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見ている私のさらに奥

からだの奥が燃えるように熱い。

肘でマットをしっかりと押す。
上げている足は、力を抜くと今にも落ちそうだ。

息が荒くならないように下腹に意識を向けて、長くゆっくりと息を吐いた。

去年から受けているレベルアップのティーチャートレーニングも、残すところ今日と明日でおしまいだ。

受講生は順番に先生役になって、動きながらガイドをしていく。

「右足、左足とゆっくりと床へと降ろして。背中を伸ばしていきましょう」

そう声をかけながら、腰の力を抜いた。
からだがこわばっていると、声まで硬くなりやすい。
意識を背中と、その奥に広がる空間へ向ける。
からだと意識のあいだがゆるみ、
そこに声が響いていく。

「ひとみさーん、ベリーグッド!」
アメリカから繋いでいる先生の声を聞いて、さらに力が抜けた。

首筋の汗を拭き、テキストをめくる。

一緒に受けている人の中には、ヨガを学び始めた頃からの仲間もいる。
ベーシック、レベル1、そしてレベル2。
気づけば七年近く、一緒にいる。

「では、よろしくお願いします」
聞き慣れたその声に、内側から力が戻ってくる。

冷たい風が部屋の中を抜けるようになってきたころ、
急に胸の奥がつまって、涙がせりあがってきた。

頑張ってるもん。
誰か見て。
よくやってるね、って褒めて。

鼻の奥がツンとする。

運動会に授業参観。
誰も来ないことは分かっているのに、つい後ろを振り返ってしまう。

もしかしたら、お父さんが急に休みになって来てくれるかもしれない。

もしかしたら、お母さんが病院から来てくれるかもしれない。

けど何度振り返っても、そこに私を見る人はいない。
授業が終わり、友だちがお母さんやお父さんのところへ駆け寄っていく中、私はできるだけゆっくりとランドセルを開いた。


「吸う息、腕を引き上げて」
その声に戻されるように、腕を上げる。

大丈夫。私がわたしを見ている。

すごい。こんな力強いポーズもできるようになったんだね。
本当よく頑張ってるなぁ。
いいよ、いいよー。


見られている私、
見つめている私、
そして、その両方をさらに後ろの方から見守っている私。

私の中にあるそれらを同時に感じていると、
感覚が全方向にひらいていく。

何もない。
けど、全てが満ちている。

肩がゆるむ。
からだのあちこちの小さな緊張が、ぽろぽろと落ちていく。

軽くて、やわらかくて、ほっとする。
息を吐いて、マットにおでこをおろした。

「お疲れさまでした。また明日ー」

トレーニングを終えると、そのままレッスンへ入った。
腕にほとんど力が残らないまま、生徒さんの動きを見ながら声をかける。

すべてが終わるころには、外はすっかり暗くなっていた。

マットに横たわり、目を閉じる。
胸に手をおいて、ゆっくりと撫でた。

よーくやった。

胸に置いた手の上に、もう片方の手を重ねた。


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