食品卸業界、商品単価アップも販売数量減少
主要食品卸の2026年3月期業績は一部を除き増収増益、過去最高益を更新する企業もあり概ね好業績で着地した。価格改定による効果もあり売り上げは伸長しているものの、課題は販売数量の減少。
総合商社系の三菱食品は昨年9月、伊藤忠食品は今年5月上場を廃止、親会社である商社の経営資源をフル活用し、中長期の成長戦略を加速させる。データとデジタルによる小売向けの誘客・購買促進支援や、AIによる棚割り提案も活発化。
協調領域の物流課題は「加工食品業界 製配販行動指針」(FSP版)に則り改善を推進、次は情報流について「メーカー・卸間次世代EDI推進協議会」での取り組みも本格的に始まった。

収益は業務効率化で改善へ
主要各社の増収要因は得意先との取引が伸長したこともあるが、商品の価格改定による押し上げ効果も大きかった。
例えば日本アクセスは2.2%の増収も、販売数量は0.9%減、ドライが4.2%減、チルド0.3%増、フローズン0.4%増。商品単価はドライ7%増、チルド・フローズンは4%増。
ドライは加工食品の値上げが恒常化し消費者の購買意欲が低下、飲料の値上げインパクトが強く、前年の南海トラフ地震臨時情報による特需の反動減も大きな要因。
三菱食品は0.1%の微増収、販売数量は5.5%減。ケース単価は全体で6.6%増の3389円、加工食品は6.3%増の2831円、酒類は8.6%増の3950円、冷食+アイスは3.2%増の4651円、菓子7.9%増の3039円と単価アップ。
収益面は商品値上げを含めた増収効果と不採算取引の見直し、業務効率化などにより増益組がほとんど。
販売数量の増加への取り組みでは日本アクセスがマーケットインの発想と卸ならではの、多くのメーカーを巻き込んだ販促企画が際立っている。
冷凍食品・アイスが食べ放題の「チン!するレストラン」や朝食欠食率の改善と潜在需要の顕在化を狙った「朝食向上委員会(仮)」、展示会を活用した「新商品グランプリ」など多くのメディアにも取り上げられ、需要喚起につなげている。
三菱食品はデータとAIを活用し店舗単位の品揃え・棚割り提案を短時間で生成する仕組みを構築。DD(デジタル×デジタル)マーケティングでは全国の取引先と様ざまなデータを活用した集客・販促施策を行い、新規顧客の獲得や顧客育成、客単価アップに貢献している。
日本アクセスは提供する「情報卸」機能について、課題だった全小売業への同じコンテンツ配信を改善、小売業ごとカスタマイズし売り場連動を強化、総選挙機能も拡張した。
AIプラットフォーム活用事例では、AI棚割りにより客単価48%アップ、粗利額20%向上、値引き・廃棄ロスは50%削減。流通特化型AI採用は5企業まで拡大。
伊藤忠食品はサイネージとアプリ・SNS連携によるキャンペーンの効果をさらに最大化、小売リテールメディアとの連携強化、広告効果の可視化を推進する。
新規取り組みとしてポイ活レシートアプリでのマストバイキャンペーンにより店頭誘導・効果検証の実証実験を実施中。
改正物流効率化法へ対応
今年4月から「改正物流効率化法」が施行、一定規模以上の特定事業者は物流効率化に関する中長期計画の策定と定期報告および物流統括管理者(CLO)の専任が義務付けられた。
取り組むべき事項は荷待ち時間・荷役時間の短縮と積載効率の向上等。10月末に中長期計画の提出、27年7月末には定期報告の提出が求められる。
製配販三層によりFSP(フードサプライチェーン・サステナビリティプロジェクト)会議が発足(22年4月)、そこにSM物流研究会(24年4月)とチルド物流研究会(25年8月)が加入。
その成果は①店舗納品期限「2分の1残し」への統一化と、それを前提にしたメーカー・卸間納品期限のルール化②3層間の最適連携を目指す、小売・卸間、卸・メーカー間の定番発注締めの時間調整③特売・新商品の確定数量化を可能にする、適正納品リードタイム(LT)の確保。
物流の法制化への対応として「加工食品業界製配販行動指針」を共同作成、25年度は荷待ち・荷役作業の時間や納品LTの確保、予約受付システム導入などの項目では大きく改善が進んだ一方で、共同配送の推進による車両の有効活用や発注の適正化、混雑時を避けた運送の項目では遅れている状況。
日本加工食品卸協会(日食協)によると、全賛助会員メーカー120社(首都圏エリア、3月末現在)のメーカー・卸間納品リードタイム(LT)は1日が17社、構成比で14.2%残っているものの、2日以上が103社、85.8%を占め、1日から2日に改めた企業は64社だった。
トラックの荷待ち時間短縮に効果的な日食協の「N-Tourus(日食協トラック入荷受付・予約システム)」は、26年3月末時点の導入拠点は508カ所(前年比67カ所増)。
また、三菱食品と花王が中心となって業界横断の荷主連合により、物流データに基づいた支線配送の効率化を目指す共同配送コンソーシアム「CODE(Cargo Owners' Data-driven Ecosystem)」を4月発足、食品・日用品・医薬品・出版の卸売業など9社が参加した。
三菱食品と花王は大規模な支線配送を担う荷主企業として、一部の地域(西東京・北海道等)において配送実績データを活用した共同配送による定期運行を実施、年間運行台数で約300台を削減、年間CO2排出量は約10万t削減できた。
さらに三菱食品と日清食品は「商流」と「物流」のデータ連携を通じて、需給バランスと物流効率の最適化に向けた協業を開始する。
①両社は保有する発注計画や物流実績などのサプライチェーン関連データを連携し、受発注業務や需給バランス調整業務の効率化と自動化を図る②両社の倉庫や配送トラックなど物流アセットの相互活用並びに最適化③製造、卸売、小売を横断したリアルタイムにデータ連携する基盤構築。
実証実験では①三菱食品が保有する特売発注予定を事前に連携することで、日清食品の在庫調整に関する業務時間を月間約200時間削減②日清食品の商品情報を三菱食品へ自動連携することで、商品情報の登録業務を効率化③三菱食品から日清食品への発注時に、トラック1台当たりの積載効率を最大化するAI発注モデルを構築し、配送に必要なトラック台数を約30%削減可能と試算。
PL納品化など課題山積
日本アクセスはフローズンマザーセンターが関東、中四国、近畿に続き25 年は中部が稼働。
課題はPL(パレット)名義問題、T12型PLの壁、全アイテムの壁、低回転品・非帳合品の取り扱い、工場直送便のトラック確保。PL化はアイスクリームの16社中15社がPL納品に移行しているが、冷凍食品はまだ15社中2社。26年度は5社がPL化するが、残る8社が未対応。
伊藤忠食品は①配送車両の帰り便を活用した引取物流が、25年度8拠点31社から受託②同社センターの空きスペースを活用したメーカー名義の在庫保管・配送サービスを提供し、積載率100%を目指すことで納品回数を削減③納品曜日平準化、PL発注比率向上、大型車比率向上、発注ロットアップで配送効率化。
情報流は次世代EDI推進
物流だけでなく情報流も協調領域として、製配販3層による取り組みも始まった。
特に遅れているメーカー・卸間の情報流について、日食協が事務局となって「メーカー・卸間次世代標準EDI推進協議会」を発足、まず卸・メーカー間の事前出荷情報(ASN)の高度化、次に受領、返品・返品受領のデータ化と請求・支払のEDI化を推し進め、効率化と高度化を図る計画。
メーカー・卸・小売間で見積情報・商品マスタ情報の授受をデジタル化し、フォーマットの共有化や自動変換・出力を行うことで、小売業ごとの個別対応、メーカー・卸担当者ごとの重複作業を削減し、サプライチェーン間の全体最適を目指す仕組みとして「N-Sikle(日食協 商品情報連携標準化システム)」も構築、普及を目指す。
商品情報連携については経済産業省が主導する形で5月27日、「消費財サプライチェーン協議会」(事務局・流通経済研究所)が設立された。
消費財業界におけるメーカー(製)・卸売(配)・小売(販)の製配販三層による計43社の連携により、商流・物流・情報流のあり方を抜本的に見直し、標準とデータ連携の社会実装を推進する。
具体的には①商品・事業所・貨物等の標準コードの普及②商品情報の一括登録・共同利用③商流・物流の標準EDIの普及④ユニットロード・物流資材の標準化・普及⑤データ連携による共同物流・最適在庫の実現⑥以上の5項目を実現するための商習慣の合理化・適正化、の6つのテーマを重点的に進める。設立時正会員はメーカー20社、卸売業9社、小売業14社。
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