第61回理学療法士国家試験 午後11−15の解説
(11) 78歳の男性。18時に突然右上下肢の脱力、呂律困難を自覚し救急搬送された。元々ADLは自立しており、高血圧に対して通院中であった。19時に病院に到着し、頭部CTで明らかな異常は見つからなかった。次に行う頭部画像診断で最も適切なのはどれか。(61回午後11)
1.MRI
2.PET
3.SPECT
4.造影CT
5.X線検査
【答え】1
【解説】病歴から脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)が疑われます。頭部CTで異常がなかった事から脳出血、くも膜下出血は否定的です。次は脳梗塞がないかどうかを検査する事が必要でしょう。脳梗塞はCTでは発症後6時間程度経過しないと低吸収域として検出できません。
脳梗塞の診断において、MRI(特に拡散強調画像:Diffusion weighted image: DWI)は発症から30分〜1時間程度の極めて早期でも病巣を検出できる鋭敏な検査法です。DWIが有名ですが、ADCという撮影法もセットで覚えておいてください(ADCではDWIとは違って低信号域として描出されます)。

1.MRI:○
→拡散強調画像 (DWI)が早期の脳梗塞を検出するのに有用です。
2.PET:×
→PET(Positron Emission Tomography、陽電子放出断層撮影)検査とは、ブドウ糖に似た検査薬(フルオロデオキシグルコース:FDG)が、活発に活動する癌細胞に集まる性質を利用して癌を早期発見するための画像検査のことです。FDGから放出される微量の放射線を検出することによってがんの体内分布を画像化します。脳梗塞の診断とは直接関係ありません。

3.SPECT:×
→SPECTとはSingle Photon Emission Computed Tomographyの略で、Single Photonと呼ぶ放射線を出すRI(ラジオアイソトープ)を用いた断層画像です。脳の血流をおおまかに検出する検査で、脳梗塞などの機能診断に用いられます。また放射性同位元素は放射線を放出するので専門施設でしか検査できませんし、緊急での検査はできません。

4.造影CT:△
→MRIが禁忌の患者の場合、超早期の脳梗塞検出を目的に単純CTに引き続いて行われる場合がありますが、MRIに比べて病巣の検出率が低いです。
5.X線検査:×
→脳梗塞はレントゲンにはうつりません。
(12) 健常児。図のように四つ這いから座位に戻れるようになった。この児に観察される姿勢反射はどれか。2つ選べ。(61回午後12)

1.自動歩行
2.背屈反応
3.足底把握反射
4. 側方パラシュート反応
5.非対称性緊張性頚反射
【答え】3と4
【解説】
発達過程を覚えるのは大変ですが、サイトでは以下のような覚え方を提案していました。お座りは7ヶ月ですが、四つ這いは9ヶ月でしょうか?

1.自動歩行:×

2.背屈反応:×
→背屈反応は、子供を立位で後方に傾けた際に足関節を背屈(足の甲をすねに近づける)させる姿勢反射で、10〜12ヶ月頃に現れ、歩行時の転倒防止に関与します。

https://be-therapist.com/dorsiflexion-response/
3.足底把握反射:○
→測定把握反射とバビンスキー反射は生後からあり12ヶ月くらいで消失する反射です。この頃ひとり立ちするので、足底の反射が消えなければなりません。

4. 側方パラシュート反応:○
→パラシュート反射は四肢を使って体を保護する反応で、上肢を伸展することから保護伸展反応とも呼ばれます。8ケ月ごろから出現し永続します。

パラシュート反射は上記の(前方)パラシュート反射だけではなく、側方パラシュート反射と後方パラシュート反射もあります。

5.非対称性緊張性頚反射:×
→非対称性緊張性頚反射と対称性緊張性頚反射をセットで覚えます。非対称性緊張性頚反射は4〜6ヶ月で消失し、その後対称性緊張性頚反射は6〜9ヶ月の間見られます。

(13) 28歳の男性。2日前に交通事故で受傷し、脊髄損傷と診断されて入院加療が行われている。Key MuscleのMMTは両側三角筋5、肘屈筋5、肘伸筋2、手関節背屈筋5、中指末節屈筋0、小指外転筋0、下肢筋は全て0であった。感覚については両側乳頭部まで触覚、痛覚が保たれていたが、それ以下の体幹部、下肢は脱失していた。直腸診では肛門の随意収縮、肛門深部圧、周囲の感覚は消失していた。この患者のAISはどれか。(61回午後13)
1.A
2.B
3.C
4.D
5.E
【答え】1
【解説】今年も出ました (^_^;)、ASIA問題。昨年の60回午後19が3点問題で出題され、まさかの厚労省発表の正解が間違っているという事態となっています(厚労省は訂正していませんが間違いなく間違いです)。ASIAの問題については、61回直前まで受験生からの質問により、アップデートを繰り返しました。アップデートをフォローしていただいていた受験生はきっと正解したと思います。【有料版】脊髄損傷 (2) 09ASIAの中にNote ASIA攻略法をまとめていますので、是非ごらんください。ASIAについてまとめて勉強できるものは探しても見つかりません。このNoteが最も充実していると思います。
Key Muscleの情報としては三角筋(5)・肘屈筋(5)がC5、手関節背屈筋(5)がC6、肘伸筋(2)がC7、中指末節屈筋(0)がC8、小指外転筋(0)がT1となります。また乳頭の近くはT4でT5以下の感覚が脱失しているという事です。また直腸診では肛門の随意収縮、肛門深部圧、周囲の感覚は消失していたとのいう事で、それらをまとめると以下のような表となります。

以下にASIAの機能障害尺度 (AIS: ASIA Impairment Scale)の決定方法の概略を示します。個別のパターン練習は【有料版】脊髄損傷 (2) 09ASIAの中にNote ASIA攻略法にまとめています。

さて、問題の症例ですが、直腸診では①肛門の随意収縮、②肛門深部圧、③周囲の感覚はすべて消失していたとの事です。この時点で、AISの完全麻痺 (A)と分類されます。各髄節のMMTや感覚の評価は完全麻痺(A)の場合関係なくなるんですよね。
1.A:○完全麻痺
2.B:×感覚不全麻痺
3.C:×運動不全麻痺
4.D:×運動不全麻痺
5.E:×正常
(14) 62歳の男性。2型糖尿病の発症から20年が経過している。歩行は自立していた。2ヶ月前から両足部のしびれ感を自覚し、数日前に右足部第1指が暗赤色になっているのに気付き受診した。両下肢に皮膚潰瘍はないが、感覚鈍麻を認めた。理学療法で最も適切なのはどれか。(61回午後14)
1.寒冷療法
2.前足部の免荷を行う
3.できるだけ速く歩く事を勧める
4.右足関節の関節可動域運動は控える
5.歩行時には左足を右より前に出すよう指導する
【答え】2
【解説】糖尿病性足病変は“神経障害や末梢動脈疾患と関連して糖尿病患者の下肢に生じる感染,潰瘍,足組織の破壊性病変”と定義されます。糖尿病の合併症(神経障害、血流障害)により足の感覚が鈍くなり、小さな傷が潰瘍や感染症、壊疽に進行して最悪の場合、足を切断する恐れがあります。

https://shintoko.org/メタボ・糖尿病/糖尿病の足病変
1.寒冷療法を行う:×
→もともと血流が低下しているため、寒冷療法を行うとさらに血流が低下するため禁忌です。
2.前足部の免荷を行う:○
→前足部に病変があるため、前足部の免荷を行うのは適しています。
3.できるだけ速く歩く事を勧める:×
→速く歩くと酸素消費量が増えるため、血流障害のある足には良くありません。
4.右足関節の関節可動域運動は控える:×
→症状の主体が第1指(母指)で、足関節は問題ないと思われるので、関節可動域訓練は控えなくても良いです。
5.歩行時には左足を右より前に出すよう指導する:×
→左足を前に出すようにすると、右のTstでより前足部に負荷がかかるので。右母趾には良くありません。
【補足】運動器リハビリテーションとは、運動器(骨、筋肉、関節、神経など)に対して、理学療法士が個別に運動のお手伝いをするものです。これまでは、整形外科的な病気(骨折や術後、肩・頚・腰・膝の疾患、関節リウマチ、骨粗鬆症など)を中心に行われてきましたが、2022年4月より、『糖尿病足病変』が適応疾患に加わりました。
(15) 54歳の男性。6年前に左被殻出血の既往がある。立位時の様子を示す。下肢痙縮に対するボツリヌス療法の投与筋で適切なのはどれか。
(61回午後15)

1.後脛骨筋
2.前脛骨筋
3.短腓骨筋
4.長腓骨筋
5.長母指伸筋
【答え】1
【解説】図では左被殻出血の後、後遺症として右の内反尖足となっていますね。上位運動ニューロン障害で下肢の痙縮をきたしているようです。それぞれの筋の作用を見ていきます。内反尖足は足関節の底屈・内がえしを指します。
1.後脛骨筋:○
→後脛骨筋の作用は足関節の底屈・内がえしです。

2.前脛骨筋:×
→前脛骨筋の作用は足関節の背屈・内がえしです。

3.短腓骨筋:×
→短腓骨筋の作用は足関節の底屈・外がえしです。

4.長腓骨筋:×
→長腓骨筋の作用は短腓骨筋と同様、足関節の底屈・外がえしです。

5.長母指伸筋:×
→長母指伸筋の作用は足関節の背屈・内がえしです。

Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
