食卓の上、琥珀のグラス
あ、氷がない!数分前に母が言った
食卓に並ぶチーズ、バゲット、ビーツのペーストを背に、私は自転車を漕いでいる
髪がふわりと持ち上がり、
額に、頬に触れる
心地よく肌を冷やす風が、
レーヨンのシャツと体の間を通り抜ける。
首筋から背骨の上を泳いでいく。
からり、と氷がグラスを鳴らす
レモンとオリーブ、琥珀色のベルモット
きらきらのグラスを傾けて
初めてのひとくち。
思い浮かんだのはこんな情景…
太陽から肌に届く、温かさ
気がつけば葉の影が肩に落ちている
オレンジに煌めく水面を
ずっと眺めていたいのに、
体はゆっくり夕方に追いついてしまう
水平線に沈む光が名残惜しくて、
それでもつま先は冷たくなっちゃって
残しておいたオリーブを摘む
かもめが弧を描いて遠ざかっていく
さぁ私も食事の時間ね。
