見出し画像

【小説】疲れたSS(スクリーンショット)SIerは世界を救えるのか?#6

窓から差し込む光がまぶしく、鳥が「ぽーぽー、ぽっぽー」と鳴く声が耳に入り、私は目を覚ました。昨日の疲れが残っているのか、しばらくベッドの中でまどろんでしまう。天井を見る。
「知ってる天井だ」
ぼそっと私はつぶやく。

私は宿屋の天井をぼーっと見つめながら昨日のことを思い出す。ロックスライムの襲撃があり、私がスキルを使って撃退したのだった。
そのあと、スキルを連発した疲れから、ほかには何もする気力がなくなり、ドロップ品を拾うこともなく宿に帰り、ベッドに入ったのだった。
夜ごはんを何も食べていないのでおなかがすいて朝早く起きたのだ。

「そういえば、ロックスライムをあれだけ倒したんだった……。これは、もしかして大幅レベルアップしてたり?」
と思いステータス画面を呼び出す。
「ステータス」
すると青白い画面がぽわっと浮き上がってくる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ステータス
名前:エリー(藤澤 若葉)
レベル:10
称号:中二病(重症)(最初のタイトル)
職業:SIer
生命力:45 / 45
魔力:46 / 46
力:9(+2)
体力:17
素早さ:10(+6)
知恵:9(+5)
運:1
経験値:9972 / 10230
スキル:SS(スクリーンショット) Lv4 241 / 300
    SS(スナップショット) LV7 1044 / 1270
    酸(中)(ダークアシッド(中二病)) Lv5 182 / 300
    熱湯(中) Lv5 177 / 300
    ロックブラスト(弱) モーション 1 / 20
    プチメテオ(弱) モーション 1 / 35
    回復粘液(弱) Lv3 66 / 70
    分裂(初級) Lv2 21 / 30
    剣技:スラッシュ(初級) Lv1 0 / 10
    剣技:スピアー(初級) Lv7 980 / 1270
    すり抜け(初級) Lv2 13 / 30
    IT管理者(初級)(ゴッズアイ(中二病)) Lv5 172 / 300

攻撃力:8(+7)
防御力:12

武器:疾風のダガー
頭:異世界のヘアゴム
体:異世界の服
足:異世界のスカート
靴:異世界の靴
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「うへぁ」
と思わず変な声が漏れる。思っていた以上にレベルが上がっていたのだ。
まぁでも考えてみれば納得である。レベル10のロックスライムを山ほど倒したのである。経験値がザクザク入ってもおかしくない。
ぼやっとステータスを見ていると、トーストメッセージが浮き出てきた。
「SS(スナップショット)がレベル5に到達しました。宛先指定復元ができるようになりました。」
どういうこと?と思い、ステータス画面に戻って、SS(スナップショット)部分に目力を込める。
すると詳細説明メッセージが浮き上がってくる。
「取得したスナップショットを復元する際、元の場所に復元するのに加え、指定した場所に復元することが可能です。」
とのこと。
なる、ほど。と思う。これは結構チート級のスキルなのではないだろうか?と今更ながら思う。

ボヤーっとしていると、部屋をノックする音が聞こえてきた。
「コン、コン、コン」
若干控えめな小さな音のノックの後に声が続く。
「エリーさん、起きてますか?」
ボブさんの声だ。
「はーい、起きてます。どうかしましたか?」
「いえいえ、お元気なら大丈夫です。私、今から朝ごはんを食べようかと思っていますので、もしよかったらエリーさんもご一緒にどうでしょうか?」
と朝ごはんのお誘い。おなかも減っていることだし、朝の準備だけしちゃったら私も朝ごはんを食べたい。
「はい、ぜひご一緒お願いします。私も準備ができたらすぐに食堂に行きます。」(ドア越しに伝えると)「わかりました。下で待ってますねー」と返事が返ってきた。

私はささっと体と服をきれいにし、朝の身支度をし、下の食堂へと降りていく。

食堂に入ると、焼き立てのパンとチーズの香りが満ちていた。
「エリーさん」
と声をかけてくれるボブさん。窓辺の席で手を振っている。ボブさんはすでに食べ始めている。

「おはようございます、エリーさん。いやぁ、今日の黒パン、最高ですよ!」
そう言いながら、彼はお気に入りらしいライ麦パンをチビチビと細かくちぎっては、横に添えられた白いチーズにぐいっと押し付けて食べていた。

私は席に着くと、ウェイターさんに目で合図を送る。ほどなくしてウェイターさんが注文を取りに来てくれた。
「えっと……シュヴァルツブロートと、ハムの盛り合わせ、それとリンゴのコンポートをお願いします。それから……コーヒーも。」
「コーヒーは先にお持ちしますか?食後のデザートの時にお持ちしますか?」
とウェイターさん。"おぉ、細やかな心配り!"と思いメニューから目を離し、顔を上げウェイターさんを見てみる。年の頃は30前後の女性で、そばかすが愛嬌のある顔立ちだ。その表情は嬉々としており "有名人に会えちゃった!" とでもいうような顔をしている。私は若干ひきながらも、
「はい、食後でお願いします。」
とこたえる。
するとウェイターさんは足取り軽く厨房の方へ向かっていき、うれしそうな声で厨房にオーダーを伝えている。

「どうしたんですかね?あれ?」
とボブさんに問う。
「どうしたもこうしたも、エリーさん、昨日スライムの集団を退けて、すっかりこの街では有名人ですよ。」
とボブさん。
「えぇー?」
と私。

会話の合間に先ほどのウェイターさんが、木のトレイに朝食を乗せて運んでくる。食欲をそそるいい匂いだ。
黒パンの香ばしい香り、薄くスライスされたスモークハム、ハーブ入りのやさしい卵料理。
ウェイターさんはやはり食事を運んでくるときも笑顔だ。
木のトレイを私の前に置くと、
「どうぞごゆっくりお過ごしください。」
とうやうやしく挨拶をして去っていく。

ひとまず喉を湿らすために一緒に運ばれてきた水を口に含む。するとボブさんが話を再開させた。
「ロックスライムの集団をほぼ一人で退けた。というのももちろんすごいのですが・・・」
とボブさんはいったんここで溜を作って続ける。
「エリーさん、空間魔法を使っていましたよね?かつての勇者の子孫じゃないか?と街のみんなが噂していますよ。」
「ぶーーーーっ」
と私は思わず口に含んでいた水を吹き出す。
ボブさんにも若干吹き出した水がかかったはずだが、そんなのお構いなしとばかりの笑顔だ。

「ご存じの通り、みんな誰しも、2個から3個程度の魔法やスキルは使えます。でも多くの場合、単純な元素系魔法であったり、基本スキルです。スキルセットが戦いに向いたものでそろっていると、戦士や騎士、魔法使いなどの冒険者になることが多いですよね。まれに、上位の神聖魔法や、属性付きスキルなどを持つ人もいて、司祭や、聖騎士といった上位の職業になる人が出てきます。」
ボブさんは言葉を区切り、真剣な声音になった。
「でも、空間魔法を使える人は私が知る限りでは、伝説のカーネル様しかいらっしゃいません。」
とのこと。よほど珍しいようだ。

「私も伝承を伝える本でしか読んだことはないのですが、カーネル様は、空間を切り取ったり、空間を固定したうえで外に影響が出ないように魔法で攻撃するなど、といったことができていたようです。そのカーネル様と同じっ空間魔法が使えるなんて…」
とうっとりとした目で私を見つめる。  ヤメテクレ・・・

そんなボブさんに見つめられながらの食事はおいしいんだかおいしくないんだか、味もわからないままに終わってしまった。
デザートとコーヒーをぱくついていると、再びボブさん。
「昨日、エリーさんはお疲れだったみたいで、ロックスライムのドロップアイテムを回収できていなかったと思います。私の仲間に頼んで、回収、保管してもらっていますので、朝食が終わったら一緒に取りに行きませんか?」
とのこと。私たちは、食後にボブさんの仲間を訪問するということで、朝食を終えた。

いったん部屋に戻り、出かける支度を整えたのち、宿の前でボブさんと落ち合う。
「では行きましょうか?」
と歩きだす。5分ほど歩いたところで、
「こちらです。」
とボブさん。
どうやら商売仲間のようだ。いかにもマジックアイテムのショップ然とした建物の前でボブさんは足を止めた。

「いらっしゃいま・・・ おー、ボブじゃないか。」
奥の方から背の小さいドワーフ然とした店主らしき人が出てくる。
「おー、タレス。また来たぞ。それとこちらはエリーさん。」
なぜかボブさんが胸を張って私を紹介する。
「そうかいそうかい、お前さんがエリーさんか。昨日は俺らの町を守ってくれてありがとう。もう少しで商売ができなくなっちまうところだったぞい。」
「そうそう、これが預かっていたドロップアイテムだ。確認してくれぞい。」
とのこと。

ざっくり似たようなアイテムごとに分けて集めてくれているらしい。
私はざっくりとゴッズアイで確認してみる。
「ゴッズアイ」

ロックコア x 40:岩スライムの魔力核。錬金素材に人気
砕岩ジェル x 29:爆裂属性を持つ半固形ジェル(取扱注意!)
ストーンフラグメント x 17:魔力反応の残る欠片
スライムアーマイト x 11:強化防具の素材になる金属粘膜
土の魔石 x 8:属性付与用の小さな魔石

なかなかの量である。アイテムの使い道もわからないので、"はて・・・?"という顔でドロップアイテムを見つめていると、タレスさんから声がかかった。
「あのロックスライムの数じゃ、かなりの量じゃの。エリーさんが希望するなら、うちで取り置きして置いたり、必要分だけ取って買取もできるぞい。」
とのこと。持っていてもしょうがないので、それぞれ5個程度を手元に残して、あとは引き取ってもらうことにした。

「そうじゃの、これだけの引き取りであれば・・・」
とタレスさんが計算を始める。
「それぞれ、
 ロックコア:銀貨5枚
 砕岩ジェル:銀貨20枚
 ストーンフラグメント:銀貨50枚
 スライムアーマイト:金貨1枚
 土の魔石:銀貨50枚
 じゃから、合計で金貨20枚と銀貨5枚じゃの」
とのこと。ボブさんを見ると、"大丈夫です"とでもいうようにうんうんとうなずいているので、
「じゃぁ、その金額でお願いします。」
とこたえる。
思わぬ収入である。

買取をお願いした後、この辺りで装備を整えるべく、ヘパイストスのお店へと向かった。
ここで防具一式をそろえ、見た目も冒険者らしくなったと思う。

武器:疾風のダガー
頭:疾風の髪飾り
体:そよ風のケープ
足:そよ風のスパッツ
靴:疾風の靴

防具をそろえ、お店の外に出ると、ボブさんがこちらを見ながら話しかけてきた。
「エリーさんとご一緒したいのはやまやまなんですが・・・」
表情は少し暗く、何か言いづらいことを伝えたいようだ。
「スライムの集団は北の方から来ました。エリーさんもご存じの通り我々の村はここよりも北の方にあります。村のことが心配なので、この辺りで村に帰ろうかと思います。」
とのこと。
ボブさんの故郷を心配する気持ちはわかる。
「ボブさん、私もライラさんたちのことが気になります。一緒に村に戻りましょうか?」
と提案すると、ボブさんの顔がほころぶ。
「いいんですか?エリーさんが一緒に来ていただけると心強いです!」

ということで、私たちは宿に戻り、宿代を生産すると、北に向かって旅立ったのだった。


北の村へ戻る途中、開けた場所で休憩をとった。休憩の際に、
「お手洗いに行ってきます。ボブさん、のぞかないでね。」
などといって山陰に隠れ、私は試してみたかったことを実施する。

疾風突きのスナップショットを取り、スナップショットに保存されていた昨日の戦闘シーンを"復元先指定"をして復元する。すると、今にもプチメテオを発動しようとしているロックスライムが突然目の前に現れる。
私はすかさずスクリーンショットを実行し、モーションをキャプチャーする。スキルを発動したロックスライムは不要なので、これまた復元先指定で疾風突きを復元。ロックスライムに当たり、ロックスライムははじけ飛ぶ。
"はっきり言ってチートなんじゃないか?"とは思っていたが、この方法でロックブラスト、プチメテオを習得できてしまった。
視界の端に天魚が空中を泳ぎ、若干額から汗が出ているようにみえるが、私は見えないふりをした。
ボブさんのところへ戻るときに、後ろから天魚の声が聞こえてきた。
「すこし  グレーゾーン  でも    いいか・・・」

そんなこんなで道中に出てきた雑魚スライムを一蹴しながら村へとたどり着く。何か重いものを引きずったような跡があちこちの地面に見えたり、屋根がボロンと落ちてしまった建物なども一部あるが、建物や住人の人たちは比較的無事なようだ。
ボブさんもほっと一息、胸をなでおろしている。
「私はいったん、家に帰ります。エリーさんは今日はライラさんのおうちにまた止めてもらうといいと思います。私、後でライラさんのおうちに行こうと思いますので、そこでちょっとお話させてください。」
と言ってボブさんは自分の家へと足早に向かった。

私は村の様子を確認しなながら、ライラさんの家と向かう。
ライラさんの家にたどり着き、ゆっくりとノックをする。するとドアが開き、ドアの中から見知った顔が出てきた。
見知った顔といってもライラさんではない。この世界の住人ではない。前の世界の派遣先の同僚、佐久間君だ。
「あれ?若林さん?」
ととぼけた口調で佐久間君がつぶやく。
「あ、え?佐久間君?何でここにいるの?」
と私も問う。
「いやー、ははは。なんか気づいたらこの世界に来ててて」
とのこと。はははじゃないだろ。
いずれにしてもかつての見知った顔に私は若干安堵したのだった。

佐久間君がライラさんの家の中へと案内してくれる。
佐久間君が家の中で先を歩き、テーブルに向かっていくのを後ろから眺めながら、こっそりと佐久間君のステータスを確認してみる。
「ゴッズアイ」

ステータス
名前:佐久間 陸翔
レベル:1
職業:SIer
生命力:20 / 20
魔力:6 / 6
力:5
体力:7
素早さ:2
知恵:1
運:1
経験値:0 / 10
スキル:表計算(Excel)

攻撃力:5
防御力:4

武器:なにも装備していない
頭:異世界のハンチング
体:異世界の服
足:異世界のトラウザー
靴:異世界の靴

ステータスの「表計算(Excel)」を見た瞬間、私はブーッと吹き出してしまった。
いや、確かに佐久間くんは表計算が得意だった。でも──まさか異世界でそのスキルを見ることになるなんて。
「……どうするのよ、これで生きていく気なの?」
そう思った瞬間、不思議と胸の奥に安堵が広がった。

いいなと思ったら応援しよう!

ラビ☆雪兎 いつも応援ありがとうございます🐇お預かりしたチップは創作活動に活用させていただき、余剰分は募金させていただいています。