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第60回理学療法士国家試験 午前1−5の解説

(1) Danielsらの徒手筋力テストを図に示す。対象となる筋はどれか。(60回午前1)

1.棘上筋
2.僧帽筋
3.菱形筋
4.肩甲下筋
5.上腕三頭筋


【答え】4
【解説】図の動きは肩の背面を押さえて動きを抑制しているので、肩甲骨の動きではありません。また肘の動きは屈曲と伸展だけです。したがって、肩関節の動きを見ています。そして肩関節の動きとして見ると、この動きは内旋の動きとなります(下図のピンクの方向の動きです)。

肩関節内旋のMMTですが、Danielsの10版では左のように基本座位となりました。9版では右図のような腹臥位で行う事になっていましたが、10版では別法となっています(別法で出題してくるのっていやらしいですね)。そして、肩関節内旋の働きがあるのは肩甲下筋です。


次の文により、2、3の問いに答えよ。
(2) 80歳の男性。間質性肺疾患の急性増悪で入院中。酸素化が不良で気管切開による人工呼吸を受けている。肺炎は認めないが、血圧変動が大きい。理学療法で最も適切なのはどれか。(60回午前2)

1.咳嗽練習
2.歩行練習
3.移乗動作練習
4.関節可動域運動
5.等尺性筋力増強運動


【答え】4
【解説】
1.咳嗽練習:×
 間質性肺炎では炎症の主体が間質で、喀痰が少ないのが特徴です。喀痰が多くなるのは肺胞が炎症の場となる肺炎です。わざわざ問題文に「肺炎は認めない」と書かれていますので、咳嗽練習は×です。むしろ咳嗽練習をさせる事によって、気道内圧が上がることによって気胸を合併する事があるので、あまり勧められません。次の問題3で合併症として気胸を生じていますので、この意味からも咳嗽練習はやってはダメだとわかります。

2.歩行練習:×
 酸素化が不良で人工呼吸器を付けている患者では歩行練習などとてもできません。

3.移乗動作練習:×
 酸素化が不良で人工呼吸器を付けている患者では、移乗動作練習を行えるような状態ではありません。

4.関節可動域運動:○
 酸素化が不良で人工呼吸器を付けている患者では、長期臥床となる可能性が高いので、不動による拘縮予防を目的として、関節可動域訓練を行うと良いでしょう。

5.等尺性筋力増強運動:×
 等尺性筋力増強運動は血圧上昇をきたしやすい運動です。患者は血圧変動をきたしやすいと問題文に書かれているので、血圧変動をきたすような運動は避けるべきです。


(3) その後、人工呼吸器を離脱して気管切開孔を閉鎖したが、右肺に気胸を生じ、経鼻酸素療法中である。胸部エックス線写真を別に示す。この時期の理学療法で最も適切なのはどれか。(60回午前3)

1.酸素療法中は床上安静にとどめる
2.呼吸理学療法手技で気胸側の胸郭を拡張させる
3.修正Borgスケール9以上の強度で運動療法を行う
4.呼吸筋力の低下に対して吸気筋トレーニングを行う
5.呼吸数/一回換気量(f/TV)が150以上であれば筋力増強運動を行う


【答え】なし
→(不適切問題)設問が不明確で正解が得られないため採点除外となりました。
【解説】
間質性肺炎の患者で、人工呼吸器離脱後に右の自然気胸を合併してしまったようです。治療として、右胸腔に胸腔ドレーンが挿入されていますが、まだ右肺は虚脱したままで、十分に拡張していません。

レントゲン写真の白→のように、体外から胸腔ドレーンという管が胸腔内に挿入・留置されています。気胸は肺が破れて、肺内の空気が胸腔へと漏れ出す病態です。胸腔内の陰圧がなくなり、肺が縮んでしまいます(虚脱といいます)。縮んだ肺では十分なガス交換ができなくなります。そのため、胸腔ドレーンを留置し、胸腔内に漏れ出した空気を吸い出す事で、虚脱した肺を広げる治療が必要です。写真では胸腔ドレーンを挿入・留置した後でも右肺の虚脱が残り、十分に拡張していません。このような状況では、いつまでたっても気胸は良くなりません。気胸を治療する場合、胸腔ドレーンで十分に漏れ出した空気を吸い出して、肺が胸壁と接するまで肺を広げるようにします。肺が胸壁と接する事で、肺に穴が開いたところが、胸壁と癒着し、穴が塞がるのです(この辺りは医師でないとわかりませんよね?なので、色々な会社の答えがばらつき、おそらく間違っていると思われます)。

このような状況では、本来、気胸の治療が十分でないので、追加治療が必要なのです。通常は、もう1本胸腔ドレーンを追加しなければなりません。しかし、そのような知識は学生レベルでは無理です(医学生であっても)。

選択肢を見ていきます。

1.酸素療法中は床上安静にとどめる:× 
 酸素療法は気胸が治るまでしばらく(最低1〜2週間は)必要になります。その間、床上安静では廃用性に下肢筋力が衰えて歩けなくなるでしょう。状態が安定すれば、座位・立位・歩行訓練などを行っても良いです。たとえ、胸腔ドレーンを挿入していても、吸引装置を持って歩行する事も可能です。

2.呼吸理学療法手技で気胸側の胸郭を拡張させる:×
 レントゲン写真では右気胸で、右肺が虚脱していますが、この状態で気胸側の胸郭を拡張させるのに意味があるでしょうか?右肺が虚脱している原因がたとえば無気肺なのでは胸郭を拡張させるのに少しは意味があります。
 しかし、この場合、肺が虚脱している状態で胸郭を拡張させても、何の意味もありません。肺が虚脱したままです。
 また、ドレナージが良く効いて、虚脱していた肺が広がり、胸壁に接触し、癒着していく過程において、胸郭を他動的に動かす事は、せっかく癒着しかけているものを剥がしてしまう恐れさえあります。したがって、気胸側の胸郭を呼吸療法手技で拡張させるのはダメです。
 仮にこのような患者に理学療法士が気胸側の胸郭を無理矢理拡張させるような手技を行っていたのなら、むちゃくちゃ怒られると思います。「せっかく治りかけてるのに、むちゃくちゃするな」とね。


3.修正Borgスケール9以上の強度で運動療法を行う:×
 修正Borgスケールでやや強いは4点です。9点はとても強いので×です。


4.呼吸筋力の低下に対して吸気筋トレーニングを行う:△
 患者は間質性肺炎でしばらく人工呼吸管理を受けていました。人工呼吸は患者の呼吸を補助しますが、長期的に補助を受けると、呼吸筋が萎縮してしまいます。したがって、この患者の呼吸筋力が低下した場合は、呼吸筋トレーニングを行う事は適切ですが、厚労省発表ではこの選択肢も×となっていました。おそらく、呼吸筋トレーニングについて、自動的と他動的を区別していなかった事から、自動的では○ですが、他動的ではやはり×ということになるのでしょう。出題者はこの選択肢を○として出題したものと思われます。

5.呼吸数/一回換気量(f/TV)が150以上であれば筋力増強運動を行う.:×
 呼吸が苦しくなると、呼吸数が増えて頻呼吸となり、一回換気量は少なくなります。この患者に呼吸リハを行う際にはある程度呼吸状態が安定していないと、筋力増強訓練を行ってはいけません。呼吸数/一回換気量(f/TV)が150以上という条件は、呼吸数が増えたり、一回換気量が少なくなると値が大きくなるので、150以上という条件は呼吸状態が悪いという事になりダメです。


(4) 50歳の男性。身長175cm、体重80kg。日常的な身体活動量を計測したところ、毎日5 METs、30分間の歩行運動を実施していた。この歩行運動の消費エネルギーはどれか。(60回午前4)

1.110kcal
2.160kcal
3.210kcal
4.260kcal
5.310kcal


【答え】3
【解説】
消費カロリー = 1.05× METs × 時間 (h) × 体重 (kg)です。国試の場合は時間との勝負なので、1.05は計算しなくて良いと、このサイトで何度も言ってきました。1.05を計算せずに一番近い値を選びましょう。
この場合は 5 (METs) × 0.5 (時間)× 80 (体重)
 =200となります。なので、正解は3の210 kcalを選びます。

(正確には 1.05× 5 × 0.5 × 80 = 210 kcalですが、選ぶ選択肢は変わりません)


(5) 65歳の男性。脳出血による弛緩性右片麻痺で肩関節に2横指の亜脱臼がある。関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準1995)に従って右肩関節外転の関節可動域検査を行う際に正しいのはどれか。(60回午前5)

1.基本軸は体幹である
2.肘関節屈曲位で測定する
3.肩甲骨は動かないように固定する
4.90度以上の外転では前腕を回外させる
5.上肢の長軸方向に牽引を加えて測定する


【答え】4
【解説】
設問に脳出血である事が書かれていますが。関節可動域の測定法については、影響ないと思います。ただし、脳卒中患者では肩関節が脱臼しやすいというのは覚えておいてください。

1.基本軸は体幹である:×
 肩関節外転のROMの基本線は肩峰を通る床への垂直線です。

2.肘関節屈曲位で測定する:×
 肘関節は伸展位で測定します。

3.肩甲骨は動かないように固定する:×
 肩甲骨は固定しません。肩の運動において、上腕骨と肩甲骨は共同して動きます。肩甲骨を固定すると肩甲上腕リズムが阻害されて、関節可動域が制限されてしまいます。

4.90度以上の外転では前腕を回外させる:○

5.上肢の長軸方向に牽引を加えて測定する:×
 通常の測定ではこのように牽引を加えずに測定しますし、肩関節が亜脱臼しているこの患者では変に牽引すると、肩関節で上腕骨が脱臼する恐れがありますので禁忌です。

Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。


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