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エメラルドグリーンの町ケズィックへ ― 湖水地方への道

天気予報を確かめながら、
ヨークシャーデイルズをあとにすることにした。友人曰く、この時期の湖水地方の晴間は大変貴重だと。

あの緑の丘にもう少しとどまりたい気持ちを残しながら、車を北へ走らせることにした。

出発の朝、グラシントンの駐車場で、同じ宿に泊まっていたマダムに声をかけられた。
「次はどこへ行くの?」
「ケズウィック」と昨日覚えたばかりの町の名を答えると、
彼女は、「いいわね!一つ教えてあげると、発音は“ケズィック”よ。その方がローカルらしくて素敵でしょ?」と優しいウィンクした。なんともイギリスらしくてクスッと笑えた。

車はやがて、ヨークシャーデイルズの真緑の丘を抜け、赤茶けた丘の色へとゆっくりと変わっていく。

湖水地方の入り口で有名なウィンダミアを過ぎ、詩人ワーズワースの町・グラスミアを抜けると、小さくて落ち着いたエメラルドグリーンの町にたどり着いた。

そこは、グラシントンの灰色の石とは異なる、深いエメラルドグリーンの石の家々が並ぶ町。

どの家も静かに秋の光を受け止め、
湖水地方の穏やかな時間を語っているようだった。

この町の空気には、どこか特別な落ち着きがある。
観光地というより、日々の暮らしが息づく静かな町。
少し歩けば、どの通りも緑の石と澄んだ空気に包まれている。

そして――
その町の先にある神秘的な地で
もうひとつの「静けさ」と出会うことになる。

(次回:「キャッスルリッグ・ストーンサークル ― 風の中の祈り」につづく)