同じだと思っているうちに
朝、歯を磨きながら空を見上げていると、トリケラトプスのような雲が浮かんでいた。
うちにあるぬいぐるみそっくりだ。
トリケラトプスは徐々に鼻を上に向け、耳をからだから離し、しっぽを細くして、風に乗って流れていく。
最後はへびのように細長くなって、空の中に消えていった。
キッチンで梅と塩を交互に浸けておいた梅干しの瓶を見ると梅酢が上がって、ひたひたに浸っていた。
梅酢をタッパーに流し入れ、ふにふにと柔らかくなった黄色の梅を指先でやさしくつまんで、干しかごの上に並べる。
ほのかに甘くて、爽やかな香りがする。
梅を並べ終えて、二階のベランダの竿にひっかけた。
太陽の光をいっぱいに浴びている梅がいじらしい。
中々目が離せなくて、部屋に戻った時には、目の前がちかちかしていた。
マットをひいて瞑想をする。
目を閉じると、頭の中に考えごとが浮かぶ。
あの返信来てるだろうか。
返信が来てなかったらこっちで進めていいかメールを打とう。
文面は…
頭の前の方に考えごとが集まって、さっきの雲のように濃くなっていく。
それに気づいて見つめていると、雲はゆるんで、流れ、消えていった。
青空の下で静かに息をする。内と外が交わっていく。
目を開いて、パソコン作業をしばらくして、レッスンに入る。
内側の力を感じながら腰を持ち上げ、背骨を下から順に反らしていく。
「瞬間、瞬間、からだは更新されています。過去の枠にとらわれず、今この瞬間のからだに気づいてみましょう」
流れの中で、一つ一つの動きを丁寧に捉えている生徒さんを見ながら私も胸を広げた。
夕方、自転車に乗って図書館で予約していた本を借り、不動産屋さんでアトリエにする部屋の鍵を受け取った。
太陽はもう西に傾いているのに熱が顔にぶつかってくる。
最後の坂を登り切ると、大きな家の庭先にさるすべりが咲いて、じわっとした夏の空気にピンクの花がよく映えていた。
家に着くと一気に汗が吹き出した。
「あー」と思わず声が漏れる。
口の中はカラカラだ。冷たいハーブティーが飲みたい。
お湯を沸かして、ホーリーバジルを急須に入れる。
だめだ。暑すぎる。
ズボンを脱ぎ捨て、コップに氷をぎっしり入れる。
お茶を注ぐと、氷はパチパチとはじけながらみるみる小さくなっていく。
さらに氷を足し、痛いほどの冷たさを一気に飲み干した。
