第61回理学療法士国家試験 午後86−90の解説
(86) 納豆を食べると作用が減弱するのはどれか。(61回午後86)
1.アンジオテンシン変換酵素阻害剤
2.インスリン
3.カルシウム拮抗薬
4.ループ利尿薬
5.ワルファリン
【答え】5
【解説】
これまではワーファリンの作用を減弱させるものとしてビタミンKが国試問題として出題されてきましたが、今回はさらに突っ込んでビタミンKを豊富に含む食べ物という形で出題されました。納豆にはビタミンKが豊富に含まれています。そのため、納豆をたくさん食べると、ワルファリンの作用が減弱されるおそれがあるので、ワルファリン服用中は納豆は禁忌となっています。
ワーファリンとビタミンKについて復習です。下図は凝固因子が活性化され、血栓ができる過程を示したものです。

凝固因子の多くは肝臓で産生されますが、とくに下図のようにII・VII・IX・X因子は産生する際にビタミンKを必要とします。ワーファリンですが、ビタミンKの拮抗剤です。ワーファリンの投与によって、II・VII・IX・X因子の産生が抑制される結果、凝固活性が抑制されます。

薬の飲み合わせについては、以下を押さえておいてください・

ワーファリンについては納豆や青汁がビタミンKを多く含むのでダメです。
また降圧剤であるカルシウム拮抗薬に対してはグレープフルーツがダメです。グレープフルーツはカルシウム拮抗薬の成分分解を阻害し、効果が強く出すぎる(副作用:頭痛、めまい、低血圧など)ので、禁忌となります。
(87) 室内空調が陽圧に調整されているのはどれか。(61回午後87)
1.一般病室
2.外来待合室
3.機能訓練室
4.集中治療室
5.感染症隔離室
【答え】4?(厚労省発表では4が正解ですが不適切問題と思います)
【解説】
病室の室内空調として室内を陽圧にする陽圧室と室内を陰圧にする陰圧室にする場合があります。
ともに細菌やウイルスの管理対策として用いられます。
・陽圧室
病室を陽圧にする場合は、細菌やウイルスを病室内に入れたくない場合です。白血病の骨髄移植後など、細菌やウイルスに対して極端に抵抗性が低下している場合に用います。いわゆる無菌室は陽圧とします。
・陰圧室
病室を陰圧にする場合は、細菌やウイルスを病室外に出したくない場合です。新型コロナウイルスや結核菌感染の場合などは、陰圧管理とします。

https://www.instagram.com/p/CiAAKB1hgEv/?img_index=3
1.一般病室:×
2.外来待合室:×
3.機能訓練室:×
4.集中治療室:△
→一般集中治療室 (general ICU)や外科集中治療室 (surgical ICU)では陰圧や陽圧とはなっていませんし、する必要もありません。日本集中治療医学会の集中治療設置のための指針2022年版でも「空気感染対策用の隔離個室は別空調を設置し,圧差 2.5~8 パスカルで陽圧,陰圧を切り替えられることが望ましい」としか書かれておらず、ICUの病室が陽圧・陰圧室でなければならないとは書かれていません(当然のことです)。
https://www.jsicm.org/publication/pdf/ICU-kijun2022.pdf
空気感染対策用の隔離室をICUの全部屋に適応する事は非現実的ですし、全室を空気感染対策用の隔離室としているような施設は皆無でしょう。
陽圧とするのは、あくまで無菌室であり、白血病患者管理をICUで行っている施設もありますが、小児科病棟や血液内科病棟で行っている施設もあります。おそらく出題委員の施設はICUに無菌室を持っていたのでしょうが、集中治療室が陽圧に調整される場合もありますが、すべて陽圧とはなっていないので△としました。そのような出題をするのであれば、選択肢は無菌室とすべきです。また手術室も集中治療室と同様で、一般的な手術室は陽圧や陰圧とはなっていません。整形外科での関節手術で無菌室と同様な対応が必要である場合にのみ、手術室を陽圧とする事があります(それ用に大きな病院では、陽圧室を1室は用意していますが、すべての手術室が陽圧にできるわけではありません)。
5.感染症隔離室:×(陰圧)
(88) アキレス腱断裂で正しいのはどれか。(61回午後88)
1.つま先立ちは可能である。
2.学童期に集中的に発生する。
3.Thompsonテスト陽性となる。
4.足関節背屈位でギプス固定する。
5.陳旧例は端々縫合術の適応である。
【答え】3
【解説】
以下は過去に出題されたMRI像です。画像も頭に入れておいてください。

1.つま先立ちは可能である。:×
→下腿三頭筋がアキレス腱部で断裂しているので、足関節底屈ができなくなり、つま先立ちもできなくなります。
2.学童期に集中的に発生する。:×
→スポーツを行っている30歳から50歳の間でよく見られます。
3.Thompsonテスト陽性となる。:○
→アキレス腱断裂ではトンプソンテストとシモンズテストを知っておいてください。

4.足関節背屈位でギプス固定する。:×
→足関節背屈位では腱に張力がかかります。軽度底屈位で固定します。
5.陳旧例は端々縫合術の適応である。:×
→端々吻合は受傷から2〜3週間以内の新鮮例が適応です。それ以上時間が経った陳旧例では断裂したアキレス腱が短縮してしまって、直接吻合できなくなるので適応外となります。
(89) 骨折後に偽関節を生じやすいのはどれか。(61回午後89)
1.鎖骨遠位部
2.手の舟状骨
3.橈骨遠位部
4.中手骨骨幹部
5.上腕骨骨幹部
【答え】2
【解説】
偽関節になりやすい関節は骨関節障害の頻出問題です。
偽関節とは骨折した箇所が本来の治癒過程を経ても骨癒合が不十分で、あたかも関節のように動いてしまう状態です。骨折部が不安定であったり、血流が不十分であった場合になることがあります。過去の国試で偽関節になりやすい骨折で出題されたものは以下の通りです。
・舟状骨骨折
・大腿骨頚部骨折
・脛骨中下1/3 骨折
そろそろ舟状骨骨折の臨床問題(3点問題)が出るような気がするんですが…(^_^;)
(90) 筋萎縮性側索硬化症で診断に最も有用な検査はどれか。(61回午後90)
1.SPECT
2.頭部CT
3.針筋電図
4.頸部超音波
5.体性感覚誘発電位
【答え】3
【解説】
筋萎縮性側索硬化症は運動ニューロンの障害される進行性のニューロパチーです。
1.SPECT:×
→SPECT (Single Photon Emission Computed Tomography:単一光子放射断層撮影)は微量の放射性同位元素を用いて脳、心臓、骨などの機能や血流を3次元の断層画像にする核医学検査です。脳の検査では、脳の血流をおおまかに検出します。筋萎縮性側索硬化症はSPECTでは検出困難です。

2.頭部CT:×
→頭部CTも筋萎縮性側索硬化症は検出困難です。
3.針筋電図:○
→筋萎縮性側索硬化症では針筋電図において、以下のような神経原性変化をきたします(サイトの評価学資料のNote03誘発筋電図(有料です)を参照してください。)

4.頸部超音波:×
→頚部超音波は頸動脈や頸静脈の血流検査や甲状腺の検査で用いられますが、筋萎縮性側索硬化症には適応がありません。
5.体性感覚誘発電位:×
→一般に四肢末梢には運動神経と感覚神経が平行して走行しているため、感覚神経単独で神経伝達速度を検出するのは難しいように思えますが、四肢の先端の指の部分では運動神経がなく、感覚神経のみになるのでこの部分に電極を置いて感覚神経の伝導速度を測定する事ができます(指を動かす筋は指の部分ではすでに腱になっていて、運動神経が停止する筋腹は掌部分に存在しています)。
上肢では正中神経や尺骨神経での測定が行われますが、末梢から中枢にむけての順行性の伝導や、中枢から末梢への逆行性の伝導が測定されたりします。下図には尺骨神経の順行性伝導(感覚神経ですから、末梢から中枢への伝導を測定します)の測定の様子を示します。指の先端で刺激を加えて、手関節および肘関節の2点で検出します。

筋萎縮性側索硬化症は運動ニューロンの障害で感覚神経の異常はみられない事から体性感覚誘発電位は適応とはなりません。
Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
