“大きな木”の話し
こんにちは☺️児童養護施設や少年院出身の青年支援をしているNPO法人スマイルリングでの、青年たちとの日常をnoteしています。
自分、ずっと、
負けてばっかりだから、
お母さんに連絡しづらくって…。
久しぶりに電話をくれた
何だかしおらしい“息子”の声。
相変わらず、悪戦苦闘の毎日らしい。
負けてなんかいないさ。
朝起きて、現場行って、
毎日仕事してるんでしょう?
いっぱい転んだり、上手くいかないだけ。
そんなのは沢山あるかもしれないけど、
“負けてる”なんて思わないよ。
むしろ、まあよく生きてるわって思う。
凄い逞しく生きてるじゃない。
それって、本当に凄い事なんだよ。
俺、絶対に、何があっても、
人を騙したり、脅して金取ったり、
そんな事は絶対にしない!
そうだそうだ!
それで良いんだよ。偉いよ!
今の苦労は必ず○ちゃんの宝になるから、
アンタは絶対、大丈夫だよ…。
少しずつ、電話の向こうの
声が元気になっていく。
頼れる親が居るどころか、
一分だって安心出来る居場所も無く
凄まじい暴力に晒されて生きてきた彼は、
世間の人達には到底想像も出来ない、
この日本で、子どもが本当にそんな目に
あうのかというような
過酷な世界を生き延びて来た。
あっちこっちに居場所が変わり、
生まれながらの厄介者のように感じながら
小さな息しか出来ずに育った。
少年院を出院してからは、
それまで何の接点も無く
優しい思い出の全く無いこの娑婆で、
普通に育てられたなら当たり前の事も
シラフで生きるのはあまりにキツ過ぎて、
いつも、“怖い怖い”と心で泣いていた。
この子が心で泣くとそれは直ぐに伝わり、
暴れたり狂ったりする彼を、
何度、抱き締めた事だろう。
何度、叱り飛ばした事だろう。
今だって彼は泣いている。
死に物狂いで生きている。
そして、少しずつ、少しずつ、
ちゃんと成長している。
泣きながら頑張って生きている。
この子はとても特別な
素晴らしい感性を持っている。
物凄く劣悪な環境で育ったのに、
何故か護られてきた、清らかな魂を、
時折そっと見せてくれる。
いつか御礼を伝えたい人がいます。
何回行ったか分からない児童相談所の中で、
唯一信じられて、好きだった人です。
“すなはらとしゆき先生”って言う人です。
すなはら先生だけは、自分の話を聞いてくれた。
少年院にも面会に来てくれた。
それなのに…。俺、まだ子どもだったし、
あの頃物凄く荒れてたから…。
“大きな木”って話を教えてくれたんです。
おお〜!そうなの!
すなはら先生に、会いたいね。
今の○ちゃんの頑張ってる姿、
先生に伝えたいね。
“大きな木”っていう話?
よく覚えてたねぇ!
どんなお話しなんだろうね、
私、調べてみるね…。
“大きな木”のお話しはこんなだった。
大きな“りんごの木”と小さな“坊や”は仲良しで、
二人はいつも一緒に遊んでいた。
りんごの木は坊やが大好きだった。
しかし少しずつ成長していく“坊や”は
あまりりんごの木の所へ来なくなっていく。
久しぶりに、
成長して若者になった“坊や”がやって来て、
喜んで遊ぼうと言うりんごの木に言ったのは、
「街に行って買い物をしてみたい。
お金が欲しい。」
りんごの木は自分のりんごを全て“坊や”へあげた。
喜ぶ坊やを見て、りんごの木は嬉しかった。
また久しぶりにやって来た“坊や”は、
「家が欲しい」と言ったので、りんごの木は
全ての枝を坊やへあげた。
喜ぶ坊やを見て、りんごの木は嬉しかった。
そして最後に現れた“坊や”は「船が欲しい」
と言い、とうとうりんごの木は、
自分の幹を坊やへ与えた。
切り株だけになってしまった大きな
りんごの木は嬉しかった…。
「だけど、本当かな?」
最後にこんな言葉で終わる、
『大きな木』は、こんなお話しのようだった。
私にもいろんな事を考えさせられる
とても深い示唆を与えてくれる物語で、
“すなはら先生”がどうして彼に
この物語を教えてあげようと思ったのかは
分からないのだけれども、
彼が、その先生の事を、
大嫌いだった児童相談所の中で
唯一信じられる人だったと言うのは、
何となく、分かる気もした。
お母さん…
俺、絶対にこの何年かで、
経済的に人生の土台、ちゃんと作るから、
その時ですよ…
ちょっとの間を置いて、
一緒に沖縄に旅行に行きましょう!
適当に私を喜ばせようとして
軽く口から出た言葉なのでは無く、
彼にとっては、大きな夢を果たすような
覚悟を持って言ってくれた言葉なのだ。
その心が本当に尊く、
本当に嬉しいと思った。
ただでさえ、何かと気にかけてくれる
親も無く、頼れる実家も無い彼等が、
物価高だの、光熱費の高騰だの、
自己責任だの、個人主義だの、
ため息しか出て来ないそんな社会では無く、
お腹いっぱい美味しいご飯が食べられて、
子どもや若者達が護られ、育てられ、
安心して生きていける優しい社会になるようにと、
毎日、心から願っている。
りんごの木は、最後には
たった一人ぼっちの切り株に
なってしまったけれども、
それでも“坊やの役に立ちたかった”
りんごの木の気持ちは、痛いほど分かる。
“愚かだ”なんて、私には笑えない。
だって、
りんごの木が坊やにしてあげられる事は
それしか無かったのだもの。
昨日、食糧支援を北海道内外
あちこちの青年達へ手紙と共に送った。
3月まで、今頂いているWAM助成金のお陰と、
日頃から彼等若者達の事を心から支援して
下さる皆さんあっての事で、
本当に本当に、感謝しか無い。
悪戦苦闘しているあの子たちが、
一瞬でもニコリと笑ったりホッとして、
一日一日を送っていけますように。
皆んな頑張れ!
見守っているからね。
NPO法人スマイルリング
理事 ののむら ちあき💫 #NPO法人スマイルリング #児童養護施設
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