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第60回理学療法士国家試験 午前36−40の解説

(36) 口すぼめ呼吸の指導で正しいのはどれか。(60回午前36)

1.吸気を延長させる
2.呼吸数を増加させる
3.COPD患者に適応する
4.機能的残気量を増加させる
5.頬を膨らませるように指導する


【答え】3
【解説】
口すぼめ呼吸はCOPDの患者に行われる呼吸リハビリの代表的なものです。口をすぼめてゆっくり息を吐き出す事によって、気道内圧が上昇し、末梢気道が閉塞しにくくなります。

1.吸気を延長させる:×
→COPDでは吸気は気道が拡張するため閉塞せず息を吸えますが、呼気で末梢気道が閉塞するため、息を吐き出しにくくなります。口すぼめ呼吸は、口をすぼめながらゆっきり息を吐き出すことによって、気道内圧を上げ、息を吐き出し易くします。したがって、吸気を延長するのではなく、呼気を延長させます。

2.呼吸数を増加させる:×
→ゆっくり息を吐くので呼吸数は減少させます。

3.COPD患者に適応する:○

4.機能的残気量を増加させる:×
→COPD患者では、呼気が十分吐き出せないので、残気量が増加しやすいです。口すぼめ呼吸を行う事によって、今までよりも呼気がしやすくなって息を吐き出す事によって、残気量(機能的残気量を含む)は減少します。

5.頬を膨らませるように指導する:×
→口をすぼめるので、頬は凹ませます。

(37) MRC sum scoreで評価できるのはどれか。(60回午前37)

1.ICU-AW
2.意識障害
3.嚥下障害
4.入院関連尿力低下 [HAD <Hospitalization Associated Disability>]
5.抑うつ


【答え】1
【解説】
今年も出ました。ICU-AW問題です。ICU-AWはICU acquired weaknessの略で、ICUでacquired(獲得された)weakness (筋力低下)の事です。ICUに収容されている患者はベット上で寝たきりの患者が多いので、廃用性の筋力低下をきたしやすいです(あたり前ですね)。最近、出題委員の一人がICUで仕事をしているみたいで、ICU関連の出題が毎年1題は出ています。最近の流行はICU-AWで、問題にできるような内容がまだ残っているので、しっかり勉強しておきましょう。

個人的には今年はMRC sum scoreの内容が問われると思っていましたが、来年以降出題されるかもしれません。

MRC はMedical research councilの略で、Medical (医学)research (調査)council (評議会)という意味で、略語に大きな意味はありません。sumは(足し算という意味です)。MMTのスコアを足し算した値を用いるという意味です。今後もMRC sum scoreとして出題されるので、ICU-AWをすぐに連想できるようにしましょう。個人的には点数の評価 (60点満点とか、合計48点未満か平均4点未満で筋力低下とか、測定筋を覚えておいてほしいです。基本的にMMTなので、各項目の点数は5点満点です。また下のまとめの定義の表も必ず目を通してください。

1.ICU-AW:○
2.意識障害:×
3.嚥下障害:×
4.入院関連尿力低下 [HAD <Hospitalization Associated Disability>]:×
5.抑うつ:×


(38) 理学療法評価における社会的情報に該当しないのはどれか。(60回午前38)

1.趣味
2.職業
3.体重
4.配偶者の有無
5.家屋内の段差の有無


【答え】3
【解説】
設問の意図がいまいちわかりませんが、社会的情報を「はだかの自分(身体情報や健康情報、持病や既往歴など)」以外の情報と考えると、社会的情報に該当しないのは3の体重になるのではないかと思います。一般的には理学療法の評価における社会的情報は、患者さんの家族構成や住環境、趣味などを指すそうです。

(39) 血液検査項目と疾患の組合せで正しいのはどれか。(60回午前39)

1.CK-MB:末梢動脈疾患 [PAD <peripheral artery disease>]
2.D-ダイマー:深部静脈血栓症 <DVT>
3.eGFR:慢性閉塞性肺疾患 <COPD>
4.NT-proBNP:間質性肺疾患 <ILD>
5.SP-D:慢性心不全 <CHF>


【答え】2
【解説】
59年午前2にも同じ内容を問う問題が出ていますので、過去問を勉強している受験生には簡単だったのではないでしょうか?それほど出題者はD-ダイマーの事を知っておいて欲しいという事なのでしょう。

今回選択肢に挙げられたそれぞれの項目は今後病院で働く上で知っておくべき項目なので、詳しく説明します。

1.CK-MB:末梢動脈疾患 [PAD <peripheral artery disease>]:×
→CK-MPはCPKのアイソザイムです。CPKはcreatine phosphokinase (クレアチンホスホキナーゼ)といい、クレアチンをリン酸化する酵素です。脳・心筋・骨格筋に多く含まれます。CPKは3種類の型(アイソザイム)があり、脳に多く含まれるものをCK-BB (BはbrainのB)、骨格筋に多く含まれるものをCK-MM (MはmuscleのM)、そして心筋に多く含まれるものをCK-MBと呼びます。心筋梗塞では血中のCPKが上昇しますが、同時にCK-MBも上昇しています。

2.D-ダイマー:深部静脈血栓症 <DVT>:○
→D-ダイマーは理学療法士にとってとても大事な指標です。DダイマーはD因子が二つに重合している(dimer)という意味で、

フィブリンが分解される過程で生じるものです。下図のようにフィブリノーゲンがプラスミンで溶解する事を一次線溶といいます。一次線溶は血栓(フィブリン)ができなくても生じますが、D、E、E-D因子しかできません。

一次線溶に対して、血栓(フィブリン)がプラスミンで溶解する事を二次線溶といいます。上図のように、二次線溶の時だけ、D-D因子(Dダイマーと呼ぶ)ができます。したがってDダイマーが高値という事は体の中に血栓がたくさんできている事を意味します。
(注)フィブリノーゲンやフィブリンが溶解した時にできるものをFDP (フィブリノーゲン・フィブリン分解産物)といいますが、FDPは一次線溶でも二次線溶でも増加するので、FDPの上昇=血栓ができているとは直接言えません。
 したがって、深部静脈血栓症のように、体の中に血栓がたくさんできている状況を知るためにはDダイマーが高値になっているかどうかで判別する事ができます。

D-ダイマーが血中で高値であった場合、下肢の深部静脈血栓症がある可能性が高いです。このような患者を、ベット上安静から歩行訓練を開始した時に、突然深部静脈血栓が遊離し、肺に詰まって肺血栓塞栓症になり突然死する場合があります。そのような事がないように、理学療法士は血液データをチェックしながら、患者のリスク管理を行わなければなりません。



3.eGFR:慢性閉塞性肺疾患 <COPD>:×
→eGFRは最近よく使われる指標です。GFRとはGlomerular Filtration Rateといって腎の糸球体濾過量(濾過率)を表します。それを測定するには血中と尿中のクレアチニン値、尿量の計測が必要となります。eGFRはestimated (評価された) GFRの略で、血中のクレアチニン値だけで、GFRに近似した値を算出・評価できる方法です。以下の計算式で求められますが、実際は検査会社で計算されて値が戻ってきます。

腎機能が低下するとそれに伴いeGFRも低下してきます。下の表のようにeGFRの値によって、腎機能がどれくらい残っているかを推定できます。



4.NT-proBNP:間質性肺疾患 <ILD>:×
→BNPはBrain Natriuretic peptide(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の略で、最初は脳で発見されたホルモンなのですが、現在は壁の進展や圧上昇などのストレスによって心臓(心室)から分泌されるホルモンとして知られています。したがって心不全の時に上昇してきます。

NT-proBNPは、前駆体ホルモンであるpro BNPが分解されて生じるホルモンであり、1:1の割合でBNPと共に血中に放出され、BNPと同様に心不全で診断補助に使用されています。

BNPとNT-pro BNPは共に心不全の診断などに使用され両者の有用性はほぼ同等との報告がありますが、BNPは採血後検査まで凍結保存しなければならないのに対し、NT-pro BNPは冷蔵保存可能なので、取り扱いが簡単なNT-pro BNPがもっぱら臨床で用いられています。

下の表にNT-pro BNPとBNPの値と心不全の重症度との関係を示しました。NT-pro BNPが900以上を心不全の疑い、4,000以上を重症心不全の疑いとしています。



5.SP-D:慢性心不全 <CHF>:×
→SP-Dはsurfactant protein Dの略で、間質性肺炎の時に肺の線維化により血中に逸脱し、間質性肺炎の病勢に応じて血清濃度が増加します。間質性肺炎の血清マーカーとしては、その他KL-6も有名です。
(覚え方)蜘蛛はスパイダーといいます(例:スパイダーマン)。間質性肺炎では肺の中に蜘蛛の巣が張るとイメージしましょう(スパイダー: SuPai-Dar)からSP-Dです。バッチリですね。

KL-6については、スパイダーマンが蜘蛛の巣を作るときに、糸をカールして6角形の巣(カール6→KL-6)をつくると覚えたらどうでしょうか?
これで、SP-DとKL-6は完璧ですね!


(40) 筋力増強運動で正しいのはどれか。(60回午前40)

1.高齢者では高負荷低頻度で実施するのが良い
2.運動の効果には対象者の運動経験は影響しない
3.等張性収縮には求心性収縮と遠心性収縮がある
4.筋力維持には最大筋力の40〜50%以上の負荷が必要である
5.等速性収縮の角速度高速域での運動は筋出力効果が増大する


【答え】3
【解説】
1.高齢者では高負荷低頻度で実施するのが良い:×
→常識的に高齢者に高負荷の運動をさせるのは難しいでしょう。高齢者では低負荷高頻度の運動が適しています。

2.運動の効果には対象者の運動経験は影響しない:×
→経験があった方が効率良く増強運動できますね。
(補足)国試では「○○しない」という完全否定文はほぼ確実に間違いになります)

3.等張性収縮には求心性収縮と遠心性収縮がある:○

4.筋力維持には最大筋力の40〜50%以上の負荷が必要である:×
→筋力維持には最大筋力の20〜30%の等張性筋収縮が必要と言われています。


5.等速性収縮の角速度高速域での運動は筋出力効果が増大する:×
→筋の収縮速度と張力の関係ですが、一般に収縮の速度が速くなると筋張力が小さくなり、速度が遅くなると筋張力が小さくなります。なお筋収縮速度と発生する張力は反比例する事をHillの原理といいます。

等速性収縮の場合、角速度が高速である事は筋収縮速度が速い事を意味しますので、発生する張力(=筋出力)は小さくなります。


Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。





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