第61回理学療法士国家試験 午後96−100の解説
(96) アルコール依存症で正しいのはどれか。(61回午後96)
1.抑うつが併存することが多い。
2.飲酒行動の多様性は維持される。
3.振戦せん妄では見当識は保たれる。
4.病気の進行に伴い、以前より少ない量で酩酊するようになる。
5.離脱の早期症候群は飲酒中止後 72 時間前後によくみられることが多い。
【答え】1
【解説】
1.抑うつが併存することが多い。:○
→アルコール依存と抑うつは高い確率で併存し、悪循環に陥りやすい関係です。アルコール依存症の人の多くが、病気の進行につれてうつ状態を悪化させます。一方で、うつ病の人が気分を良くしようと飲酒することを繰り返せば、うつ症状が悪化します。
2.飲酒行動の多様性は維持される。:×
→アルコール依存者は以下のような減弱がみられます*1。
*1 斉藤理和:わが国におけるアルコール依存症の診断・治療の変遷. 精神経誌119 (10):784-790; 2017
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1190100784.pdf
・「飲酒行動の多様性の減弱」:高いアルコール血中濃度を維持するように同じパターンの飲酒を繰り返す
・「飲酒量、飲酒時刻、飲酒機会に対する抑制の減弱」:職場でこっそりと昼間から飲酒していたり、泥酔に至るまで多量の飲酒をするなどの異常な飲酒行動をとる事
・「有害な飲酒に対する抑制の減弱」:現に飲酒による身体疾患、家族的・社会的問題が起きているにもかかわらず飲酒を続けること
3.振戦せん妄では見当識は保たれる。:×
→せん妄とは不穏や幻覚、見当識障害となる事です。
4.病気の進行に伴い、以前より少ない量で酩酊するようになる。:×
→だんだん同じ量では酔えなくなり、飲酒量が増えていきます。
5.離脱の早期症候群は飲酒中止後 72 時間前後によくみられることが多い。:×
→早期症候群は中止後約20時間ぐらいでみられます。後期症候群は中止後72時間前後でみられます。
(97) 水俣病の原因物質はどれか。(61回午後97)
1.カドミウム
2.鉛
3.マンガン
4.有機水銀
5.有機リン
【答え】4
【解説】
1.カドミウム :×
→三井金属鉱業神岡鉱業所から排出されたカドミウムが神通川の水を汚染し、その水で作られた米や飲用水を長期摂取したことで、骨がもろくなり激しい全身痛を引き起こした公害病をイタイイタイ病といいます。
2.鉛:×
→鉛中毒は、鉛入りの塗料を飲み込むことや、不適切な鉛の釉薬(ゆうやく)をかけた輸入陶磁器で飲食することなどで起こります。鉛中毒では人格の変化、頭痛、感覚の消失、脱力、口の中の金属味、歩行協調障害、食欲減退、嘔吐、便秘、けいれん性の腹痛などが起こります。鉛中毒では歯肉の線にそって青みがかった色素沈着を認める事があります。

https://kashiwa-gomi-shikanaika.com/blog/post-134/
3.マンガン :×
→鉱石の採掘や精錬を行う労働者で慢性的なマンガン(粉塵)の吸入によりマンガンが脳の基底核に蓄積し、パーキンソン病に似た神経症状(動作緩慢、企図振戦、歩行障害など)や認知機能低下を引き起こす疾患です。
4.有機水銀 :○
→水俣病は1950年代に熊本県水俣湾周辺でチッソ水俣工場の排水に含まれるメチル水銀が原因の有機水銀中毒です。水俣病では神経系の中枢が侵され、手足のしびれ、運動機能障害、感覚障害、言語障害、視野狭窄、聴力障害などが現れます。
5.有機リン:×
→有機リンは農薬や殺虫剤に多く含まれます。有機リンはアセチルコリンを分解する酵素(コリンエステラーゼ)を阻害することで、副交感神経亢進症状である縮瞳、大量の汗や流涎、呼吸困難、けいれん等を引き起こします。
(98) 自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害)を強く示唆する患者の発言はどれか。(61回午後98)
1.「発作が起こるのが心配で長距離の移動ができません」
2.「ガスの元栓を閉めたか、何度も確認しないと気がすみません」
3.「何をしても現実感がなく、まるで映画の中の世界にいるようです」
4.「突然の予定変更があると臨機応変に対応できず、感情が激しく乱れます」
5.「人前では緊張して思うように話せないので、親友に頼まれた結婚式のスピーチを断りました」
【答え】4
【解説】
1.「発作が起こるのが心配で長距離の移動ができません」 :×
→広場恐怖症
2.「ガスの元栓を閉めたか、何度も確認しないと気がすみません」:×
→強迫性障害
3.「何をしても現実感がなく、まるで映画の中の世界にいるようです」 :×
→離人症
4.「突然の予定変更があると臨機応変に対応できず、感情が激しく乱れます」 :○
→自閉症
5.「人前では緊張して思うように話せないので、親友に頼まれた結婚式のスピーチを断りました」:×
→社交恐怖症

(99) ACTで正しいのはどれか。 2つ選べ。(61回午後99)
1. 日中に限定した支援を行う。
2. 精神障害が軽度な患者が対象である。
3. チームでのケアマネジメントを行う。
4. 短時間であっても頻回に利用者への訪問を行う。
5. スタッフ 1人当たりの受持患者数を 25 人程度に抑えることが推奨される。
【答え】3と4
【解説】
ACTはassertive community treatmentの略で、うつ病患者に対してAssertive (包括的) community (地域) treatment (治療=支援)を行うプログラムを指し、地域の中で包括的な訪問支援を行います。53回午後99で出題されました。ほぼ同じ内容です。
1. 日中に限定した支援を行う。 :×
→毎日24時間のサービス提供体制です。
2. 精神障害が軽度な患者が対象である。 :×
→重症度は限定しません
3. チームでのケアマネジメントを行う。:○
4. 短時間であっても頻回に利用者への訪問を行う。:○
5. スタッフ 1人当たりの受持患者数を 25 人程度に抑えることが推奨される。:×
→スタッフ1人当たり10人以下にします。
(100) 不安階層表を作成するのはどれか。(61回午後100)
1. 家族療法
2. 系統的脱感作法
3. 行動活性化技法
4. 内観療法
5. 森田療法
【答え】2
【解説】
心理療法で良く用いられる認知行動療法の一つに暴露療法があります。Exp曝露するという意味から、ストレスの原因となっている刺激を、すくない刺激から始め、徐々に増やしていく事によって、刺激になれていくという手法です。臨床的には系統的脱感作法が良く用いられます。
系統的脱感作でよく用いられるのは、ウォルビーが提唱している不安階層表を用いる方法です。この方法はあくまでイメージトレーニングで実際の刺激ではありません。下図のように、徐々に刺激のイメージを増やしていって、頭の中で刺激になれていく方法です。

1. 家族療法:×
→家族療法族療法は、問題や悩みが起きている原因を1人の個人にあるとは考えず、その人を取り巻く家族などの関係に存在すると考えます。家族内の関係を改善して、悩みを抱えている本人や周りの人たちが本来持っている問題解決能力を発揮できるようにするのが目標です。
2. 系統的脱感作法 :○
→不安階層表を用いて、徐々に刺激のイメージを増やしていって、頭の中で刺激になれていく方法です。
3. 行動活性化技法 :×
→行動活性化技法は特にうつ病の方に使用する方法です。うつ病の患者は意欲の低下のため、活動性が低下します。活動性が低下すると、ますます抑うつ症状を強めてしまうので活動性を高めることが必要となります。
行動活性化療法では、できる範囲から行動を増やし、徐々にさまざまな活動を増やしていきます(活性化)。行動や活動の活性化の結果、快の体験を得ると、それが報酬となり、さらに行動や活動が増えていきます。
4. 内観療法 :×
→内観療法は浄土真宗の僧侶だった吉本伊信が提唱した心理療法です。身近な人にしてもらった事を思い浮かべ(身調べ)、症状に関係なく、いかなる境遇にあっても感謝の気持ちで幸せに暮らせるように悟りを開くことを目指します。

5. 森田療法:×
→森田療法は症状を受け入れて、そのまま生活できるように訓練する方法です。絶対臥褥とは終日個室で横になったまま過ごさせる方法で第1期に用います。第2期では日記をつけます。

Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
