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特撮怪獣映画、世界で復活『トロール2』ネタバレ解説&考察

ノルウェー発の特撮怪獣映画が帰ってきた

「もし、伝承上の存在のトロールが実在したら?」それをNetflixで実現させた『トロール』。その続編にしてトロールとトロールが戦うという、前作を観た怪獣ファンならば血湧き肉躍る『トロール2』が2025年12月1日より配信開始された。日本のみならず、世界中の特撮怪獣映画ファンが注目していた『トロール2』は非英語映画ランキング上位に躍り出た。

特撮怪獣オタクで有名なギレルモ・デル・トロ監督との対談記事が出るなど、世界からの注目度の高い『トロール2』。本記事では、怪獣オタクの視点から『トロール2』について、解説と考察をしていこう。なお、以下の内容は『トロール2』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただきたい。

『トロール2』ネタバレ解説&考察

『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』の復活

世界中の怪獣ファンが考えた。これは『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』のノルウェー版リメイクではないのか、と。おそらく、ローアル・ユートハウグ監督と対談したギレルモ・デル・トロ監督も同じことを考えただろう。『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』は東宝特撮映画の名作に数えられ、『パシフィック・リム』をはじめ、クエンティン・タランティーノ監督『キル・ビル』などにも影響を与えている。

『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』について語るには、まず前作『フランケンシュタイン対地底怪獣』について語らなけらばならない。終戦間際、ナチスは広島へ「フランケンシュタイン博士が創った不死身の心臓」を運び出そうとしていた。ナチスと旧日本軍は不死身の心臓を使い、不死身の兵士を創り出そうとした。しかし、実験を前に広島に原爆が投下され、終戦の混乱の最中、不死身の心臓の行方はわからなくなってしまった。

それから15年の月日が流れ、宮島で白人少年が国際放射線医学研究所の研究員・戸上季子により保護される。その少年こそ、不死身の心臓が細胞分裂を繰り返したことで人間の姿となった存在であり、創造主の名をとってフランケンシュタインと呼ばれる少年は巨人へと成長していく。同時期、人畜を捕食する地底怪獣バラゴンが出現し、マスコミは逃亡したフランケンシュタインが人を襲っているのではないかと疑いはじめ......このフラケンシュタインの怪物と心優しい女性との間に生まれた親子愛というストーリーラインは、ギレルモ・デル・トロ監督『フランケンシュタイン』にも大きな影響を与えた。

『フランケンシュタイン対地底怪獣』の続編である『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』は日本神話「海彦山彦」を下敷きに、兄弟怪獣の戦いを描いた物語である。『フランケンシュタイン対地底怪獣』で死亡したと思われていたフランケンシュタインの不死身の心臓は2つに分かれ、一方は山の中に、もう一方は海底へと沈んだ。不死身の心臓は再び細胞分裂を繰り返して、サンダとガイラという2体の怪獣へと変貌する。

人間に保護されたサンダに対し、長年海底で孤独に過ごしていたガイラは自分以外の存在を知らず、上陸した途端に人間を捕食しはじめる。心優しいサンダはガイラが自身の兄弟と知りながらも、自分を保護してくれた人間のために戦うことになる。サンダとガイラは強い光や火に弱いなど、『トロール2』のトロールたちに設定も容姿もそっくりな怪獣である。『トロール2』では暴れ回るトロール・ヨトゥンを倒すべく、ノラ博士はトロールの王子・ビューティーの力を借りる。ローアル・ユートハウグ監督が前作を撮ったときから夢描いていた複数のトロールが登場して戦う作品、それは怪獣ファンにとっては懐かしいものでもあった。

トロールへのラブレター

『トロール2』ではヨトゥンの体を解析したことにより、トロールは針葉樹に近い肉体を持つ生き物であることが明らかになる。そのことが研究者たちの口から語られたとき、筆者は『トロール2』はトロールという神話に対するラブレターだと感じた。『トロール』では、トロールはノルウェーに古代より生息していた生き物であり、オーラヴ2世がキリスト教を国教にした際に虐殺されたと語られている。その後、トロールは様々な文学作品で悪役として登場してきた。

その例の一つが、J・R・R・トールキンの『ホビットの冒険』が挙げられる。トールキンの中つ国のトロールは冥王が木の巨人のエントを真似て創った岩の巨人である。岩と雪によって創られた心臓を持つと語られるトロールだが、その正体は木に似た生き物というのは、トールキンたちが描いてきたトロール像から離れている。『トロール2』はキリスト教の布教により、歴史から忘れ去られた伝承上の生き物たちへの愛が詰まった作品だと考察できる。

荒れ狂うヨトゥンは、オーラヴ2世の巡礼の道を通りながら、最も重要な巡礼地であるニーダロス大聖堂へと破壊を伴いながら進撃を進める。その目的は虐殺への復讐である。当初こそ、ヨトゥンはトロールを虐殺したオーラヴ2世のもとに向かっていると思われていた。しかし、オーラヴ2世の遺した文書の断片が見つかったことで話が変わってくる。そこにはオーラヴ2世が教会のやり方に反し、ノルウェーの先住民であるトロールに故郷を返すべきという署名が残されていた。ヨトゥンはオーラヴ2世との約束を反故にしたノルウェーという国家、そしてノルウェーに暮らす人間に復讐しようとしていたのだ。

トロールへの贖罪、そして“けじめ”

かつて、ヘリも戦車も無い時代にオーラヴ2世はどのようにしてトロールたちを虐殺したのか。その答えはニーダロス大聖堂の地下にある泉にあった。その泉から湧き出る水を含めた聖水に対し、トロールの体は非常に脆くなるのだ。主人公たちはトロールへの贖罪、そしてオーラヴ2世が遺した“けじめ”をつけるため、ヨトゥンとの戦いに挑む。かつて、オーラヴ2世はトロールを虐殺し、その贖罪として故郷を返そうとして教会に殺された。ヨトゥンの怒りはもっともだ。それでも人間は生きていかねばならない。

怒り狂うヨトゥンのもとに現れたのは、トロールの王子であり、トロールたちの正統後継者であるビューティー。復讐に心を埋め尽くされるのではなく、ときには赦しの心も必要というキリスト教徒よりもキリスト教の教えを守ったビューティーとヨトゥンの一騎打ちがはじまる。しかし、歴戦の猛者であるヨトゥンに対して、ビューティーは未熟な子ども。敵うはずがない。

勝ち目が無い、誰もが諦めたそのとき、研究者の一人であるイサクセンが自ら聖水の爆弾を抱えてヨトゥンの口の中に飛び込む。イサクセンの願いは生まれてくる子どもに平和な世界を残すこと。イサクセンの犠牲と引き換えに、ヨトゥンは倒れ、トロールの王子・ビューティーはオーラヴ2世との取り引きにもとづき、返却された“故郷”へと帰っていくのであった。しかし、オーラヴ2世を殺した人類の悪意は止まらない。人類側は小型のトロールを秘密裏に捕獲しており、続編を匂わせて物語は幕を閉じる。

『トロール2』ネタバレ感想

「ノルウェーでもハリウッド級の作品を!」

ローアル・ユートハウグ監督はインタビューで、『トロール2』という映画を撮るきっかけとして、ノルウェーでも『アルマゲドン』や『インデペンデンス・デイ』、『ジュラシック・パーク』といったハリウッド超大作を創り出したい、という想いがあったことを語っている。『トロール2』は街をトロールが破壊し、トロール同士が殴り合う派手なシーンを撮りたいという映画人としての純粋過ぎる想いがNetflixによって叶った作品なのだ。

そういった意味では、ヨトゥンとビューティーの殴り合いは魅力があったし、最後に燃え盛るヨトゥンの心臓をビューティーがぶち抜くシーンは大迫力だった。日本で特撮作品として長年走り続けていたスーパー戦隊が10年ほどの休止期間に入るなど、特撮の変革期となった2025年。その最後を締めくくる怪獣映画として、『トロール2』は日本の、いや世界の特撮怪獣ファンに希望を与えてくれる映画だったと言える。


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