第61回理学療法士国家試験直前予想問題:緊張性気胸とショック
今回は緊張性気胸とショックについて、予想問題を提示します。昨年の直前予想で緊張性気胸を予想したんですが、60回午前2・3では肺炎→気胸についての臨床問題(3点問題)がでましたね。
次は緊張性気胸がでないかなと思っています。緊張性気胸は胸部外傷の後に稀にみられる合併症ですが、理学療法の世界ではCOPD患者さんが、運動療法中にいきんだ後に合併するシチュエーションが適当かもしれません。そういう意味で臨床問題が設定する可能性があるのではないでしょうか?
昨年も予想問題を提示しました(60回直前予想問題を参照ください)が、注意喚起のため、ここでもう一度提示いたします。
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【予想問題 (1)】COPD 患者でリハビリ中に息こらえをした後、右胸痛と呼吸苦を訴えた。SpO2 は 85%に低下。胸部レントゲンと CT を示す。考えられるのはどれか。

1. 心筋梗塞
2. 肺血栓塞栓症
3.自然気胸
4.肺炎
5.大動脈解離
【予想問題 (2)】この患者がしばらくすると血圧が 70/30mmHg に低下し、ショック状態になった。このようなショックを何というか。
1.心原性ショック
2.循環血液減少性ショック
3.血液分布異常性ショック
4.神経原性ショック
5.心外閉塞・拘束性ショック
【予想問題 (3)】の状況で身体所見としてみられる可能性の低いものはどれか。
1.右胸郭の膨隆
2.頚静脈の虚脱
3.打診で右鼓音
4.右呼吸音低下
5.チアノーゼ
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予想問題 (1)の答え:3 自然気胸です。気胸には、外傷による気胸と、外傷がなくても起こる気胸がありますが、外傷によらないで起こる気胸を自然気胸といいます。

予想問題 (2)の答え:5
緊張性気胸は国試未出です(出題されても全然おかしくない)。気胸がひどくなると、縦隔が健側に偏位して、上大静脈や下大静脈が折れ曲がって、静脈血が心臓に戻ってこれなくなって、血圧が下がりショック状態となります。静脈が折れ曲がる=心臓の外で血管が閉塞するので「
・拘束性ショック」と呼ばれます。空気で心臓が圧迫されてショックになるのではなく、上大静脈や下大静脈が折れ曲がって血管が閉塞する事に注意してください。

予想問題 (3)の答え:2
上記のように緊張性気胸では上大静脈と下大静脈が折れて閉塞します。
その結果、以下のような変化となります。
心拍出量---------------------減少
脈拍--------------------------減弱
脈拍数------------------------頻脈
頚静脈------------------------怒張
皮膚の温度--------------------冷たい
皮膚の色----------------------蒼白
皮膚の汗は?------------------発汗
打診---------------------------鼓音
緊張性気胸では、上大静脈や下大静脈の流れが閉塞します。川の流れがせき止められれば、閉塞部位より手前の水位は上昇しますよね。したがって、血液が心臓に戻る手前の頸静脈は血管が張った状態となります。このような状態を怒張といいます。逆に出血性ショックなどの場合は川(静脈)の水位が低下するので、頸静脈は虚脱します。意味がわかれば簡単ですよね?あと鼓音というのは、肺の外、胸腔に空気が充満するので、まるで太鼓の音のようにポンポンと音が響きます。胸郭の膨隆や呼吸音の低下は考えればわかりますよね。
さて、理学療法士国家試験では、上記のようなCOPDから自然気胸、さらに緊張性気胸という設定がもっともスムーズですが、もう一つのシチュエーションとして外傷後の気胸から緊張性気胸となる場合もあります。
以下は外傷後の自然気胸のX線とCTです。

https://www.cell.com/heliyon/fulltext/S2405-8440(24)12036-1

https://litfl.com/subcutaneous-emphysema-case-1/
【X線画像の解説】

胸部X線では自然気胸と同様に、虚脱した右肺と右気胸が見られます。それに加えて、左右の側胸部に皮下気腫のエアーが黒く見えています。大胸筋の線維の間にエアーが入っているのも見えます。
【CT画像の解説】

CT画像でも大きく左に偏位した縦隔と右に皮下気腫を認めます(X線とCTでは違う患者ですので左に皮下気腫は認めていません)。
このように外傷患者では、障害を受けた胸壁も大きくダメージを受けている結果、圧力の上がった胸腔内の空気が皮下に漏れ出してきて、皮下気腫となる場合が多いです(自然気胸でもなり得ます)。
皮下気腫がある場合、皮膚を触診すると、皮下気腫がぷちぷちのように感じられ、医学的には触診で握雪感がある(雪をつかんだ感じ)と表現します。またCT写真もみてもわかるように、気胸となった胸壁が視診で膨隆しているのが見えると思います。また縦隔の偏位は外からはわかりませんが、頚部でみえる気管が対側に偏位しているのが見えます。
外傷の初期診療では、X線やCTなど画像診断を行わず、緊張性気胸を診断する事が求められます。この際に必要な所見は視診・聴診・触診・打診の所見です。医学生や研修医には「見て・聞いて・触って・たたいて」ってするんだよと教えます。それぞれの所見は以下の通りです。
・視診「見て」→胸壁の膨隆・気管が対側に偏位
・聴診「聞いて」→呼吸音の減弱
・触診「触って」→握雪感
・打診「たたいて」→鼓音(太鼓みたいにポンポン音がする)
所見が5つあるので、国試問題にしやすいと感じるのは私だけでしょうか?
この4つの所見にショックの症状(手の冷汗・脈拍が速くで弱い・頸静脈怒張)があれば、緊張性気胸と診断して良いです。
