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第60回理学療法士国家試験 午前86−90の解説

(86) 末梢神経伝導検査が診断に有用なのはどれか。(60回午前86)

1.Parkinson病
2.手根管症候群
3.多系統萎縮症
4.筋ジストロフィー
5.閉塞性動脈硬化症


【答え】2
【解説】
末梢神経伝導速度検査は末梢神経に異常があるニューロパチーの診断に有用です。選択肢の中でニューロパチーをきたすのは手関節部で正中神経の絞扼性神経障害をきたす手根管症候群のみです。そしてこのような疾患で運動神経に脱髄がおこると刺激は伝導しますが、跳躍伝導が障害されて神経伝導速度が落ちます。

1.Parkinson病:×中枢神経(錐体外路系)の異常
2.手根管症候群:○
3.多系統萎縮症:×錐体外路系・小脳・自律神経の多系統の異常
4.筋ジストロフィー:×筋肉の異常(ミオパチー)
5.閉塞性動脈硬化症:×筋肉の虚血・壊死をきたす場合がある。
           →筋肉の異常(ミオパチー)


(87) 股関節屈曲拘縮を調べるのはどれか。(60回午前87)

1.Allisテスト
2.McMurrayテスト
3.Patricテスト
4.Simmondsテスト
5.Thomasテスト


【答え】5
【解説】
股関節のテストについては以下のテストを知っておいてください。

1.Allisテスト:×
→アリス徴候(Allis sign)は,発育性股関節形成不全(以前は先天性股関節脱臼と言われていました)の診断やスクリーニングに用いられる診察手技です。股関節が脱臼すると、下肢の重みによって、大腿骨頭は下方に転位します。すると股関節を同じ角度で屈曲しても、膝の位置が通常より下になります。これをAllis徴候といいます。58回午後9で出題されていました。

2.McMurrayテスト:×
→McMurrayテストは半月板損傷を検出するテストです。

3.Patricテスト:×
→上図のように股関節のテストですが、Patricテストは股関節や仙腸関節由来の腰痛(主に変形性股関節症)の場合に陽性となります。

4.Simmondsテスト:×
→アキレス腱の検査はシモンズテストとトーマステストを覚えましょう。

5.Thomasテスト:○
→腸腰筋の短縮拘縮で陽性となります。


(88) 胃全摘術後の悪性貧血に関与するのはどれか。(60回午前88)

1.ビタミンB1
2.ビタミンB2
3.ビタミンB12
4.ビタミンC
5.ビタミンD


【答え】3
【解説】
58回午前76と同一問題でした(繰り返しの少ない消化器の問題で、2年前の同一問題が出題されるのは意外でした)。

まず胃とホルモンの関係から復習します。食物が胃の幽門近くの前庭部に来ると、G細胞からガストリンが産生・分泌され、胃底部のある3つの細胞からのホルモン産生を促します。
・主細胞からペプシノーゲンが産生され、胃内でペプシンに変換されると蛋白をポリペプチドに分解します。
・壁細胞からは胃酸と内因子が産生されます。内因子はビタミンB12の吸収に働きます。また胃酸は鉄の吸収にも関与します。
・副細胞からは粘液が産生されます。

さて、胃全摘の後は、二つのパターンの貧血になる事を知っておかなければなりません。
(1)鉄欠乏性貧血
 胃が全摘されると、胃の壁細胞からの胃酸の分泌が低下します。胃全摘により胃酸の分泌が損なわれると、食物中の鉄分の吸収率が1/10~1/100に低下し、ヘモグロビン(血色素)が合成されなくなります。鉄欠乏性貧血はいろいろな原因がありますが、手術により胃が全摘されると、術後半年ぐらいで鉄欠乏性貧血になりやすいと言われています。
 鉄はヘモグロビンの構成要素です。肺から取り込んだ酸素は、ヘモグロビンの中にある鉄(ヘム鉄)に結合して血中を運ばれます。鉄欠乏性貧血の場合は、赤血球の産生が障害され、赤血球の数が少なくなりますが、赤血球ができる時に1個1個の大きさが小さくなると同時にヘモグロビン(血色素)ができないという特徴があり、貧血のパターンとしては小球性低色素貧血といいます(小球性は赤血球1個1個の大きさが小さい、低色素はヘモグロビンの量が少ない事を意味します)。

(2)巨赤芽球性貧血
 胃が全摘されると、胃の壁細胞からの内因子の分泌が低下します。内分泌の分泌が少なくなると、小腸でのビタミンB12の吸収ができなくなります。ビタミンB12も赤血球の合成に必要です。手術により胃が全摘されると、術後5年ぐらいで、巨赤芽球性貧血になりやすいと言われています。
ビタミンB12欠乏の場合には、赤血球ができる時に1個1個の大きさ大きくなるという特徴があります。これを大球性貧血といいます。大球性貧血の事を別名巨赤芽球性貧血といいます。
 また巨赤芽球性貧血をきたすビタミン欠乏として葉酸も忘れてはいけません。葉酸はビタミンB12と同じビタミンB群の一つです。食物の葉に多く含まれ、ホウレンソウから発見されました。
 ビタミンB12や葉酸欠乏でも、赤血球の産生が障害され、赤血球の数が少なくなりますが、赤血球ができる時にビタミンB12や葉酸が少ないとDNAがうまくできずに細胞自体が大きくなります。大きくなった核はやがて脱核して核はなくなります。ただし鉄欠乏性貧血とは異なりヘモグロビン(血色素)は普通にできます。この結果、貧血のパターンとしては大球性正色素貧血になります。(大球性は赤血球1個1個の大きさが小大きい、正色素はヘモグロビンの量が正常を意味します。大きさが大きくなっても血色素(Hb)はたくさんできないのです)。

以下のような予想問題を作っていたんですが、まだ出題されませんね…ははは。 

 自作問題の答え 4


(89) 肘離断性骨軟骨炎で誤っているのはどれか。(60回午前89)

1.10〜20代に多い
2.投球を伴うスポーツで多い
3.初期では保存療法が第一選択である
4.超音波画像は初期診断に有用である
5.学童期の野球選手の有病率は20〜30%である


【答え】5
【解説】
肘離断性骨軟骨炎はいわゆる野球肘のことです。以下に肘離断性骨軟骨炎についてまとめました。

51回午後52も肘離断性骨軟骨炎についての知識を問う内容となっています。

  51回午後52の答えは5

選択肢について見て行きます。内容から4か5か迷うところですが、5の20 〜30%ってそんなにいるか?っていう話です。

1.10〜20代に多い:○

2.投球を伴うスポーツで多い:○

3.初期では保存療法が第一選択である:○

4.超音波画像は初期診断に有用である:○
→骨の離断なので、確定診断にはX線検査やMRI検査が必要です。日本整形外科学会のHPにも「初期には通常のX線(レントゲン)で写り難いためMRI検査で確定診断します。骨軟骨片が分離、遊離してくる時期はX線でも異常所見が出ますが、特殊な方向からのX線撮影も診断に有効です。」と書かれていますが、超音波検査については言及がないです。


超音波は骨の部分で超音波が反射するので、骨内部の様子はわかりません。しかし最近では以下のHPように、骨表面の状態を見る事によって超音波検査が初期診断(検診でのスクリーニング検査で確定診断ではありません)に用いられているようです。このHPでは「初期に発見するために有用な検査です。単純X線でわからないようなものまで診断可能です。侵襲がなく持ち運び可能であるためスポーツ検診で使用されます。」と書かれています。
問題ではスクリーニングという意味での「初期診断」と書いているのがミソです。

江戸川病院HP 野球肘:離断性骨軟骨炎(上腕骨小頭OCD)
https://www.edogawa.or.jp/診療科・部門スポーツ医学科/野球肘・離断性骨軟骨炎(上腕骨小頭OCD) より引用

上記エコー所見は(来年はないですが)2年後・3年後には出題されるかもしれませんので、チェックしておいてください。



5.学童期の野球選手の有病率は20〜30%である:×
→肘離断性骨軟骨炎は統計的には100人に1~2人(約2%)程度と言われています


(90) 肩関節周囲炎で正しいのはどれか。(60回午前90)

1.若年者で多い
2.予後不良である
3.感染性疾患である
4.結髪動作が困難になる
5.手術療法が優先される


【答え】4
【解説】
1.若年者で多い:×
→肩関節周囲炎は一般に「五十肩」と言われる疾患です。中年の人に多いです。

2.予後不良である:△
→急性期には運動制限を引き起こす運動時痛に加えて安静時痛や夜間痛が出現し、徐々に関節拘縮が現れて肩の可動域が制限されます。慢性期には徐々に痛みが軽減し日常生活でも患肢をかばう必要がなくなりますが、可動域制限は残存します。回復期には可動域制限がまだ残るものの、痛みが少ないために大きな機能障害の自覚はなくなり徐々に可動域が自然回復します。これらの回復経過に1年前後を要するとされますが、一方で平均約7年後にも半数の患者に何らかの痛みや可動域制限が存在していたとの報告があり、安静と患者の自然治癒力に任せるだけでなく、積極的に痛みと可動域制限を改善する治療が必要です。

3.感染性疾患である:×
→関節を構成する骨、軟骨、靱帯や腱などが老化して肩関節の周囲に組織に炎症が起きることが主な原因と考えられています。感染性疾患ではありません。

4.結髪動作が困難になる:○
→主症状は、肩周囲の痛みと動きの低下です。特に結髪・結帯・更衣などの日常生活動作が障害されます。

5.手術療法が優先される:×
→痛みが強い急性期には、三角巾・アームスリングなどで安静を計り、消炎鎮痛剤の内服、注射などが有効です。急性期を過ぎたら、温熱療法(ホットパック、入浴など)や運動療法(拘縮予防や筋肉の強化)などのリハビリを行います。これらの方法で改善しない場合は、手術(関節鏡など)を勧めることもあります。


Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。














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