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第58回理学療法士国家試験 午後96-100の解説

96.全身性エリテマトーデスにみられにくいのはどれか。(58回午後96)
 
1.頭痛
2.けいれん
3.被害妄想
4.音声チック
5.気分の変動


【答え】4
【解説】
 自己免疫疾患の一つ全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus: SLE)の精神症状を問う問題です。難問ですが、音声チックが小児から見られる精神病なので、成人で発症するSLEとは少し違うかなという感じです。受験生のほとんどは「そんなの知らんし〜」と面食らったと思います。医師の経験から言うとSLEではうつ症状を呈する人が多いなという印象です。これは治療にステロイドを服用することと、自己免疫疾患は薬で症状が緩和することはあっても基本的に直らない病気なので、気分が沈む人が多いです。その他、ありとあらゆる症状(不定愁訴といいます)を訴える事が多いです。
 このような状況ですので。こんな問題出すのは本当に酷だなという印象しかありません。「みられにくい」というのは逆に言えば「みられる事もある」ですから、どれをとっても「みられない」ものではないという意味です。
 この問題は出題委員が点をあげたくないと意図した問題ですので、できなくても気にしなくて良いと思います。もちろん過去未出題です。
 前述のように何となく音声チックを選んで正解になればラッキーですが、音声チックもSLEでないとは言い切れないので、この問題を自信を持って正解できる人はほぼ皆無だと思います。
 患者さんに見られる症状の頻度などは、実際にその病気の患者をたくさん診ていてはじめてわかるものであって、そのような事を実習でもほとんど経験しないであろう受験生に問うなんて不適切だと思います。

 なお、SLEは経過中に多彩な神経精神症状が生じることで知られ,最近では神経精神ループス(neuropsychiatric systemic lupus erythematosus: NPSLE)と総称されるようになりました。NPSLE はループス腎炎と並んで SLE 難治性病態の 1 つでSLEの約半数に出現すると言われています。
 NPSLEの症状は主に精神症状と神経症状に分けられ、1999年の米国リウマチ学会の報告(下の表)によると、精神症状としては気分障害が20.7%、認知機能障害が19.7%、不安障害が6.4%にみられ、神経症状としては頭痛が28.3%、痙攣が9.9%、脳血管障害が8%に見られるとされています。
 音声チックに関する記載はありません。

西村勝治、佐藤恵里:全身性エリテマトーデス(SLE)における精神障害 より引用
Jpn J Gen Hosp Psychiatry 23 (1): 42-51, 2011

選択肢を見ていきます。

1.頭痛:○ 
 頭痛はNPSLEの28.3%にみられるとされています。

2.けいれん:○
 けいれんはNPSLEの9.9%にみられるとされています。

3.被害妄想:○
 被害妄想は全般性不安障害でもみられる事があります。不安障害はNPSLEの6.4%にみられるとされています。

4.音声チック: × 
 音声チックは小児精神病でみられ、突然奇声を上げたりします。運動チックと音声チックの両方が見られるのをTourette症候群と言います。音声チックはSLEでみられるのは稀です。

5.気分の変動:○
 気分障害はNPSLEの20.7%に見られるとされています。
 

97.精神遅滞の発症と関連がない疾患はどれか。(58回午後97)
 
1.Kleinfelter症候群
2.Prader-Willi症候群
3.Turner症候群
4.Wallenberg症候群
5.West症候群


【答え】4
【解説】
 精神科疾患で小児に見られる疾患の多くが精神遅滞を伴います。
 Wallenberg症候群はみなさん良く知っている疾患だと思いますので、精神遅滞を伴わない疾患はWallenberg症候群を選べるでしょうが、他の疾患についてもこれを機会に知っておきたいところです。とくにKleinfelter症候群(男)とTurner症候群(女)は染色体異常として最低覚えておきたい疾患です

【1】てんかんにみられる精神遅滞
 たとえば小児でみられる「てんかん」のうち乳児期にみられるWest症候群や幼児期にみられるレノックス・ガストー症候群では精神遅滞がみられます。

【2】染色体異常にみられる精神遅滞
 染色体異常にともなう疾患も精神遅滞を伴う事が多いです。

・ダウン症は21番目の染色体が3つある21トリソミーですが、筋緊張の低
下、心臓奇形の他精神遅滞を伴います。

・ターナー症候群は女児にみられる染色体異常(性染色体がXのみ)です。
女性の性染色体はXXで、男性はXYです。ターナー症候群では女児ですが、XX染色体のXが一つ足りません。なので女性の機能がすこし足りなくなるみたいです。症状としては
 ①低身長(身長も足りない
 ②卵巣機能不全(女性ホルモンも足りない
 ③精神遅滞(精神も足りない)などがあります。
(覚え方)
 ターナー症候群はX染色体が足りないな〜→「ター(りない)ナー」と覚えました。

・クラインフェルター症候群は男児に見られる染色体異常です。男児(XY染色体)でXが余分にあります(XXY)。これはお母さんの染色体(XY)が卵子になるときにXとYに分離せずXYのまま、精子のXと合わさってXXYになるらしいです→47XXY (普通は染色体は46本でした)。
 以下のような特徴があります。
 1.高身長で手足も長い
 2.睾丸や陰茎が小さい(男の部分が薄まるのね)
 3.女性化乳房(乳房が大きくなる)
 4.乳癌になりやすい
(覚え方)男児に多いですから以下のように覚えました。
 暗いところでタバコ(フィルター)を吸うは男の子だろ!→くらい(クライン)タバコ(フィルター)でクラインフェルターは男と覚えました。息子は親と違ってタバコを吸うので、すぐに覚えました。

【3】その他の精神遅滞を伴う疾患
脆弱X症候群→X染色体が弱い→男、自閉症、注意欠如・多動性障害
Prader-Willi症候群:プラダー(内分泌内科)-Willi(精神科医)の名前。
  肥満・低身長・糖尿病と精神発達遅滞

Wilipedia プラダーウィリー症候群 より引用
https://ja.wikipedia.org/wiki/プラダーウィリー症候群

高級ブランドのプラダって知ってますか?プラダのバックを持った女の子は肥満で背が低く、精神遅滞もあるって覚えたらどうでしょうか?

・結節性硬化症:顔面血管腫、精神発達遅滞
・神経線維腫症(レックリングハウゼン病):皮膚にカフェオ斑

選択肢です。
1.Kleinfelter症候群:○ 男児にみられる染色体異常
2.Prader-Willi症候群:○ 肥満・低身長が特徴です 
3.Turner症候群:○ 女児にみられる染色体異常
4.Wallenberg症候群:× 延髄外側の脳梗塞で起こる症候群
5.West症候群:○ 乳児にみられるてんかんで精神遅滞を伴う


98.親しい人間関係を構築できず、奇異な考え方や風変わりな行動が継続してみられ、パーソナリティー障害を指摘された。最も考えられるのはどれか。(58回午後98)
 
1.演技性パーソナリティー障害
2.回避性パーソナリティー障害
3.猜疑性<妄想性>パーソナリティー障害
4.シゾイド<統合失調質>パーソナリティー障害
5.統合失調型パーソナリティー障害


【答え】5
【解説】
精神科の分野でのパーソナリティー障害の問題です。パーソナリティー障害の問題では統合失調型と統合失調質(シゾイド)とが単語が似ているので迷いやすく、国試で問われやすいです。

・奇異な考え方、身なり  →統合失調型
・社会から孤立しようとする →統合失調質 [シゾイド]

 統合失調症は英語でshizophrenia(シゾフレニア)といいます。Shizoidとはshizo(統合失調症)+zoid (みたいな)という意味になります。国試的には統合失調質→統合失調(室)に読み替えて、室・部室から部屋に閉じこもると覚えるようにしました。

・過度に人の注意を引こうとする  →演技性
・拒絶される事を恐れて消極的になる  →回避性
他者の動機を悪意のあるものと解釈する  →妄想性(被害妄想)
恋人や配偶者を根拠なしに疑う      →猜疑性(さいぎせい)
妄想性と猜疑性は同じパーソナリティ障害とされています。

問題文では「親しい人間関係を構築できず、奇異な考え方や風変わりな行動が継続してみられる」と書かれており、「親しい人間関係を構築できず」から統合失調質?と思うかもしれません(ひっかけ)ですが、「奇異な考え方や風変わりな行動」から統合失調型を選びます。


99.鉄欠乏性貧血の患者にみられやすい睡眠・覚醒障害はどれか。(58回午後99)
 
1.睡眠時遊行症
2.ナルコレプシー
3.睡眠相前進症候群
4.むずむず脚症候群
5.閉塞性睡眠時無呼吸障害


【答え】4
【解説】
 今年は内部障害の血液の分野では、これまで未出題の鉄欠乏性貧血が出る事を予想していました。そして、鉄欠乏性貧血の貧血パターン(小球性低色素性貧血)が問われるといて対策していましたが、いきなり、鉄欠乏性貧血と睡眠障害について問われ、予想を外されてしまいました。

1.睡眠時遊行症:×
 睡眠時遊行症は夢遊病と呼ばれる事があります。睡眠時に突然起き上がり徘徊しますが、本人は覚えていません。ノンレム睡眠のときに生じる睡眠障害です。頭が休んでいて体が動くからノンレムですね(国試に出そうです)。普段とは異なる環境(合宿、出張のときなど)で眠ると生じることもあります。一般的には、年齢が上がり、思春期の頃には、自然にエピソードが少なくなります。

くちべくちこブログ 子供の夢遊病(睡眠時遊行症)にドキッとした話 より引用
https://kuchibe.com/sleepwalking

2.ナルコレプシー:×
 授業中にガーガー寝てる人を見た事はありませんか?単に前日夜更かししただけかもしれませんが、ナルコレプシーという病気かもしれません。
 ナルコレプシーは日中に自分ではコントロールできない強い眠気がやってきて、寝落ちしてしまいます。仕事をしている間にそうなる人もいます。典型的な方だと、眠気以外にもいろいろな症状があります。例えば、寝入り際に金縛りになったり、夢と現実が混ざったような夢を見たり。夜間の睡眠がぶつぶつに途切れ、ぐっすり眠れない人もいます。レム睡眠時に起きると言われています。体が脱力しているのでレム睡眠ですね。頭は動いているので夢も見ます(国試に出そうです)。

3.睡眠相前進症候群:× 
 睡眠相前進症候群は中年期以降に発症する夜のはじめ頃から眠くなり、早朝に目が覚めてしまう症状が出現する睡眠障害です。睡眠相が通常より前に進むという意味です。一般的な人と比べて、就寝と起床時間が早いことが特徴です。加齢に伴って、必要となる睡眠時間が短くなることが要因です。

阪野栗クリニック 睡眠相前進症候群とは より引用
https://banno-clinic.biz/advanced-sleep-phase-syndrome/


4.むずむず脚症候群:○
 むずむず脚症候群は英語でRestless legs syndrome(レストレスレッグス症候群)とも言われます。入眠の時などに脚に耐えがたい不快な感覚が起こり、じっとしていられない状態が慢性的に起こる病気です。脚を叩いたりさすったりすると不快感が軽くなることが特徴です。
 むずむず脚症候群は鉄欠乏性貧血に関連していると言われています。鉄が体内で不足してしまうとドパミンの働きが本来より低下してしまうことにより、手足の運動機能がしっかりと機能しなくなってしまうのと言われています。

5.閉塞性睡眠時無呼吸障害:× 
 いわゆる睡眠時無呼吸症候群 (Sleep apnea syndrome: SAP)の事です。肥満などが原因となり、睡眠時に上気道が狭くなり完全に閉塞してしまうと、無呼吸となります。


100.神経性無食欲症で生じやすいのはどれか。(58回午後100)
 
1.頻脈
2.高血圧
3.高血糖
4.高リン血症
5.高コレステロール血症
 

【答え】5
【解説】 
 摂食障害についての問題ですね。神経性無食欲症と神経性大食症は国試では頻出ですが、設問内容が難しく、国試未出題の内容です。ただし、神経性無食欲症における抵リン血症は重要なので覚えておいた方が良いと思われます。

では選択肢を見ていきます。

1.頻脈:× 
→神経性無食欲症では徐脈になります。

2.高血圧:× 
→神経性無食欲症では低血圧になります。

3.高血糖:× 
→極端なカロリー制限により低血糖になります。

4.高リン血症:×
→神経性無食欲症では栄養不良(摂取不足)により低P血症になります。また神経性無食欲症では、Refeeding症候群と言って、治療する場合(再度re- 栄養feed)に急速にカロリーを与えると低P血症がさらに進行し、状態が悪くなる場合があります。
 昔、豊臣秀吉が兵糧攻めの後に投降してきた敵に粥をふるまった際に、次々と死亡したのが毒を盛ったと誤解されたようですが、じつはRefeeding症候群であったと考えられています。
 長期の飢餓状態にあると,細胞内も糖質不足の飢餓状態になり,生命活動に必須のエネルギー媒介物質であるATPの産生も低下しています。それと同時に慢性的に電解質も不足状態にあり,細胞内に多い電解質のK、Mg、Pも低下しています。こうした状況下に急に糖が投与されると,糖を細胞内にとり込んでATPの産生に使おうとします。ATP産生にはPが必要なのでPが急速に不足することになります。飢餓状態への高エネルギー投与がもたらすP欠乏症は,心不全,不整脈,意識障害,肝機能異常などを招くと言われています。
 したがって、神経性無食欲症では低リン血症となっていて、さらに治療でカロリーを与えるときに注意しなければならないという事を知っておかなければなりません

5.高コレステロール血症:○
→極端なカロリー制限により低コレステロールになるような気がしますが、実際はそうでなく高コレステロール血症になります。これは神経性無食欲症では甲状腺機能が低下するため、二次性にコレステロールの代謝異常はおこり、高コレステロール血症になるようです。
 甲状腺ホルモンは肝臓のLDLレセプターを活性化させて、LDL-コレステロール(いわゆる悪玉コレステロールです)の処理を行います。したがって、甲状腺機能低下症ではその作用が低下し、血清LDL-コレステロールが増加することになります。
                      
以下に摂食障害患者にみられる検査値異常について紹介します。

AED レポート 2016 | 3 版 <日本語版 >
摂食障害 医学的ケアのためのガイド より引用
https://higherlogicdownload.s3.amazonaws.com/AEDWEB/27a3b69a-8aae-45b2-a04c-2a078d02145d/UploadedImages/MCSG_Japanese_Translation_07_06_17.pdf 



Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。

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