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第58回理学療法士国家試験 午前76-80の解説

76.胃全摘術後の巨赤芽球性貧血で欠乏する栄養素はどれか。(58回午前76)
 
1.ニコチン酸
2.ビタミンA
3.ビタミンB1
4.ビタミンB12
5.ビタミンC


【答え】4
【解説】
ビタミンの問題ですね。
 まず胃とホルモンの関係から復習します。食物が胃の幽門近くの前庭部に来ると、G細胞からガストリンが産生・分泌され、胃底部のある3つの細胞からのホルモン産生を促します。
・主細胞からペプシノーゲンが産生され、胃内でペプシンに変換されると蛋白をポリペプチドに分解します。
・壁細胞からは胃酸と内因子が産生されます。内因子はビタミンB12の吸収に働きます。また胃酸は鉄の吸収にも関与します。
・副細胞からは粘液が産生されます。

 さて、胃全摘の後は、二つのパターンの貧血になる事を知っておかなければなりません。
(1)鉄欠乏性貧血
 胃が全摘されると、胃の壁細胞からの胃酸の分泌が低下します。胃全摘により胃酸の分泌が損なわれると、食物中の鉄分の吸収率が1/10~1/100に低下し、ヘモグロビン(血色素)が合成されなくなります。鉄欠乏性貧血はいろいろな原因がありますが、手術により胃が全摘されると、術後半年ぐらいで鉄欠乏性貧血になりやすいと言われています。
 鉄はヘモグロビンの構成要素です。肺から取り込んだ酸素は、ヘモグロビンの中にある鉄(ヘム鉄)に結合して血中を運ばれます。鉄欠乏性貧血の場合は、赤血球の産生が障害され、赤血球の数が少なくなりますが、赤血球ができる時に1個1個の大きさが小さくなると同時にヘモグロビン(血色素)ができないという特徴があり、貧血のパターンとしては小球性低色素貧血といいます(小球性は赤血球1個1個の大きさが小さい、低色素はヘモグロビンの量が少ない事を意味します)。

(2)巨赤芽球性貧血
 胃が全摘されると、胃の壁細胞からの内因子の分泌が低下します。内分泌の分泌が少なくなると、小腸でのビタミンB12の吸収ができなくなります。ビタミンB12も赤血球の合成に必要です。手術により胃が全摘されると、術後5年ぐらいで、巨赤芽球性貧血になりやすいと言われています。 
 ビタミンB12欠乏の場合には、赤血球ができる時に1個1個の大きさ大きくなるという特徴があります。これを大球性貧血といいます。大球性貧血の事を別名巨赤芽球性貧血といいます。
 また巨赤芽球性貧血をきたすビタミン欠乏として葉酸も忘れてはいけません。葉酸はビタミンB12と同じビタミンB群の一つです。食物の葉に多く含まれ、ホウレンソウから発見されました。
 ビタミンB12や葉酸欠乏でも、赤血球の産生が障害され、赤血球の数が少なくなりますが、赤血球ができる時にビタミンB12や葉酸が少ないとDNAがうまくできずに細胞自体が大きくなります。大きくなった核はやがて脱核して核はなくなります。ただし鉄欠乏性貧血とは異なりヘモグロビン(血色素)は普通にできます。この結果、貧血のパターンとしては大球性正色素貧血になります。(大球性は赤血球1個1個の大きさが小大きい、正色素はヘモグロビンの量が正常を意味します)。

貧血のパターン【重要】
・鉄欠乏性貧血→小球性低色素性貧血
・ビタミンB12あるいは葉酸欠乏性貧血→大球性正色素
 性貧血(高色素性貧血でないのに注意)
・ビタミンB12あるいは葉酸欠乏性貧血は巨赤芽球性貧血ともいう

このあたりを58回では血液疾患の予想問題として以下のように対策していたんですがね…
……………………………………………………………………………….
[1] 末梢血に大型の赤血球が出現するのはどれか。 (53回 午後 92)
1. 再生不良性貧血
2. 消化管出血
3. 鉄欠乏性貧血
4. 溶血性貧血
5. 葉酸欠乏性貧血
 
         53回 午後 92の答え:5
(注)今回はビタミンB12欠乏性貧血として出題されましたね。

[2][自作] 末梢血に小型の赤血球が出現するのはどれか
1. 再生不良性貧血
2. 消化管出血
3. 鉄欠乏性貧血
4. 溶血性貧血
5. 葉酸欠乏性貧血
 
        自作問題の答え:3
(注)鉄欠乏性貧血については未出題です。
  (狙い目!)


[3][自作]鉄欠乏性貧血の特徴は以下のどれか
1.小球性低色素性貧血
2.小球性正色素性貧血
3.正球正低色素性貧血
4.大球性低色素性貧血
5.大球性正色素性貧血
 
       自作問題の答え:1
 (注)鉄欠乏性貧血については未出題です。
  (狙い目!)

[4][自作]葉酸欠乏性貧血の特徴は以下のどれか
1.小球性低色素性貧血
2.正球性低色素性貧血
3.大球性低色素性貧血
4.大球性正色素正貧血
5.大球性高色素性貧血

         自作問題の答え:4
(注)これを正解できれば偉い!国家試験委員が受験生に正解させたくない問題をだすならこれ!
 ………………………………………………………………………………
なお、出血や溶血などによる貧血は、一旦赤血球が正常に産生されているにもかかわらず、赤血球が喪失(失われる)事によって貧血になります。このような場合は、赤血球の数は少なくなりますが、赤血球の大きさも、1個1個の赤血球に含まれるヘモグロビン(血色素)も正常なので、正球性正色素性貧血となります。
                

それでは選択肢を見ていきます。
1.ニコチン酸×
 ニコチン酸とニコチン酸アミドの総称をナイアシンビタミンB3)といいます。ビタミンB3欠乏ではペラグラになります。
 
覚えにくいですね…。なので覚え方を考えました。

 あとビタミンB3欠乏ではペラグラという病気になります。ペラグラの場合、下の写真のような皮膚炎をきたします。
(地下3階のやんきーは日光が当たらないので手があれているとこじつけましょう。)

MSDマニュアル ナイアシン欠乏症 より引用
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/09-栄養障害/-ビタミン欠乏症-依存症-および中毒/ナイアシン欠乏症


 
2.ビタミンA
 ビタミンAは視力の維持に必要な脂溶性ビタミンです、ビタミンAは欠乏すると夜盲症になります。覚え方は下のイラストのようにAを横にすると目のようなイメージになりますね。

 なお国家試験的には類洞と肝細胞の間にディッセ腔という隙間があり、そこにある星細胞(伊東細胞)がビタミンAを貯蔵しているという点も押さえておく必要があります。

3.ビタミンB1:×
 ビタミンB1はチアミンとも呼ばれます。解糖系・クエン酸回路において、ピルビン酸がクエン酸に変換されるときに必要です。

そのため、体内の至るところでエネルギー不足になります。B1欠乏で
・エネルギー不足が脳にくるとウエルニッケ脳症になります
・エネルギー不足が脚にくると脚気になります
・エネルギー不足で乳酸が増えるので乳酸アシドーシスになります。

(覚え方)惜しげもなく、個人的に考え出した覚え方を紹介します。
 (注)こういう覚え方は国試予備校や塾では提供されません。

 B3のところで地下3階にはヤンキーがいましたが、B1 なぜか地下1階にはチアリーダー(チアミン)がいて、チアダンスを踊って、ジャンプしてます。そのイメージから脚気を想像してください。脚気(○○け)からウエルニッケ(最後だけ)も連想できると良いでしょう。

4.ビタミンB12:○ 
 前述の解説を参照してください。

5.ビタミンC:× 
 ビタミンCは水溶性ビタミンの1種で、コラーゲンの合成や抗酸化作用があります。ビタミンCのCをCollagen (コラーゲン)のCとして覚えるようにしていました。 コラーゲンが欠乏すると血管が壊れて出血しやすくなり壊血病という病気になります。壊血病は昔船乗りに多くみられた病気で、出血性の障害が体内の各器官で生じる病気でビタミンC欠乏状態が数週間から数カ月続くと皮下・粘膜下・骨膜下など全身に出血がおこりやすくなります。下のようにワンピースでも出てきています。

 77.末梢神経の脱髄が見られるのはどれか。(58回午前77) 

1.多発性硬化症
2.De Quervain病
3.進行性核上性麻痺
4.腰部脊柱管狭窄症
5.Guillain-Barre症候群


【答え】5
【解説】
 末梢神経の脱髄がみられるのはニューロパチー(末梢神経障害)ですね。選択肢の中でニューロパチー(末梢神経障害)が5のGuillain-Barre症候群です。Guillain-Barre症候群については58階午前45でも以下のように解説しました。

 Guillain-Barre症候群(ギランバレー症候群:以下GBS)は末梢神経に障害を起こす疾患です。

選択肢について解説します
1.多発性硬化症:×
 多発性硬化症は中枢神経(脳や脊髄、視神経など)の脱髄疾患です。

2.De Quervain病:×
 ドケルバン病とは手首の狭窄性腱鞘炎の事です。手の親指に負荷をかけすぎると、手関節の手背側外側にある 長母指外転筋腱と短母指伸筋腱の2つの腱を包む腱鞘が擦れて炎症を起こし、手首に痛みを生じる病気です。脱髄性疾患ではありません。

 特徴としては、女性に多く(妊娠・出産期と更年期の2つのピーク)、スマホの使いすぎ、パソコン、ピアノ、テニス、ゴルフなどが誘因となります。検査法としては、アイヒホッフテストとFinkelsteinテストの2つがありますが、最近まで教科書がアイヒホッフテストをFinkelsteinテストと間違っていたそうです。したがって国試的には選択肢としてアイヒホッフテストやFinkelsteinテストがドケルバン病のテストとして出題される事はあっても、それらのテストの内容を問う事は当面の間はなさそうです。

3.進行性核上性麻痺:× 
 進行性核上性麻痺とはパーキンソン病と同様、中高年で発症し、パーキンソン病と類似した症状が徐々に進行する疾患です。パーキンソン病では黒質線条体にレビー小体が蓄積する事により神経細胞が変性【重要】をおこします(脱髄ではありません)。

 進行性核上性麻痺では、脳の中で大脳基底核、脳幹、小脳といった部分の神経細胞内にタウ蛋白という異常蛋白が蓄積し、神経細胞に変性をきたす病気です(脱髄ではありません)。大脳基底核の変性によりパーキンソン症状が出る他、脳幹の変性により垂直性眼球運動障害(眼球を下に動かせない)、小脳の変性により早期から小脳失調になり姿勢反射異常で転びやすくなったりします。とくに後方に転倒する事をロケットサインと呼んだりします。

4.腰部脊柱管狭窄症:×
 腰部脊柱管狭窄症は、下図右のように脊柱管の後方にある黄色靱帯が引こうする事によって脊柱管が狭くなる病気(脊柱管狭窄症)で、腰部に起こるものを腰部脊柱管狭窄症と呼びます。

腰部脊柱管狭窄症では、脊髄そのものや脊髄から出る神経根が圧迫される事(神経圧迫)によって以下の症状が出ます。脱髄性疾患ではありません
・下肢のしびれ
・間欠性跛行(歩いているとだんだん足がしびれてきて歩けなくなる)
・症状は腰椎を後屈すると悪化する


5.Guillain-Barre症候群:○
 Guillain-Barre症候群は末梢神経の脱髄が原因です。


78.性的な欲動をコントロールするために、性的なことを理論的に分析しようとする防衛機制はどれか。(58回午前78)

1.抑圧
2.行動化
3.知性化
4.反動形成
5.スプリッティング


【答え】3
【解説】
心理についての問題で防衛機制についての設問ですね。防衛機制については、ほぼ毎年1問出題されていますにで、しっかり対策して1点もらいたいところです。
 
以下解説です。
1.抑圧:×
 欲求不満や不安を無意識に抑え込んで忘れてしまおうとする事。基本は抑え込む事だけですが、抑え込みすぎて夢に出てくることもあります

2.行動化:× 
 行動化とは抑圧された感情が問題行動となる防衛機制をいう。
(例)患者が治療者に不満を抱き、沈黙を続けているときの防衛機制(第45回午前79)。この場合沈黙もある意味行動。
(例)患者が治療者に不満を抱き、何も言わずに急に診察室を出て行った。

3.知性化:○
 知性化は解決困難な問題に対して知的活動で論理的に取り組み安定化を図ろうとするもの。
(例)難病患者が自分の病気について学ぶことで不安を解消しようとする防衛機制 (看護2018年第107回午前80)

4.反動形成:×
 欲求を満たせないときに、正反対の欲求を発展させ心的平衡を保とうとする防衛機制(第53回午前79)。
 (例)好きな異性に意地悪をするという行動に関連する防衛機制(第44回午後57)。

5.スプリッティング:×
 スプリット(split)は物事を真っぷたつに分ける事を指し、スプリッティングは」とは、欲求を満足させる場合は善、そうでない場合は悪のように見なしてしまう防衛機制をいいます(第56回午後80の選択肢に出題)。

79.Freudの発達論において1〜3歳ころはどれか。(58回午前79)
 
1.口唇期
2.肛門期
3.性器期
4.潜在期
5.男根期


【答え】2
【解説】
 フロイトについての設問ですが、もちろん過去に出題はありません。みたとたん、何これ?っていう問題ですね。
 心理学で過去の偉人を勉強する場合、まず最初にでてくるのがフロイトですね。フロイトについて勉強していた事を紹介します。

 フロイトといえば自由連想法です。下のイラストから、風呂に立たれる糸(フロイト)から自由に連想してみてくださいと言うことで、フロイト=自由連想法に結びつけるようにしました。

 精神発達段階としてはEriksonが有名ですが、フロイトはEriksonよりもずっと前にリビドーを精神発達に関連づけて提唱しています。すなわち、人間の精神発達には、性の欲望であるリビドーがどのように変化していくかによって、発達の仕方が違ってくるという考え方です。

 フロイトによるとリビドーの源泉となる身体の部位は口・肛門・性器が挙げられています。一定の時期に身体の特定の部位の感覚が敏感になることから、リビドーにも発達段階があると考え、敏感になる身体の部位に基づいて5つの発達段階が提唱されました。(保育プラス 精神分析学の創始者”フロイト”の発達理論ってどんなもの?より引用です
 https://www.hoikuplus.com/post/usefulnurtureinfo/2430。)

【1】口唇期(0~1歳の乳児期)
 お母さんのおっぱいを吸う、いわゆる授乳という愛情行為を通して性格が形成されると言われています。欲しい時に十分授乳をされるとおっとりとした性格になり、足りないと甘えん坊・依存的な性格になります。

【2】肛門期(1~3歳)
 肛門期は、おむつが取れ、トイレトレーニングを開始する時期のことです。この時期は、快感を得る部位が口唇から肛門へと移動するため、欲求を排泄によって満たそうとします。この頃のしつけにより、人は我慢することや反抗することを覚えていきます。

【3】男根期(4~5歳)
 男根期は、性に対する意識・識別をするようになる時期のことです。この時期に男女の違いにも興味を示すようになり、この時期に「男または女はこうあるべき」という扱いを受けると、それ以降の男らしさや女らしさの意識に影響します。

【4】潜伏期(小学生の時期)
 この時期、リビドーは抑圧され表に出なくなり、その衝動は勉強やスポーツに向けられるようになります。

【5】性器期(12歳以降の青年期)
 性器期とは心理的離乳、つまり心理的に自立する時期のことを指しています。ここでは、これまでの各段階で発達してきたリビドーが統合されます。また、この段階は青年期に始まり死ぬまで続きます。
 
以上のように、大まかに5つの段階について知っておくと良いと思います。

では選択肢の解説です。
Freudの発達論において1〜3歳ころはどれか。(58回午前79)
 1.口唇期
2.肛門期
3.性器期
4.潜在期
5.男根期
 0〜1歳が口唇期で、1〜3歳は肛門期でした。答えは2ですね。


80.障害受容に至る5つの過程において2番目に現れるのはどれか。(58回午前80)
 
1.解決への努力期
2.ショック期
3.混乱期
4.受容期
5.否認期


【答え】5
【解説】
なんと56階午後79と同じ問題です。
………………………………………………………………………………
障害受容に至る5つの過程において、一般的に2番目に現れるのはどれか。 (56回 午後 79)
1. 混乱期
2. 受容期
3. 否認期
4. ショック期
5. 解決への努力期
                                              答え:3
………………………………………………………………………………

 順番を覚えてなくてもできるかな?問題です。
 障害受容の5つの過程ですが、最後は「受容」で、その前は「解決への努力期」なのは、ちょっと考えればわかりますね。
 そして、あとは、「ショック期」「否認期」「混乱期」ですが、考え方として、最初の方は「ショックを受けて否認」するよね…。そして、最後は「受け入れ」るよね。そして、その中間は「否認」と「受け入れ」の間で揺れるよねと考えましょう。
 おおまかに言うと、
 「ショックを受けて否認」
    ↓
 「否認」と「受け入れの中間」
    ↓
 「受け入れ}
の3つの時期に大まかに分けて、それぞれを当てはめます。すると、ます「ショックをうけて否認」と「受け入れ」の中間は「3.混乱期」になります。
そして「受け入れ」の時期は、前述のように最後は「5.受容期」で、その前は「4.解決への努力期」となります。
 では最初の「ショックをうけて否認期」の順番はどうでしょう?
「否認」してから「ショック」をうけるのか?
「ショック」を受けてから、「否認」するのか?
当然「1.ショック」を受けてから、「2.否認」ですよね?

結局
1.ショック期
2.否認期
3.混乱期
4.解決への努力期
5.受容期
となります。

まあ、考えれば、ショック期が一番最初にくるのは容易に想像できますから、国試的には「2.否認期」と「3.混乱期」のどちらが2番目で、どちらが3番目かで迷うかな?という問題なのではないしょうか?

ただし、解説で説明したように、「ショックと否認」・「否認と受容の中間」・「受容」と3つのステージと考えると、3番目は「否認と受容の中間=混乱期」になるのではないでしょうか?すべて順番を覚えるのは大変です(覚える必要があるのなら語呂を考えます)が、考え方さえわかれば、無理に覚える必要はないような気がします。


Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。

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