第58回理学療法士国家試験 午前61-65の解説
61.細胞内小器官の働きで正しいのはどれか。(58回午前61)
1.中心小体は転写を開始する
2.リソゾームはATPを合成する
3.粗面小胞体でタンパク質が合成される
4.Golgi装置で細胞内の物質を分解する
5.ミトコンドリアは細胞分裂において染色体の分離を担う
【答え】3
【解説】
細胞内小器官についての基本的内容を問う問題です。過去の出題から、以下の7つの小器官を押さえておけば良いと思われていました。

https://sgs.liranet.jp/sgs-blog/3840
ただし56回午前61において「ペルオキシソームは酸化酵素を持つ→○」という選択肢が出題されています。したがって今後細胞内小器官を勉強する場合は「ペルオキシソーム」も併せて覚える必要がありますね。

https://genetics.qlife.jp/tutorials/Cells-and-DNA/What-is-a-cell
ライソソームとペルオキシソーム
ライソソームとはLysosomeと英語で書かれ、ライソソームあるいはリゾソームなどと言われます。語源は、“lysis(分解)”+“some(〜体)”に由来し、 細胞内消化の場です。国試的には「異物を分解する」と覚えますが、ではどのように分解するかというと、顆粒内に蛋白を分解する酵素を含んでいます。代表的なものはエラスターゼです。エラスターゼは結合組織であるエラスチンを加水分解する作用を持っています。好中球が異物を細胞内に取り込んで分解処理する際に用いられ、好中球が持つエラスターゼの事を好中球エラスターゼといいます。
ペルオキソームもライソソームと同様に異物の分解に働きます。56回の選択肢には「ペルオキシソームは酸化酵素を持つ」とだけ書かれていましたが、今後はペルオキシソームが何をやっているかを知っておく事は重要ですね(これが国試勉強で知識を膨らます事です)。
ペルオキシソームは酸化酵素によって異物を分解しますが、その際に活性酸素を用いて分解します。活性酸素(superoxideといいます)はいろいろな種類がありますが、その中に過酸化水素(H2O2: hydrogen peroxideがあります。H2O2は水(H2O)に酸素原子(O: oxide)が加わってますので、oxide (O)が過剰(per-)になっているという意味でperoxideと呼ばれます。H2O2は強力な酸化作用があり、殺菌剤や漂白剤として用いられます。ライソソームと同様に好中球内にもペルオキシソームが多量に含まれており、過酸化水素(peroxide)を生成するペルオキシダーゼ(peroxidase)をもっています。56回選択肢のように「ペルオキシソームは(過酸化水素を産生するペルオキシダーゼという)酸化酵素を持つ」という事になります。そして知っておかなければないのは、ペルオキシソームも異物の分解作用があるという事です。
したがって、ライソソーム・ペルオキシソームは共に異物の分解作用があるという事になります。国試で両方とも異物分解作用があると出題されると受験生が絶対迷いますよね…。
細胞内小器官の勉強をしたところで、選択肢について解説します。
1.中心小体は転写を開始する:×
中心小体は細胞分裂において染色体の分離を担います。
2.リソゾームはATPを合成する:×
リソゾームは異物を分解する働きがあります。ATPを合成するのはミトコンドリアです。
3.粗面小胞体でタンパク質が合成される: ○
タンパク質を合成するのが粗面小胞体で、表面にはリボゾームが付着しています。一方か、滑面小胞体は脂質代謝に関連しています。
4.Golgi装置で細胞内の物質を分解する:×
細胞内の物質を分解するのはリソゾームです。Golgi装置は粗面小胞体で作られたタンパク質を修飾する働きがあります。
5.ミトコンドリアは細胞分裂において染色体の分離を担う:×
ミトコンドリアはクエン酸回路〜電子伝達系でATPを合成します。なお解糖系は細胞質内にあります。細胞分裂において染色体の分離を担うのは中心小体です。
62.深部腱反射で誤っているのはどれか。(58回午前62)
1,錘内筋線維が受容体となる
2.感覚入力はIa線維を介する
3.運動出力はα運動ニューロンを介する
4.Renshaw細胞はα運動ニューロンから入力を受ける
5.γ運動ニューロンの興奮により深部腱反射は減弱する
【答え】5
【解説】
筋紡錘と伸張反射についての問題です。筋の生理において、このあたりはとても重要で、国試でも頻出領域です。筋紡錘と腱紡錘の話はややこしいので、まとめたいと思います。

国家試験問題解説20212 共通問題 より引用
筋肉の中には紡錘状の筋肉情報の感覚センサーがあり、筋紡錘と呼ばれます。筋紡錘にはすこし太めの核袋線維と細めの核鎖線維があります。それぞれの中央にはらせん型の一次終末(中央に分布するものを一次終末といいます)があり、一次終末からはIa線維が出ています。また核袋線維と核鎖線維の端の部分には散形の二次終末(端にあるものを二次終末といいます)があり、二次終末からはII群線維が出ています。そのほか、腱からはIb線維が出ています。
筋紡錘の外にあるいわゆる筋肉(錘外筋)にはα運動ニューロンが分布しますが、錘内筋にも運動ニューロンが分布します。錘内筋に分布する運動ニューロンをγ運動ニューロンといいます。γ運動ニューロンが興奮すると、錘内筋(核袋線維と核鎖線維)がぴーんと張るので、センサーの感度が高くなります。ギターの弦と同じですね。

さて、腱反射(伸張反射)では腱を打腱器で打つと、同名筋が収縮する反射です。腱を打つので、腱にある受容体からIb線維経由で感覚刺激が入力されると思うかもしれませんが、Ib線維は反応が遅く、腱とともに筋肉が伸張された刺激が、反応速度の一番速いIa線維を介して反射が起こります。
下図のように、筋紡錘からのIa線維の信号が脊髄後角から入力され、脊髄前角で同名筋のα運動ニューロンを刺激し、同名筋を収縮します(この反射は単シナプスです)。一方、拮抗筋に対しては、脊髄において、抑制性のニューロンを介することで、拮抗筋を抑制(弛緩)させます。この反射は単シナプスではなく、2個のシナプスの反射回路になります。

また、同名筋に対する収縮反応は、レンショウ細胞という細胞を介して、過度の収縮を抑制する反回抑制という反射経路もあるようです。この回路はIa線維からの感覚入力が直接レンショウ細胞に入力するのではなく、シナプス結合したα運動ニューロンからレンショウ細胞に感覚の入力が入り、レンショウ細胞がα運動ニューロンを抑制する事になります(ややこしいですね)。これについては引用しているリハ辞典が詳しいのでそちらを参照してください。

では選択肢を解説していきます。
1,錘内筋線維が受容体となる:○
深部腱反射では錘内筋線維が受容体となります。
2.感覚入力はIa線維を介する:○
深部腱反射の感覚の入力は腱からではなく錘内筋が受容体となり、Ia線維を介します。
3.運動出力はα運動ニューロンを介する:○
深部腱反射の運動出力(同名筋を収縮させる)のはα運動ニューロンです。
4.Renshaw細胞はα運動ニューロンから入力を受ける:○
Renshaw細胞は脊髄において、α運動ニューロンからの入力を受け興奮することで、α運動ニューロンを抑制します(反回抑制)。
5.γ運動ニューロンの興奮により深部腱反射は減弱する:×
γ運動ニューロンが興奮することで筋紡錘の張力があがる結果、筋紡錘の感度が高くなります。したがってγ運動ニューロンの興奮は深部腱反射を亢進させます。
63.消化酵素で正しいのはどれか。(58回午前63)
1.αアミラーゼはデンプンをデキストリンに分解する
2.トリプシンはタンパク質をポリペプチドに分解する
3.ペプシンはトリグリセリドを脂肪酸に分解する
4.マルターゼはスクロースをブドウ糖に分解する
5.ラクターゼは乳糖をマルトースに分解する
不適切問題:正解が2つ【答え】1,2
【解説】
消化酵素の問題ですが、糖質・タンパク質・脂質を多岐にわたって覚えるのが大変ですね。この問題は不適切問題となっていますが、基本的な事をもう一度勉強しましょう。
・デンプン(糖)の消化


二糖類ですが、麦芽糖(マルトース)はグルコースとグルコースが結合したものです。二糖類にはその他、砂糖(スクロース)はグルコースとフルクトースが結合したもの、乳頭(ラクトース)はグルコースとガラクトースが結合したものです。これだけでも覚えるのは大変です…。

実況!消化吸収耐久レース【実況のノリで学ぶ消化吸収】より引用・改変
https://www.youtube.com/watch?v=KJ1lGQtyjEI
・蛋白の消化
胃の主細胞から産生されるペプシノーゲンは胃内でペプシンに変換され、タンパク質がポリペプチドに分解されます(下図ではペプシコーラをイメージしています)。
ポリペプチドは膵液のトリプシン(下図ではペプシコーラにトリが乗ってます)により、ペプチドまで分解されます。
最後にペプチドは小腸にジペプシン(下図では次のペプシ)によって、アミノ酸にまで分解されて吸収されます。

・脂肪の消化
中性脂肪の本体はグリセリンに脂肪酸が3つ結合したもので、
トリグリセリドといいます(トリーは3つという意味です)。

実況!消化吸収耐久レース【実況のノリで学ぶ消化吸収】より引用
https://www.youtube.com/watch?v=KJ1lGQtyjEI
・脂肪(中性脂肪)は胃では消化されず、十二指腸で消化されます。
・膵液中のリパーゼ(Lipidは脂肪という意味)と胆汁中の胆汁酸が合わさって初めて中性脂肪を消化できるようになります。
・胆汁中の胆汁酸が中性脂肪に作用すると、膵液中のリパーゼが作用できるようになります。

実況!消化吸収耐久レース【実況のノリで学ぶ消化吸収】より引用
https://www.youtube.com/watch?v=KJ1lGQtyjEI
・十二指腸でトリグリセリドは脂肪酸とモノグリセリドに分解されますが、
それらは小腸で胆汁酸とミセル(球形のもの)を形成した結果、吸収できるようになります。

実況!消化吸収耐久レース【実況のノリで学ぶ消化吸収】より引用
https://www.youtube.com/watch?v=KJ1lGQtyjEI
これらを基本として選択肢をみていきましょう。
1.αアミラーゼはデンプンをデキストリンに分解する:○
前述のようにデンプンはアミラーゼによりデキストリン→マルトースに分解されますが、アミラーゼにはαアミラーゼとβアミラーゼがあり、この分解はαアミラーゼによるものです。デンプンにβアミラーゼが作用すると二糖類のマルターゼを生成します(端から糖鎖を2つずつ切断します)。

https://www.try-it.jp/chapters-10095/sections-10116/lessons-10152/point-2/
2.トリプシンはタンパク質をポリペプチドに分解する:△
タンパク質をポリペプチドに分解するのは、国試的にはペプシンです。トリプシンはポリペプチドをペプチドに分解するのですが、もし、タンパク質が胃で完全に分解されずに一部十二指腸にやってくると、十二指腸のトリプシンはタンパク質をポリペプチドに分解することができます。出題委員はこれを×の選択肢として考えていたようですが、厚労省発表では○となり、この問題は不適切問題になりました。
ただし、出題委員は2を×として、1を選ばせようとしたものと思われます。
3.ペプシンはトリグリセリドを脂肪酸に分解する:×
ペプシンは胃でタンパク質をポリペプチドに分解します。トリグリセリドをモノグリセリドと脂肪酸に分解するのはリパーゼと胆汁酸の働きによります。
4.マルターゼはスクロースをブドウ糖に分解する:×
マルターゼはマルトースをブドウ糖に分解します。
5.ラクターゼは乳糖をマルトースに分解する:×
ラクターゼは乳糖(ラクトース)をブドウ糖とガラクトースに分解します。
64.心臓の刺激伝導系で正しいのはどれか。2つ選べ。(58回午前64)
1.洞房結節は心室中隔にある
2.房室結節の伝送速度はHis束より速い
3.房室結節の興奮はHis束より先に生じる
4.刺激伝導系の細胞は活動電位を生成できる
5.洞房結節の活動電位持続時間はPurkinje線維より長い
【答え】3,4
【解説】
循環器の解剖・生理問題です。
1.洞房結節は心室中隔にある:×
下図は右心房と左心房を切り開いたところのイラストです。洞房結節は上大静脈開口部(上大静脈と右心房の境界部)にあります。それに対して、房室結節は右心房の下壁にあります。

2.房室結節の伝送速度はHis束より速い:×
刺激伝導系では洞結節(洞房結節)から出た興奮は洞房結節ー心房ー房室結節ーヒス束ー左脚・右脚ープルキンエ繊維ー心室と伝わっていきますが、その伝導速度は一定ではありません。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/anursing/ecg/202004/564694.html
下表のように房室結節内はゆっくり伝わりますが、右脚・左脚とプルキンエ線維の伝導速度は速く「高速道路」にたとえられます。そしてその先の固有心筋になると伝導速度は遅くなります。

https://twitter.com/NaokiThukishima/status/1447537396732477442
3.房室結節の興奮はHis束より先に生じる:○
前述のように、洞房結節から生じた興奮は洞房結節ー心房ー房室結節ーヒス束ー左脚・右脚ープルキンエ繊維ー心室の順に伝わっていきます。房室結節の興奮はHis束より先に生じます。
4.刺激伝導系の細胞は活動電位を生成できる:○
本来のいわゆる心筋の事を固有心筋といいます(収縮に適する)。これに対して刺激伝導系を構成する心筋の事を特殊心筋と呼びます。特殊心筋は活動電位を生成できます。
5.洞房結節の活動電位持続時間はPurkinje線維より長い:×
洞房結節や房室結節に比較してプルキンエ繊維や心室筋は脱分極すれば、しっかり活動電位を持続させて、収縮をしっかり行うように働きますので、活動電位持続時間は長くなります。
また心室筋のほうがポンプとして重要なので、心房筋の活動電位持続時間に比べて、心室筋の活動電位持続時間は長くなっています。

https://www.kango-roo.com/learning/2228/
65.I型アレルギーに関与する抗体はどれか。(58回午前65)
1.IgA
2.IgD
3.IgE
4.IgG
5.IgM
【答え】3
【解説】
アレルギーは頻出問題です。一般的にはI型〜IV型に分類されますが、最近ではI型からV型の5つのタイプに分類する場合もありますので注意してください。
一般的なアレルギーの分類方法は以下のとおりです。

このうちII型 (Type II)は自己抗体ができるタイプですが、バセドー病など自己抗体が刺激性にはたらくものを抗リセプター抗体型アレルギーとしてV型(Type V)に分類される分類方法もあるので注意してください。


https://allergyportal.jp/knowledge/about/

以上を踏まえて選択肢を解説します。
I型アレルギーに関与する抗体はどれか。(58回午前65)
1.IgA
2.IgD
3.IgE
4.IgG
5.IgM
答えは3ですね
各タイプと疾患についても以下にまとめました。

V型アレルギーを踏まえた練習問題を以下に紹介します。
……………………………………………………………………….
正しい組み合わせはどれか
1.I型アレルギー ― 遅延型アレルギー
2.II型アレルギー ― 免疫複合体型アレルギー
3.III型アレルギー ― 細胞障害型アレルギー
4.IV型アレルギー ― 即時型アレルギー
5.V型アレルギー ― 抗レセプター抗体型アレルギー
練習問題の答え:5
【解説】1.即時型 2.細胞傷害型 3.免疫複合体型 4.遅延型
正しい組み合わせはどれか
1.I型アレルギー ― ツベルクリン反応
2.II型アレルギー ― 気管支ぜん息
3.III型アレルギー ― 糸球体腎炎
4.IV型アレルギー ― 不適合輸血による溶血性貧血
5.V型アレルギー ― 全身性エリテマトーデス
練習問題の答え:3
【解説】
1.ツベルクリンはIV型 2.喘息はI型 4.不適合輸血はII型 5.SLEはIII型
アレルギーの分類と疾患の組み合わせで誤っているのはどれか
1.I型アレルギー ― アナフィラキシー
2.II型アレルギー ― 急性糸球体腎炎
3.III型アレルギー ― 全身性エリテマトーデス
4.IV型アレルギー ― 摂食性皮膚炎
5.V型アレルギー ― Basedow病
練習問題の答え:2
【解説】2はIII型
……………………………………………………………………….
Dr. Sixty_valleyの第61回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
