第61回理学療法士国家試験対策 統計学講義(1)ガイドライン
理学療法士を含め、医療系の国家試験には毎年統計学の問題が出題されます。理学療法士では出題数が平均2問(1点問題)で、配点が少ないですが、諦めて対策をしないよりも、ある程度出題範囲が限られているので、対策を講じておきたいところです。
息子が通っていた養成校の統計学の講義は、いくつかの検定方法を教えるだけで、国試対策としては全く役に立たないものでした。したがって、過去の国試問題を分析して必要な知識を改めて勉強し直す必要がありました。 ここでは、問題を解く前に、ある程度知識を整理しておきたいと思います。
理学療法士の国家試験では、次に挙げる分野で出題されます。
1.ガイドライン
2.研究デザイン
3.95%信頼区間
4.エビデンス
5.検定方法
6.感度・特異度・陽性尤度比
7.統計用語
8. リスク比とオッズ比(補足)
これらについて、以下、国試に必要な知識を整理していきたいと思います。あくまで国試に必要な知識という事で、統計手法を根本的に理解するという趣旨ではありませんので、ご注意ください。また配点が少ないので、すみずみまで対応しようと勉強するのは、労力vs効果効果が低いです。2問出題された場合、最低1問(できれば2問)得点できるようにしたいものです。
ここでは1.ガイドラインについて説明します。
【ガイドライン】
ガイドラインではいろいろな研究結果をもとに、推奨されるものです。有名なものでは、心肺蘇生に対する国際ガイドライン2020があります。これは心肺蘇生についての手順を示したもので、5年ごとに国際会議が開かれ、改訂されます。最新版は2020年に改訂されたものです。

理学療法士の国家試験でも一次救命処置 (BLS)のガイドラインが出題されたりします。

https://www.jrc-cpr.org/wp-content/uploads/2022/07/JRC_0017-0046_BLS.pdf
これは、世界中の多くの心肺蘇生に関する研究結果を踏まえて、「こうした方が良い、こうする事をおすすめする」という手順をまとめたものです(おすすめという事ですが、絶対に行わなければならないというものではないので注意してください)。ガイドライン通りに行わなければならないという規定はありませんが、治療を行う場合、概ね(大体)ガイドラインに沿って治療を行った方が良いです。もし、患者さんが不幸な転帰をとった場合、ガイドラインから大きく逸脱した治療を行っいると、後で訴えられた場合に不利になる場合があります。そういう意味で理学療法士のみなさんも、理学療法に関するガイドラインには習熟しておいた方が良いです。
国試とは直接関係ありませんが、時間があれば、読んでみるのも良いでしょう。主要な疾患では、国試未出題の場合、ガイドラインの内容を問うような出題がされる場合があります。
さて、理学療法に関するガイドラインとしては「理学療法介入」と「理学的評価」の2つに推奨グレード分類が作られています。
推奨グレードは別の投稿で説明する、エビデンス(科学的根拠)のレベルによって分類されます。
理学療法介入に関して、介入とは治療の事です。治療によって、患者の症状が良くなる事もあれば、治療法が間違っていれば逆に症状が悪化する事もあります。したがって、理学療法介入の推奨グレードには「行うように勧められる」という推奨度と、「行わないように勧められる」という推奨度の2つの側面がある事に注意してください。

一方、理学的評価については、検査法についての推奨度です。検査する事によって、患者の症状が悪化する事はまずないので、推奨度は「行わない事を推奨する」という概念はありません。単に、信頼性があるか、どうかの問題になります。
[例題1]
理学療法診療ガイドライン第1版(日本理学療法士協会)における理学療法介入の推奨グレード分類で、「行わないように勧められる科学的根拠がない」に該当する推奨グレードはどれか。 (第53回 午前 22)
1. A 2. B 3. C1 4. C2 5. D
答え:4
[例題2]
診療ガイドラインについて正しいのはどれか。 (第49回 午前 49)
1. 理学療法に関するガイドラインは存在しない
2. 世界で統一の方法を示したものではない
3. エビデンスレベルは統計的に計算される
4. 主に評価と診断の妥当性を示している
5. 推奨グレードに従う義務がある
答え:2
診療ガイドラインとしては、様々なガイドラインが出ています。国際的なガイドラインもあれば、各国の事情に合わせたガイドラインもあります。
1.理学療法に関するガイドラインは日本理学療法士協会によって作成されたものがあります。
2.日本理学療法士協会によって作成されたガイドラインは、国際的に統一されたものではなく、日本の中だけで推奨されるガイドラインである事に注意してください(将来は国際的なガイドラインを取り入れるのが理想です。)。
3.推奨度のレベルはA〜Dまでありますが、これは根拠とする医学的研究の信頼性が高いか、低いかによって、大まかに決定されます。研究に用いられる統計学的手法によって、分類されますが、統計的に計算して分類(たとえば危険率p<0.05かp<0.00001がで分類される)されるものではありません。
具体的には別に紹介する研究デザインによって推奨度レベルが分類されます。
4.おもに「理学療法介入」と「理学的評価」に関するガイドラインです。
5.推奨グレードに従う事が推奨(おすすめ)されていますが、厳密には従う義務はありません。
【EBMとEBPTとは】
EBM (evidence based medicine)とはエビデンスに基づいた医療という意味です。EBPT (evidence based physical therapy)とはエビデンスに基づいた理学療法を意味します。
エビデンスとは過去の研究結果に裏付けられた証拠の事を指します。
EBMやEBPTの手法は以下の通りです。

[例題]
エビデンスに基づく理学療法を実践する場合に最初に行うのはどれか。 (第45回 午後 25)
1. 検証 2. 適用 3. 情報収集
4. 批判的吟味 5. 問題点の定式化
答え:5
Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
