第58回理学療法士国家試験 午前11-15の解説
11.頚髄損傷患者の起き上がり動作を図に示す。Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類における最も上位の機能残存レベルはどれか。(58回午前11)

1.C5A 2.C5B 3.C6A 4.C6BII 5.C7A
【答え】4
【解説】これは54回午後11と同じ問題です。脊損については、問題のバリエーションが多くないので、過去問をしっかりやっておいた方がよいですね。少なくとも過去問と同じ問題は落としてはいけません。
問題についてですが、図では肘を伸展しています(肘伸展はC7:上腕三頭筋)が、上腕三頭筋が機能していなくても肘伸展はC6でも可能です。というのも、肘を回外し、腕を後ろにもっていくことで、肘を伸展状態にロックすることができます(屈曲位から伸展させるのではありません。伸展位の状態をロックして維持できるという事です)。これは外転位でもできます。C6残存患者がベットに移乗する場合に、肘をロックしてつっぱって移乗する動作をPush Upといいます【重要】。

https://rehazakki.net/2019/03/16/zancoli/
C6Aは手関節の背屈が弱いので、肘をロックするのは難しいです。したがってC6Bですが、肘伸展に関わる(実際はC7の機能)上腕三頭筋が機能していなくても肘のロックは可能ですので上腕三頭筋の機能が必須のC6IIIではありません。また手関節掌屈作用の橈骨手根屈筋も必須ではありません。
しかし、次に説明するように、On Elbowから手をついて、腕を後方に移動させながら、肘を伸ばす際に、どうしても逆に前腕回内・回外が必要になる事から、答えはC6BIIが残存レベルと思われます。
(追記です)
C6残存の時の床からの起き上がりをイメージするには以下の動画がとても参考になります(リハビリシーンを見ると涙が出そうになります)
0:31〜0:40のところが特に参考になります。
まず、手関節回外位でOn elbowとなって肩を持ち上げています。問題の図2も同じ状態です。肘に荷重をかける時は肘頭を下にむけた(前腕回外位)方が荷重をかけやすいですので、前腕回外位は偶然ではなく必然的にそうなっています。

https://youtu.be/3hIfzXrkMxY より引用
ここから体の横に手をついて、後ろに回していきます(最初から後ろにつけません)。荷重をかける部位は手掌側の手根部がかけやすいので手掌側で手をつくことになります(手背側で荷重は無理ですよね)。また手をつく(On hand)際に、手背屈をコントロールする事によって、手首に力が入りますので、手掌を下にして手をつきます。
この手掌を下にして手をつく際に前腕回内の動きが必要になります。
また動画では肘が屈曲位から肘伸展位にできていますが、肘伸展(上腕3頭筋)は本来はC7のkey muscleですので?と思う人がいるかもしれません。実はC6BIやC6BIIではZancolliの表では上腕三頭筋が×となっていますが、C6BIでMMTが0、C6BIIで1〜3,上腕三頭筋が○のC6BIIIでMMTが4〜5という事になっています。
したがって、手を回内しながら後ろに回す動作のときに、弱いながら肘伸展の動きが入っても良いです。ただしC6BIIでは上腕三頭筋のMMTが1〜3なので、そのまま体を持ち上げる事はできません。

https://youtu.be/3hIfzXrkMxY より引用
上腕三頭筋の筋力が弱い場合は、前腕を回内した状態で体の横に手をつき、そこから肘を伸ばしながら、前腕を徐々に回外位にして指先を後方に向け、最終的に前腕を回外位・手関節背屈位でロックして伸ばすようにして固定します。この状態からPush Upして上体を起こすことになります。

https://youtu.be/3hIfzXrkMxY より引用
上記のように、C6残存患者が手すりなしに起き上がる場合、両腕を後ろに回して肘をロックした上でPush Upで起き上がりますが、その過程で前腕を回内する動きがどうしても必要となるのでC6BIIが必要となります。
(このような解説はどこにも書かれていないですね)

https://rehazakki.net/2019/03/16/zancoli/
結局、C6残存でPush UpができるのはC6BIIで円回内筋が作用しなければ不可能なのです【重要】。これADL上とても重要なことなのですよね。
ZancolliのC6分類で、橈骨手根屈筋(手関節掌屈)と上腕三頭筋(肘伸展)は本来C7の機能なのですが、すでにC6BIIIでも可能になってます。C7の機能は肘伸展・手関節掌屈・指伸展です。そしてZancolliのC7の分類は一番末梢の指伸展の機能で分類されています。肘伸展・手関節掌屈はすでにC6BIIIで可能だからです。
このような事を考えると、C6BI・C6BII・C6BIIIの分類方法の原理(理屈)が理解できるのではないでしょうか?ただ単純に分類方法を丸暗記するのではなく、なぜそのような分類になっているかを知る事で長期記憶につながると思います。
ちなみに54回午後12では残存筋肉についても問われています。
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この患者において機能していると推測されるのはどれか(54回午後12)
1.円回内筋 2.深指屈筋 3.上腕三頭筋
4.長母指伸筋 5.尺側手根伸筋
上記の説明から54回午後12の答えは1になります。
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12.5歳6ヶ月の男児。脳性麻痺。歩行補助具を用いず屋外歩行が可能であるが、階段昇降は手すりを必要とする。GMFCSレベルはどれか。(58回午前12)
1.I 2.II 3.III 4.IV 5.V
【答え】2
【解説】脳性麻痺の重症度分類のGMFCSについての設問です。Gross motor function classification scaleの略で、Gross motor function(粗大運動機能)を分類するスケールということになります。
脳性麻痺の重症度分類では以前からあるGMFCSに加えて、最近ではGMFCS-expanded and Revised (第55回 午後 46)、GMFM-88とかGMFM-66 (第54回 午前 36および第56回 午前 31)とかも国試に出題されているので、どれを覚えてよいか迷いますね。一つの疾患で重症度分類を4つも出題するのは本当に酷です。最近はGMFM-88やGMFM-66ばかり出題されていたので、GMFM-88や66を中心に勉強しながら、GMFCSも一応勉強しておくというやり方で勉強していましたが、GMFCSが出たのはちょっと予想外でした。古典的GMFCSのレベルを問う問題が出題されたのは、52回午前43や第53回午前47が最後だったので、実に5〜6年前です。それ以降はずっと新しい分類であるGMFCS-expanded and Revised、GMFM-88とかGMFM-66が出題されていたので、今更古い分類が出題されないだろうと思っていましたが、出題されましたね。まだ受験生はGMFCSもしっかり覚えなければいけないようです。ここは国試直前に集中して取り組んでいたので息子は正解しました。
以下GMFCSのレベルの分類についてのポイントです。

レベルの分類は①歩行と②車椅子の状態で分類します。
レベルIII
まず最初に覚えたいのはレベルIIIで、「歩行・車椅子自立」と覚えるようにしました。車椅子を使うぐらいですから、歩行も杖や歩行器を使っている状態と考えます。歩行の自立は杖や歩行器を使って自立しているという事になります。
次にレベルIとレベルIIを覚えます。レベルIとIIは車椅子でなく階段になります。
レベルI
①歩行については「走れます」
②階段を昇降(手すりなし)
レベルII
①歩行{平地を歩ける)…ただし不整地歩行はレベルIになります。
(国試ひっかけポイント)
②階段昇降(手すりあり)
レベルIV
①歩行は自立せず、介助が必要になる
②車椅子は体幹にベルトが必要、自分で操作可能
レベルV
①車椅子は自分で操作できません
②体幹ベルトに加えて、頭部もベルトが必要
以上から、問題を見ると、階段を上れますが、てすりが必要との事で答えは2となります。
13. 80歳の男性。両膝痛のため、自宅内で自走用標準型車椅子を使用することとなったが、廊下幅が狭く、方向転換ができないと相談があった。現在使用している車椅子で180°方向転換が可能となる最小の廊下幅は何cmか。ただし、使用する車椅子は全幅70cm、全長120cmとする。(58回午前13)
1.90 2.120 3.140 4.180 5.200
【答え】3
【解説】
車椅子とADLの問題です。車椅子で180°転回する場合、全幅ではなくて全長が問題になってきます。
なお車椅子のサイズはJIS規格で全幅が70cm以下、全長と全高が120cm以下と決められています。
180°転回するには全長である120cmより廊下幅が長くなければ車椅子がひっかかってしまいます。この問題は転回が可能となる最小の廊下幅であるので140cmが答えになります。選択肢180cm は長過ぎですよね。ここでは転回できる最小の幅ですので、正解にたどり着きやすく、サービス問題と思われます。
なお一般的には車椅子の転回を普通に行えるには150cmが必要と言われています。

14.42歳の女性。3ヶ月前に手足がしびれるようになり、1ヶ月前から手足の脱力を自覚した。神経内科を受診し慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーと診断され、ステロイド療法が開始された。筋電図検査所見として正しいのはどれか。(58回午前14)
1.誘発筋電図で伝導速度が低下する
2.誘発筋電図でF波の潜時が短縮する
3.針筋電図で低振幅・短持続電位波形が出現する
4.誘発筋電図の反復刺激でwaning (M波の振幅が漸減)を認める
5.誘発筋電図の反復刺激でwaxing (M波の振幅が漸増)を認める
【答え】1
【解説】
誘発筋電図の問題です。末梢神経に障害がおきるニューロパチーと筋肉に障害がおきるミオパチーでどのような変化がおきるかを整理・理解しておかないといけませんね。まとまって説明しているところがほとんどないので、一度整理してみます。
誘発筋電図の問題を解く上で重要なのは①脱髄病変、②軸索変性、③神経原性変化、④筋原性変化の4つの場合での特徴を押さえておく必要があります。
誘発筋電図について
【1】M波、F波
針電極を運動神経が通っているところに刺入して運動神経を刺激し、末梢の筋肉で筋収縮による活動電位(motor unit potential: MUP)を観察します。刺激した場合、まず下図の赤矢印のように順行性に刺激が伝わり筋が収縮した場合、大きな波となり、これをM波(motor/muscle wave)あるいはCMAP 波(compound motor or muscle action potential: 複合筋活動電位)といいます。CMAP波と呼ぶのは、得られた活動電位は単一の運動単位ではなく、遅筋から速筋までいろいろな筋の活動電位を合わせた電位であるからです。
誘発筋電図を見ると、最初に大きなM波が観察されますが、それに遅れて、小さい波が観察されます。これは、青矢印のように刺激部位から逆行性に脊髄まで刺激が伝わり、脊髄の前角細胞が刺激を受け、再び順行性に刺激が伝わった結果、もう一度末梢の筋が収縮する事によって活動電位(MUP)が得られます。この波の事をF波といいます(下図の赤線と青線は同じ1本の運動神経である事に注意してください)。なぜF波と呼ばれるかですが、元々のこの電位は最初に足(Foot)の小さい筋で記録されたため、その頭文字"F"を取って名付けられたそうです(諸説あります)。下図は正中神経刺激で、遠位部は正中神経単独支配の短母指外転筋に電極を置いています。母指内転筋や短母指屈筋は尺骨神経単独支配、母指対立筋は尺骨神経と正中神経の二重支配である事から、正中神経刺激では短母指屈筋が選ばれます(未出題なので今後国試にでるかも?)

誘発筋電図で何を見るかですが、
1.神経伝導速度:活動電位が出現するまでの時間(潜時)
2.活動電位の波の大きさ:振幅→波の縦の幅
3.活動電位の持続する時間→波の横の幅
を観察します。
【2】H波
M波、F波と関連してH波というものがあります。こちらも少し勉強しておきましょう。H波はHoffman's waveといい、Hoffmannは指の病的反射のHoffmann(人名)を指しています。これは感覚神経の伝導が関与した誘発筋電図になります。臨床的意義は何かと言うと、糖尿病性神経障害では運動神経よりも感覚神経の障害が強いため、感覚神経障害の有無を調べるために行います(詳細は国試レベルでは不要です)。
通常は膝窩部に刺激電極を置き、脛骨神経刺激をします。刺激強度が小さい場合、閾値の低いIa感覚線維が興奮し、脊髄で後根から入って、前角細胞にシナプス結合で連絡し、前角細胞のα運動ニューロンを介して、下腿三頭筋を収縮させる時の下腿三頭筋の活動電位を記録します。この時にみられる活動電位をH波と呼びます。

この場合でも、刺激強度を上げていけば、α運動ニューロンを直接刺激する事になり、前述のM波を生じる事になります(同時にIa感覚線維を介した活動電位であるH波も遅れて記録される事になります)。H波とM波が出現する条件では脊髄を介せず興奮するM波がH波に先行してみられる事になります。
【3】感覚神経伝導速度
一般に四肢末梢には運動神経と感覚神経が平行して走行しているため、感覚神経単独で神経伝達速度を検出するのは難しいように思えますが、四肢の先端の指の部分では運動神経がなく、感覚神経のみになるのでこの部分に電極を置いて感覚神経の伝導速度を測定する事ができます(指を動かす筋は指の部分ではすでに腱になっていて、運動神経が停止する筋腹は掌部分に存在しています)。
上肢では正中神経や尺骨神経での測定が行われますが、末梢から中枢にむけての順行性の伝導や、中枢から末梢への逆行性の伝導が測定されたりします。下図には尺骨神経の順行性伝導(感覚神経ですから、末梢から中枢への伝導を測定します)の測定の様子を示します。指の先端で刺激を加えて、手関節および肘関節の2点で検出します。

http://www.medic.mie-u.ac.jp/meduc/text/physiol2003-6.pdf
【誘発筋電図の異常について】
ここからは誘発筋電図の異常について説明します。まず末梢神経障害がおきたときの変化です。ここで注意しなければならないのは、①単純に末梢神経が障害を受けた場合での筋電図と、②それが持続的に起こった末梢神経障害疾患(ニューロパチー)での筋電図の変化が微妙に違う点です。
①末梢神経が障害を受けた場合の筋電図変化
この場合、さらに髄鞘が障害を受けた場合(脱髄病変)と、中心部の軸索が障害を受けた場合(軸索変性)の2つの変化があります。
①-a:髄鞘が障害を受けた脱髄病変
末梢神経の場合、軸索の周辺に髄鞘が取り巻き、軸索を絶縁する事により、刺激が髄鞘をスキップして跳躍伝導します。スキップの足場になる髄鞘と髄鞘の間隙部分をランビエの絞輪といいます。末梢神経の髄鞘が障害を受けることによって、この跳躍伝導が障害され、神経伝達速度が低下(遅くなります)【重要】。

脱髄病変では伝導速度の減少が著しく、正常下限の60-70%に低下する事が多い(潜時が長くなる)ですが、活動電位の大きさ(振幅)は脱髄が進行した場合に低くなります(振幅が小さくなる)。一方、後述する神経原性変化の場合は、逆に振幅が大きくなるので注意してください。

http://nagano1123.livedoor.blog/archives/19907889.html
また末梢神経には伝達速度が速い神経から、遅い神経までいろいろあります。神経束内の脱髄が細い線維(=伝導が遅い線維)に起こると、個々の神経線維伝導速度が大きくばらつくため、時間的分散(分散とはばらつきのことです)が増大し、活動電位の持続が延長します(横幅が長くなるってこと)【重要】。これは遅い線維の伝導がさらに遅くなるため、活動電位の幅が広がる事になります
脱髄病変のまとめ
1.神経伝達速度が低下し、潜時が延長する
2.神経伝達速度の時間的分散が大きくなり、活動電位の持続が延長する
3.活動電位の振幅は変わらないか、進行すると振幅が小さくなる
①-b: 軸索が障害を受けた軸索変性
軸索変性の場合は、髄鞘が障害を受けていないので神経伝達速度は基本的には変化しません。一方、軸索変性の場合は活動電位の振幅が低下します。刺激を伝達する神経線維の数が少なくなるからです。
軸索変性のまとめ
1.活動電位の振幅が低下する
2.神経伝達速度は低下しない
②神経原性変化
神経原性変化は脱髄や軸索変性などの末梢神経障害が持続した結果、それによっておこる変化の事を示します。ここでの要点は、活動電位の振幅が大きくなるという点です。
前述のように末梢神経障害のうち、軸索変性では活動電位の振幅の低下が特徴となりますが、神経原性変化では逆に活動電位の振幅が大きくなります。この軸索変性と神経原性変化での振幅の変化の違いが逆になっているので、ここを理解しているのかどうかが国試的に狙われるポイントになってきます。
ではなぜ神経原性変化では活動電位の振幅が大きくなるのでしょうか?
通常、運動単位は均一ではなく、遅筋から速筋までが混在しています。そして、比較的小さい力ですむ場合は遅筋がまず動員され、大きい力が必要になるにつれて速筋が動員されていきます。誘発筋電図の結果でもこれらすべての筋が動員させる訳ではありません。

ここで、末梢神経障害患者ではこれら運動単位のいくつか支配神経線維が障害を受ける場合、それだけでは、動員される運動単位が少なくなる結果、活動電位の振幅は小さくなりますが、その状態が持続すると、図下のように残った神経線維が、障害を受けて休眠状態になっている運動単位を再び支配するようになります(神経再支配)。
神経再支配の結果、比較的小さい電気刺激でも、すべての運動単位が活動するようになります。この結果、活動電位の振幅が大きくなります。
このように、神経原性変化では末梢神経障害の結果、神経再支配がおこり、活動電位が大きくなる事が特徴です。逆に言えば、活動電位が大きくなる事を指して、神経原性変化と呼ぶのです【重要】。
また再支配のために伸びてきた軸索・髄鞘・神経筋接合部はまだ不安定な状態であるため伝導が不安定で遅くなり、同期性は悪く持続時間が長くなります。
神経原性変化のまとめ:高振幅・長持続電位波形【重要】
1.活動電位が大きくなる【重要ポイント】
2.神経伝達速度は遅くなり(潜時が延長)、活動電位の持続時間も延長
③筋原性変化
最後に末梢神経障害がなく、筋そのものに障害がある場合の誘発筋電図はどのようになるでしょうか?
原則的には神経に障害がないことから、神経伝達速度の低下はありませんが、筋肉量が少なくなるため、活動電位の持続時間が短縮します。また筋自体が障害を受けているので、活動電位の振幅は小さくなります。
筋原性変化のまとめ:低振幅・短持続電位波形【重要】
1.活動電位が小さくなる
2.神経伝達速度は正常
3,活動電位の持続時間の短縮
なお連続刺激をした場合は
重症筋無力症ではWaning (漸減)
Lambert-Eaton症候群ではWaxing (漸増)
現象が見られます。これも対比で覚えておいてください。
【58回午前14の解説】
疾患は多発性ニューロパチーと書かれているので末梢神経障害があります。
1.誘発筋電図で伝導速度が低下する:○
末梢神経障害では神経伝導速度が低下するのは基本ですね
2.誘発筋電図でF波の潜時が短縮する:×
末梢神経障害では神経伝導速度が低下するため、F波が出現するまでの時間(潜時)は延長します。
3.針筋電図で低振幅・短持続電位波形が出現する:×
脱髄性ニューロパチーであるので、神経伝導速度は減少しますが、軸索型とはちがって、末期まで振幅は低下しません。また、神経伝達速度の時間的分散が大きくなり、活動電位の持続時間が長くなります。
4.誘発筋電図の反復刺激でwaning (M波の振幅が漸減)を認める:×
ニューロパチーではなくミオパチー(筋疾患)のうち重症筋無力症でみられます
5.誘発筋電図の反復刺激でwaxing (M波の振幅が漸増)を認める:×
ニューロパチーではなくミオパチー(筋疾患)のうちLambert-Eaton症候群でみられます
なお筋電図については57回午前91でも出題されていました。
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筋電図検査について正しいのはどれか。(57回午前91)
1.針筋電図の神経原性変化では低振幅・短持続電位波形が出現する。
2.軸索変性がある場合、活動電位の振幅は低下しない。
3.脱髄病変では神経伝導速度が低下する。
4.感覚神経の伝導速度は測定できない。
5.筋疾患では神経伝導速度が低下する。
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1.×:神経原性変化では高振幅・長持続電位波形となります
2.×:軸性変化では活動電位の振幅が小さくなります
3.○
4.×:測定できます 【3】感覚神経伝導速度の説明を参照してください
5.×:神経伝達速度は正常です
以下、練習問題です。
……………………………………………………………………………
【練習問題1】筋電図のM波で正しいのはどれか。(柔道整復師23回午前81)
1.閾値はH波より高い。
2.潜時はH波より長い。
3,Ia群線維の興奮が必要である。
4.単シナプス反射回路を介する。
1.○:感覚神経(Ia)の方が閾値が低いので、H波の方が閾値が低く、M波の方が閾値が高いです
2.×:M波が運動神経が直接刺激を受けて出る波なので潜時は短い
3.×:Ia線維の興奮が必要なのはH波です
4.×:M波はシナプスを介しません。シナプスを介するのはF波やH波です
【練習問題2】誘発筋電図で正しいのはどれか。(柔道整復師24回午前81)
1.M波は後根が切断されても誘発できる。
2.H波は前根が切断されても誘発できる。
3.M波の発生は筋弛緩薬で抑えられない。
4.H波の発生に脊髄は関わらない。
1.○:M波が運動神経が直接刺激を受けて出ます。F波は前根のみ、H波は後根と前根が保たれていなければなりません
2.×:後根からIa線維で入力し、前根からα運動ニューロンで出力します
3.×:筋弛緩をすると筋肉の収縮が起こらないのでM波も発生しません
4.×
【練習問題3】誘発筋電図におけるH波で正しいのはどれか。(柔道整復師27回午前82)
1.脊髄を介して発生する
2.M波より短い潜時で発生する
3.筋を電気刺激する事で発生する
4.α運動神経を電気刺激する事で発生する
1.○
2.×:M波の方が潜時が短いです
3.×:Ia感覚神経を電気刺激する事で発生します
4.×:同上
……………………………………………………………………………
15.67歳の男性。Parkinson病。発症後5年経過。Hoehn&Yahrの重症度分類ステージIII。四肢に中等度の筋強剛を認めるが、筋力や関節可動域に明らかな問題はない。歩行場面では、開始後しばらくして小刻み歩行で小走りとなり、会話しながらだとそれが顕著となる。腰掛けるために椅子に近づくと、すくみ足がみられる。この患者の歩行障害への対応で適切なのはどれか。(58回午前15)
1.狭い場所を歩く
2.直線上を継ぎ足で歩く
3.長下肢装具を用いて歩く
4.認知課題を追加しながら歩く
5.リズミカルな繰り返しの聴覚刺激を用いて歩く
【答え】5
【解説】
パーキンソン病のリハビリについての問題です。Yahr分類のステージは大体以下の通りです。
stage I: 症状は一側性
stage II: 症状は両側性で姿勢反射異常なし
stage III: 姿勢反射異常が出始める
stage IV: 姿勢反射異常が強くなるが、なんとか立ったり歩ける
stage V: 立つことも不可能(歩行も当然不可能)
問題の症例ではstage IIIという事なので姿勢反射異常が出始めているので、立位や歩行が不安定な状態です。では歩行が不安定なパーキンソン病のリハビリはどうしたらいいでしょうか?という問題ですね。
1.狭い場所を歩く:×
狭い場所をうまくバランスを取りながら歩くのは難しいです。小刻み歩行だけならいいですが、その後に小走りになると書かれているのがポイントです。小刻みから小走りになる(突進歩行)ので、狭い場所では制御がき
かず、壁に衝突し転倒するリスクが高くなります。
2.直線上を継ぎ足で歩く:×
いわゆるタンデム歩行です。小脳失調などでバランスが悪い場合障害される歩行方法です。パーキンソン病のstage IIIで姿勢反射異常が出ているのでバランスが悪いと考えましょう。
3.長下肢装具を用いて歩く:×
下肢筋力低下はないので長下肢装具は不要です。短下肢装具でも不要だと思います。わざわざ長下肢装具と書いているのは、こんなのありえないでしょ?という意味です。
4.認知課題を追加しながら歩く:×
パーキンソン病の末期では認知機能が低下しますが、stage III程度では認知機能の低下はないかごく軽度です。歩行が不安定なので、別の課題を追加するのではなく、歩行に集中すべきです。
5.リズミカルな繰り返しの聴覚刺激を用いて歩く:○
すでにすくみ足(最初の1歩がでない)でたり小刻み歩行や小走り歩行となっており、歩行のリズムが乱れているので、歩行練習ではリズム良く歩行するリハビリが有効です。パーキンソン病では聴覚刺激や横断歩道のよ
うなラインを引いた視覚刺激が有効です。なお、すくみ足は英語でfrozen gaitといいます。frozenはfreeze(凍り付く)の過去分詞で凍り付いたという意味、gaitは歩行という意味です。国試では良く聞く言葉を、別の言い方で出題する場合も多いので、知っておいてください。
Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
