「Solaria 2nd Stage 第一話|星降る約束」
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「第一話 | 星降る約束」
「音楽室 ― クリスマスコンサート数日前」
静かな音楽室。
夕方の光が、鍵盤をやわらかく照らしている。
「……一つ、お願いがあるの」
ゆいが、静かに言った。
4人の視線が集まる。

「今回の曲……最初、ピアノだけで弾かせてほしい」
少しだけ、間。
「理由は……後で話す」
ゆいは、頭を下げた。
沈黙。
その空気を破ったのは、あかりだった。
「いいに決まってるでしょ」
ひなたが笑う。
「ゆいの曲なんだからさ」
しおりも、静かに頷く。
「任せるよ」
数日後。
同じ音楽室。
「……聞いてほしい」
ゆいが、ピアノの前に座る。
一音。
静かに、音が流れ出す。
優しくて、あたたかくて、どこか懐かしい旋律。
4人は、言葉を失う。
音が、空間を満たしていく。
そして——
終盤。
ぽたり。
鍵盤に、小さな雫が落ちた。
「……ゆい?」

振り向かない。
ただ、弾き続ける。
もう一粒。
音は途切れない。
でも——
涙だけが、止まらなかった。
演奏が終わる。
静寂。
4人が駆け寄る。
「大丈夫……?」
ゆいは、ゆっくりと顔を上げた。
「……ごめんね」
少しだけ、笑う。
「これね——」
言葉を探す。
「お母さんと過ごした、最後のクリスマスの夜の曲なの」
空気が変わる。
「そのときね……」
ゆいの視線が、どこか遠くを見る。

「クマのぬいぐるみ、もらったの」
小さく笑う。
「手編みで……ちょっと歪んでて」
「でも……すごく、あったかくて」
声が、少しだけ震える。
「ずっと、枕元に置いてた…」
沈黙。
「だから……今回のステージ」
ゆいが、静かに言う。
「一緒に連れていこうと思ってる」
クリスマスコンサート当日
15:30
午後の授業が終わるメロディが流れ、校内にどこか浮き立つ空気が流れ出す。
その流れの中で、5人は自然と同じ場所へ向かっていた。
屋上。
ドアを開けた瞬間、冬の冷たい空気と、やわらかな夕焼けが迎える。
西の空は、ゆっくりとオレンジ色に染まり始めていた。
「……来たね」
ひなたが、ふっと笑う。
しおりはフェンス越しに街を見下ろし、
ゆいは静かに空を見上げ、
あかりは胸の前で手を握る。
そして、さくら。
「——成功させよう、絶対に」
その言葉に、全員が迷いなく頷いた。
「全校生徒、学生だよ」
しおりが静かに言う。
「中等部も、高等部も、大学生も……全員」
「だからこそ燃えるでしょ」
あかりが笑う。
ひなたが一歩前に出る。
「Solariaってさ——」
少しだけ言葉を探して、
「“太陽”なんだと思う」
風が吹く。
「だから、この場所から」
さくらが続ける。
「届けよう」
5人の視線が、大講堂へと向いた。
大講堂 ― 16:00
客席は、すでに埋め尽くされていた。
中等部、高等部、そして大学生。
ざわめきが徐々に静まり、舞台に視線が集まる。
学園長が壇上に立つ。
「本日は、第49回クリスマスコンサートにお集まりいただき——」
静かな声が、空間を満たす。
「本学園は創立以来、“思いやり”を大切にし、
知性と人情を兼ね備えた人格形成を理念としてきました」
客席の空気が落ち着いていく。
「今年の学園祭において——私の心を動かしたグループがいます」
ざわめき。
「本日は、その彼女たちに、この舞台を託します」
間。
「——Solaria」
舞台裏
暗い空間。
幕の向こうから、わずかな光。
5人は、円になっていた。
「……音、聞こえる」
ゆいが小さく言う。
かすかなざわめき。
「怖い?」
ひなたが優しく聞く。
さくらは、少しだけ考えて。
「……楽しみ」
あかりが笑う。
「いいじゃん、その顔」
しおりが、全員を見る。
「やることは、一つ」
「音、届けよう」
ゆいが頷く。
「——まもなく開演です」
幕が、上がる。

1曲目「Shining Start!」
イントロ。
「え、何この完成度……」
「学園祭と全然違うんだけど!?」
スポットライト。
さくらが一歩前へ。
「——はじまりは、ここから!」
爆発。
「やばい!!」
「もうライブじゃんこれ!!」
「手上げていい!?!?」
音、光、動き——すべてが揃う。
チア部席。
一人の少女が、腕を組んで見ていた。
(……揃ってる)
(フォーメーションも、視線も……全部)
「Shining Start!」
「楽しすぎる!!!」
「これ、マジでヤバい!!」
少女の視線が、わずかに揺れる。
(でも——)
(まだ、負けてない)
2曲目「星降る約束」
暗転。
静寂。
——一音。
ピアノ。
「……誰?」
「あの子、ピアノ弾いてる……」
舞台端、ゆい。
スポットライト。

(……綺麗な音)
チアの少女が、わずかに目を細める。
(さっきと、空気が違う……)
さくらの声。
「……綺麗」
「声、やば……」
しおり、ひなた、あかり——
光が増えていく。
「星降る夜に——」
「……泣きそう」
「なんで、涙出るの……」
チアの少女。
(こんなの……)
(私たち、できる?)
「この瞬間が――未来になる」
光が、満ちる。
少女は、目を逸らさなかった。
(……認めるしかないじゃん)
(あのステージ……届いてる)
アンコール
拍手。
止まらない。
「アンコール!!」
「もう一回!!」
ざわめきが、波になる。
再登場。
あかりが前へ。

「……行くよ」
『心の羅針盤』
イントロ。
「うそ、まだやるの!?」
「え、雰囲気変わった!?」
あかりの声が、突き抜ける。
「この子カッコよすぎ!!」
「さっきと別人じゃん!」
チアの少女。
(……強い)
(熱量で、押し切るタイプ……)
「立っていい!?無理!!」
「うわああああ!!!」
会場が、総立ちになる。
少女は——立たない。
でも。
その拳は、強く握られていた。
(……次は)
(負けない)
ラスト
音が止まる。
静寂。
そして——
拍手。
さくらが前に出る。
「ありがとうございました!」
深く頭を下げる。
舞台袖
「……届いたね」
ひなたが言う。
ゆいが頷く。
しおりは目を閉じる。
あかりは拳を握る。
さくらが、顔を上げる。
「まだ、終わりじゃない」
その先へ。
~ エピローグ ~
客席の端。
チアの少女が、立ち上がる。
静かにステージを見つめていた。
(Solaria……)
小さく息を吐く。
(面白いじゃん)
振り返る。
その目は、もう揺れていなかった。
(——本気で、潰しにいく)
第一話 星降る約束 (終)
▶ Solaria 2nd Stage 第二話|
― ぎこちない光 ― へ続く
