波の音を連れて帰る
車を停めて、パートナーはトランクからカセットコンロ、やかん、レジャーシートを取り出した。
「ティッシュ持ってくよ」
私はそう言って、タオルや水やらが入ったバッグの上に車にあったティッシュを乗せた。
肩にたくさんの荷物をかけて砂浜を歩く。
ビーチサンダルと足の間にさらさらと砂が入りこむ。
それが気持ちよくて、わざとサンダルの先を砂に滑り込ませながら歩く。
ひんやりした砂が足裏をするりとすべっていく。
波打ち際の少し手前にシートを広げて座る。
目の前には、青緑を含んだやわらかな灰色の海が広がっていた。
やかんで湯を沸かしてカップラーメンに注ぎ、スーパーで買ってきたお弁当を並べる。
二人で海を見ながら食べた。
時折、風がびゅぅと吹く。
風の吹く方へ顔を向けながら、卵焼きを頬張る。
「あぁ〜!」
その声に目を向けると、ティッシュがふわりふわりと飛び、彼はラーメンを片手に持ったまま慌てて走っている。
食後、裸足のまま波打ち際に立つ。
海へ足を入れると、ひんやりとした冷たさが足先からすぅと上がってきた。
遠くにはウィンドサーフィンの帆が、小さな三角をつくっている。
砂浜へ戻り、大きな砂山を作って真ん中に棒を立てた。
二人でしゃがみこみ、砂を両側からすくう。
「ちょい、それずるくない?」
「ちゃんと削ってるよ」
棒倒しは三勝一敗。
機嫌を良くして、棒を持ったまま砂浜に線を引く。
その線に合わせて石を一個ずつ並べてみる。
集めては並べ、並べては集める。
何を作っているのかもよく分からないまま、
二人でただ黙々と砂の上に大きな模様をひろげていった。
シートに戻った時には腰が痛くなっていた。
寝転がって、目を閉じる。
ザァッ。
波の音が遠ざかっていく。
「ひとみ、そろそろ帰らんと」
彼の声がして、目が覚める。
「めっちゃ気持ちよかったねぇ〜」
惜しむように何度も言った。
荷物を持って振り返ると、海面で薄い銀が光っていた。
家に戻り、片付けもそこそこにソファに身を沈める。
ザァッ。
ザザー。
からだはまだ、ふわふわと海辺を漂っていた。
