第61回理学療法士国家試験 午後51−55の解説
(51) Brown-Séquard症候群で、損傷レベル以下の対側に最も出現しやすい症状はどれか。(61回午後51)
1.筋強剛
2.運動麻痺
3.温痛覚障害
4.深部覚障害
5.手袋靴下型感覚障害
【答え】3
【解説】
Brown-Séquard 症候群 (ブラウン・セカール症候群)は、脊髄の左右どちらか一方だけが損傷されることによって起こる神経の障害です。下図は左側の脊髄(胸髄)が損傷された時の症状です。障害レベルでは全知覚が脱失し、障害レベル以下では障害と同側の運動麻痺と振動覚・深部感覚障害、障害と対側では温痛覚障害をきたします。

1.筋強剛:×
→筋強剛はパーキンソン病でみられます。筋強剛とは筋肉が固くなってこわばる状態をいい、他動的に関節を動かすと、歯車が回転するようにカクンカクンと断続的な抵抗を感じることがあったり(歯車様現象)、鉛管を曲げるときのような持続的な抵抗を感じる場合もあります(鉛管様現象)。
2.運動麻痺:×同側の痙性麻痺
→Brown-Séquard 症候群では障害レベル以下で同側の運動麻痺が見られます。上位運動ニューロン障害のため痙性麻痺となります。
3.温痛覚障害:○
→温痛覚は脊髄レベルで対側に交叉するため、ブラウン・セカール症候群では障害レベル以下で対側の温痛覚障害がみられます。
4.深部覚障害:×同側の深部覚障害
→深部覚は同側の後索を上行しますので、障害レベル以下で対側の深部覚障害害がみられます。
5.手袋靴下型感覚障害:×
→手袋靴下型感覚障害は糖尿病性ニューロパチーでみられます。
(52) 視床へ上行性に接続するのはどれか。(61回午後52)
1.副神経
2.内側毛帯
3.皮質核路
4.赤核脊髄路
5.皮質脊髄路
【答え】2
【解説】
視床は感覚の伝導路のうち、大脳の各感覚野での中継地点となります。
1.副神経:×
→副神経は純粋な運動神経で胸鎖乳突筋と僧帽筋を支配します。視床への上行性の接続はありません。

2.内側毛帯:○
→内側毛帯は脳幹の橋にある知覚の伝導路です。

意識できる深部感覚のうち、触覚・振動覚は同側の脊髄の後索を上行し、延髄で対側に交叉した後、橋の内側毛帯を通り視床へ接続します。

ちなみに、外側毛帯は聴覚の伝導路です。61回午前54でも出題されていました。
3.皮質核路:×
→皮質核路は、大脳皮質から脳神経核への運動ニューロンの伝導路で、脳神経の運動成分をもつ核への下行性伝導路です。

4.赤核脊髄路:×
→赤核および赤核脊髄路は国試初出です。赤核は中脳にある神経核です。赤核脊髄路は中脳の赤核から始まり、対側に交叉して脊髄側索を下行する錐体外路系です。主に四肢の屈筋群に興奮的に、伸筋群に抑制的に働き、運動の微調整や姿勢制御に関与します。

5.皮質脊髄路:×
→皮質脊髄路は錐体路と呼ばれる運動ニューロンの伝導路です。外側皮質脊髄路と前皮質脊髄路があります。

(53) 橈骨神経で正しいのはどれか。2つ選べ。(61回午後53)
1.円回内筋を支配する
2.腕橈骨筋を支配する
3.前骨間神経を分枝する
4.手掌の皮膚感覚を支配する
5.腕神経叢の後神経束から分枝する
【答え】2と5
【解説】
1.円回内筋を支配する:×
→円回内筋は正中神経支配です

2.腕橈骨筋を支配する:○

3.前骨間神経を分枝する:×
→前骨間神経は正中神経から分枝し深部へと向かい、深指屈筋・長母指屈筋・方形回内筋を支配します。

橈骨神経は肘部で2つに分枝し、運動枝はフローゼのアーケードから深部に向かいます。この運動枝を後骨間神経と呼びます。

4.手掌の皮膚感覚を支配する:×
→橈骨神経が支配する感覚については、
①上腕では橈骨神経本幹から後上腕皮神経と下外側上腕皮神経が分岐して、上腕の後面・外側の感覚を支配します。
②肘部で橈骨神経から分岐した浅枝(後前腕皮神経)は前腕の後面の感覚を支配します。この感覚枝は指先まで達しておらず、手背の母指側の感覚(環指の真ん中まで)を支配します。また環指の中央で橈骨神経と尺骨神経の支配が分かれる事をring finger splitting signと呼びます。

5.腕神経叢の後神経束から分枝する:○
→橈骨神経は下図の⑨です。⑥の後神経束から分枝します。

(54) 橋から出る脳神経はどれか。(61回午後54)
1.滑車神経
2.三叉神経
3.舌咽神経
4.動眼神経
5.迷走神経
【答え】2
【解説】
中脳・橋の区別は中脳の一番下が4、橋の一番下が8で4−8(しわ:皺)と覚えましょう。
1.滑車神経:×
→第4脳神経で中脳にあります。
2.三叉神経:○
→第5脳神経で橋にあります。
3.舌咽神経:×
→第9脳神経で延髄にあります。
4.動眼神経:×
→第3脳神経で中脳にあります。
5.迷走神経:×
→第10脳神経で延髄にあります。
(55) 広背筋を支配している神経はどれか。(61回午後55)
1.腋窩神経
2.胸背神経
3.筋皮神経
4.肩甲上神経
5.長胸神経
【答え】2
【解説】
広背筋は腕神経叢の後神経束から分枝する胸背神経の支配です。広背(こうはい)と胸背(むねはい)と覚えて、さらに頚椎のC6〜C8から出るところも(むねはい)と覚えましょう。広背筋について以下にまとめました。

1.腋窩神経:×
→腋窩神経は腕神経叢の後神経束から分枝し、肩甲骨の前面、肩甲下筋の前方を通り、四角隙を通って後ろに回り、三角筋と小円筋を支配します。橈骨神経は四角隙の下にある三角隙を通ります。

2.胸背神経:○
→胸背神経は広背筋を支配します。
3.筋皮神経:×
→筋皮神経は外側神経束から起こり、上腕で烏口腕筋、上腕二頭筋、上腕筋を支配します。途中、烏口腕筋を貫く最終的に外側前腕皮神経となります。

4.肩甲上神経:×
→肩甲上神経は、肩甲骨の背面を走行し、棘上筋・棘下筋を支配します。一方、肩甲下神経は肩甲骨の前面(肩甲下筋の前面を走行し、肩甲下筋と大円筋を支配します。

5.長胸神経:×
→長胸神経はC5・C6・C7から出て、腕神経叢の最も近位から分枝し、前鋸筋を支配します。

Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
