一週間ぶりの青い海
6月9日火曜日
待ちに待った解放の日である。
昨夜のうちから、いつでも部屋を出られるよう準備は整えてあった。
朝になり、まずはあまり美味しいとは言えない食事を済ませる。そして看護師が来るのを待ち、必要な手続きも終わった。しかし、最後は医師の承認がなければ解放されない。
患者対応で忙しいのだろう。なかなか連絡が来ない。
とにかく一刻も早くここから出たい。
解放されたら何をするか。
もちろん食堂へ行き、少しばかりの贅沢を楽しみたいと思っていた。
そんなことを考えていると電話が鳴った。
「すべて完了しました。あとは支払いだけです。」
ついにその時が来たのである。
部屋へ戻ると、相方が辛そうに横になっていた。ここ数日体調が優れず、医務室から体温計と酸素計を借りてきているという。
どうやら船内では多くの人が風邪をひいたり、体調を崩したりしているようだ。
私は14階へ上がり、いつもと同じ食事を取った。そしてコーヒーを飲みながらこのブログを書いている。
太陽は燦々と降り注ぎ、どこまでも青い海が広がっている。船はほとんど揺れることもなく順調に航行中だ。
一週間ぶりに見る光景である。
当たり前の世界が、当たり前に存在している。
普段は気にも留めないことだが、それが失われたときに初めて、そのありがたさに気づく。
そして、その不自由な時間をどう受け止め、どう乗り越えるかが、その人の力量なのかもしれない。
さて、話は変わる。
隔離明けのことをずっと考えていた。
好きなヤクザ映画では、出所の場面になると必ず舎弟が迎えに来る。
「お勤めご苦労さんです。」
そう言ってタバコを一本差し出す。
親分はそれをゆつくりとくわえ、舎弟が火をつけたタバコをゆっくりと吸い込む。
そして、その一服を味わいながら、
「ああ、娑婆に戻ってきたなあ」
と実感するのである。
だから今回も、ドアを開けたら『しんちゃんファン』が並んでいて、
「ご苦労さまでした!」
と声を掛けてくれるのではないかと、密かに期待していた。
しかし現実は違った。
通路には誰もいない。
持ち込んだ荷物を四つも抱え、一人で元の部屋へ戻るだけだった。
何を夢想していたのだろう。
解放の感激も束の間、私はあっという間に現実へ引き戻されたのである。
しかし、それでいい。
さあ、また忙しい日々が始まる。
自主企画も待っている。
ようやく娑婆に戻ってきたのだから。


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