第58回理学療法士国家試験 午前86-90の解説
86.原始反射と誘発される運動の組み合わせで正しいのはどれか。(58回午前86)
1.探索反射 ――――――――頚部の側屈
2.Galant反射――――――――体幹の回旋
3.交差性伸展反射――――――刺激反対側の下肢の伸展
4.非対称性緊張性頚反射―――頚部を回旋させた側の上肢と下肢の伸展
5.対称性緊張性頚反射――――上肢の屈曲と下肢の伸展
不適切問題:正解が2つ【答え】3,4
【解説】
小児発達の原始反射の問題ですね。なぜ原始反射の事を知っておかなければならないのでしょうか?それは、脳性麻痺では、原始反射が消失せずにのこり、それを元に脳性麻痺を早期に診断するからです。だから原始反射がどういうもので、いつ消失するかがとても大事なんですね。
1.探索反射 ――――――――頚部の側屈:×

https://quizlet.com/355945454/反射-flash-cards/
探索反射は唇や頬を指で軽く触れると、口でとらえようとする反射です。4〜6ヶ月で消失します。側屈ではなく、回旋ですね。
2.Galant反射――――――――体幹の回旋:×
Galant反射は赤ちゃんの背中の外側をさするとお尻がプリッ(連続するとフリフリ)と側屈する反射です(回旋ではありません)。生後2ヶ月で消失するので、見逃してしまう場合も多いです。

Galant反射ですが、アテトーゼ型脳性麻痺で残存しやすいのがポイントです。お尻ふりふりしすぎる事から、アテトーゼを連想すれば良いともいます。
3.交差性伸展反射―――刺激反対側の下肢の伸展:○

https://quizlet.com/230530281/reflexes-flash-cards/
交差性伸展反射とは、一側下肢を伸展させ,同側の足底を刺激すると反対側の下肢が屈曲し、その後に刺激を与えている検者の手を払いのけるように(反対側の下肢がゆっくりと)伸展、交差する反射です。生後1〜2ヶ月で消失します。
選択肢では、反対側の下肢が最初屈曲するとして「反対側の下肢が伸展」は×という設定だったのでしょうが、上記のように、反対側の下肢は最初屈曲→その後ゆっくり伸展するので、○の扱いになったのでしょう。
4.非対称性緊張性頚反射―頚部を回旋させた側の上肢と下肢の伸展:○

非対称性緊張性頚反射は児の首を横に曲げると、曲げた方の手足が伸びて、反対側の手足が曲がる反射(フェンシングポーズ)です。これは未熟な状態で寝返りすると窒息の危険があるので、それを防止する役割があります。なお、この反射は4〜6ヶ月で消失します。これが消えると寝返りができるそうです。
5.対称性緊張性頚反射―上肢の屈曲と下肢の伸展 :○?
これも正しいように思うのですが….。いずれにしても不適切問題ですが…。

対称性緊張性頚反射はうつ伏せになった赤ちゃんの頭を持ち上げると手を伸ばし足を曲げ、反対に頭を下げると手を曲げ足を伸ばします。生後6~9ヶ月頃から出現し、11ヶ月では消失しています(国試既出)。
非対称性緊張性頚反射が4〜6ヶ月で消失するので、非対称性緊張性頚反射が消失してから、対称性緊張性頚反射が出現すると覚えると良いと思います。これはお座りの準備やハイハイの準備と考えれば良いと思います。
前述のように選択肢は○のような気がしますが、あえて間違いとするのであれば、誘発する動作を規定していない点でしょうか?
対称性緊張性頚反射は以下の2通りの反射を指します。
1.頭を持ち上げると、手が伸びて、足が曲がる
2.頭を下げると、手が曲がって、足が伸びる
設問では、「上肢の屈曲と下肢の伸展」と書いていますが、「頭を持ち上げると」とは書かれていません。「頭を下げた」場合は、「上肢の屈曲と下肢の伸展」は誤りとなります。その点で×となっているとしか考えられませんね(超意地悪・ひっかけ問題だと思います)。問題作成委員のひねくれ度が際立っている問題といえるでしょう。
小児科の問題は毎年数問しか出題されません。そのうち1問が不適切問題であれば、せっかく小児科を勉強して試験対策する努力が水の泡です。問題出題委員は猛省してもらいたいところです。
87.リンパ浮腫で正しいのはどれか。(58回午前87)
1.腹水を伴う
2.利尿薬で治療する
3.感染を繰り返しやすい
4.発症初期から皮膚硬化を生じる
5.肺血栓塞栓症の原因の一つである
【答え】3
【解説】
理学療法士国家試験では循環器の解剖生理や内部障害(循環器)でリンパについて出題される事が多いですね。リンパが好きな出題委員がいるようです。ですので、リンパについてはしっかり勉強するようにしておいてください。
ここではリンパについての病気、リンパ浮腫について、少しまとめます。
リンパ浮腫はがん(婦人科がん、乳がん)の手術でリンパ節を取ったことがあったり、骨盤や腋(わき)に放射線治療を行った後に、その側の足や腕のリンパの流れが障害されることによって、足や腕がむくむことを言います。 これらの場合は原因があるので2次性リンパ浮腫といいますが、原因が不明の1次性リンパ浮腫もあります。

https://pai.med.keio.ac.jp/study/139/
2次性リンパ浮腫は治療直後にリンパ浮腫が生じることもあれば、10年以上経過してから生じることもあります。
リンパ浮腫と同様に、腕や下肢がむくむ病気として、(深部)静脈性血栓症があります。リンパ浮腫と静脈性血栓症の違いを下図に示しました。
リンパ浮腫の発症は緩徐です。また、皮膚の色調は青紫色になる静脈性血栓症とはちがって色調変化はありません。浮腫部は最初は柔らかいですが、進行すると硬くなります。合併症としては、リンパの流れがうっ滞すると、皮膚に傷ができたときに傷口から細菌に感染しやすくなり蜂窩織炎になることがあります。ちなみに蜂窩織炎とは皮膚炎とは違って、皮下の脂肪組織に炎症がおこる事をいいます。

Jpn J Rehabil Med 2019;56:486-491
リンパ浮腫の治療は、外科手術によらない方法をいろいろ併せた複合療法と外科手術に分けられます。

https://lymnet.jp/lymnet/what-is-lymphedema/
圧迫療法はむくみがある部位に圧をかけて、リンパ浮腫の逆流を防ぎ、むくみを軽減する方法です。弾性(非伸縮性)包帯や弾性ストッキングなどを用います。

https://www.minna-lymphedema.jp/column/co05/20190126-33/
用手的(リンパ)ドレナージは、組織に貯留しているリンパを末梢のリンパ管に取り込ませて、リンパ液として深部のリンパ節へ送り込むことを目的としており、専門のセラピストが行う用手的リンパドレナージ(manual lymphatic drenage:MLD)と患者自身、家族が行う簡易リンパドレナージ(simple lymphatic drenage:SLD)があります。 上肢については腋窩リンパ節の方向へ,下肢については鼠径リンパ節の方向へ向かって行い、かける圧は軽く、愛護的に,、優しく、撫でるようにして、決して強く押さえない、揉みほぐさないことが肝要であるとされています(美津島 隆 リンパ浮腫のリハビリテーション医療 Jpn J Rehabil Med 2019;56:486-491)。

https://survivorship.jp/lymph/jyoushi/treatment/04/
なお、用手的リンパドレナージは理学療法士が取得可能な「リンパ浮腫療法士(LT)」という資格があります。
圧迫下の運動療法もリンパ浮腫の治療として用いられます。リンパ浮腫患者に対して筋力トレーニングを行うことによって、筋肉のポンプ作用を利用し、リンパ流を増大させます。この効果は、弾性着衣で圧迫した状態で行うとより効果が増すといわれています。弾性着衣を装着することで、しっかりと壁をつくり、筋肉の運動に伴って、高い動作圧・静止圧が生じるためです。

https://www.kameda.com/pr/lymphedema/post_9.html
これらを踏まえて選択肢を見てみます。
1.腹水を伴う:×
リンパ浮腫は上肢や下肢に浮腫をきたす病気です。腹水を伴う事は通常ありません。
2.利尿薬で治療する:×
利尿薬は腎臓に働いて、血液中の水分の腎臓への排泄を促す薬です。リンパには直接作用しません。
3.感染を繰り返しやすい:○
リンパ浮腫でリンパの流れがうっ滞すると、皮膚に傷ができたときに傷口から細菌に感染しやすくなり蜂窩織炎になりやすくなります。
4.発症初期から皮膚硬化を生じる:×
リンパ浮腫の初期では皮膚硬化を生じず柔らかく、皮膚を押すと陥凹します。リンパ浮腫が進行すると皮膚の硬化をきたします。
5.肺血栓塞栓症の原因の一つである:×
肺血栓食箋症は深部静脈血栓症の合併症です。深部静脈に生じた血栓が、運動などによって遊離し、肺動脈に詰まってしまう病気です。リンパ管の中には血液がないので、血栓は生じません。
88.Perthes病にで正しいのはどれか。2つ選べ。(58回午前88)
1.女児に多い
2.外傷が誘因となる
3.片側性の発症が多い
4.12歳以降に好発する
5.大腿骨近位骨端部への血行障害が原因である
【答え】3,5
【解説】
Perthes病は、YouTubeの感動的な動画を見れば、鮮明に記憶に残りますので、ぜひ以下の動画を見る事をおすすめします。

https://youtu.be/bVVHoI6AiGQ
この動画ではペルテス病で治療中の少年(たぶん小学生にみえる)が、早慶戦で始球式をつとめる動画です。最初、一度ぐらつきますが、二度目で見事ノーバウンド投球。これを見て感動しない人はいないでしょう。
以下、ペルテス病についてのまとめです。6歳、男児、動画の通りです。



装具で治療すると、大腿骨頭が再生して予後が良いので、動画の少年を見て、「直るからな、がんばれよ」と応援しながら動画を見ましょう。「直るからな」が、病気の勉強をしている私たちが動画を見て単に感動するのではなく、子供をはげます事ができる点なのですよね。そしてその事から「早期に治療すれば予後良好」も頭に入るはずです。
では選択肢を見ていきましょう。
1.女児に多い:×
動画のように、小学生の男児に多いです。動画を見れば間違う事はありません。
2.外傷が誘因となる:×
原因不明ですが、大腿骨頭の血流が悪くなり、骨頭壊死になります。動画の男の子も事故じゃないと覚えて下さい。
3.片側性の発症が多い:○
4.12歳以降に好発する:×
12歳で中学1年生です。ペルテス病は小学校1年(6歳)ぐらいで発症します。
5.大腿骨近位骨端部への血行障害が原因である:○
89.Colles骨折で正しいのはどれか。(58回午前89)
1.成人より小児に多い
2.尺骨遠位端の骨折である
3.遠位骨片は掌側に転位する
4.合併症には正中神経損傷がある
5.骨折の分類にはGarden分類が用いられる
【答え】4
【解説】
Colles骨折は人の名前のついた骨折の中でメジャーな骨折ですね。高齢者が転倒した際に手関節を背屈した状態でついた場合に橈骨の骨折をきたすものです。遠位の骨片が手背側に転位します。

https://www.hanakonote.com/byoutaiseiri/toukotsufr.html
一方、Smith骨折は手関節を掌屈した状態で手をついて橈骨が骨折するものです。遠位の骨片が手掌側に転位します。

https://www.hanakonote.com/byoutaiseiri/toukotsufr.html
Colles骨折もSmith骨折も手根管内にある正中神経が障害される事があります。
またColles骨折もSmith骨折も手関節の関節外骨折(骨折線が関節外にとどまり、関節面に及ばない)です。橈骨骨折の骨折線が関節(関節内骨折)に及び、背側に転位するものを背側バートン骨折、掌側に転位するものを掌側バートン、橈骨茎状突起骨折をショーファー骨折といいます。

以下に上肢の骨折と神経損傷についてまとめました。上肢の骨折と神経障害については、部位と損傷される神経について、確実に覚えておいてください。

では選択肢について解説します。
1.成人より小児に多い:×
橈骨遠位端骨折 (Colles骨折やSmith骨折)は成人(老人)に多い骨折です。小児の場合は上腕骨顆上骨折が多いです。
老人に多い骨折は以下の通りです。
・上腕骨近位端骨折
・橈骨遠位端骨折(とくにColles骨折)
・大腿骨頚部骨折
・腰椎圧迫骨折
2.尺骨遠位端の骨折である:×
Colles骨折は橈骨遠位端骨折です。
3.遠位骨片は掌側に転位する:×
Colles骨折は遠位骨片が手背側に転位します。手掌側に転位するのはSmith骨折です。
4.合併症には正中神経損傷がある:○
5.骨折の分類にはGarden分類が用いられる:×
Garden骨折は大腿骨頚部骨折の重症度分類です。

https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0016/G0000307/0022
90.発症2時間の脳梗塞において典型的な画像所見はどれか。(58回午前90)
1.単純CTでの高吸収域
2.単純CTでの低吸収域
3.MRIのT1強調画像での高信号域
4.MRIのT2強調像での高信号域
5.MRIの拡散強調画像での高信号域
【答え】5
【解説】
脳梗塞の画像診断についての問題です。
脳梗塞の画像診断について、以下にまとめました。

CT:
脳梗塞では低吸収域(Low density area: LDA)になります。画面上では黒く描出されます。CTでの変化は発症6時間ぐらいからわかるようになり、1日ぐらい経過すると明瞭になります。したがって急性期の脳梗塞の診断にはあまり役にたちません。
MRI:
1. 拡散強調画像 (diffusion weighted image: DWI)
脳梗塞の急性期では拡散強調画像で高信号域(high intensity area)として描出されます。画面上は白く描出されます。この変化は脳梗塞になって1時間ぐらいでみられるようになります。なお拡散強調画像では骨は描出されません。
急性期のMRIではDWIで高信号域がスタンダードですが、ADCマップで低信号域というのもあります。これはDWIの高信号域がアーチファクトといって、脳梗塞でもないのに、誤って高信号で見える場合があるので、同じ場所の信号がADCマップで低信号であるのなら、脳梗塞で間違いないというような使い方をします。ただし、専門的なので国家試験では出題されないと思います。

https://twitter.com/8beemedic/status/886742329842741248
以下のような出題がされれば、びびりますが
……………………………………………………………………………….
急性期の脳梗塞を診断できるのは次のどれか。2つ選べ
1.CT
2.MRI(拡散強調画像)
3.MRI(ADCマップ)
4.MRI(T2強調画像)
5.MRI(FLIAR像)
練習問題の答え2と3
………………………………………………………………………………
まあ、国試過去問で医師でも知っている人が少ないT2スターという撮影法(微小出血を描出できます)が選択肢として出題されるぐらいですから、ADCマップも出題されるかもしれませんね、ははは。頭の片隅にでも入れておいてください。
2.T1強調画像(T1-weighted image: T1WI)
T1WIでは脳梗塞の変化は明瞭ではありません。
3.T2強調画像(T2-weighted image: T2WI)およびFLAIR像
T2WIとFLAIR像は基本的に同じパターンになります(FLAIR像はT2WIの脳表や脳室の水分が黒く信号が変換されています)。
T2WIとFLAIR像では発症6時間以降で脳梗塞部が高信号域として描出されます。これは慢性期でも同様に描出されますので、慢性期で脳梗塞を見るのはDWIではなくT2WIかFLAIR像になります。
国試テクニックとしては、国試で脳のMRIが出てくれば、無条件に脳梗塞と思ってください!)。脳出血はCTで出題されます。
たとえば58回の午前3ですが、
……………………………………………………………………………
82歳の女性。高血圧と糖尿病の治療を長期にわたり行っている。徐々に歩行障害がみられるようになり、転倒することが多くなった。頭部MRIのFLAIR像を別に示す。画像所見で考えられるのはどれか。(58回午前3)

1.視床出血
2.硬膜下血腫
3.くも膜下出血
4.正常圧水頭症
5.多発性脳梗塞
………………………………………………………………………………
問題文を読まなくても、答えは5の脳梗塞です。画像は不明瞭な画像が用いられていますのでまともにすると迷うかもしれませんが、問題をみた瞬間に脳梗塞として、後は脳梗塞で問題文が間違っていないかどうか確認するだけなのです。
【ポイント】
脳梗塞の画像診断、急性期(1〜2時間)は拡散強調画像、急性期以降慢性期はT2強調画像かFLAIR像でみる(いずれも高信号域です)。
では実際の選択肢を見ていきます。
発症2時間の脳梗塞において典型的な画像所見はどれか。(58回午前90)
1.単純CTでの高吸収域:×
CTでは発症6時間以降に低吸収域として描出されます。
2.単純CTでの低吸収域:×
CTでは発症6時間以降に低吸収域として描出されます。発症2時間では低吸収域は見えません。
3.MRIのT1強調画像での高信号域:×
MRIのT1強調画像では脳梗塞の描出はどの時点でも不明瞭でわかりません。
4.MRIのT2強調像での高信号域:×
MRIのT2強調画像では発症6時間以降で高信号域となりますが、発症2時間では信号に変化はありません。
5.MRIの拡散強調画像での高信号域:○
MRIの拡散強調画像では発症1〜2時間で高信号域として描出されます。
Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
