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【義母からの棘言葉の備忘録】【エピソード11】~義実家の冬・台所に立つ私と立たない義妹~

【義母からの棘言葉の備忘録】を読んでいただきありがとうございます。


年末年始の帰省2日目の午後に、庭に1台の大きな車が駐車しました。

義母が「〇〇(妹)が来たわ~」と弾む声で、土間の玄関に向かいます。
表情も柔らかくなり、笑顔を見せながら、「疲れたでしょう。」と
義妹夫婦をねぎらっていました。
大晦日が賑やかになることに、私も嬉しく雰囲気が明るくなるだろうと安堵しました。

昨年、義妹は出産し、私たちの子どもと1歳違いです。
私は、子どもとの成長の話相手ができると思い、肩の力が抜けていきます。

しかし、その直後に私は心がざわつきました。

義妹夫婦は、2階に上がり、義母も義妹の子どもを抱きながら、後ろからついていきます。2階から義母が呼びます。
「増築した部屋を義妹たちに使ってもらいますから」
丁寧な口調で言いました。
義妹と何か話し合われたのでしょうか…。
私たちの荷物は、2階にある以前義父母が使っていた部屋に、
移動することになりました。
(義妹はお客さまだから?)理由はわかりません。
どうしてそうなるのか、説明はなかったのです。
ただ、義母の中ではすでに筋書きが出来あがっていたのかもしれません。

夕飯の支度をする時間になりました。
今日はメニューが「すき焼き」です。
義母は、朝市で牛肉を奮発したことを、私たちや義妹夫婦に、誇らしげに
言います。得意げな義母に、「楽しみです」と言うべきですが、言葉がでません。でも、美味しいお肉が食べられることは嬉しいと思っていました。
冷蔵庫には、竹皮に包まれた牛肉があります。
畑から泥のついたたくさんのネギを、義父がとってきました。
近所の方から頂いた「大きな新鮮な白菜」「肉厚な大きなしいたけ」食材を見るだけで、ますます夕飯が楽しみです。

台所に立つ私に、義母がふいに言いました。
「〇〇(妹)は、小さい子がいるから、台所には立たないから」

その言葉が耳に入った瞬間、胸の奥にぎゅっとつかまれたような痛みがありました。返事をする余裕はありません。

昨年、私は土間の台所で、山のような里芋の皮を剥きました。子どもを
おんぶしたまま、手は冷たく、腰は痛くても、誰にも文句を言わずに、
逆らうことなく、里芋を剥いたのです。
(あの時の私は、どう扱われていたんだろう) 
(娘は大事にされているのに、私は?)
(去年のこと、忘れてしまったの?) そんな思いが次々に浮かび、冷たい水で野菜を洗いながら、涙が頬を伝わります。

無言で目の前に大きなお皿が2枚置かれました。
白菜を切っていると、「ここに野菜を並べて」 と義母が言います。
義母のダメ出しが飛んできました。
竹皮からお肉を出して並べていたら、
「お肉は半分に切って。全部食べずに、冷蔵庫に入れといて」
(いいお肉だから…ってこと?)
義母の“ルール”に従いながら、
冷蔵庫に半分切ったお肉を入れます。
私は、義母が気に入るように、ただ手を動かすしかありません。

副菜のポテトサラダを作っていると、義妹が台所に入ってきました。
「お姉さん、ポテトサラダって塩・コショウします?」
「そうですね、しますよ」 そう答えた途端、義妹は茶の間に向かって行きました。
「お母さん、やっぱり塩・コショウするんじゃない?」
義母の反応はなく、無言でした。
(え…今まで入れてなかったの?)
(この家の味に合わせるべき? でも義母は何も言わない…) 
私は自分のやり方でポテトサラダを作ったのです。

いよいよ、すき焼きを作る時間になりました。
「●●家(義実家)では、すき焼きを作るのは男の人なのよ」
義妹がそう言った瞬間、私は少し驚きました。
ここの家では、「台所仕事」は女性の役目だと思い込んでいたからです。

テーブルの上にはコンロが置かれ、夫がすき焼き鍋を運んできます。
(この家では、すき焼き=男性が作るのね)
そんなことを思っている間に、夫は義父の隣に行き、高級肉を鍋に広げ、
酒を回し入れていました。

その様子を、義母はじっと見つめながら、生卵を割りはじめます。
(あっ、生卵……。子どもにはまだ食べさせたことがないのに)
義母は“アレルギー”のことなど気に留める様子もなく、
当然のように子どもにも生卵を差し出しました。

私は慌ててその卵を夫にそっと渡し、子どもには生卵をつけずに取り分けます。
義母に悟られないように、そっと、そっと。

「まだ、食べさせたことないんです」 そう言いたいのに、あの場の空気では逆らいづらく、声に出せませんでした。


お風呂の時間になると、義実家では決まった順番があります。
一番風呂は大黒柱である「義父」です。沸かしたばかりの熱い湯が大好きで、湯上がりは長い回廊のひんやりした空気に体を冷ますのが何よりの楽しみです。 「この風呂場までの廊下がいいんだよ。」と、私は何度も聞いてきました。

義父の次は夫です。
義母が「ほら、あなたも入りなさい」と促すのがいつもの流れです。
夫は、最後になる私を気遣って、いつも“からすの行水”のようにさっと上がり、「〇〇(私の名)、早く入りなよ」と声をかけてくれます。
私は遠慮します。ここまでは、毎回一連の流れです。

けれど、義母や今回は義妹夫婦もいます。

「私は熱いお風呂が苦手なので」と遠慮し、最後のぬるくなったお風呂に入るのが、いつもの私の役目です。

気がつけば深夜1時です。髪はドライヤーで乾かさず、
そっと2階に行きました。
子どもは夫が寝かしつけてくれていました。







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