第58回理学療法士国家試験 午前21-25の解説
21.ICFの評価点で正しいのはどれか。(58回午前21)
1.心身機能の第一評価点は障害の性質を示す
2.身体構造の第二評価点は障害の部位を示す
3.活動と参加の第一評価点は実行状況での困難度を示す
4.活動と参加の第二評価点は支援ありでの能力の困難度を示す
5.環境因子の第一評価点の+記号は阻害因子を示す
【答え】3
【解説】
ADLの問題のうち、ICFについては、だんだん細かいところまで出題されるようになりましたね。これについては、ここまで出題されるだろうと思って対策していました。
ICF(国際生活機能分類)は国際障害分類(ICIDH)にかわって用いられている分類です。ICIDHについては、現在でも実習レポートで、機能障害(impairment)・能力障害(disability)、社会的不利(handicap)の項目で考察をしていると思いますが、国試的にはICIDHはもはや出題される事はなく、ICFの問題ばかりとなっています。

ICFでは「健康状態」、3つの「生活機能」、2つの「背景因子」から構成されており、生活機能の中には心身機能(B: body function)・身体構造 (S: structure)、活動と参加 (D: domain)が、背景因子には環境因子(E: environment)と個人因子が挙げられています。
各項目で点数付けされており、たとえ身体構造(s)のある項目では以下のようにs○×△.@&%のようなコード(例ではs7301.221)になります。

https://job-medley.com/tips/detail/895/
小数点の前の部分(図ではs7301)は身体構造(s)の評価する項目(分類コード)になります。小数点以下の部分(図では.221@)は患者さんの状態を表す部分で評価点といいます。小数点1位・2位・3位で評価するポイントが異なります。少数点1位を第1評価点、少数点2位を第2評価点、少数点3位を第3評価点と呼び、最近の国試では各評価点が何を意味するかが良く問われています。
評価点の内容については、心身機能(B)、身体構造(S)、行動と参加(D)、環境因子(E)でそれぞれ異なるので、覚えるのが大変です。いわゆる力ずくでは長期間その記憶を維持する事はできません。息子との勉強の過程で、楽に記憶を維持するために、暗記法を考案しました。これから受験する受験生の方のためにそれを以下に公開します。
【1】身体機能(b:body function)
身体機能の評価点は少数点1位のみしかありません。
第1評価点は機能障害の程度になります。
「程度」を覚えるために、井戸から手が出ているところをイメージします。I
「手(て)」が「井戸(いど)」から出ているので「手・井戸」→「ていど」→「程度」と覚えましょう。ばかばかしいと思う方は自分の覚え方で覚えましょう。

【2】身体構造(s: structure)
身体構造の評価点は少数点3位まであります。第1評価点から第3評価点まで何に当たるかを以下のようにイラストをイメージしながら覚えましょう。

第1評価点は心身機能と同じです。「井戸から手が出ているイメージ」で「手(て}が井戸(いど)」なので構造障害の「程度」です。
第2評価点は、井戸から出てきた手が何をつかむかと考えて、「精子(せいし)」をつかむと考えてください。「精子(せいし)」→「せいしつ」→「性質」として、第2評価点は構造障害の「性質」となります。
第3評価点は、第2評価点で「精子をうまくつかめた」ので、Vサインをしているイメージから「V(ぶい)サイン」→「V(ぶい)」→「ぶい」→「部位」とし。第3評価点は構造障害の「部位」となります。
なお、第2評価点の「精子」→「性質」の語尾からツー(Two:2)を連想し、第3評価点は指で2を示すイメージから「Vサイン」を連想するのもありです。
このようにして、息子は第1・第2・第3評価点の「程度」・「性質」・「部位」を完璧に覚えました。
【3】活動と参加(d: domain)
活動と参加も少数点3位まであります。これも3つのイメージから覚えます。

活動から動いているイメージで、自動車をイメージします。そして「自動車で事故に会う」とイメージし、「自動車事故」→「事故」→「じこ」→「じっこー」→「実行」→「実行状況」と覚えるようにしました。これから第1評価点は「実行状況」となります。
第2評価点と第3評価点ですが、「事故に会って、脳みそが飛び出たところをイメージします。」しかも最初は白い脳みそ(血がない)と、最後に赤い脳みそ(血がある)としました。一応、それぞれの右下に「力(ちから)」と書いて、「脳みそ」と「力」を合わせて「脳力」→「能力」とこじつけました。
第2評価点は「血がない脳力」から「ちなし」→「支援(ちえん)なし」とこじつけて、「支援なしの能力」としました。
同様に第3評価点は「血あり脳力」から「支援ありの能力」としました。
そのまま暗記しようとすると無機質な暗記法・力ずくの暗記法となりますが、このようなこじつけイメージで暗記をすると、知識が長続きすると思います。
この方法で息子は「活動と実行」の第1・第2・第3評価点の「実行状況」・「支援なし能力」・「支援あり能力」を完璧に覚えました。
【4】環境因子(e: environment)
環境因子の評価点は少数点1位(第1評価点)しかありません。因子なしが0、因子ありが1となります。
ただし、阻害因子と促通因子の2通りがあります。

まず阻害因子があるか、ないかと考えて、
阻害因子がなければxxx.0
阻害因子があれは xxx.1 となります
次に促通因子(プラスに働くと考えてください)を考えて、
促通因子なしxxx+0
促通因子ありxxx+1 となります。
促通因子のときだけ、少数点がないのが特徴です(かわってますね)
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では58回午前21を見てみましょう。
1.心身機能の第一評価点は障害の性質を示す:×
心身機能(b)の第一評価点は「程度」でした。
2.身体構造の第二評価点は障害の部位を示す:×
身体構造(s)の第二評価点は「性質」でした。
3.活動と参加の第一評価点は実行状況での困難度を示す:○
活動と参加(d)の第一評価点は「実行状況」でした。
4.活動と参加の第二評価点は支援ありでの能力の困難度を示す:×
活動と参加(d)の第二評価点は「支援なしの能力」でした。
5.環境因子の第一評価点の+記号は阻害因子を示す:×
環境因子(e)の第一評価点の+は「促通因子」を示しました。
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22.理学療法実施時のインフォームドコンセントで適切なのはどれか。
(58回午前22)
1,専門用語で説明する
2.患者の同意内容は文書で保存する
3.患者の要求があってから説明する
4.判断能力に関わらず患者の決定が優先される
5.患者は正当な理由がなければ同意を撤回できない
【答え】2
【解説】
インフォームドコンセントの問題です。インフォーム(inform)はインフメーション(information)の動詞で、知らせる・告知するという意味です。コンセント(consent)は同意という意味です。
インフォームドコンセントとは医療行為を行う場合、事前にその内容を十分患者に説明をして、同意を得るという事を指します。
では、選択肢を解説します。
1,専門用語で説明する:×
インフォームドコンセントは患者が理解できるようにできるだけ専門用語を用いず、平易な言葉で説明しなければなりません。
2.患者の同意内容は文書で保存する:○
インフォームドコンセントの同意内容は口頭で取り交わすのではなく、その内容を後で双方が確認できるように文書に保存しなければなりません。
3.患者の要求があってから説明する:×
患者に医療行為を行う場合、患者の求めがなくても、医療従事者の方から自発的に説明する必要があります。
4.判断能力に関わらず患者の決定が優先される:×
患者の判断能力が著しく低下して正常な判断を下せない場合や、昏睡状態など判断能力が無くなっている場合には、家族に治療選択の決定をしてもらう場合があります。
5.患者は正当な理由がなければ同意を撤回できない:×
患者に十分説明して、治療方針を決定した後でも、患者はいつでも決定したものを撤回する事ができます。
23.観察的研究を研究デザインとするのはどれか。2つ選べ。
(58回午前23)
1.コホート研究
2.メタアナリシス
3.無作為化比較対照研究
4.ケースコントロール研究
5.システマティックレビュー
【答え】1,4
【解説】
統計分野の研究デザインについての問題です。2,のメタアナリシスや5のシステマティック・レビューについてはなじみの少ない受験生も多いのではないでしょうか?
研究方法については、大きく分けて、観察研究と介入研究があります。
また分類方法によっては、後ろ向き研究と前向き研究があります。
研究デザインについて、概要を説明します。

後ろ向き研究とは過去を調べる研究です。患者の事をCase(症例)と呼びます。研究デザインでCaseという言葉が入っているのはすべて後ろ向き研究です。【1】【2】【3】の順でエビデンスレベルが高くなっていきます(【1】が一番エビデンスレベルが低いです)

この中で【3】のケース・コントロール研究がよく出題されます(勉強してなければどんな研究がわからないので)。これはケース(患者=症例)とコントロール(健常者である対照)とを後ろ向きで比較した研究です。たとえば、患者50人と健常者50人を集めて、それぞれタバコをすっていた割合を調べて、たばこを吸っていた割合に差があったかどうか調べます。患者の方がたばこを吸っている割合が高ければ、たばこが病気の原因になっているのではないかと推定します。
コホート研究の特徴は、利点としてすでに患者とわかっている人を集めるので、症例を集めやすいです。欠点としては、集めた患者は「たばこをすっている人が多い」ことに加えて「高血圧の人が多い」かもしれません。患者を集める時点で、「高血圧の割合」についてバイアス(偏り)があるかもしれません。このようなバイアスをセレクション・バイアスといいます。
このようにコホート研究では症例と対照の間でバイアス(偏り)を生じる可能性がある事に注意しなければなりません。

次に前向き研究について解説します。前向き研究は、過去を調べるのではなく、現時点から将来について調べる方法です。代表的な研究方法としてコホート研究があります。コホート研究も(勉強してなければ全然どういう研究かわからないので)国試でよく出題されます。
コホートとは集団(船団)という意味です。コホートは前述のケース(患者=症例)とはちがって患者ではありません。研究時点では健常人を意味します。健常人であるコホート(集団)を、たとえば「喫煙群」と「非喫煙群」に分けて、将来「肺癌になる」割合を調べます。実際、このような調査をする場合、10年・20年といった長期の期間、集団を観察しなければなりませんし、発生する頻度の少ない病気だととても多い人数の集団を観察しなければなりません。たとえば1000人に1人の発生率だとすると、1000人追跡しても1人発生するかどうかですので、比較するには1万人とか10万人を観察しなければ統計学的に有意差を見いだしにくいです。
このようにコホート研究では、研究に時間がかかったり、多くの症例が必要だったりして、手間(費用)と時間がかかります。しかし、前向き研究は後ろ向き研究に比べてエビデンスレベルが高い(信頼性が高い)です。

ランダム化比較試験も前向き研究です。これは患者が対象ですが例外的にケース(症例)という呼び方はしません。ランダム化比較試験では患者を治療を行う群と治療を行わない群に無作為に割り付けし、死亡率など治療に効果があったかどうかを比較検討する研究です。
前述の【1】〜【4】は2群に分けましたが、それぞれ要因に差があったかどうか、将来病気になったかどうか観察するだけなので観察研究と呼ばれます。それに対して、ランダム化比較試験は患者を治療する群と治療しない群に分けるので介入研究とも呼ばれます。
ランダム化比較試験の特徴は、2群に割り付ける際にサイコロを振って決めるなど無作為(ランダム)に割り付けるため、それぞれの群の背景因子(高血圧の割合や糖尿病の割合など)がほぼ均等になる事です。これによって、ランダム化比較試験では2群の間のバイアスがほぼなくなり、研究結果のエビデンスがとても高いものになります。
以下はエビデンスレベルの高い・低いを表したエビデンス・ピラミッドです。
エビデンスが最も低いのは「専門家や権威の意見」です。これは研究結果に基づいておらず、単に偉い先生の印象に過ぎないからです。
実際に行われた研究に基づいたのは前述の【1】〜【5】になります。研究の中で最もエビデンスレベルが高いものがランダム化比較試験で、その次はコホート研究です。これらは前向き研究のため、後ろ向き研究よりもエビデンスレベルが高いのです。
後ろ向き研究ではケース・コントロール研究が最もエビデンスレベルが高いです。

エビデンス・ピラミッドで頂点になっているのは、メタ分析とシステマティックレビューです。これは、実際に患者を研究するのではありません。いろいろな研究者が研究した結果を複数集めて、それが妥当かどうか研究したものです。

【6】メタ分析(meta-analysis: メタ分析)


一つの研究結果を結果の平均値と標準偏差でグラフ化します。上の図では一両前の痛みを1として、それが治療後に痛みが少なくなったか(小さくなるので効果があれば左の方にずれるはずです)を見ます。平均値±2標準偏差の中にデータの95%が入ります(95%信頼区間といいます)から、平均値±2標準偏差が中央の1のラインにかからなければ、5%の危険率で統計学的に有意な差があると言えます。

上の図はメタ分析の実際ですが、複数の研究結果を平均値±2標準偏差でグラス化して、結果に有意な差があったかどうかを視覚化しています。上図では中央線をまたいでいる(有意差がない)研究が多いので、治療効果はあるとはいえないという結論になると思います。
このように複数の研究結果を数値化して吟味するのがメタ分析(メタアナライシス)です。
【7】システマティック・レビュー(系統的レビュー)

システマティック・レビューは複数の研究を後から吟味するという意味ではメタ分析と手法が同じですが、メタ分析と違って数値化したり、グラフ化せずに、結論を出す方法です。
では今年の問題を解説します
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観察的研究を研究デザインとするのはどれか。2つ選べ。(58回午前23)
1.コホート研究
2.メタアナリシス
3.無作為化比較対照研究
4.ケースコントロール研究
5.システマティックレビュー
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観察研究は1と4になりますね。3は介入研究です。2と5は観察研究や介入研究をレビューしたものになります。
これを踏まえて来年の予想問題を作ってみました。
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59回予想問題
最もエビデンスレベルの高い研究はどれか
1.コホート研究
2.ケースシリーズ研究
3.無作為化比較試験
4.ケースコントロール研究
5.メタアナライシス・システマティック・レビュー
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答えは5です。3を選ばないようにしましょう。3はひっかけです。
(5の選択肢がない場合は3になります)
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最もエビデンスレベルが高いのはどれか。 (第54回 午後 21)
1. 無作為化比較試験
2. コホート研究
3. 症例集積研究
4. 症例対照研究
5. 症例報告
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この問題では答えは1になりますが、予想問題では「メタアナライシス・システマティック・レビュー」を選ばなければなりません。おそらく59回は上記の予想問題が出るはずです!
24.IADLに含まれるのはどれか。(58回午前24)
1.顔を洗う
2.靴下をはく
3.寝返りをする
4.シャワーを浴びる
5.食事の準備を行う
【答え】5
【解説】
ADLについての出題です。ADLには基本的ADL (BADL: basic ADL)と器具を用いたADL (IADL: instrumental ADL)があります。選択肢のうち、器具も用いるものは「5.食事の準備を行う」のみとなります。「食事の準備をする」とすこし惑わすような記載をわざとしています(いやらしいですね)が、「料理をする」と置き換えればIADLと考えられるでしょう。「料理をする」と素直に書いてくれないのが国家試験のいやらしいところです。
なお「食事をする」のはBADLに分類されます。
25.厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」で、強度が4METs以上となる運動の例はどれか。(58回午前25)
1.皿洗い
2.ピアノの演奏
3.ラジオ体操第1
4.植物への水やり
5.子供を抱えながら立つ
【答え】3
【解説】
厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」はよくわかりませんし、だれも2013年といった10年も前の活動基準を詳しく勉強はしていないはずです。したがって、その部分は無視して、運動強度が4METs以上となる運動はどれかを探す事になります。
選択肢をざっとみると「1.皿洗い」、「2.ピアノの演奏」、「4.植物への水やり」は明らかにMETsが小さいと言えます。
残りは「3.ラジオ体操第1」と「5.子供を抱えながら立つ」で迷うのではないでしょうか?
ちなみにラジオ体操第1は4METs、ラジオ体操第2は4.5METsだそうです。
「5.子供を抱えながら立つ」に関しては、厚労省の生活活動のMETs表(http://e-kennet.mhlw.go.jp/wp/wp-content/themes/targis_mhlw/pdf/mets.pdf)によると
・立つ(立位)だけでは1.8METs
・子供を抱えながら立つは2METs
となります。
Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
