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第58回理学療法士国家試験 午後91-95の解説

91.手根管症候群の典型的な所見として正しいのはどれか。(58回午後91)
 
1.猿手
2.骨間筋の萎縮
3.前腕回内時の疼痛
4.Froment徴候
5.環指尺側から小指の感覚障害


【答え】1
【解説】
 前腕から手にかけての筋・神経と絞扼性障害などは国試頻出です。いろいろ覚える事が多いですが、この領域はしっかり勉強して極めて起きたいところです。
 まず覚えておきたいところを説明します。
 下図は小指球筋と母指球筋の起始停止・神経支配です。手の中で起始停止するものを内在筋といいます。特に右側の母指球筋の神経支配については絶対に覚えておかなければなりません。
 手の手掌側ですから尺骨神経と正中神経があります。図のように、尺骨神経は尺骨側から周りこんできて、小指球筋はすべて尺骨神経支配です

母指球筋の一番先の母指内転筋は尺骨神経支配になります。
次の短母指屈筋は尺骨神経と正中神経の二重支配になります。
(なお短母指という事で停止は基節骨です。末節骨に停止するのは、手の外在筋である長母指屈筋になります)。
外側にある対立筋と短母指外転筋は正中神経支配です。
(短母指外転筋も基節骨に停止し、手の外在筋である長母指外転筋が末節骨に停止します)。
 この母指球筋の神経支配は絶対に覚えておかなければなりません。これをおぼえなければいろいろな絞扼症状が理解できないからです。

つぎに手の外在筋である深指屈筋と、内在筋である虫様筋の神経支配についてです。図右のように、虫様筋は起始が深指屈筋腱ですので、神経支配が深指屈筋と同じになります。そして、
 第2・3指の深指屈筋・虫様筋に神経支配が正中神経
 第4・5指の深指屈筋・虫様筋に神経支配が尺骨神経
となります(二重支配)。

次に、手の開排運動を行う内在筋である掌側・背側骨間筋は尺骨神経支配、手の外在筋である浅指屈筋は深指屈筋と違って二重支配とはならず、正中神経の単独支配です。

 まず、これらの神経支配についてしっかり整理して覚えるようにしてください。

 では次に手根管症候群について考えてみます。手根管の中には正中神経が通っていますので、正中神経の症状が出ます。
 今回の58回午後52で正中神経の枝である前骨間神経麻痺についての問題が出ていますが、ここでまた正中神経の末梢部の手根管症候群の問題がでているのは驚きです(似たような疾患です)。

 前骨間神経は前腕の深部を走行し、①深指屈筋、②長母指屈筋、③方形回内筋を支配し、前骨間神経麻痺では①②の麻痺によってtear dropサインが見られ、高位麻痺である円回内症候群では祈祷師の手になる事はすでに説明しました(58回午後52の解説を参照してください)。

 下図は手根管を通るもののイラストです。浅指屈筋、深指屈筋、長母指屈筋、橈側手根屈筋などの外在筋がありますが、手根管症候群では基本的にこれらの筋の麻痺症状は起こりません。なぜかというと、図をみてもわかるようにこれらの筋は手根管内ではすでに腱になってます。腱が多少圧迫されても麻痺にはならないのです。手根管を通る正中神経は圧迫によって麻痺症状がでますが、麻痺がでる筋は手の外在筋ではなくて、手の内在筋になるのです。
 前述の前骨間神経麻痺では、前腕部で前骨間神経が圧迫される事により、支配筋である①深指屈筋、②長母指屈筋などの筋力低下がおこります。

ゴロ−@解剖生理イラスト@rockybabyto 8:14 PM · Oct 30, 2017のツィート より引用
https://twitter.com/rockybabyto/status/924957757609984000

 ということで、手根管症候群による正中神経麻痺では、手の内在筋のうち、正中神経支配の筋に筋力低下の症状が出る事になります。前述のように手の内在筋で正中神経の単独支配は母指対立筋と短母指外転筋となります。
結局のところ、手根管症候群では、母指の対立ができなくなり、母指外転筋の筋力低下により母指が内転したままとなってしまいます
 このような手をサルの手に似ているという事で猿手 (ape hand) と呼ばれます。母指球の筋力低下が持続すると母指球の萎縮も見られるようになります【重要】。

 その他、手根管症候群などの正中神経麻痺は運動麻痺に加えて感覚神経の異常をきたしますが、下図のように手掌側では第4指(環指)の中央を境にして、母指側のしびれ・感覚鈍麻をきたします。第4指(環指)のところで半分に分かれるので、ring finger splitting sign (ring fingerは環指、splittingは分けるという意味です)と呼ばれます。ring finger splitting signは国試未出なので今後出題されるかもと予想しています。

 なお、手掌の感覚神経である掌枝は手根管の手前で分岐し手根管を通らない為、手根管症候群では手掌(下図の紫の部分)の感覚障害が起こらないのが特徴です。下図の紫の部分はより高位の円回内症候群で感覚障害が起こります(似たような話は尺骨神経麻痺のギヨン管症候群の場合にもあります)。

やまだカイロプラクティック鍼灸院 円回内筋症候群と前骨間神経麻痺 より引用
https://www.yamadachiroshinkyu.com/円回内筋症候群と前骨間神経麻痺/

 その他、手根管症候群の検査としては、下図左のTinel徴候や、下図右のファーレン徴候などがあります。
 Tinel徴候は絞扼性神経障害全般に見られるテストです(絞扼される部位をハンマーで叩打するとしびれが出ます。絞扼される神経によって叩打する部位が異なります)。ファーレン徴候は下図右のような肢位を取ると手根管内で正中神経が圧迫されて症状がでます。手をパーにして連結する事から「パーを連結」→「パーレン」で覚えました。

日本整形外科学会 HP「手根管症候群」より引用
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/carpal_tunnel_syndrome.html

尺骨神経麻痺について 
 正中神経麻痺に関連して、尺骨神経についても少し勉強をしたいと思います。手掌側ですが、前述のように第4・5指の深指屈筋と虫様筋が尺骨神経支配です。尺骨神経麻痺の場合、とくに第4・5指の虫様筋の筋力低下の症状が前面に出てきて、虫様筋の機能であるintrinsic plus (MP屈曲・PIP伸展・DIP伸展)ができずにintrinsic minus (MP伸展・PIP屈曲・DIP屈曲)で拘縮をきたします。このような肢位を鷲手変形あるいは鉤爪変形(国試出題委員は別名が大好きなので鉤爪変形も覚えておかなくてはいけません)といいます。
 小球筋は全て尺骨神経支配ですので、小球筋萎縮
となります(正中神経では母指球萎縮でした)。
 さらに掌側および背側骨間筋は尺骨神経支配なので、手背側の腱に沿って凹みが目立つようになります。

やまだカイロプラクティック鍼灸院 肘部管症候群とギヨン管症候群 より引用・改変
/https://www.yamadachiroshinkyu.com/肘部管症候群とギオン管症候群/

尺骨神経麻痺での鷲手変形と高位正中神経麻痺での祈祷師の手は外見が似ていますが、動く指が鷲手では第2・3指に対して、祈祷師の手の場合は動く指が第4 ・5指と真逆なのに注意してください。

 尺骨神経麻痺の徴候で重要なものにフロマン徴候があります。解説の最初の母指球の神経支配のところで、母指内転筋は尺骨神経支配でした。また掌側および背側骨間筋も尺骨神経支配でした。母指内転筋の筋力低下で母指が内転できないのと、掌側骨間筋の筋力低下で第2指(示指)の外転ができないために、下図左のように紙を横つまみで把持する事ができず、下図右のように指を立てて把持するようになる事をフロメン(Froment)徴候といいます。
 国試頻出徴候なので、どうしてそうなるかも合わせて理解するようにしてください。

やまだカイロプラクティック鍼灸院 肘部管症候群とギヨン管症候群 より引用https://www.yamadachiroshinkyu.com/肘部管症候群とギオン管症候群/

また下図のように、尺骨神経障害でも絞扼部を叩打する事によりしびれを生じるティネル徴候が陽性です。

やまだカイロプラクティック鍼灸院 肘部管症候群とギヨン管症候群 より引用・改変https://www.yamadachiroshinkyu.com/肘部管症候群とギオン管症候群/

 尺骨神経障害では、高位麻痺として肘部管症候群、低位麻痺としてギヨン管症候群がありますが、手掌と手背の小指側への神経(掌側皮枝、手背皮枝)はギヨン管に入る前に枝分かれして出ていく為に、ギヨン管症候群では手掌と手背の小指側の感覚は障害されないのが特徴です

やまだカイロプラクティック鍼灸院 肘部管症候群とギヨン管症候群 より引用https://www.yamadachiroshinkyu.com/肘部管症候群とギオン管症候群/
やまだカイロプラクティック鍼灸院 肘部管症候群とギヨン管症候群 より引用https://www.yamadachiroshinkyu.com/肘部管症候群とギオン管症候群/

長々と説明してきましたが、そろそろ選択肢の解説をしたいと思います。

1.猿手: ○

2.骨間筋の萎縮:×
 骨間筋の萎縮は尺骨神経麻痺でおこります。

3.前腕回内時の疼痛:×
 前腕回内時の疼痛は、正中神経の高位麻痺である円回内筋症候群で見られますが、手根管症候群ではみられません。

4.Froment徴候:×
 Froment徴候は尺骨神経麻痺の時に見られます。
 
5.環指尺側から小指の感覚障害:×
 手根管症候群などの正中神経麻痺では環指橈側から母指側の感覚障害を認めます。この徴候をring finger splitting徴候といいます。環指尺側から小指の感覚障害は尺骨神経麻痺に見られる徴候です。


92.血管疾患と関連因子の組み合わせで誤っているのはどれか。(58回午後92)
 
1.Buerger病 ―――――――――喫煙
2.下腿静脈瘤――――――――――妊娠
3.解離性大動脈瘤――――――――アテローム硬化
4.深部静脈血栓症――――――――長期臥床
5.結節性多発動脈炎―――――――糖尿病


【答え】5
【解説】
 内部障害の循環器領域の病気と病因との関連についての問題です。

1.Buerger病 ―――――――――喫煙:○

2.下腿静脈瘤――――――――――妊娠:○

3.解離性大動脈瘤――――――――アテローム硬化:○
 アテローム硬化によって、血管壁が弱くなり、時に大動脈が解離する場合があります。

4.深部静脈血栓症――――――――長期臥床:○

5.結節性多発動脈炎―――――――糖尿病:×

糖尿病でみられるのは閉塞性動脈硬化症です。

これについては過去の類似問題が出題されています。結節性多発硬化症については覚えておいた方が良いでしょう。
……………………………………………………………………………….
末梢循環障害と関連因子の組合せで誤っているのはどれか。 (43回 午後 73)
1. Buerger(バージャー)病―喫煙
2. 解離性大動脈瘤―アテローム硬化
3. 下腿静脈瘤―妊娠
4. 血栓性静脈炎―長期臥床
5. 結節性多発動脈炎―糖尿病

         43回 午後 73の答え:5

脈管疾患と関連因子の組合せで誤っているのはどれか。 (48回 午後 91)
1. Buerger病―喫煙
2. 下腿静脈瘤―妊娠
3. 解離性大動脈瘤―アテローム硬化
4. 深部静脈血栓症―長期臥床
5. 結節性多発動脈炎―溶連菌感染症

         48回 午後 91の答え:5
………………………………………..…………………………………….


93.腎疾患と原因の組み合わせで正しいのはどれか。(58回午後93)
 
1.腎硬化症―――――――――尿管結石
2.慢性腎不全――――――――糖尿病
3.急性腎盂腎炎―――――――動脈硬化
4.腎後性急性腎不全―――――心不全
5.腎前性急性腎不全――――前立腺肥大
 

【答え】2
【解説】
1.腎硬化症―――――――――尿管結石:×
 腎硬化症とは、高血圧が原因で腎臓の血管に動脈硬化を起こし、腎臓の障害をもたらす疾患です。

2.慢性腎不全――――――――糖尿病:○
 糖尿病の3大合併症に糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害があります。慢性腎不全で透析を導入する原因となる基礎疾患で最も多いのは糖尿病性腎症で43.2%となっています。

東京新橋透析クリニック 8人に1人が人工透析予備軍!腎臓病を進行させないポイント より引用
https://www.toseki.tokyo/blog/toseki-jinzoubyou/

 以前は慢性糸球体腎炎が透析を導入する疾患として多かったのですが、近年では半数近くが糖尿病性腎症が原因疾患となっています。

3.急性腎盂腎炎―――――――動脈硬化:×
 急性腎盂腎炎は下部尿路感染からの上行性感染などにより、腎盂から髄質を介し腎実質へ炎症が波及したものです。

4.腎後性急性腎不全―――――心不全:×
 腎後性急性腎不全とは、急性腎不全の原因が腎臓より後ろ(すなわち尿管・膀胱・尿道など)に原因がある場合を言います。例えば尿管結石や前立腺肥大などによって、尿道が狭窄や閉塞をきたした場合を指します。

5.腎前性急性腎不全――――前立腺肥大:×
 腎前性急性腎不全とは、急性腎不全の原因が腎臓より前に原因がある場合を言います。例えば心不全の場合は心拍出量の低下から腎血流量が低下することによって、糸球体濾過量が減少し、尿量低下・腎不全となっていきます。

94.気管支喘息の治療薬はどれか。(58回午後94)
 
1.β遮断薬
2.アスピリン
3.ステロイド
4.フロセミド
5.マクロライド系抗菌薬


【答え】3
【解説】
 ついに、治療薬そのものを問う問題が出てきましたね…。今後の受験生は大変ですね…。これは医師国家試験に出てもおかしくないくらいの難問だと思うんですが…。こんな問題でたらやばいですね。

 気管支喘息は気管支におこる季節性のアレルギー疾患です。なんらかのアレルギー原因物質を季節性に吸い込んだ後、気管支閉塞症状を呈します。COPDのような閉塞性換気障害をきたします。

1.β遮断薬:×
 交感神経の受容体にはα受容体とβ受容体があり、α受容体は主に血管に分布しており、α受容体刺激により血管収縮に働きます。β受容体はβ1受容体とβ2受容体があり、β1受容体は主に心臓に分布しており、β1受容体刺激により心拍が増加したり、心収縮力が強くなったりします。β2受容体は主に気管支に分布しており、β2受容体刺激により気管支が拡張します。
 みなさん、交感神経の作用として気管支拡張がある事を知っていると思います。β遮断薬はβ受容体を遮断する(ブロック)する事によって、交感神経活動を抑制する薬剤です。主に心臓に働いて、心拍数を少なくしたり、血圧を下げたりする目的で使用します。β遮断薬を用いると、気管支に対しては気管支拡張が抑制されるので、気管支が収縮する結果、気道が狭窄する方向になるので気管支喘息を悪化させる恐れがあります。

2.アスピリン:×
 アスピリンはバッファリンという消炎鎮痛剤の主要な成分です。また脳梗塞での血栓症に対して用いられる抗血小板薬としても用いられます。
 アスピリンはステロイドとは別の機序で炎症を鎮めるため、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID:non steriodal anti-inflammatory drug [エヌセイドと呼ばれます] )と言われます。ちなみにNSAIDにはアスピリンの他にロキソニン(ロキソプロフェン)やボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)などがあります。
 NSAIDの中でアスピリンはロイコトルエンという物質を過剰産生する事により、気管支喘息の症状を引き起こしてしまう事があり、アスピリンによる気管支喘息様発作をアスピリン喘息と呼びます。したがって、気管支喘息に対してはアスピリンは用いません。このような話は理学療法士の方々には難しすぎる内容なので、アスピリン喘息という言葉だけでも覚えておくようにしてください。

3.ステロイド:○ 
 ステロイドは免疫反応を抑制する薬剤です。気管支喘息は何らかのアレルギー原因物質を季節性に吸い込んだ後に起こるアレルギー反応ですので、ステロイドが良い適応になります。

4.フロセミド:×
 フロセミドは腎臓のヘンレ係蹄に作用して尿を出す利尿薬です。うっ血性心不全では、気管支喘息様の喘鳴をきたす場合があり、心臓喘息と呼ばれる場合があります。うっ血性心不全(心臓喘息)には治療薬として利尿薬が良い適応ですが、通常の気管支喘息には効果がありません。

5.マクロライド系抗菌薬:×
 マクロライド系抗菌薬は抗菌薬(抗生物質)の一種です。抗菌薬の種類は詳しくは知らなくても良いですが、気管支炎や肺炎などの細菌感染症対して用いられます。気管支喘息はアレルギー反応によるものなので抗菌薬は無効です。


95.大動脈解離の続発症で誤っているのはどれか。(58回午後95)
 
1.腎不全
2.脳梗塞
3.脊髄障害
4.三尖弁閉鎖不全
5.心タンポナーデ


【答え】4
【解説】
 大動脈解離の続発症について問う問題です。過去に出題はなく、初出問題となっています。なかなかの難問です。
 過去の国家試験では今回の午後92でも出題されたように、解離性大動脈瘤とアテローム硬化の関連を問う形式しか出題されていませんでした。以下のイラストのように、アテローム硬化が進行すると、時に血管の内膜が高血圧などで裂けて、血管の中膜部分に血液が流れ込み(動脈の圧がかかっています)、解離性動脈瘤になる事があります。

大動脈解離では以下の図のように、大動脈の内膜が裂けて、中膜部分に動脈血が流れ込み、広がっていきます。広がった部分はもう一つの血管のような管腔となり偽りの管腔という意味で偽腔と呼ばれます。

恩賜財団済生会HP 大動脈解離 より引用
https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/aortic_dissection/
湘南心臓血管外科グループ ちょっと寒くなると・・・より引用
https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/aortic_dissection/

偽腔が広がっていくと血管が狭くなり、本当の管腔(真腔といいます)の血流が悪くなってしまう事があります。このような狭窄は血管分岐部で起こると、その血管の閉塞症状が出てしまう場合があります。

ニューハート・渡辺国際病院 大動脈解離より引用
https://newheart.jp/glossary/detail/cardiovascular-surgery_014.php

 下図は心臓に近い上行大動脈や大動脈弓に解離が起こった場合の危険な続発症です。
 脳に向かう総頚動脈や椎骨動脈などに解離が及ぶと脳梗塞をきたす場合があります。また、心臓付近が解離し冠動脈が閉塞すると急性心筋梗塞になります。大動脈弁付近が解離すると、弁輪が歪んでしまって大動脈弁が上手く閉鎖できなくなり、大動脈弁閉鎖不全となったり、大動脈弁付近で解離が外膜に及んで外膜が裂ける(上行大動脈部分で解離し逆行性に大動脈弁の所まで解離が及ぶと、そこは行き止まりなので外に向かって圧がかかって外膜まで裂けやすいのです)と、心臓を包む心外膜と心臓に間に血液が流入・充満する心タンポナーデという病態になります。心タンポナーデは早期に治療しないと致死的になります。

恩賜財団済生会HP 大動脈解離 より引用
https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/aortic_dissection/

下図のように、下行大動脈において、
・腰動脈が閉塞すると脊髄への血流が途絶え、脊髄梗塞になります。
・腹腔動脈が閉塞すると、分岐する肝動脈も閉塞し、肝虚血になります。
・腎動脈が閉塞すると腎虚血から腎梗塞・腎不全になります。
・上・下腸間膜動脈が閉塞すると腸管虚血・腸壊死になります。
・総腸骨動脈や大腿動脈の閉塞により、下肢の虚血になります。

社会医療法人三栄会 ツカサギ病院 急性大動脈解離 より引用
https://www.tsukazaki-hp.jp/diseases/acuteaorta.html

また、動脈の解離が強いと、外膜まで裂けて、血管外に大量出血を来す場合があります。
・心臓の基部で破裂すると心タンポナーデになります。
・胸腔で破裂すると、胸腔内出血や縦隔内出血となります。
・腹腔で破裂すると、腹腔内出血や後腹膜腔出血となります。

このように大動脈解離ではいろいろな続発症が見られます。
では選択肢を見て行きます。

1.腎不全:○ 
→腎動脈に解離が及ぶと腎不全になります。

2.脳梗塞:○ 
→総頚動脈や椎骨動脈に解離が及ぶと脳梗塞になります。

3.脊髄障害:○ 
→腰動脈に解離が及ぶと脊髄障害になります。

4.三尖弁閉鎖不全:× 
→解離は血管に起こるもので、心臓内部の構造物には影響しません。ただし、大動脈弁などは心臓の外に面しており、解離によって弁輪が変形する事により大動脈弁閉鎖不全を起こすことがあります。

5.心タンポナーデ:○ 
→解離が心臓の出口付近で起こり、さらに外膜が裂けて破裂すると心タンポナーデを起こる場合があります。
 今回、心タンポナーデが選択肢として出題されたので。59回以降は心タンポナーデが出題されるかもしれません。心タンポナーデと合わせて「心外閉塞・拘束性ショック」なども出題されるかもしれません。それについては、別の機会に紹介しようと思います。



Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。

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