第61回理学療法士国家試験 午後41−45の解説
(41) 顔面神経の評価で正しいのはどれか。(61回午後41)
1.眼瞼下垂の有無を見る
2.挺舌させ、下の偏位を見る
3.咬筋の収縮を左右で比較する
4.発声させ、口蓋垂の偏位を見る
5.口唇を閉じさせ、力に抵抗できるかを見る
【答え】5
【解説】
顔面神経は運動成分・感覚成分・副交感成分の3つがあります。

1.眼瞼下垂の有無を見る:×
→眼瞼を挙上するのは動眼神経支配の眼瞼挙筋と交感神経支配のミューラー筋の2つがあります。

また、顔面神経麻痺では眼瞼を閉じる事ができなくなり、結膜が乾燥で炎症性に赤くなり兎の眼のようになることから兎眼と呼ばれます。ウサギはまばたきが少なく、開眼したまま寝る」といわれていたことからこの名前がついたそうです(実際はウサギもまぶたを閉じて寝ます (^_^;))。

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2.挺舌させ、下の偏位を見る:×
挺舌(ていぜつ)とは舌を前方へ突き出す動作です。舌の運動支配は舌下神経です。
3.咬筋の収縮を左右で比較する:×
→側頭筋と咬筋は三叉神経の運動成分が支配します。

4.発声させ、口蓋垂の偏位を見る:×
→舌咽神経と迷走神経は機能が重複しているので合わせて覚えましょう。
舌咽神経は喉頭の挙上運動を支配します。

また、迷走神経は咽頭・喉頭の運動を支配します。

迷走神経は咽頭後壁の運動を支配しており、一側の迷走神経麻痺で口蓋垂が健側に引かれます。また下図の下のように健側の咽頭後壁にしわが寄ることをカーテン徴候といいます。

5.口唇を閉じさせ、力に抵抗できるかを見る:○
→口唇を閉じるのは顔面神経支配の表情筋です。その他、顔面神経の運動成分はあぶみ骨筋を支配し、あぶみ骨筋反射を支配しているので注意してください。また鼓膜張筋は、三叉神経の第3枝である「下顎神経(鼓膜張筋神経)」に支配されています。

(42) 糖尿病性神経障害に特徴的な所見はどれか。(61回午後42)
1.急激な発症
2.自律神経反射
3.深部腱反射の亢進
4.下肢の靴下型感覚障害
5.近位筋優位の筋力低下
【答え】4
【解説】
糖尿病性神経障害(糖尿病性ニューロパチー)は糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症と並んで糖尿病の3大合併症の一つです。

1.急激な発症:×
→高血糖状態が数年~十数年続くと、細い血管が傷ついて3大合併症のような症状が現れます。
2.自律神経反射:×
→糖尿病では自律神経が障害(自律神経障害)される結果、立ちくらみ、便秘・下痢、排尿障害、発汗異常、無自覚低血糖などといった症状がみられますが、迷走神経反射などの自律神経反射がひどくなるという事はありません。また自律神経過反射は頸髄損傷でみられる合併症ですが、糖尿病ではみられません。設問はそれらとのひっかけなのでしょう。
3.深部腱反射の亢進:×
→ニューロパチーですので、深部腱反射は減弱または消失します。
4.下肢の靴下型感覚障害:○
→感覚の障害は通常、「手袋靴下型」といわれる左右対称の分布になりますが、手の症状は進行した場合にのみ現れることが多いです。
5.近位筋優位の筋力低下:×
ニューロパチーの場合、遠位筋優位の筋力低下となります。一方、ミオパチーの場合は近位筋優位の筋力低下となります。
(43) リンパ浮腫の複合的治療で最も適切なのはどれか。(61回午後43)
1.体重管理を行う
2.運動は圧迫を解除して行う
3.皮膚は乾燥した状態を保つように指導する
4.疾患に関わらず用手的リンパドレナージは実施可能である
5.多層包帯法による圧迫は患者本人が実施しないよう指導する
【答え】1
【解説】
循環器の分野でリンパ浮腫の問題はよく出題されますね。理学療法士が関与できる疾患だからでしょうか?
リンパ浮腫はがん(婦人科がん、乳がん)の手術でリンパ節を取ったことがあったり、骨盤や腋(わき)に放射線治療を行った後に、その側の足や腕のリンパの流れが障害されることによって、足や腕がむくむことを言います。 これらの場合は原因があるので2次性リンパ浮腫といいますが、原因が不明の1次性リンパ浮腫もあります。

1.体重管理を行う:○
→一般的に、脂肪がリンパ管を圧迫し、リンパの流れを悪くします。肥満を避け標準体重となるように体重管理を行う事が必要です。
2.運動は圧迫を解除して行う:×
→圧迫下の運動療法もリンパ浮腫の治療として用いられます。リンパ浮腫患者に対して筋力トレーニングを行うことによって、筋肉のポンプ作用を利用し、リンパ流を増大させます。この効果は、弾性着衣で圧迫した状態で行うとより効果が増すといわれています。弾性着衣を装着することで、しっかりと壁をつくり、筋肉の運動に伴って、高い動作圧・静止圧が生じるためです。

3.皮膚は乾燥した状態を保つように指導する:×
→リンパ浮腫でリンパの流れがうっ滞すると、皮膚に傷ができたとき
に傷口から細菌に感染しやすくなり蜂窩織炎になりやすくなります。乾燥すると感染しやすくなるので、できるだけ保湿するようにします。
4.疾患に関わらず用手的リンパドレナージは実施可能である:×
→用手的(リンパ)ドレナージは、組織に貯留しているリンパを末梢のリンパ管に取り込ませて、リンパ液として深部のリンパ節へ送り込むことを目的としており、専門のセラピストが行う用手的リンパドレナージ(manual lymphatic drenage:MLD)と患者自身、家族が行う簡易リンパドレナージ(simple lymphatic drenage:SLD)があります。 上肢については腋窩リンパ節の方向へ,下肢については鼠径リンパ節の方向へ向かって行い、かける圧は軽く、愛護的に、優しく、撫でるようにして、決して強く押さえない、揉みほぐさないことが肝要であるとされています。
用手的(リンパ)ドレナージは急性感染症・発熱、深部静脈血栓症、重度の心不全、悪性腫瘍(がん)にはそれぞれ病状を悪化させるおそれがあるため禁忌です。
5.多層包帯法による圧迫は患者本人が実施しないよう指導する:×
→圧迫療法はむくみがある部位に圧をかけて、リンパ浮腫の逆流を防ぎ、むくみを軽減する方法です。弾性(非伸縮性)包帯や弾性ストッキングなどを用います。

浮腫が改善すると包帯が緩むため原則として毎日1回巻き替えを行う事が原則です。その他、包帯が緩んだりした時や、入浴後の巻き替えのため、患者自身で巻き替えが行えるように指導します。
(44) 腎機能の評価に最も適した検査項目はどれか。(61回午後44)
1.HbA1c
2.白血球数
3.Dダイマー
4.LDLコレステロール
5.推算糸球体濾過量 (eGFR)
【答え】5
【解説】60回午前39の類似問題です。選択肢にeGFRも出ていますね。次回はHbA1cかも?
1.HbA1c:×
→HbA1cは糖尿病の血糖コントロールの指標です。血糖値は食事摂取後の時間によって常に変化しています。たとえば、検査の前に絶食にしていると低くなります。それに対して、HbA1cは4ヶ月程度の血糖コントロールの指標となります。なので検査当日に絶食にしても検査値に影響を受けません。
以下、HbA1cについて詳述します。この際にしっかり勉強しておきましょう。
ヘモグロビン (Hb) は141個のアミノ酸よりなるα鎖グロビン2本と、146個のアミノ酸よりなる非α鎖(β鎖、γ鎖、δ鎖)グロビン2本よりなる4量体のタンパク質で、それぞれのサブユニットにヘムを内蔵することで安定化した構造をとっています。

出生前には、α2γ2よりなるHbF (Fは胎児 [fetus]のF)がほとんどですが、出生直後からγ鎖に代わりβ鎖の産生が優位となるためα2β2よりなる成人型HbA (Aは成人 [adult]のA)が産生されるようになります。成人のHb組成は、通常 HbA : HbF : HbA2 (α2δ2) = 95~96 : 1.5 : 2~3 といわれ、そのほとんどはHbA です。通常のHbAはHbA0と言われています。
これに対して、ヘモグロビンAの鎖N末端に糖が結合した糖化ヘモグロビン(グルコヘモグロビン)をHbA1と呼びます。HbA1はA1a、A1b、A1cの3つの分画から成る複合体で、この中で血糖管理の指標として最も重視されるのがHbA1cです。正常ではHbA1cは総ヘモグロビンの約4%を占めています。
Hbとグルコース(ブドウ糖)の結合は血中グルコース濃度に依存することから、特にHbA1cは血糖値の変動を含んだ平均血糖レベルの指標となることが明らかにされてきました。Hbの寿命は約4ヶ月 (120日)です。Hbとグルコースの結合は糖化という結合で、一度糖が結合したHbは結合が外れる事はありません。Hbが寿命でなくなるまでHbA1cも無くなりません。高血糖が長期間持続した状態ではヘモグロビンA1cの割合は高くなりますから、糖尿病治療で血糖コントロールの可否を判定するためにHbA1cを測定して、治療効果を判断するようになりました。
糖尿病の診断基準は①随時血糖≧126mg/dLかつ②HbA1c≧6.5%となっています。
2.白血球数:×
→白血球は各種炎症や白血病などで増加します。
3.Dダイマー:×
→D-ダイマーは理学療法士にとってとても大事な指標です。DダイマーはD因子が二つに重合している(dimer)という意味で、フィブリンが分解される過程で生じるものです。下図のようにフィブリノーゲンがプラスミンで溶解する事を一次線溶といいます。一次線溶は血栓(フィブリン)ができなくても生じますが、D、E、E-D因子しかできません。

一次線溶に対して、血栓(フィブリン)がプラスミンで溶解する事を二次線溶といいます。上図のように、二次線溶の時だけ、D-D因子(Dダイマーと呼ぶ)ができます。したがってDダイマーが高値という事は体の中に血栓がたくさんできている事を意味します。
(注)フィブリノーゲンやフィブリンが溶解した時にできるものをFDP (フィブリノーゲン・フィブリン分解産物)といいますが、FDPは一次線溶でも二次線溶でも増加するので、FDPの上昇=血栓ができているとは直接言えません。
したがって、深部静脈血栓症のように、体の中に血栓がたくさんできている状況を知るためにはDダイマーが高値になっているかどうかで判別する事ができます。
D-ダイマーが血中で高値であった場合、下肢の深部静脈血栓症がある可能性が高いです。このような患者を、ベッド上安静から歩行訓練を開始した時に、突然深部静脈血栓が遊離し、肺に詰まって肺血栓塞栓症になり突然死する場合があります。そのような事がないように、理学療法士は血液データをチェックしながら、患者のリスク管理を行わなければなりません。
4.LDLコレステロール:×
→HDL-コレステロールとLDL-コレステロールは臨床検査でしばしばお目にかかるため、良く知っておいてください。LDLはLow density llipoprotein、HDLはHigh density lipoproteinの略です。コレステロールや中性脂肪は水に溶けない(疎水性)です。そのため、水に溶けやすい(親水性)のリン脂質やタンパクで周りをおおって球状になる(リポ蛋白)事によって水に溶ける(血中に存在できる)事ができます。

リポ蛋白の中に低濃度のコレステロールを含むものをLDL-コレステロール、高濃度のコレステロールを含むものをHDL-コレステロールと言います。LDLコレステロールは血管内にあるゴミそのものです。これがたくさんあると、動脈硬化が進行します。それを、ゴミ回収車が回収して、処理工場である肝臓に運ぶのがHDL-コレステロールです。HDL-コレステロールは車にゴミでコレステロールを沢山載せているので、外から見ると高密度のコレステロールに見えるのです。したがって、LDL-コレステロールが増えると良くないですが、逆にHDL-コレステロールが減るのも良くないです。HDL-コレステロールが増えると、余分なコレステロールの処理能力が増えているので、体にとっては良い事なのです。

5.推算糸球体濾過量 (eGFR):○
→eGFRは最近よく使われる指標です。GFRとはGlomerular Filtration Rateといって腎の糸球体濾過量(濾過率)を表します。それを測定するには血中と尿中のクレアチニン値、尿量の計測が必要となります。eGFRはestimated (評価された) GFRの略で、血中のクレアチニン値だけで、GFRに近似した値を算出・評価できる方法です。以下の計算式で求められますが、実際は検査会社で計算されて値が戻ってきます。

腎機能が低下するとそれに伴いeGFRも低下してきます。下の表のようにeGFRの値によって、腎機能がどれくらい残っているかを推定できます。

(45) 薬物の作用で適切なのはどれか。(61回午後45)
1.抗コリン薬は気管支収縮を促進する
2.利尿薬は腎臓の水分再吸収を促進する
3.β遮断薬は骨格筋の収縮力を増強する
4.カルシウム拮抗薬は心拍出量を増加させる
5.コリンエステラーゼ阻害薬は神経筋接合部のアセチルコリン濃度を高める
【答え】5
【解説】
1.抗コリン薬は気管支収縮を促進する:×
→抗コリン薬はアセチルコリンの拮抗薬です。副交感神経を抑制する結果、交感神経を刺激します。交感神経の刺激により気管支は拡張します。
2.利尿薬は腎臓の水分再吸収を促進する:×
→利尿薬は腎臓の水分再吸収を抑制する結果、利尿(尿を増やす)効果を発揮します。
3.β遮断薬は骨格筋の収縮力を増強する:×
→β遮断薬は主に心臓のβ1受容体を遮断し心拍数や血圧を下げますが、骨格筋にも影響を及ぼします。特に非選択性β遮断薬は骨格筋のβ2受容体をブロックし、血管収縮や血流低下により筋収縮力を低下させる可能性があります。
4.カルシウム拮抗薬は心拍出量を増加させる:×
→カルシウム拮抗薬は血管の平滑筋細胞内へのカルシウムイオンの流入を阻害し、血管(特に末梢動脈)を拡張させることで血流を改善し、血圧を下げ、高血圧や狭心症の治療に用いられます。なおカルシウム拮抗薬服用に際して、グレープフルーツは、カルシウム拮抗薬の分解を阻害し、作用を強め副作用(めまい、頭痛、低血圧など)を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
5.コリンエステラーゼ阻害薬は神経筋接合部のアセチルコリン濃度を高める:○
→コリンエステラーゼはアセチルコリンを分解する酵素です。コリンエステラーゼ阻害剤はアセチルコリンの分解を妨げ、アセチルコリンの濃度を高めます。重症筋無力症のテストに用いられるテンシロンはコリンエステラーゼ阻害薬です。

Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
