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『鳳雛竜胆の花が咲く時』外伝拾遺:【霊香詩筵現代譚】4,夏光の奔りて 詩声応ず

澄音が吟ずる。

春盡香山衣影新
白雲流處夏光臻
人間一瞬天長在
寂寞風聲入夢深

 書き下し文

春盡(はるつ)きて 香山(かぐやま)に 衣影(ころもかげ)新たなり、 白雲流るる處(ところ)に 夏光(かこう)臻(いた)る。 人間(じんかん)の一瞬 天長(てんちょう)に在り、 寂寞(せきばく)の風聲(ふうせい) 夢に入りて深し。

大意

春が過ぎ、香具山に干された衣が新しい季節の光を受けて白く輝く。 流れる雲の向こうに夏の気配が満ちてゆく。 人の生は一瞬にすぎぬが、天の時は永遠に続く。 その静けさの中、風の音が夢へと溶けていく。

遼香が唱和する。

香山千載衣光續
白雲無心夏影融
人世夢中花自落
風聲猶記古詩同

 書き下し文

香山(かぐやま) 千載(せんざい)にして 衣光(ころもひかり)續(つづ)く、 白雲 無心にして 夏影(かえい)融(と)く。 人世(じんせ) 夢中にして 花自(みずか)ら落つ、 風聲(ふうせい) 猶(なお)記す 古詩の同じきを。

大意

香具山の衣の光は千年を経ても続き、 白雲は心なく流れながら夏の影に溶けていく。 人の世は夢のように花が散るが、 風の音は今も昔の詩を語り続けている。

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