第60回理学療法士国家試験 午後36−40の解説
(36) 糖尿病に対する運動療法で正しいのはどれか。(60回午後36)
1.インスリン抵抗性を改善する
2.血糖値に関わらず推奨される
3.尿中への糖の排泄を目的とする
4.Borg指数で17程度が適している
5.シックデイに関わらず推奨される
【答え】1
【解説】
糖尿病に対する運動療法については当サイトに以下に詳しくまとめています。有料の糖尿病答え.pdfの中に糖尿病のリハビリのポイント【重要】としてA4 1ページ分に詳しく記載していますので、可能であればそちらも参照してください。
1.インスリン抵抗性を改善する:○
→インスリン抵抗性とは、インスリンが分泌されていても、筋肉などの
組織でそれがうまく作用できない状態の事をいいます。血中の糖は運動時には筋肉で利用されるために筋肉に取り込まれます。また血中の糖を利用する必要がない場合には肝臓に取り込まれてグリコーゲンに変換されたり、脂肪組織に取り込まれて中性脂肪に変換されて貯蔵されます。

筋肉は活動量の低下や運動不足が続くと、ブドウ糖取り込み能力の低
下を招きインスリン抵抗性の原因になります【重要】。運動を行わないで
いると筋肉が眠った状態になっていると想像すれば良いでしょう。眠っ
ていると、宅配業者が荷物をもってきて玄関でピンポンを押しても気が
つかないのと同じです。運動療法をする事によって、筋肉が活性化
し、インスリンによる糖の筋肉への取り込みが改善するのです。
このように、理学療法が病態改善に寄与できる点については国家試験で
も繰り返し問われるポイントになってます(出題委員もこれ知っておいてねと強調しているのです。
2.血糖値に関わらず推奨される:×
→糖尿病患者のリハビリに関しては、過度の高血糖であっても低血糖であっても行ってはいけません。血糖が高ければ高い程、運動強度を上げるといったことではないのです。一般的に血糖が250mg/dl以上では運動療法は開始しないことになっています。またケトン体陽性や増殖性網膜症など血糖コントロール不良患者ではごく軽い負荷にとどめるようにします。
3.尿中への糖の排泄を目的とする:×
→糖尿病患者に対する運動療法の目的は、短期的には血糖の降下、中・長期的にはインスリン抵抗性の改善、筋肉量増加による基礎代謝の向上などがあります。
4.Borg指数で17程度が適している:×
→運動強度はBorg指数で13 (ややきつい)が適しています。
5.シックデイに関わらず推奨される:×
→シックデイ (sick day)については国試では初出となりました。糖尿病の患者が、感染症にかかり、熱が出る・下痢をする・吐く、また食欲不振によって、食事ができないときのことをシックデイ(sick day: 体調の悪い日)と言います。シックデイでは食事摂取が不十分になりやすく、血糖も不安定になり低血糖になりやすいので、運動療法を行う際には細心の注意を図る必要があり、場合によっては運動療法を中止する必要があります。
(37) 急性心筋梗塞の胸痛の特徴で正しいのはどれか。(60回午後37)
1.数分以内に消失する
2.冷汗を伴うことが多い
3.感冒様の前駆症状がある
4.放散痛は生じないことが多い
5.硝酸薬の投与で速やかに消失する
【答え】2
【解説】
心臓の虚血性心疾患には狭心症と心筋梗塞があります。狭心症は可逆性の心筋虚血、心筋梗塞は不可逆性の心筋虚血・壊死です。

1.数分以内に消失する:×
→狭心症は科学性の心筋虚血で胸痛は10分以内に消失する事が多いですが、心筋梗塞は不可逆性の心筋虚血・壊死で胸痛は20分以上継続します。
2.冷汗を伴うことが多い:○
→激烈な疼痛のため交感神経が刺激される結果、汗腺の活動が亢進し、発汗(冷汗)を生じます。
3.感冒様の前駆症状がある:×
→感冒様の前駆症状はありません。
4.放散痛は生じないことが多い:×
→狭心症や心筋梗塞による胸痛は以下の図のように放散痛を生じる事が多いです。これを関連痛といいます。

5.硝酸薬の投与で速やかに消失する:×
→狭心症では冠動脈拡張作用にある硝酸薬(ニトログリセリン)によって胸痛が消失する事が多いですが、心筋が壊死した心筋梗塞では硝酸薬は無効です。
(38) 患者との面接時における開かれた質問はどれか。(60回午後38)
1.「右膝は痛みますか」
2.「朝食を食べましたか」
3.「退院後は何をしますか」
4.「昨晩は熟睡できましたか」
5.「椅子から立ち上がれますか」
【答え】 3
【解説】
医療面接において、いくつかの質問形式があります。
・閉じた質問 (closed question):「はい・いいえ」で答えられる質問
・開かれた質問 (open question):自由に答えられる質問
・焦点をあてた質問(focused question ):特定のテーマに焦点を絞った質問であり、閉じられた質問よりは自由に、しかし開かれた質問よりは自由度の低い質問です。最も臨床で用いられる頻度が高い。例えば、「最近、頭痛がして困っているんです」に対して、「いつ頃から痛み出しましたか?」などと聞く事を指します。
・中立的質問 (neutral question):質問された人が動揺せずに返答できる質問のことで、氏名、住所、生年月日、 職業などを質問する事を指します。
1.「右膝は痛みますか」:× closed question
2.「朝食を食べましたか」:× closed question
3.「退院後は何をしますか」:○ Open question
4.「昨晩は熟睡できましたか」:× closed question
5.「椅子から立ち上がれますか」:× closed question
(39) ステロイドの副作用で正しいのはどれか。(60回午後39)
1.筋固縮
2.低血圧
3.低血糖
4.大腿骨頭壊死
5.高カリウム血症
【答え】4
【解説】
ステロイドには多彩な副作用があります。
1.筋固縮:×
→ステロイドを服用していると筋肉の力が弱くなってしまうことがあり、ステロイド筋症と呼ばれています。そのメカニズムは長い間不明でしたが、最近になってステロイドが筋肉の細胞にあるグルココルチコイドレセプター(GR)と結合すると、この受容体がタンパク質分解を促進する遺伝子や合成を抑制することがわかってきています。
2.低血圧:×
→アルドステロン様作用でNaが再吸収されるため血圧が上昇します。
3.低血糖:×
→ステロイド薬を使ったときに発症する糖尿病をステロイド糖尿病といいます。ステロイドによって肝臓からの糖の放出が進んでしまうことや、血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌が抑えられてしまうことによって高血糖となり、糖尿病が発症します。また、ステロイドを投与することで食欲が増すことも、血糖値が上がるリスクを高めます。
4.大腿骨頭壊死:△
→国家試験では初出です。ステロイド治療をしたすべての患者さんに大腿骨頭壊死が起こるわけではありませんが、日本では大腿骨頭壊死症患者の約半数にステロイド治療歴があると言われています。ただし厚労省によると現時点では副作用と呼ぶべきかどうかは不明であるとされています。
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1m07.pdf
余談ですが、私の外来に通院している患者の奥様が間質性肺炎で他院でステロイド治療を受けているんですが、最近、両側の特発性大腿骨頭壊死になり、両側ともに大腿骨骨頭置換術を受ける事になったそうです。2回に分けて手術を受けるそうです。ステロイドって怖いですねと話をしました。
5.高カリウム血症:×
→アルドステロン様作用で尿細管でNaとKの交換を促し、Kが尿細管に放出されるため、低カリウム血症になります。
(40) 正常健常人の立位姿勢で持続的に活動している筋はどれか。(60回午後40)
1.腸腰筋
2.大殿筋
3.大腿四頭筋
4.大腿二頭筋
5.ヒラメ筋
【答え】5
【解説】
立位姿勢を保持するためには、抗重力筋の機能がとても重要です。抗重力筋は重力に対して身体を伸展させる働きがあるもので、具体的には脊柱起立筋、腹筋群、大殿筋(股関節伸展)、大腿四頭筋(膝関節伸展)、下腿三頭筋(足関節底屈 <伸展>)などがあります。

抗重力筋のうち、下腿三頭筋(ヒラメ筋・腓腹筋)は持続的に活動しています。これは、立位姿勢で姿勢が乱れた場合(わずかな外乱)、その姿勢制御には、わずかな外乱のため、まず足関節戦略が用いられます。足関節戦略とは、外乱が生じた際に足関節→膝関節→股関節の順に筋肉が収縮しバランスを取るというものです。
そのため、足関節戦略として足関節の腓腹筋やヒラメ筋が活動する事になります。人の立位ではつねに姿勢・バランスが微妙に変化しているため、バランスを制御する筋活動は持続的に生じます。また足関節だけでバランスが取れれば、膝関節や股関節の筋肉は活動しなくても良く、膝関節や股関節の筋肉は、足関節戦略が不十分な場合にのみ活動すれば良いことになります。
ちなみに、姿勢維持のため筋肉が活動し続けると疲労が蓄積するので、ヒラメ筋は疲労しにくい赤筋成分が多くなっています(腓腹筋は歩行時のPush Off時に大きな力を必要とするので白筋成分が多いです。赤筋がないわけではありませんが、役割分担していると思われます)。
1.腸腰筋:×
2.大殿筋:×
3.大腿四頭筋:×
4.大腿二頭筋:×
5.ヒラメ筋:○
この内容については過去に複数回出題されています。



Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
