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第61回理学療法士国家試験 午後16−20の解説

(16) 65歳の女性。50歳代後半から振戦や歩行障害が生じ、Parkinson病と診断された。L-dopaにより症状が改善し日常生活を送れていたが、最近薬の効用時間が短縮し、症状悪化が生じている。この患者に起きている症状はどれか。(61回午後16)
1.Cushing現象
2.On-Off現象
3.Pusher現象
4.Raynaud現象
5.Wearing-off現象

【答え】5
【解説】Parkinson病の症状として、下図のように運動症状非運動症状があります。

そして、その他に運動合併症というものがあります(今後運動合併症はどれかなど出題される可能性があるので運動合併症という言葉を知っておいてください)。
パーキンソン病が発症して数年が経つと、抗パーキンソン病薬の効いている時間が短くなり薬がきれる感じを自覚するようになります。薬が効いている時間(オン)と効いていない時間(オフ)で症状の差を感じるようになります(オンオフ現象)。そのような薬の効果持続時間が短縮するのをウェアリングオフ現象といいます。また、主に抗パーキンソン病薬の血中濃度が高い時に出現する体をくねらせるような不随意運動をジスキネジアといいます。ウェアリングオフ現象とジスキネジアをまとめて運動合併症といい、これらを認めるようなった患者さんを進行期と呼ぶのが一般的です

1.Cushing現象:×
→Cushing現象は、脳出血などで頭蓋内圧が急激に高まった際、脳血流を確保するために①血圧が上昇し、②血圧上昇を検知した圧受容体により心拍数を下がり徐脈となる現象をいいます。

2.On-Off現象:×
→パーキンソン病の薬を服用して、薬の効果を自覚し調子が良かった(ON)後、急に調子が悪くなって動けなくなる(Off)ような事を指します。

3.Pusher現象:×

4.Raynaud現象:×

5.Wearing-off現象:○
→薬の長期服用のため、だんだん薬の効果持続時間が短くなっていくこと。


(17) 6歳8ヶ月の女児。痙直型両麻痺。床上の座位は体幹が崩れるため座位保持ができない。立位保持や移乗にはいずれも介助が必要である。屋内は車輪付きの歩行器を使用して介助で10mほど移動できる。学校や屋外移動は介助者による手動車椅子での移送、または電動車椅子を自立操作している。GMFCSによるレベルはどれか。(61回午後17)
1.レベル I
2.レベルII
3.レベル III
4.レベル IV
5.レベル V

【答え】4
【解説】60回午前25に続いて、2年連続でGMFCSが出題されました。
GMFCSは小児脳性麻痺の重症度分類の一つです。各レベルはレベルIIIの歩行器・車椅子自立を基準とすれば覚えやすいと思います。問題文ではレベルIIIの歩行器・車椅子自立とは言えず、屋内歩行器・屋外車椅子のいずれも介助を要していますが、いずれも全介助でないのでレベルIVとなります。



(18) 83歳の男性。大動脈弁狭窄症に対するTAVI術後。自転車エルゴメーターの運動療法で、連続して一定の負荷強度を加えると下肢疲労と血圧の上昇が顕著となるため、高強度負荷のペダル運動45秒と低強度でのペダル運動90秒を交互に組み合わせて実施した。この負荷様式で正しいのはどれか。(61回午後18)
1.Ramp負荷
2.インターバルトレーニング
3.コンディショニング
4.サーキットトレーニング
5.多段階漸増負荷

【答え】2
【解説】
運動負荷の方法を問う問題です。患者の設定はあまり意味がありませんが、TAVI手術について簡単に説明します。TAVIとはTranscatheter Aortic Valve Implantationの略で、日本語では経カテーテル的大動脈弁留置術といい、開心術ではなく、カテーテル治療で大動脈弁を置換する低侵襲な治療法です。

以下、運動負荷の方法です。代表的な方法は以下の通りです。

1.Ramp負荷:×
→上図のように、連続的に負荷強度を増加させる方法です。

2.インターバルトレーニング:○
高強度の運動と低強度の運動を交互に繰り返す手法です。ここでいうインターバルは休憩ではなく、低強度の運動の事です。

3.コンディショニング:×
→運動不足の人が急に負荷をかけると故障しやすいため、段階的に筋肉や関節を運動に慣らす方法です。ウォーミングアップで可動域を広げ、クールダウンで疲労を回復させるのが基本となります。

4.サーキットトレーニング:×
→サーキットトレーニングとは、さまざまなエクササイズを既定の秒数・回数で行い、それを繰り返すエクササイズです。Circuit (サーキット)= 巡回の意味の通り、複数種目を巡回するように行います。

5.多段階漸増負荷:×
→運動強度を一定時間ごとに徐々に増加させる方法です。



(19)  8歳の男児。二分脊椎。麻痺レベルはL5。装具なしでも歩行可能であるが、バランスを崩し不安定である。歩行を安定させるため筋力増強運動を行う。増強する筋で最優先するのはどれか。(61回午後19)
1.腸腰筋
2.大殿筋
3.中殿筋
4.大腿四頭筋
5.前脛骨筋


【答え】3
【解説】
下肢のKey Muscleは下図右下のように、長座位で2・3・4・5と覚えます。

Sharrad分類での麻痺レベルと装具の関係ですが、レベルIVはL5残存で、前脛骨筋が強く働き、装具が不要です。患児も「装具なしでも歩行可能である」事から前脛骨筋は強く作用していると思われます。

したがってこの問題ではKey Muscleでは解けない問題となっています。Key Muscle以外を考えるとき、非主要筋の麻痺レベルはASIAによると以下のように定義されています。

ASIA: Japanese-ASIA-ISNCSCI-finalより引用
https://asia-spinalinjury.org/wp-content/uploads/2024/08/Japanese-ASIA-ISNCSCI-final.pdf

これで見ると、股関節伸展筋である大殿筋と股関節外転筋である中殿筋はともにL4となっています。ただし、問題にでてくる大殿筋は下殿神経中殿筋は上殿神経支配となっており、下図のように下殿神経は仙骨神経叢のL5〜S2(S1中心)、上殿神経は仙骨神経叢のL4〜S1(L5中心)支配となっています。

1.腸腰筋:×
→腸腰筋はL2のKey muscleです。

2.大殿筋:△
→SIAでは股関節伸展筋はL4支配となっていますが、一般的に股関節伸展(大殿筋)は、仙骨神経叢の下殿神経 (L5〜S2) 支配でS1レベルが中心的な支配領域とみなされることが多いです。大殿筋麻痺(L5〜S2障害)では大殿筋歩行という特徴的は歩行障害が見られます。「バランスが崩れている」に大殿筋歩行が該当する可能性もありますが、S1中心という事から、△としました。

56回午前13より 股関節伸展が障害されている大殿筋歩行

3.中殿筋:○
→ASIAでは股関節外転筋はL4支配となっていますが、一般的に股関節外転(中殿筋)は、仙骨神経叢の上殿神経 (L4〜S1) 支配でL5レベルが中心的な支配領域とみなされることが多いです。中殿筋麻痺(L4-S1障害)では骨盤の安定性が消失し、歩行時にデュシャンヌ跛行(患側に体を倒す)やトレンデレンブルグ徴候(健側の骨盤が下がる)が見られます。問題文では「バランスを崩し不安定」と書かれているので、左右のバランスを崩していると考えると中殿筋に問題があると考えるのが妥当です。

4.大腿四頭筋: ×
→大腿四頭筋はL3のKey Muscleです。

5.前脛骨筋:×
→前脛骨筋はL4のKey muscleで、L4残存では前脛骨筋は弱く作用します。L5残存で前脛骨筋は強く作用します。前脛骨筋障害では靴型装具 (AFO)を適応すれば良く、装具なしという状況からも、前脛骨筋の障害がバランスを崩している原因でないことがわかります。


(20) 61歳の女性。脳梗塞による失語症。言語理解は良好である。発語は流暢であるが、錯誤や保続は認められた。呼称では「時計」を「ト、トチ、、、」と誤りに気付き自己修正を繰り返すが、失敗に終わる復唱も不良である。失語症のタイプで正しいのはどれか。(61回午後20)
1.Broca失語
2.Wernicke失語
3.健忘性失語
4.全失語
5.伝導失語


【答え】5
【解説】失語症についての設問です。時計」を「ト、トチ、、、」というのは音韻性錯誤といいます。音韻性錯誤は復唱ができない症状の一つです。以下、復唱について解説します。

問題文を見直します。
言語理解は良好である。発語は流暢であるが、錯誤や保続は認められた。呼称では「時計」を「ト、トチ、、、」と誤りに気付き自己修正を繰り返すが、失敗に終わる復唱も不良である。
【ポイント】言語理解:良好、発語:流暢、復唱:ダメ(音韻性錯誤)

1.Broca失語:×
→言語理解は良好〜軽度障害、発語は非流暢です。復唱は障害されています。

2.Wernicke失語:×
言語理解は高度障害されていますが、発語は流暢です。

3.健忘性失語:×
→言語理解は良好で、発語も流暢です。が、語想起だけ障害されています。

4.全失語:×
言語理解:障害発語:非流暢、復唱:ダメ、すべてダメです。

5.伝導失語:○
→言語理解:良好、発語:流暢、復唱:ダメ(音韻性錯誤)


Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。


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