第60回理学療法士国家試験 午前76−80の解説
(76) 急性炎症と比較した場合の慢性炎症の特徴はどれか。2つ選べ。(60回午前76)
1.血管の増殖
2.好中球の集積
3.組織の線維化
4.血漿タンパクの浸出
5.血管内皮細胞の損傷
【答え】1と3
【解説】
1.血管の増殖:○
→急性炎症では血管は増殖しません。血管透過性が亢進し、炎症細胞が炎症の場に遊出します。一方、慢性炎症では、急性炎症で破壊された組織を修復するために、血管が増殖したり、線維化(線維で組織をおおう)が生じたりします。
2.好中球の集積:×
→急性炎症では血管から炎症の場に好中球など炎症細胞が遊走していきます。これは炎症の場に先に遊走したマクロファージなどから好中球を呼び寄せる炎症性サイトカインという物質が産生されるからです。炎症性サイトカインに引き寄せられるように好中球が集積していきます。

3.組織の線維化:○
→慢性炎症では、急性炎症で破壊された組織を修復するために、血管が増殖したり、線維化(線維で組織をおおう)が生じたりします。

4.血漿タンパクの浸出:×
→急性炎症では血管透過性が亢進する結果、血漿タンパクも組織に漏れ出します。
5.血管内皮細胞の損傷:×
→急性炎症で炎症が強くなると、血管内皮細胞も損傷を受けます。血管内皮細胞が損傷を受けるとさらに血管透過性が亢進します。
急性炎症に引き続き慢性炎症が起こる肉芽の様子を以下に紹介します。肉芽とは外傷や炎症による組織欠損部分が修復する際にできる新生組織で、赤くやわらかい結合組織でできています。やがて線維化し、収縮・瘢痕化して創傷治癒のプロセスを進みます。
以下のイラストのように(1)血液凝固期→(2)炎症期→(3)増殖期→(4)成熟期と進みますが、肉芽は増殖期に見られます。


(77) 良性腫瘍と比較した場合の悪性腫瘍の特徴はどれか。(60回午前77)
1.核分裂が少ない
2.出血は稀である
3.発育速度が遅い
4.細胞の異型性が強い
5.周囲との境界が明瞭である
【答え】4
【解説】
良性腫瘍と悪性腫瘍の区別は頻出問題ですね。

1.核分裂が少ない:×
→悪性腫瘍は細胞分裂が旺盛で、核分裂が多いです。
2.出血は稀である:×
→悪性腫瘍では、腫瘍内の血管は未熟で脆弱なので出血しやすいです。
3.発育速度が遅い:×
→悪性腫瘍は発育速度が速いです。
4.細胞の異型性が強い:○
5.周囲との境界が明瞭である:×
→悪性腫瘍は周囲との境界が不明瞭になります。良性腫瘍は境界が明瞭でくりっとしています。
良性腫瘍と悪性腫瘍問題で間違いやすいのは、分化度です。
正常の細胞は成熟するにつれて各臓器に分化していきます。分化度が高いというのは、正常の組織に近いという事を意味します。悪性腫瘍は正常の組織に分化するまえに次々と分裂していって、なんだかわからない細胞がどんどん増えます。この正常組織に分化せず、なんだか分からない状態の事を未分化といいます。したがって、悪性腫瘍の特徴は未分化という事です。
その他、注意したいのは、核の大きさです。細胞質は細胞が成熟するにつれて細胞内器官が発達し、大きくなります。悪性腫瘍の場合は細胞質が大きくなる前に分裂するので、細胞質が小さく核の割合が大きくなります。
腫瘍組織を病理検査に出した場合、核と細胞質の割合 (N/C比: Nuclear [核] /cytoplasm [細胞質]比)が悪性腫瘍か良性腫瘍かを判別する大きなポイントになります。

(78) 正しい組合せはどれか。(60回午前78)
1.オペラント条件付け ー A.Beck
2.自動思考 ーーーーーー J. Kabat-Zinn
3.社会生活技能訓練 ーー R.Liberman
4.動機づけ ーーーーーー I.Pavlov
5.マインドフルネス ーー W.Miller
【答え】3
【解説】
1.オペラント条件付け ー A.Beck×
→オペラント条件付けはスキナーとかゾーンダイクがあります。
2.自動思考 ーーーーーー J. Kabat-Zinn:×
→認知行動療法で自動思考を提唱したのはA.Beckです。
3.社会生活技能訓練 ーー R.Liberman:○
4.動機づけ ーーーーーー I.Pavlov:×
→動機づけ面接を提唱したのはW.Millerです。
パブロフは動機づけではなく、古典的条件付けです。

5.マインドフルネス ーー W.Miller ×
→マインドフルネスを提唱したのはJ. Kabat-Zinnです。マサチューセッツ大学にマインドフルネスセンターを創設しました。
(79) 「明日朝9時に会議に出席する」と決めた。翌朝になると会議の予定が思い出せるのはどれか。(60回午前79)
1.意味記憶
2.作道記憶
3.展望記憶
4.手続き記憶
5.エピソード記憶
【答え】3
【解説】
記憶について以下にまとめました。

1.意味記憶:×物の意味の記憶
2.作道記憶:×ワーキングメモリの事らしいです。ワーキングメモリと書けばよいのに、作道記憶と書くのが国試のいやらしいところです。そんな事で受験生を惑わしてどうする?です。
3.展望記憶:○未来に予定されていることの記憶
4.手続き記憶:×体で覚えた記憶
5.エピソード記憶:×体験の記録
(80) Piagetの発達論で0〜2歳ころはどれか。(60回午前80)
1.感覚運動期
2.具体的操作期
3.形式的操作期
4.潜在期
5.前操作期
【答え】1
【解説】
心理発達の問題ですが、以前はEriksonの発達段階がよく出題されていました。そして、58回午前79と59回午後80はFreud (フロイト)の発達論が出題されました。発達論についてはピアジェの「認知発達段階理論」はフロイトの「リビドー発達段階理論」、エリクソンの「心理社会的発達理論」と並んで3大発達段階説とされているので60回ではPagetの発達論が出題されるのではないかと予想していました。サイト内の心理学の05心理発達において予想して、内容を紹介し、予想問題も作っていました。
以下、サイト内の内容を紹介します。まずピアジェの説明です。

そしてこのような予想問題としていましたが、今回は0〜2歳になってました。

1.感覚運動期:○0〜2歳
2.具体的操作期:×7〜11 際
3.形式的操作期: ×11歳
4.潜在期:×
5.前操作期:×2〜7歳
今回はそれぞれの時期を知らなくても、0〜2歳なので、感覚運動期を選んで正解になった人も多かったと思います。次回以降はもう1度くらいは出題される可能性があるので、この段階分類を確実に覚えておいてください。
Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
