第60回理学療法士国家試験 午前96−100の解説
(96) アルコール離脱症状の後遺症はどれか。(60回午前96)
1.Klein-Levin症候群
2.Korsakoff症候群
3.Lenox-Gastaut症候群
4.Rett症候群
5.悪性症候群
【答え】2
【解説】
1.Klein-Levin症候群:×
→クライネーレビン症候群は非常に稀な病気で、月経関連過眠症とも呼ばれています。1日に20時間近く眠り続ける過眠期(数日から数週間)と症状が消失する間欠期を繰り返す特徴をもっている睡眠障害です。食事のとき、トイレに行くときは目覚めますが、現実感が喪失した感じになっています。つまり、脳が十分に覚醒していない状況となっています。クライネ(暗いね)から睡眠障害と覚えましょう。
2.Korsakoff症候群:○
→アルコール依存による後遺症で、①作話、②健忘、③記銘力障害、④見当識障害ときたす症候群です。

3.Lenox-Gastaut症候群:×
→先天性異常に伴うてんかんにはLenox-Gastaut症候群とWest症候群があります。

4.Rett症候群:×
→女児にみられる重度発達障害をきたす症候群です。

5.悪性症候群:×
→悪性症候群は向精神病薬(抗精神病薬)を急に中止したときに起こる症候群です。高熱とともに横紋筋融解症を引き起こします。悪性高熱とも呼ばれます。

(97) 統合失調症の前駆期にみられるのはどれか。(60回午前97)
1.自生思考
2.滅裂思考
3.奇異な妄想
4.感情の平板化
5.緊張病症候群
【答え】1
【解説】
前駆期というのは、ある病気が発症する前に現れる前触れの時期や症状を指します。51回午前97に類似問題があります。

51回午前97の【答え】1
類似問題の解説としては2〜5が見られれば前駆期ではなく、統合失調症を発症しているというものでした。この問題でも2から5の選択肢は同じです。「聴覚過敏」は統合失調症の症状としては、特異的ではなかったので、良かったのですが、今回は自生思考が正解のようです。
最近、統合失調症では早期あるいは前駆症状の段階で薬物治療を開始すれば早期に完全寛解にいたるとの報告もされており注目されているそうです。今回その点について出題されたのでしょう。統合失調症の前駆症状には以下のものがあります。
・自生思考(自分で考えていない考えが次々浮かぶ)
・緊迫困惑気分(周囲への緊張感が増す)
・被注察感(人に見られているような感覚、ただしまだ感覚の段階)
・わけもなく不安になる
・物音や光に敏感になる
・不眠
・集中力が低下する
・やる気がなくなる
・抑うつ気分になる(抑うつはうつではありません)
・落ち着きがなくなる
(98) 複雑部分発作(焦点意識減損発作)を起こして自宅室内を徘徊しているてんかん患者に対して、まず行うのはどれか。(60回午前98)
1.救急搬送を要請する
2.室内に一人きりにする
3.周囲の危険物を取り除く
4.身体を押さえて保護する
5.タオルを噛ませる
【答え】3
【解説】
脳全体が異常興奮するものを全般発作、一部が異常興奮するものを部分発作といいます。

部分発作で意識障害を伴わないものを単純部分発作、意識障害と伴うものを複雑部分発作といいます。複雑部分発作は側頭葉でおこることが多く、側頭葉てんかんとも呼ばれます。側頭葉てんかんでは無意識にどこかに移動している自動症が特徴的です。自動症そのものの持続時間は、2~3分程度です。たとえ長く続いても数分以内が通常です

1.救急搬送を要請する:×
→身体の危機的状態ではないので、救急搬送を要請する必要はありません。
2.室内に一人きりにする:×
→自動症の際にケガをする危険があるので一人きりにしてはいけません。通常は2〜3分でおさまるので、その間そばで見守るようにしましょう。
3.周囲の危険物を取り除く:○
4.身体を押さえて保護する:×
→患者は意識がありません。無理に身体を押さえて抑制すると、抵抗して介護者がケガをする危険もあります。少し離れても見守りましょう。
5.タオルを噛ませる:×
→意識がないだけで、痙攣発作をきたしていませんのでタオルと噛ませるのは不要です。
65回午後97に類似問題があります。

56回午後97の【答え】3
(99) 自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害)児にみられる特徴はどれか。(60回午前99)
1.表情変化に乏しい
2.共感性が豊かである
3.図鑑を見るより物語を好む
4.想像力を必要とする遊びを好む
5.暗黙のルールの理解が良好である
【答え】1
【解説】
自閉症スペクトラム症とは、いわゆる典型的な狭義の「自閉症」に加えて、高機能自閉症とアスペルガー症候群を加えた広義の自閉症を指します。

自閉症についてまとめたものを以下に示します。

自閉症にはその他、以下のような症状があります。

1.表情変化に乏しい:○
→感情の起伏に乏しく、表情変化に乏しいです。
2.共感性が豊かである:×
→人見知りはしませんが、他人に無関心です。
3.図鑑を見るより物語を好む:×
→想像力が低下しているので、想像力を働かせる必要がある物語は苦手です。
4.想像力を必要とする遊びを好む:×
→想像力を必要とする遊び(ごっご遊びなど)は苦手です。
5.暗黙のルールの理解が良好である:×
→自閉症スペクトラム症の特性に、明文化(はっきりと言葉や文章にする)されていないことが理解できない、場の空気を読むことや人からどう思われるかを考えることが苦手というものがあります。
これらの特性がある場合、「一般常識」=「社会において“当たり前”とされているが、明文化されていない知識」を日常生活の中で身につけづらいことがあります。
小学生くらいまでの場合、周囲の大人が指摘をしてくれることがありますが、中高生になってくると、とくに「一般常識」に関する注意を受ける機会がぐっと減ってしまいます。学校生活だけで習得をすることが難しい場合には、保護者の方のサポートが必要です。
また暗黙のルールを理解するのは苦手ですが、自分でルールを作るのは得意です。自閉症スペクトラム症ではこれを「こだわりが強い」とも言います。

(100) 注意欠如・多動症(注意欠如・多動性障害)に対する心理社会学的治療適切でないのはどれか。(60回午前100)
1.指示は1つずつ出す
2.視覚化した指示を出す
3.雑談しながら作業をさせる
4.軽微な症状が出ても許容する
5.好ましい行動をしたらすぐにほめる
【答え】3
【解説】
注意欠如・多動性障害 (AD/HD: Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder)は脳の機能障害により、日常生活でさまざまな困りごとが生じる発達障害の1つです。「落ち着きがない」「注意散漫」などの困りごとがあります。

自閉症スペクトラム症や学習障害とも重なる部分があると言われています。

AD/HDは小児だけではく、大人でも見られます。

1.指示は1つずつ出す:○
→集中力が低下していますので、複数の指示を同時にだすと混乱してしまいます。指示は1つずつ出すようにしましょう。
2.視覚化した指示を出す:○
→AD/HDや自閉症スペクトラム症では抽象的な指示が苦手です。たとえば「花の絵を書いてください」と指示すると、「花の絵」という文字を書いたりします。「花」を想像できないのです。したがって、指示は視覚化したイラストで指示したり、抽象的でなく具体的な指示を出すようにしましょう。

3.雑談しながら作業をさせる:×
→雑談しながら作業とさせると注意散漫がひどくなります
4.軽微な症状が出ても許容する:○
→AD/HDでは失敗体験を多く積み重ねます。そのときに失敗をとがめられるとネガティブな感情から悪循環となり、うつになってしまったり、問題行動をおこしたりするようになります。悪循環を断ち切るために軽微な症状が出ても許容するようにしましょう。

5.好ましい行動をしたらすぐにほめる:○
→4と同様に、ネガティブな感情を植えつけないように、好ましい行動をしたらすぐにほめるようにしましょう。
Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
