【南小国の軌跡_vol.7】物産館の再定義――土産物屋から「地域のライフライン」への進化
こんにちは。SMO南小国 CMOの安部千尋です。
私たちの活動拠点である総合物産館きよらカァサ。国道212号線沿いに位置するピラミッド型のこの建物は、南小国町の「顔」として、休日には多くの観光客で賑わいます。

南小国になくてはならないこの場所。しかし、経営における数字と向き合ったときに、「脆さ」とも言える側面が浮かび上がりました。
それは、極端な「平日と休日の売上差」と「観光客への依存」でした。
観光地なのだから観光客が主客でいいのではないか、という考え方もあります。しかし、もし自然災害やパンデミックで観光客の足が止まれば、売上は瞬時に途絶えてしまいます。
何より、地元の人たちが買い物に来ていないという事実は、地域商社として地域に根ざしきれていないことの裏返しでもありました。
今回は、物産館を「観光客向けのお土産屋さん」から「住民の生活を支えるスーパーマーケット」へと進化させるために取り組んだ、私たちの地道な売り場改革についてお話しします。
観光客を満足させつつ、地元住民が日常使いできる店にする
改革を始める前、地元の方々からこのような声を耳にすることがありました。
「カァサには良いものはあるけれど、普段使いできるものがない」
「お土産のお菓子はあっても、今夜の晩ごはんのおかずがない」
当時の棚には、観光客向けの箱菓子や高価な加工品が多く並んでいました。地元住民の日々の買い物は、車を走らせて隣町のスーパーまで行くような状況でした。
せっかく地元の野菜や商品が並んでいるのに、地元のお客さんは来ない…
この残念な事実に直面し、私たちは方針を立て直しました。
改革①:「肉」という来店動機を作る

まず着手したのは、精肉販売の強化です。 2024年度から新たに大型の冷凍・冷蔵設備を物産館の敷地内に整え、牛肉をはじめとする肉類のラインナップを大幅に拡充しました。
「今日は焼肉にしよう」と思ったとき、わざわざ町外へ行かなくても、きよらカァサに行けば良質な肉が手に入る。日常の食卓におけるメインディッシュを扱うことで、単なる品揃え拡充の意味に留まらず、地域住民の来店動機を生み出す戦略となりました。

実際に、2025年4月の売上データでは精肉部門が前年を大きく上回りました。観光客にとっても「キャンプでのBBQの食材」や「本場のあか牛を土産にする」という需要に応えることになり、客単価の向上にも寄与しています。
改革②:生活必需品の適正な配置

次に、豆腐・牛乳・味噌や醤油といった、日配品(毎日配送される食品)と調味料の拡充を行いました。 これらを観光地価格ではなく、手に取りやすい価格で、かつ地元・県産の質の高い品を揃えたのです。
また、地元野菜だけではどうしても季節によって欠品がでてしまいます。そのため、県産の野菜を中心に日ごろ使う野菜を仕入れることにしました。
物産館で地元のものではない商品を取り扱うことに対しては様々なご意見があります。一方で、いつ来ても便利で楽しんでいただける場所を目指すことで、活気のある売り場になったことも確かです。

「お土産を買うついで」ではなく、「醤油が切れたからカァサに行こう」と思ってもらえるかどうか。データを見ると、調味料や乳製品のカテゴリーが前年比で着実に伸びています。
観光客の自分用のお土産需要と、住民の日常利用。双方を取り込めた結果が表れはじめました。
改革③:地域の胃袋を支える「弁当・惣菜」と移動販売

もう一つの柱が、お弁当と惣菜の強化です。 高齢化が進む南小国町では、毎日の食事の準備を負担に感じる世帯も少なくありません。私たちは厨房部門と連携し、地域住民向けの弁当や惣菜の販売を強化しました。
さらに、店舗に来ることが難しい高齢者の自宅近くまで商品を届ける「移動販売」も継続しています。2024年度、移動販売の売上は前年比約1.4倍に成長しました。

住民の皆さんの正直なニーズを受け取る機会でもあります。
「ウチ」と「ソト」が交わる場所へ
精肉や日配品、お弁当を強化したことで、平日の物産館に地元の方々の姿が増えました。 観光客が地元産の野菜を手に取り、その横で地域住民が今夜のおかずを選んでいる。ソト(観光)とウチ(日常)が、同じ空間で心地よく混ざり合う。
これこそが、私たちが目指す「地域の拠点」のあるべき姿です。

物産館事業の売上は堅調に推移し、2026年には創業36年にして、過去最高の売上を更新しました。
物産館きよらカァサが、「地域のライフライン」として機能し始めたのです。
さらに、「館内カフェのリニューアル」「キッズ・スペースの設置」「本屋コーナーの設置」・・・その進化は現在進行形です。

派手な観光施設を作るのではなく、地域に必要とされる機能を実装していく。その地道な積み重ねが、雨の日でも平日でも売れる「なくてはならない店舗」を作っていくのだと確信しています。

最終回予告
次回は本連載の最終回です。
これまでの改革を総括し、SMO南小国が描く「未来図」についてお話しします。
【最終回】人口3,800人の町から、日本の未来を書き換える
