで、某SNSでは人目も憚らず、毎日のようにお互いのことをべた褒めし合っていたのだそうですわ。
おそらくですけれども、愛する秘書の方のプライドをわたくしが傷つけてしまったことが代表の方のお気に障ったのでしょう。
お二方についてはどうぞ、公私混同で一生乳繰り合ってくださいまし。
それにしても、つい先ほどまで通じていた言葉が突然通じなくなるというのは本当に恐ろしいことでしたわ……。
【反省点】
なし。
【教訓】
仕事とプライベートの線引きもできず、好きな女にナイト気取りをかます男とは関わらない。
●数百円の記事のために自腹で全国を回れと言った士業の男
これはわたくしが駆け出しだった頃のお話ですわ。
士業の殿方からのご依頼でして、わたくしの記事を気に入っていただけたようで、毎週定期的に執筆をさせていただけることになりましたの。
確か、観光スポットに関する記事のご依頼だったかと思いますけれど、本当に良好な関係を築きながらお取引ができておりましたのよ。
記事の内容についても褒められることが多く、わたくしもやりがいを感じながら日々頑張って執筆をしておりましたの。
ただ、それは本当に突然のことでしたのよ。
前日までいつものように和やかにやり取りをさせていただいていたのですけれど、その翌日、本当に突然にお相手の方が別人になってしまったのではないかと思うくらいに激しく責め立てられましたの。
「あなたの記事のせいでサイトの順位が下がりました。わざわざこちらで大金を払って、専門家に調べてもらいました。あなたの記事にはオリジナリティーがありません。オリジナリティーってわかります? オリジナリティーのある記事ってのは、僕が書いているような記事のことを言うんです。そもそも記事を執筆することの意味、わかってます?」
だいぶまろやかに、端的に表現していますけれど、こういった意味合いのことがとてつもない長文で、それももう本当にすさまじい勢いで送られてきましたのよ。
「とにかくお前のせいでお金がかかった」ということを強調しておられましたわ。
当時のわたくしは今ほどの知識はありませんでしたけども、それでもツールでチェックはしておりましたし、何よりもわたくし、毎回記事に問題がないか、改善点はあるかといったこともお尋ねしていましたの。
そのたびに「オリジナリティーもあって本当に素晴らしいクオリティーなので、このままで」とおっしゃっておられましたのよ。
前日まで良い良いと言われていたものが、次の日には突然悪いと言われて、わたくしも本当に困惑しましたわ。
どういたしましょうと思っておりましたら、お相手の方がこのようにおっしゃいましたの。
「でも、あなただって仕事はほしいですよね? そのためには、僕のようにオリジナリティーのある記事を書いてもらわないと。とりあえず、オリジナリティーを出すために自腹で全国を回ってください。現地取材でもすれば、嫌でもオリジナリティーが出るでしょ」
ちなみにわたくし、この頃は文字単価が0.1円等で1記事あたり数百円で執筆をしておりましたのよ。
その数百円のために、わたくしは北は北海道、南は沖縄まで自腹で行けと言われたわけですわ。
ここまで来るともう恐怖ですわよね。
もちろん、わたくしをやめさせるためにそうおっしゃったのでしょうけども、あの豹変っぷりは衝撃でしたわ。
今思えば、某検索エンジン様のコアアルゴリズムアップデートで順位が思わぬ形で変動して、その八つ当たりだったのでしょうね。
【反省点】
駆け出しの頃ゆえに確かにリサーチ不足があったかもしれない点。
【教訓】
人はある日突然、豹変する。
昨日まで白だったものが、今日になって突然黒になることもある。
●LINEをしていないというだけで仕事を切った写真修正業者
いつの頃でしたでしょうか。
写真修正を専門に行っているという業者の方からご依頼をお受けしましたの。
気に入っていただけましたようで、毎月という形でご依頼をいただくようになりましたのよ。
ただ、お取引の回数を重ねるごとにそのお方がじわじわと距離を詰めてくる感じがありましたのよね。
最初はメールのやり取りも業務に関するものだけだったのですけれど、そのうち、プライベートなお話が1割ほど混ざるようになりまして、それが2割になり、3割になり……と気づけば、最後のほうは半分以上がプライベートなお話になっておりましたの。
業務連絡も兼ねてのご連絡ですからそこだけをスルーするわけにもいかず、わたくしもどうしたものかと考えておりましたのよ。
そんなある日、とうとうLINEのグループに誘われてしまいましたの。
「一緒に盛り上がっていきましょう!」
ライブ感あふれるグルーヴですわね。
このお誘い、お仕事のグループでしたらまだわかるのですけれど、そのグループというのがまさかのご本人様のご家族のグループLINEでしたのよ。
「仕事をしたら家族も同然」ということなのでしょうかしら。
けれども、わたくし、そもそもスマートフォンなるものを持っておりませんの。
いまだに現役のガラケーを使っておりますので、LINEは利用できませんのよ。
その旨をお伝えしましたら、受け入れてはいただけたのですけれど、同時にご依頼もぱったりとなくなってしまいましたの。
おそらくですけれども、今の時代、スマホを持っている方がほとんどですから、わたくしの言う「スマホを持っていないのでLINEができない」という理由をグループに入りたくないがゆえの嘘だとお思いになったのでしょうね。
スマホを持っていないと言うと驚かれることが多いですから、お気持ちはよくわかりますわ。
けれども、ご家族のグループLINEにまで誘ってくださるほどでしたら、わたくしのことをもう少し信じていただけてもよかったのではなくて?
まぁ、これでスマホを持っていたら持っていたで大変でしたでしょうから、やはりガラケーで正解でしたわね。
【反省点】
なし。
【教訓】
仕事でファミリー感を出してくる人間は警戒する。
●アイディア絞り出し器扱いされた某大手新聞社運営のメディア
あるとき、大手のメディアがライターを募集しているということでわたくしも応募させていただきましたの。
応募後、すぐに採用となりまして、1年間の契約で契約書を交わすことになりましたのよ。
そのメディアでは先にライターがアイディア出しをして、その中から担当者が執筆させる記事を決めるという形になっておりましたわ。
最初は和やかにやり取りができていたのですけれど、あることがきっかけで担当者の方の対応が変わってしまいましたのよ。
そのあることというのは、わたくしが契約書の送付についてお尋ねをしたことですの。
というのも、契約書が届くと言われていた期日を1週間以上過ぎても一向に契約書が送られてきませんでしたのよ。
もしかしたら郵便事故等の可能性もあるのでは……と心配になりましてお尋ねをしましたの。
そうしましたら、どうやら単純に担当者の方が忙しくて送付をお忘れになっていたようでしたのよ。
おそらく忙しいときに催促をされたという風にお受け取りになったのでしょうね。
それ以降、メールでのお返事がひどく冷たくなってしまわれたのですわ。
できるだけいろいろな切り口で執筆できるようにアイディア出しを頑張っても「出したアイディアを全部書けると思うな」というようなことを言われてしまいますし、そのうち、わたくしが出したアイディアそのものが「ネガティブでこのメディアに相応しくない」というようなことも言われるようになってしまいましたの。
確かに、わたくしが根暗であることは否定できませんけれども、きちんとメディアの傾向も考えながらアイディア出しをしておりましたのよ。
それで具体的にどういった部分がネガティブに受け取られてしまうのか、どのように改善すればいいのかといったことをお尋ねしましたけれども、「ハッピーになれるような前向きな内容」「ポジティブな内容」と曖昧すぎるご回答しかいただけませんでしたの。
ただ、そのうち、おかしなことが起こるようになりましたのよ。
わたくしの出したアイディアがボツになったあと、そのアイディアとまったく同じ内容の記事が新しい記事として公開されるということが続きましたの。
どうやら、「わたくしがアイディア出しをする→ネガティブだとボツにする→ボツにしたアイディアを他のライターに書かせる」ということが行われていたようですわ。
わたくし、アイディア絞り出し器ではございませんのよ。
その旨を担当者の方にお伝えしましたけれども、ご回答はいただけず、その後、1年間の契約だったはずなのに一方的に数か月で契約を打ち切られてしまいましたわ。
これはあんまりではと思いまして、運営元である新聞社のほうにも問い合わせをさせていただきましたけれども、一切無視でございましたのよ。
このようなことをしておられるから、メディアは信用をなくすのではなくて?
【反省点】
なし。
【教訓】
大手だからきちんとしているなどと思ってはいけない。
●闇落ちしたプログラマー
ずいぶんと昔のお話になってしまうのですけれど、プログラマーの方からSNSやブログのいわゆる「中の人」をしてほしいというご依頼をお受けしたことがございましたの。
もともとお相手の方とはある程度の期間、別のお取引をしておりまして、わたくし、お相手の方のことを完全に信用しておりましたし、信頼もしておりましたの。
年単位の継続した直接のお取引ということで新しくきちんと契約書を交わしまして、その契約書内にも「契約解除の際には3か月前に告知をする」という記載もございましたので、すっかり安心しておりましたのよ。
最初は本当に何の問題もなく進められていたのですけれど、途中、お相手の方が怪我で入院をされたことがありましたの。
入院している間は報酬を払うのが厳しいからと一時的に業務がお休みになりましたけれども、わたくし、お相手の方を本当に信用、信頼しておりましたし、退院後にはすぐに業務を再開するということでしたので、「SNSもブログもここで更新が途絶えてしまうのはもったいないから」と完全な無報酬で、できる範囲でSNSとブログの運用を続けておりましたのよ。
その後、お相手の方が退院されて業務は元通りになりましたけれども、それからほどなくして、お相手の方がこのようにおっしゃいましたの。
「ごめんなさい。やっぱりSNSもブログももうやめることにしました」
ええ、ええ。
こればかりは仕方がないですわ。
ただ、契約解除は3か月前に告知と契約書にありましたので、わたくしも最後までできる限りの更新はさせていただきたいと思います、とお伝えしたのですけれど、それに対するお返事がこちらでしたの。
「いえ、今日で終わりです」
わたくし、信じられなくて契約書のこともお伝えしましたけれど、取り付く島もなく、一方的な謝罪と今までの感謝が送られてきまして、このお方とのお取引は終了しましたの。
さすがのわたくしも、これは落ち込みましてよ。
けれども、このお話、ここで終わりではありませんの。
一方的な契約解除から1週間ほど経過した頃でしたでしょうか。
お相手の方からご連絡がありましたの。
「元気にしてます? 突然ですけど、情報商材とか興味あります?」
もちろん、丁重にお断りさせていただきましてよ。
信用も信頼もしていたお相手の方ですけれども、どうやら闇落ちしてしまわれたようですわ。
【反省点】
相手を信じきってしまっていた点。
【教訓】
どのような相手に対しても「この人は大丈夫」などと思ってはいけない。
●「報酬がほしければ取りに来い」と言った飲食事業者
飲食事業を行っているという方からご依頼をいただきまして、毎月、継続してお取引をしておりましたの。
お相手の方の強いご希望で報酬については後払いでしたけれども、きちんとお支払いをいただけておりましたし、お取引自体もとても順調に進んでいましたのよ。
あるとき、いつものように納品をさせていただきましたらお相手の方が「今、新事業の準備をしていて忙しいので、お支払いが少し遅れます」とおっしゃいましたの。
当時のわたくしはお相手の方をまったく疑っておりませんでしたので、素直にお待ちしておりましたのよ。
ただ、1週間経過しても2週間経過してもお支払いが確認できないものですから、さすがに「お支払いはいつ頃になりそうでしょうか?」とお尋ねしましたの。
そうしましたらね、お相手の方、このようにおっしゃいましたの。
「忙しいんで取りに来てくれます? 取りに来てくれたらすぐに払いますよ」
わたくし、本当に絶望いたしましたわ。
なぜなら、わたくしが北海道にいるとしたら、お相手の方は九州にいらっしゃいますのよ。
お相手の方、それをわかっておっしゃっておられますの。
当時は低い単価でご依頼をお受けしておりましたので、仮に取りにお伺いしたとしてもとんでもない大赤字になりますのよ。
当然、この件については泣き寝入りとなりましたわ。
【反省点】
相手を信じて後払いを受け入れてしまった点。
【教訓】
異常に後払いにこだわる相手は警戒したほうがよい。
おまけ
「クラウドソーシングサイト編」「直接取引編」とエピソードをご紹介しましたが、実はどちらにも共通している、もはや「フリーランスライターあるある」とも言っても過言ではないようなエピソードもたくさんありました。
最後に「おまけ」という形で、それらのエピソードを簡単にまとめておきたいと思います。
●わけのわからない理由での支払い拒否や一方的な減額
●初回お試しで無料にしろと言ってくる
●初回割引ができないなら2回目以降で割引しろと言ってくる
●追加支払いもなしに、追加の作業をさせようとする
●少ない金額の取引ほど、金額に見合わないものを要求してくる
●一度まとまった話を何度も振り出しに戻す
●平気で嘘をつく
●不機嫌アピールのために業務連絡すら無視する
●質問しているのに返事をしない
●都合が悪くなるとただひたすら無視する
●わざわざ「他の人(他社)に頼みました」と報告してくる
●気に入らないと途端に態度を変える
●対応できないと言っていることをあえてしつこく要求してくる
●できないことをできないと断っただけで報復行為
●断っているのにあまりにもしつこいからと見積りを出したら音信不通になる
●急ぎの仕事でライターを一方的に急かす癖に自分は連絡も対応も遅い
●最初から金額がわかっているものに対してわざわざ「高い」と文句だけ言いに来る
●最初からフリーランスライターを見下しているため、一貫してすさまじく偉そう
●大手の企業に勤めているというだけで企業代表のような振る舞いをする
●書いてあることを読まない、理解する気もない
●一切言葉にしなくとも察してもらえて当たり前と思っている
●まともな取引がしたいからと注意書きを増やすと、その網の目を潜り、無駄にとんちを利かせてくる奴が出てきて、いたちごっこになる
●納品物に不満があったその瞬間から「わざと無視する」「すべてにおいて一番迷惑のかかるやり方を選ぶ」「好き放題、嫌味や文句を言う」などライターの人権を無視し始める
●おわりに
笑えるものから結構シビアなものまで、いろいろなエピソードをご紹介しました。
世の中には本当にいろいろな人がいるものです。
普段からおかしな人がおかしな言動をとることは別におかしなことではないのですが、恐ろしいのが普段は普通に見える人でも裏ではこういうことをしているということです。
もちろん、実害がなく、笑い話で済むなら問題はないでしょう。
ただ、実際には何かしらの実害が発生していることが多いのです。
「多少のことをして騒がれてもフリーランスなら大した問題にはならないだろう」というような思いがあるのか、そういう思いすらなく人としての何かが欠如しているだけなのか、私にはわかりません。
「きちんと正規の金額を支払ってもらえる」「約束や期日を守ってもらえる」「連絡に対する返事がある」「質問に対する回答がある」「認識の齟齬があっても感情的にならずにすり合わせができる」……フリーランスライターの私たちが求めているのは、こういったごく普通の、当たり前のことです。
人間ですから、たまたま体調が悪かったり、嫌なことが続いて機嫌が悪かったりして、刺々しくなることもお互いにあるでしょう。
それでも人としての感謝と謝罪を忘れず、思いやりを持ってお互いを尊重することができれば、フリーランスに限らず世の中の仕事というのは平和に回っていくのではないでしょうか。
最後に、取材にご協力いただいたフリーランスライターの皆様に感謝申し上げます。
