第58回理学療法士国家試験 午前81-85の解説
81.思考記録表(コラム表)を用いて現実に沿った考え方や判断ができることを目標とする認知行動療法の技法はどれか。(58回午前81)
1.認知再構成法
2.モデリング法
3.問題解決技法
4.系統的脱感作法
5.行動活性化技法
【答え】1
【解説】
心理学において治療を行う方法は認知行動療法だけといっても過言ではありません。認知行動療法は大きく分けて、古典的条件付け(レスポンデント条件付け)とオペラント条件付けに分類されますが、その手法はいろいろなものがあります。これまでの国試ではそのいくつかについて出題されましたが、今回出題された選択肢も含め、整理して紹介します。
これについては心理オフィスKの認知行動療法の技法(https://s-office-k.com/professional/column/counseling/cbt-tool)がとてもまとめっているのでそこから引用・紹介させていただこうと思います。
【1】認知再構成法
認知行動療法の代表的な技法で、読んで字のごとく、認知を新たに再構成する技法です。人の非合理的で、非機能的な認知によって問題が発生しているのであれば、そこに合理的で、機能的な認知を付け加えていき、問題を解決していきます。

https://s-office-k.com/professional/column/counseling/cbt-tool
具体的にはコラム法というワークシートを使います。コラムとは英語で円柱を意味します。7つの列からなるコラム(5列の場合もあります)を用い、出来事、気分、自動思考、根拠、反証、適応的思考、今の気分を記入します。こうしたワークシートに記入しながら、認知の変容を促します。
コラム法の実際を下に示します。

http://cbtbook.blog.fc2.com/blog-entry-47.html?sp
【2】曝露療法(エクスポージャー法)
Expose (さらす、曝露する)という意味から、ストレスの原因となっている刺激を、すくない刺激から始め、徐々に増やしていく事によって、刺激になれていくという手法です。臨床的には系統的脱感作法が良く用いられます。
系統的脱感作でよく用いられるのは、ウォルビーが提唱している不安階層表を用いる方法です。この方法はあくまでイメージトレーニングで実際の刺激ではありません。下図のように、徐々に刺激のイメージを増やしていって、頭の中で刺激になれていく方法です。

http://www.counselorweb.jp/article/441015840.html
覚え方としては、不安階層表の右に全部Bの文字を入れました。全部Bですから、All(オール)Bです。オールBからウォルビーと覚えました(お粗末です…_m( )m_)。
曝露法については、実際にストレスになっている刺激を与える方法もあります。実際にストレスを与える場合、刺激の大きさを調節するのは簡単ではありません。この場合、段階を踏まずに、いきなり大きな不安や恐怖の刺激を与える手法がもちいられます。
いきなり大きな不安や恐怖の洪水に掘り込む方法という意味で洪水法(フラッディング法)と呼ばれます。Floodは洪水の意味です。

例としては「潔癖の人に汚水をかける」や「閉所恐怖症の人を狭いところに閉じこめる」などがあります。フラッディング法では最初はパニックに陥りますが、徐々に不安が小さくなっていきます。
【3】曝露反応妨害法
これは強迫性障害の治療によく用いられる方法です。強迫性障害の例として、下のイラストのように「トイレの後に手を何度も洗わないと手がくさると思って、何度も手を洗ってしまうという強迫行為を行ってしまう患者がいます」。これに対して、トイレの後、手を(1回はいいですが)何度も洗う事を強制的に禁止(妨害)します。その結果、手がくさらない事を確認させて、何度も手を洗わなくても良いと分からせる方法です。
不安を与える刺激を徐々に与えて慣れさせるのは曝露療法(エクスポージャー法)と同じですが、曝露反応妨害法では刺激に暴露した後、強迫行為を禁止・妨害しても大丈夫だと知らしめて、強迫行為をしないように誘導します。

https://www.min-iren.gr.jp/?p=31440
【4】行動活性化療法(行動活性化技法)
今回の選択肢にも出題されていますが、勉強していなければイメージがつきにくい技法ですね。
行動活性化技法は特にうつ病の方に使用する方法です。うつ病の患者は意欲の低下のため、活動性が低下します。活動性が低下すると、ますます抑うつ症状を強めてしまうので活動性を高めることが必要となります。
行動活性化療法では、できる範囲から行動を増やし、徐々にさまざまな活動を増やしていきます(活性化)。行動や活動の活性化の結果、快の体験を得ると、それが報酬となり、さらに行動や活動が増えていきます。
【5】社会技能訓練(SST)
主に統合失調症や発達障害などで使用される技法です。Social Skills Trainingといい、SSTと略されることが多いです。このSSTでは、主にロールプレイという練習をしながら社会技能を身に付けていきます。
具体的な方法としては、以下のように行います。


選択肢に出ているモデリング法とは社会技能訓練(SST)の手法の一つです。
【6】問題解決療法(問題解決技法)
問題解決療法とは、問題を解決していく方法ではなく、問題を解決するための技術を学ぶ方法です。問題を解決していく一般的な手順や方法論を習得することにより、今後の人生や日常の中で起こってくる問題を自ら解決できるようになっていきます。
具体的な方法としては、以下のように問題の解決のための4段階を意識して、それを具体的に記入し実行していきます。

https://syde.jp/w2/archives/9654
この方法を習得すると、現在悩まされている事だけではなく、将来別の事に悩んだ場合にでも応用できると思います。
このような4つの段階は4つの解決プロセスとも呼ばれています。

https://www.nsspirt-cashf2.com/entry/2018/09/23/295/
【7】シェイピィング法
これはオペラント条件付けに分類されます。
これは、目的とする行動の変化に辿り着くため、簡単なことからはじめ、徐々に目的に近づける方法です。Shapeは形ですから、徐々に形を作っていくという意味になります。
具体的には、下図のように「虫歯の治療が嫌な子供」の場合で考えてみます。まず診療チェアに座る事から始め、次に診療チェアで歯を磨き、その後、歯医者で使用する器具を段階的に経験してもらうことで、怖くない歯科治療ができるようになります。

http://www.murata-ped.com/treatment.html
一見、曝露法に似ていますが、不安階層表と違って刺激は実際の刺激です。またフラディング法とは違って、実際の刺激も段階的です。そしてオペラント条件付けに分類されるように、各段階をクリアした場合、報酬が得られる(この場合は「すごいね〜」といったほめ言葉です)という事が最大のポイントです。
【8】トークンエコノミー法
これはオペラント条件付けに分類されます。トークンとは仮想通貨の事でトークンエコノミー法の報酬は仮想通貨です。
トークンエコノミー法では、好ましい反応をしたときに、報酬が与えられる方法です。報酬が与えられる事により、患者が好ましい反応をする様に誘導していきます。

https://youtu.be/VWlNo1bOMrk
昨年1年間、国試留年の息子と勉強してきました。モチベーションを保つために、模試で何点以上なら○○○○円、何点以上なら○○○○円(○○○○○円ではありません)お小遣いをあげると約束していました。これって仮想通貨ではなく、現実のお金(賞金)なんですが、トークンエコノミーと言えるのでしょうか?
【9】バイオフィードバック
これもオペラント条件付けに分類されます。
大人では「褒め言葉」や「代用硬貨」では効果があまりでません(実際のお金なら効果ある?)。
そこで大人ではバイオフィードバック法といって、好ましい反応をしたときに、体が好ましい反応となっている(たとえば心拍数がおちついているとか)を知らせる事によって、正しい反応に導いていきます。

https://s-office-k.com/professional/column/counseling/cbt-tool
まだまだいろいろありますが、重要な技法については説明したと思います。それでは実際の選択肢をみて行きましょう。
思考記録表(コラム表)を用いて現実に沿った考え方や判断ができることを目標とする認知行動療法の技法はどれか。(58回午前81)
1.認知再構成法:○
2.モデリング法:×
モデリングは社会技能訓練(SST)の手法です
3.問題解決技法:×
問題解決療法とは、問題を解決していく方法ではなく、問題を解決するための技術を学ぶ方法です。
4.系統的脱感作法:×
系統的脱感作法はウォルビーの不安階層表のように、ストレスの原因となっている刺激を、すくない刺激から始め、徐々に増やしていく事によって、刺激になれていくという手法です。
5.行動活性技法:×
行動活性技法は特にうつ病の方に使用する方法です。うつ病の寛屋は意欲の低下のため、活動性が低下します。活動性が低下すると、ますます抑うつ症状を強めてしまうので、できる範囲から行動を増やし、徐々にさまざまな活動を増やしていく事でうつ病の症状改善を図ります。
82.脳卒中の評価法とそれに含まれる項目の組み合わせで正しいのはどれか。(58回午前82)
1.JSS ― ADL
2.mRS ― バランス機能
3.FMA ― 歩行速度
4.SIAS ― 体幹機能
5.NIHSS ― 関節可動域
【答え】4
【解説】
脳卒中の評価法についての問題ですね。52回午前33、54回午前31にも似たような出題がありました。
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脳血管障害の評価として用いられる評価法について正しいのはどれか。(52回午前33)
1. mRSの評価項目に筋緊張がある。
2. SIASの評価項目に意識障害がある。
3. GCSの評価項目に関節可動域がある。
4. NIHSSの評価項目にバランスがある。
5. Fugl-Meyer Assessment の評価項目に感覚機能がある。
52回午前33の答え:5
脳卒中片麻痺患者に用いられる検査法で正しいのはどれか。2つ選べ。(54回午前31)
1. FMA (Fugl-Meyer assessment)はADLの評価を含む。
2. JSS (Japan Stroke Scale) は関節可動域の評価を含む。
3. mRSは歩行速度の評価を含む。
4. NIHSSは意識状態の評価を含む。
5. SIASは非麻痺側機能の評価を含む。
54回午前31の答え:4と5
………………………………………………………………………………
傾向が同じですね。どうやら同じ出題委員のようです。
まず、脳卒中の評価法について復習します。
【1】NIHSS
NIHとはNational Institute of Healthcareの略で、アメリカの国立衛生研究所の事です。NIHSSとはNIHが出した脳卒中スケール(SS :stroke scale)を指します。
NIHSSは医師が救急外来で脳卒中患者の重症度を判定するために用いるスケールです。
評価法は以下の通りです。

評価は、上から順番にしなければなりません(順番を入れ替えてはいけない事になっています)。最初、意識障害を評価してから、脳神経、上肢・下肢の運動麻痺、運動失調、感覚、言語、消去現象(半側空間無視の事です)などを評価していきます。
なお意識レベルの評価はGCS (グラスゴーコーマスケール)を評価しません。GCSは評価に少し時間がかるため、迅速に評価できるいくつかの質問によって評価します。
[ポイント]
・救急外来で脳卒中の重症度を評価する
・当然意識障害は評価ポイント
・麻痺は上肢・下肢ともに左右別々に評価する。
・検査はリストの順にする(順番を変えたり、逆に行ってはいけない)
・0が正常、1から5以下は軽症、6〜24は中等症、25以上は重症
救急外来で評価するものですから、基本ベット上で行う検査になります。したがってバランス検査などは含まれません。
NIHSSが何のために使われるかは脳梗塞に対する急性期治療としてのt-PA (組織型プラスミノーゲン・アクチベーター)の適応を決める事にあります。脳梗塞の急性期ではt-PAを用いた血栓溶解療法が行われますが、救急外来で迅速にNIHSSを評価し、NIHSSが6〜25点ではt-PAの適応となります。その一方、重症患者では出血性合併症を起こすことがありますので、NIHSSが25点以上の重症患者は適応外となります。また軽症例ではt-PAを行っても改善の効果が乏しいことから5点以下もt-PAの適応外となります。
NIHSSを理学療法士が点数づけすることはありませんが、急性期の脳梗塞患者が軽症であったか重症であったかを評価する最も信頼性の高い評価法であるので、知っておいてください。脳梗塞の患者を実習で受け持った際には、発表の際に、急性期の総合評価として必ずNIHSSを入れるようにしましょう。
【2】JSS
JSSとはJapan Stroke Scale の略で日本版脳卒中スケールの事です。日本の脳卒中学会が提唱しています。
調査表は以下の通りです。NIHSSと同様にStroke Scale (SS)は脳卒中の急性期の重症度を評価するものです。
JSSはNIHSSと似ていますが、意識レベルの評価はGCS (グラスゴーコーマスケール)とJCS (ジャパンコーマスケール)の2つを評価します。日本版だけにJCSも入っています。NIHSSはアメリカの評価法なので当然JCSは入っていません。


特徴的なところは、麻痺の評価で左右差を評価しません。どちらか一方でも悪い方の評価で点数づけをします(片麻痺の評価なし)。またJSSの評価の特徴は意識レベルの評価のウエイトがとても高い事です。意識レベルの評価表の右に四角の枠でA・B・Cとあり、それぞれ、A=7.74、B=15.47、C=23.21となっています。他の項目のポイントが0から高くても3ぐらいなのと比較すると、意識レベルのウエイトがとても高い事がわかります。
【3】mRS(modified Rankin Scale: 修正ランキン・スケール)
脳卒中の患者の総合的な重症度(主に後遺症のレベル)を症状なしから死亡まで7つの段階にランキングするスコアです。とくに退院時の評価で用いられる場合が多いです。
覚え方は、無症状から死亡まで7段階にランキング(順位)をつけると覚えてください。

https://knowledge.nurse-senka.jp/233479/
【4】SIAS: stroke impairment assessment scale
脳卒中に伴う機能障害(impairment)のスケールです。SIASは日本人が作ったスケールです。
SIASは救急外来の評価ではなく、リハビリ室で理学療法士が麻痺の程度を評価する感じです。
→運動項目の評価はじつはMMTに似ている(0〜5の6段階、意味も似る)
→リハビリ室でみる患者ですので意識障害の項目はなし(国試ポイント)
→非麻痺側の評価もありますが、非麻痺側の評価は簡単なもの
運動機能の評価法を下に示します。SIASについては上肢・下肢の点数づけに習熟しておく必要があります。
特に上肢近位の点数がひっかかりやすいです。ここでいう課題は「手を口まで運ぶ」です。
「手部が口まで届く」→3点
「手部が乳頭まで届く」→2点
「手部が乳頭までとどかない、すこし動くだけ」→1点に
になります。










SIASについては最近よく国家試験に出ていると思います。
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脳卒中機能評価法<SIAS>の麻痺側運動機能の評定で2点となるのはどれか。(53回午後9)

53回午後9の答え:1(乳頭まで達する)
脳卒中機能評価法〈SIAS〉の麻痺側運動機能テストの様子を図に示す。
関節拘縮がない場合、3つのテストの合計点はどれか。(55回午前6)

1.5点 2.6点 3.7点 4.8点 5.9点
55回午前6の答え:1 ポイントは膝・口が1点
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またSIASの全体像も重要です。
→非麻痺側の筋力も評価するが、非麻痺側は握力(上肢)、大腿四頭筋力(下肢)のみ
→運動機能以外にも腱反射、筋緊張、ROMなど22項目を評価します。なお、17の腹筋力と18の垂直性テスト(座位がとれるか)は体幹の機能を評価しています。

………………………………………………………………………
[過去問] 脳卒中片麻痺患者に用いられる評価法で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.FMA
2.JSS (Japan stroke scale)
3.mRS
4.NIHSS
5.SIAS
過去問の答え4と5(JSSは片麻痺を評価しない)
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【5】FMA (Fugl-Meyer Assessment)
FMAは1975年にFugl-Meyerらが発表した機能障害の総合的な評価法。運動機能とバランス(上肢・下肢)、感覚、関節可動域/関節痛で構成され、各項目は0・1・2の3段階の評定尺度。日本ではブルンストローム、海外ではFMAらしいです。
全体の合計点は226点で、上肢と下肢の運動機能の合計は100点です。点数が低いほど、機能障害が重症であることを示します。項目も多く、評価にやや時間がかかるため、日本では使用されることが少ないですが、世界的には広く使用されています。

運動項目100点と、総得点226点は以下のイラストで覚えました。各項目は3段階の評定尺度 もイラストで上り①、頂上②、下り③の3段階と覚えました。

さて、問題の選択肢の解説です。
脳卒中の評価法とそれに含まれる項目の組み合わせで正しいのはどれか。(58回午前82)
1.JSS ― ADL:×
JSSは脳卒中急性期の評価スケールです。ADLは評価しません。
2.mRS ― バランス機能:×
mRSは脳卒中の患者の総合的な重症度(主に後遺症のレベル)を症状なしから死亡まで7つの段階にランキングするスコアです。総合評価ですので、個別のバランス機能などは評価しません。
3.FMA ― 歩行速度:×
FMAは運動項目に加えて、バランス(上肢・下肢)、感覚、関節可動域/関節痛を評価しますが、歩行速度は評価しません。歩行速度は主にフレイルで評価します。
4.SIAS ― 体幹機能:○
SIASでは体幹機能として、垂直性(座位がとれるか)と腹筋の機能の2つを評価します。
5.NIHSS ― 関節可動域:×
NIHSSは脳梗塞急性期の重症度を評価するスケールです。ROMは評価しません。
83.積極的に全身持久力トレーニングを開始して良い状態はどれか。(58回午前83)
1.心室頻拍
2.脈拍140/分
3.体温38.6°
4.収縮期血圧60mmHg
5.経皮的酸素飽和度94%
【答え】5
【解説】
内部障害の臨床問題において、
(1)最初から積極的にリハビリをしない基準
(2)途中でリハビリを中止する基準
は最重要ポイントです。すべてを覚えるのは大変ですが、数字に関しては以下を国試まで(実習にでる学生は実習まで)に完璧に覚えましょう。横に青線・青文字・赤文字で書いているのは覚える手がかりを示しています。

以下は正式な基準です。太字のところは覚えてください。
土肥・アンダーソンの基準
1. 積極的なリハを実施しない場合
[1] 安静時脈拍 40/分以下または 120/分以上
[2] 安静時収縮期血圧 70mmHg 以下または 200mmHg 以上
[3] 安静時拡張期血圧 120mmHg 以上
[4] 労作性狭心症の方
[5] 心房細動のある方で著しい徐脈または頻脈がある場合
[6] 心筋梗塞発症直後で循環動態が不良な場合
[7] 著しい不整脈がある場合
[8] 安静時胸痛がある場合
[9] リハ実施前にすでに動悸・息切れ・胸痛のある場合
[10] 座位でめまい,冷や汗,嘔気などがある場合
[11] 安静時体温が 38 度以上
[12] 安静時酸素飽和度(SpO2)90%以下
途中でリハを中止する場合
[1] 中等度以上の呼吸困難,めまい,嘔気,狭心痛,頭痛,強い疲労感
などが出現した場合
[2] 脈拍が 140/分を超えた場合
[3] 運動時収縮期血圧が 40mmHg 以上,または拡張期血圧が 20mmHg 以上上昇した場合
[4] 頻呼吸(30 回/分以上),息切れが出現した場合
[5] 運動により不整脈が増加した場合
[6] 徐脈が出現した場合
[7] 意識状態の悪化
これらを踏まえて選択肢を見ましょう。
積極的に全身持久力トレーニングを開始して良い状態はどれか。(58回午前83)
1.心室頻拍:×
心室頻拍は心室細動に移行しやすい不整脈です。血圧も下がりやすく、場合によっては心肺停止状態になります。すぐにリハビリを中止して、医師や看護師を呼びましょう。
2.脈拍140/分:
安静時の脈拍の正常値は60〜100/分です。その基準からそれぞれ上下に20を逸脱(脈拍数が40以下、または脈拍数が120以上)したら積極的なリハビリはしません。
3.体温38.6°:×
体温が38℃以上は発熱(高熱)しているとして積極的なリハビリ(というかリハビリ自体)しませんね。
4.収縮期血圧60mmHg:×
血圧が60mmHgはかなりの低血圧ですよね。血圧が70mmHg以下は積極的なリハビリは行いません。
5.経皮的酸素飽和度94%
経皮的酸素飽和度が94%はそれほど悪くはありません。酸素飽和度が90%は動脈血酸素分圧(PaO2)が60mmHgである事を意味します。経皮的酸素飽和度が90%以下では積極的なリハビリは行いません。
84.ASIAの評価対象はどれか。(58回午前84)
1.意識レベル
2.運動失調
3.眼球運動
4.肛門感覚
5.深部腱反射
【答え】4
【解説】ASIAは脊髄損傷の総合評価法です。下図のように、上下肢の主要筋群の筋力、感覚機能では触覚(light touch)と痛覚(pin prick)で評価します。
筋力については

https://asia-spinalinjury.org/wp-content/uploads/2021/07/
ASIA-ISNCSCI-SIDES-1-2_July-2021.pdf
筋機能評価は0〜5の6段階です(MMTと同じ基準です)
感覚については0・1・2の3段階で
0 = なし
1 = 少し感じる、
2 = 正常
となっています。
S4-5の運動は肛門の随意収縮の有無、S4-5の感覚は肛門の感覚になります。
これを踏まえて今回の選択肢をみていきます
ASIAの評価対象はどれか。(58回午前84)
1.意識レベル:× 基本的に意識がある人が対象です。
2.運動失調:× 小脳失調は対象外です。
3.眼球運動:× 運動は上下肢が対象です。
4.肛門感覚:○ 肛門の触覚・痛覚も対象になります。
5.深部腱反射:× 深部腱反射は対象にはなりません。
【ASIAの評価結果の分類】
ASIAの評価表の結果から
A:完全麻痺
B:感覚不全麻痺
C:運動不全麻痺(神経損傷レベル以下の主要筋の半分以上がMMT3未満)
D:運動不全麻痺(神経損傷レベル以下の主要筋の半分以上がMMT3以上)
E:正常
に分類します。
以下にASIAのA〜D (Eは正常なので省略します)のパターンを過去問や自作で作ったものを示します。58回ではここに注目して対策していましたが、出題されませんでした。具体的なパターンで勉強しておけば理解が深まるのかなと思います。ASIAについてはこれくらいを勉強しておけば良いからと思います。








85.ワルファリンの作用を減弱させるのはどれか。(58回午前85)
1.ビタミンA
2.ビタミンB1
3.ビタミンC
4.ビタミンE
5.ビタミンK
【答え】5
【解説】
ワーファリンは血液凝固を抑えて血液をサラサラにする働きがある薬です。
ワーファリンの役割を考えるには、血液が凝固する仕組みを知る必要があります。
ケガをして出血した場合を考えると、出血は血管が損傷した結果、血管から血液がもれている状態です。生体が出血を止めるには、損傷した血管を修復する必要があります。この時、まず最初に、血管が損傷したところにあるコラーゲンに引き寄せられて血中を流れる血小板が損傷部に集まってきて(凝集)、傷を塞ぎます。これを一次止血といいます。

次に、血中を流れる凝固因子が活性化されて、一次血栓に網状にからみついて強固な血栓をつくります。これを二次止血といいます。

凝固因子は以下のように現在第I因子(フィブリノーゲン)から第XIII因子(フィブリン安定化因子)まで見つかっているタンパク質ですが、そのほとんどが肝臓で産生されています。またそのうち、第II・VII・IX・X因子は産生するのにビタミンKが必要です。

このため、肝硬変など肝臓に機能が低下すると、凝固因子が全般的に産生低下となし、出血傾向になりますが、肝臓の機能が低下していなくても、ビタミンKの摂取不足になると、第II・VII・IX・Xの凝固因子が産生できなくなり、凝固機能が低下します。
ワーファリンはビタミンKを阻害する働きがあり、その結果、凝固因子の産生を阻害し、血液凝固を抑制する働きがあります。
(補足)
白色血栓や赤色血栓って知ってますか?
動脈硬化で脳や冠動脈が狭くなる場合に、動脈にできる血栓は、血小板の凝集が主で、この場合、血栓が白く見える事から白色血栓と呼ばれます。このような白色血栓を抑えるには血小板の作用を抑える抗血小板薬が用いられます。抗血小板薬の代表的なものとしては、バイアスピリンやプラビックスなどがあります。
一方、心房細動から脳梗塞(脳塞栓)になる場合に問題となる左心房内の血栓や、深部静脈血栓症で深部静脈に生じる血栓(肺動脈血栓塞栓症の原因となります)は、血流が遅い静脈系に起こる血栓で、フィブリンが網状に固まる際に赤血球を巻き込む事から血栓が赤く見え赤色血栓と呼ばれます。赤色血栓は凝固因子が主に関与している事から、赤色血栓を抑えるには抗血小板薬ではなく、抗凝固薬が用いられます。抗凝固薬の代表的なものはワーファリンです。

抗血小板薬の適応から除かれている「心原性脳塞栓症」って何? より引用
https://www.fizz-di.jp/archives/1028379040.html
この問題は52回午後77とほぼ同じ問題です。今年は6年前(52回)の問題が本当にたくさん出題されています。過去問を5年間勉強では足りません。それを見越して6年前が狙われるのです。59回は53回をしっかり勉強してください。
………………………………………………………………………
ワルファリンの作用を減弱させるのはどれか。(52回午後77)
1. ビタミンA
2. ビタミンB6
3. ビタミンB12
4. ビタミンC
5. ビタミンK
52回午後77の【答え】5
………………………………………………………………………
以下、例題です。今年の問題が派生してこんな問題は出るかも?
………………………………………………………………………
ワーファリンの適応となるのはどれか。2つ選べ。
1.心房細動
2.脳動脈硬化症
3.狭心症
4.閉塞性動脈硬化症
5.深部静脈血栓症
例題の答え:1と5
………………………………………………………………………
Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
