第61回理学療法士国家試験 午後66−70の解説
(66) 排便の生理で正しいのはどれか。(61回午後66)
1.排便中枢は腰髄にある
2.外肛門括約筋は平滑筋である
3.食事により胃大腸反射が生じる
4.肛門直腸角が体幹を前屈すると鋭角になる
5.便意は糞便による結腸壁の伸展刺激により生じる
【答え】3
【解説】
排便調節については以下にまとめました。

1.排便中枢は腰髄にある:×
→排便中枢は仙随 (S2〜S4)にあります。
なお交感神経の下腹神経はTh12〜L2ですが、こちらは蓄便に働くため、排便中枢ではありません。
2.外肛門括約筋は平滑筋である:×
→陰部神経支配の外肛門括約筋は随意神経なので横紋筋です。
3.食事により胃大腸反射が生じる:○
→食事をすると腸が動き出し便が肛門に送り込まれます 。胃大腸反射は特に朝食後に最も強く働きます(朝ご飯を食べた後、しばらくすると大便をしたくなるのはこれです)。朝食を抜くと便秘傾向となりますので注意してください。
4.肛門直腸角は体幹を前屈すると鋭角になる:×
→国試初出の知識です。肛門直腸角は、直腸と肛門の折れ曲がり角度のことで、通常は約90度で便漏れを防いでいます。排便時は前かがみの「考える人」の姿勢(約120〜135度)をとると、恥骨直腸筋が緩んでこの角度が直線化し、便がスムーズに排出されます。

【直腸の角度を読む!】トイレに座れない患者さんの排泄をどうすべきか より引用
https://www.rishou.org/activity-new/qa/qa-vol-375#/
5.便意は糞便による結腸壁の伸展刺激により生じる:×
→便意を感じるのは直腸壁の伸展で直腸内圧の上昇した時です。結腸は上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸を指します。
(67) 体温で正しいのはどれか。2つ選べ。(61回午後67)
1.肝臓は熱産生を行う
2.体温の受容器は腹壁にある
3.体温調節の中枢は視床にある
4.発汗は行動性体温調節反応の一つである
5.運動による発汗はアポクリン腺の分泌物である
【答え】1と2
【解答】
1.肝臓は熱産生を行う:○
→エネルギーの消費=熱産生ですが、エネルギー消費は基礎代謝が70%で、そのほとんどが筋肉で消費されます。基礎代謝だけでなく、身体活動や食事による熱産生もほとんどが筋肉の運動によるものです。一方、肝臓は色々な生化学反応を行っており、栄養代謝のための生化学反応によって熱を生じます。肝臓は筋肉に次ぐ第2の熱産生器官であり、安静時の身体の熱の約20〜25%を生産します。

2.体温の受容器は腹壁にある:○
→体温は皮膚表面にある温度受容器(点で温度を感じる温点・冷点)や、体の深部にある温度受容器で温度を感知します。腹壁にも表面体温の受容器が分布しています。一方深部体温は腹部内臓、腹腔壁、大血管壁等で感知されます。
3.体温調節の中枢は視床にある:×
→体温の中枢は視床下部にあります。

4.発汗は行動性体温調節反応の一つである:×
→国試初出の知識です。体温調節には自律性体温調節反応と行動性体温調節反応があります。発汗・皮膚血管調節・ふるえ熱産生などは自律神経反応によるもので、自律性体温調節反応と呼びます。一方、衣服の着脱や冷暖房・扇風機(のスイッチを入れる)など意志によって体温調節をする事を行動性体温調節と呼びます。

https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2024.960012/data/index.html
5.運動による発汗はアポクリン腺の分泌物である:×
→エクリン腺は全身に分布し体温調節のためのサラサラした汗を出す無臭の汗腺、アポクリン腺は脇や外陰部など特定部位に存在し、脂質・タンパク質を含むニオイの元となる汗(ワキガ)を出す汗腺です。運動による発汗はエクリン腺から出ます。

(68) 男性生殖器で正しいのはどれか。(61回午後68)
1.勃起中枢は腰髄にある
2.射精は交感神経の作用による
3.機能的な精子形成は50日かかる
4.射精時は膀胱内括約筋が収縮する
5.精子の射精後膣内での寿命は12時間である
【答え】2と4(不適切問題)
【解説】
射精の事が理学療法士の国家資格に必要でしょうか?悪問ですね。
1.勃起中枢は腰髄にある:×
→陰茎の血流が増える勃起自体は副交感神経の働きです。勃起中枢は性的興奮を感知する大脳(視床下部・大脳辺縁系)と仙随 (S2-4) にあります。
2.射精は交感神経の作用による:○
→射精は勃起とは違って、交感神経が優位になることで引き起こされる生理現象です。
3.機能的な精子形成は50日かかる:×
→精子が精巣で作られるのに 約74日(約2.5〜3か月) かかるとされています。
4.射精時は膀胱内括約筋が収縮する:○
→膀胱内括約筋は膀胱括約筋ではなく内尿道括約筋のことです。惑わそうとして内尿道括約筋と書かないところが国試のいやらしいところです。射精時には膀胱括約筋は弛緩し、排尿を抑制しますが、膀胱の出口にある膀胱内括約筋 (内尿道括約筋) は収縮し、排尿を抑制するとともに、精液が膀胱へ逆流するのを防ぎます。
5.精子の射精後膣内での寿命は12時間である:×
→射精されて女性の腟内に入った精子は、女性の体内で約5日間生き続けます。一方、卵子の寿命は、排卵後わずか約24時間です。
(69) 呼吸商で正しいのはどれか。(61回午後69)
1.換気障害の指標である
2.長時間の運動で増加する
3.蛋白質の呼吸商は脂質より大きい
4.糖質の燃焼が多くなると低下する
5.二酸化炭素排出量から酸素消費量を引いた値である
【答え】3
【解説】
呼吸商とは酸素消費量に対する二酸化炭素発生量の比をいいます。

呼吸生理の分野でたまに出てきますが、国試では栄養素の種類によって呼吸商が変わる事は知っておく必要があります。

1.換気障害の指標である:×
→換気障害とは関係ありません
2.長時間の運動で増加する:×
→短時間の運動では糖質が主なエネルギー源となるため、呼吸商は比較的高く推移します。一方、運動を30分〜1時間以上継続した場合、 糖質が枯渇し始め、脂肪を主エネルギー源として利用する割合が増加します。この結果、呼吸商は0.8〜0.7程度まで徐々に低下します。
3.蛋白質の呼吸商は脂質より大きい:○
→呼吸商は糖質1.0、たんぱく質0.8、脂質0.7で覚えてください。
4.糖質の燃焼が多くなると低下する:×
→糖質の呼吸商は1.0です。その他の基質より大きいです。
5.二酸化炭素排出量から酸素消費量を引いた値である:×
→呼吸商は [二酸化炭素産生量] と [酸素消費量] で除した(割った)値です。

ここで注意してもらいたいのは、呼吸商の分子は二酸化炭素排出量 (VO2)ではなくて、二酸化炭素産生量である点です。二酸化炭素排泄量は一見二酸化炭素産生量と同じと思うかもしれませんが厳密には異なります。

ガス交換比は運動負荷試験 (CPX)で用いられる指標ですが、呼吸商とは微妙に違います。その点について、混同しないように、以下説明します。
ガス交換比で用いられる酸素摂取量(VO2)と二酸化炭素排出量(VO2)をみてみると、それぞれ、口元で酸素濃度・二酸化炭素濃度、換気量を測定して求めます。ポイントは口元の出入りだけで測定している事です。

では呼吸商ではどうでしょうか?呼吸商は酸素消費量と二酸化炭素産生量を測定することとなっています。ここではそれぞれの入口と出口を考えてください。
酸素の入口は吸気(口)で出口は呼気(口)しかありません。したがって呼吸商でいう酸素消費量はCPXの際に口元で測定した酸素摂取量と全く同じです。
一方、二酸化炭素の入口は吸気(口)ですが、出口はどうでしょう?
二酸化炭素は呼気(口)から排出されますが、場合によっては、
CO2+H2O → H2CO3 → H+ + HCO3-
と変換されて、腎臓から排出されるルートがあるのです。
したがって、二酸化炭素産生量はCPXでの二酸化炭素排泄量とはすこしだけ違います(ほぼ同じですが…)。
なお、ガス交換比の傾き(VCO2/O2)はほぼほぼ呼吸商なので、以下の図(44回午前10より)でATになる前の傾きは各種栄養素をバランス良く消費するため、呼吸商(0.8)と同じ傾き(1より小さい)になります。ATを超えると解糖系により糖質中心の利用となるので、ガス交換比の傾きはほぼ1になります。

なお、ATからRC (呼吸性代償開始点)を超えると、傾きは1より大きくなります。糖質・たんぱく質・脂質の呼吸商は1を超えませんが、ガス交換比の傾きが1より大きくなるのはなぜでしょうか?
実は、有機酸(リンゴ酸、クエン酸など)の呼吸商(RQ)は1.0を超え、通常1.33~1.78程度と非常に高い値を示します。これは有機酸が炭水化物よりも酸素原子(O)を多く含むため、細胞呼吸で必要な酸素消費量が少なく、排出される二酸化炭素が多くなるためです。RCを超えると、これら有機酸も利用されるので、傾きが大きくなるのです。
今回は呼吸商の問題を含めて、ガス交換比についても理解を深められるように解説しました。しっかり理解するようにしてください。
(70) 肩甲骨に対する前鋸筋と僧帽筋上部線維の作用で共通するのはどれか。(61回午後70)
1.下制
2.挙上
3.内転
4.下方回旋
5.上方回旋
【答え】5
【解説】
前鋸筋の作用は肩甲骨の外転・上方回旋です。

僧帽筋は上部線維・中部線維・下部線維で微妙に作用が変わります。
・上部線維は肩甲骨挙上・上部回旋
・中部線維は肩甲骨内転・上部回旋
・下部線維は肩甲骨下制・内転・上方回旋


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