【小説】疲れたSS(スクリーンショット)SIerは世界を救えるのか?#5
第5話目となります。スナップショットでどう戦うの?そんなところが見えてくる回にしてみました。
もしよろしければこちらの歌をお聴きになりながら読んでみてください。
※音量ご注意ください!
街に忍び寄る影と天魚のSOS
部屋が明るい。
ベッドの中でまだ眠い目をこすりながらぼーっと耳を澄ましてみる。
鳥の鳴き声はすでに「ポッポッポッポッポッ」と言っているので、もしかしたらすでにお昼近いのかもしれない。(朝早いうちは、「ポーポーポッポー」とこの鳥は鳴くのだ)
ぼーっとしていると突然「チャリーン」というシステム音が聞こえてきた。
そしてトースターメッセージ
「ヘパイストスでのレベニュー 銅貨324枚が入金されました」
昨日のクエスト報酬よりも高額なレベニュー入金に私は目を丸くする。
「え?武器か防具が売れたの?・・・それにしても多くない?」
不思議に思った私は詳細が確認できないかと思い、スペルを唱える。
「ゴッズアイ」
すると、ヘパイストスでの売り上げ詳細情報が見えてきた。なになに?
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マジックウェポン、マジックアーマーのお店 ヘパイストス
売上情報
アイテム 金額 販売先
疾風の髪飾り 銀貨50枚 ボブ
滝の髪飾り 銀貨50枚 ボブ
そよ風の剣 銀貨50枚 ボブ
暴風の斧 銀貨50枚 ボブ
エアリーリング 銀貨50枚 ボブ
疾風の靴 銀貨50枚 ボブ
風の護符 銀貨8枚 ボブ
風の護符 銀貨8枚 ボブ
風の護符 銀貨8枚 ボブ
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って、全部ボブさんの買い付けやないかい!
まったく、この人はどれだけ爆買いしているんだか。やたら風属性のアイテムが多いし。まさか転売ヤーじゃあるまいな・・・?
などと独り言をぶつぶつ言いながら、朝の身支度を行う。
残念なことにこの宿にはお風呂がないので、洗面台で熱湯のスキルを使って程よい暑さのシャワーを出しつつ髪を洗う。
ダークアシッドで弱酸性のシャンプーを用意して洗っているので、汚れはすっきり取れた。
いや、スキル意外と便利だよね。
続いて、熱湯で濡らしたタオルで体全体を拭いていく。
私の体はすっきりきれいになった。
が、服のほうは洗濯ができていないので、きれいになった今、昨日も着ていた服を着るのに若干の戸惑い。
そこで、体と髪の毛を洗ったのと同じ要領で、熱湯スキルを使い、ダークアシッドを洗剤代わりに使用。
よく服を絞ったうえで、疾風のダガーからちょろちょろと発生する風を使って乾かす。
"いい歳した乙女が、部屋の中で裸になって何やってんだ!"というツッコミはご遠慮願おう。
こちとら生きるために必死である。
"我ながらいいアイディアで課題を解決した。"などと考えているとトーストメッセージが出てきた。
「スキルコンボボーナス。経験値を1.5倍入手しました。」
私は思わず声に出してツッコんでいた。
「こんなんでええんかwwww」
すっかり準備が整ったので、ブランチを取るために部屋を出て、下の食堂へと向かう。
すると、食堂には見知った顔、ボブさんがいた。
「あ、エリーさん、おはようございます。いやっはっはっはっ」
いやいや、"いやっはっはっはっ"ってなんやねんと心の中で突っ込みつつ挨拶する。
「ボブさん、おはようございます。何かいいことでもあったんですか?」
と聞いてみる。
「いやいや、さっそく昨日ご紹介いただいたお店に行ってみたのですが、これがどれも素晴らしい品ばかりで。たくさん買っちゃいましたよ」
とのこと。ついでに一応どんなものを買ったのか興味がある体を装って聞いてみる。
「どういったものを買われたんですか?」
「よく聞いてくれました。実は我々の村は世界の中でも北のほうに位置するのです。」
そういってボブさんは昔話、この世界では誰もが知っているであろう当たり前の話を始めたのだった。
「エリーさんもご存じだとは思いますが、平らに見えるこの世界、実は丸い形をしているらしいのです。その半分が光の世界、残りの半分が闇の世界と言われています。」
唐突に出てきた世界設定に少々驚きつつも、私は「うんうん」とうなずく。
「大昔、この世界を丸ごと飲み込み、すべてを自分のものとしてしまおうとしたスライムがいました。Primordial Omni Slimeとも呼ばれているスライムたちの祖先、"レイガ"です。」
「レイガはこの世の中のあらゆるものを飲み込み、成長し、その姿をどんどん大きくしていきました。ところがそこに我々人間の英雄、そうカーネル様が現れたのです。」
「カーネル様は空間を分断し、また分断した空間を別の場所に固定する。というスキルを持っておられました。」
「ところがその分断するスキルも分断する空間の大きさに限界があるため、カーネル様は4人の大魔導士様たちと協力し、属性防御反応を利用することでレイガの体を属性ごと4つに分断し、光の世界の東西南北それぞれに固定し、封印なさいました。」
「東西南北に封印された4つの分体はやがてそれぞれ意思を持ち、今では4つの独立したスライムとなっています。すなわち、
東のAncient Leviathan Slime セイガ、
南のAncient Phoenix Slime シュエン、
西のAncient Tempest Slime コウガ、
そして、北のAncient Golem Slime ガンム
です。」
「封印はまだ有効であるとは聞きますが、年々弱まっているのではないか?といううわさもあります。」
「この辺りは、ガンムが封印されている場所に近く、そのためか、岩のスライムが大量に発生することがあるのです。そういった場合に備えて、岩スライムに有効な風系の武器や属性能力を上げる防具、岩スライムの攻撃に耐性がある水系の防具を買い付けてきました。」
どうやらボブさんは見た目の軽さとはうって変わり、結構真面目に考えて生きているようである。
こんなやり取りをしながら、私は軽くブランチを取っていた。
すると、何やら外がざわざわしているようだ。
ブランチを取りながら耳を澄ましてみるとかすかに聞き取れた。
「スライムだー、スライムが大量に押し寄せてきたぞー」
声が聞き取れるとともに、視界に天魚の姿が目に入ってくる。
天魚は困ったように私の視界の中を右へ左へ往復を繰り返す。
そして身振りで伝えてくる。
「おおきな スライムが バグを利用して 大量 スライム 送りつけてきた たっけて」
んー、もう少し裏方的な存在かと思っていたんだけど、結構直接絡んでくる感じなのね・・・などと思いつつ、私は席を立った。
私はさっと食堂の外に出、周りを見渡す。逃げる人々の流れは南に向かっているようなので、北のほうにスライムがいそうだ。
続けて食堂から出てきたボブさんに声をかける。
「スライムが街を襲いに来た感じでしょうか?北のほうから来ているみたいですね?」
と聞くと、
「そのようですね。」
と苦々しい顔をしながら答えてくれた。
北といえば、ボブさんが住んでいる村もここから見ると北のほうだ。村のことを考えているのだろう。私は声をかける。
「ボブさん、戦えますか?今はまずこの街を守ることが先決です。戦いが終わったら、また村の様子を見に行きましょう。」
そういうと、ボブさんはコクリとうなずく。
私はボブさんとともに北へと向かう。
ほぼほぼ町の入り口付近の田畑が中心となっているエリアまで来ると、スライムたちはすでに町の中に侵入してきていた。
その数はざっと見たところ1000匹。ただし、よくよく見ると、2匹のスライムがくっついて一匹になったり、また逆に分裂していたりするので、1000匹という数字はあまり役に立たないのかもしれない。
手近にいるスライムに向かって鑑定スキルを発動する。
「ゴッズアイ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ステータス
名前:ロックスライム
レベル:10
スキル:ロックブラスト
プチメテオ
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敵は、私よりもレベルが高い。何か手ごろな作戦がないととてもとても倒せる数ではない。ということで作戦を考える。ひとまず・・・
「ボブさん、とりあえずほかの冒険者や騎士の方と一緒にロックスライムを抑えてください。前線が維持できるようにお願いします。私は策を練ります。」
と早口で伝える。するとボブさんは
「わかりました。これ終わったらおいしいお酒で一緒に乾杯しましょう。」
などと余計なフラグを立てたうえで前線へと突っ込んでいった。
さて。私は少し考えて、作戦を実行していく。
空。すなわち何もない空間をスクリーンショットする。そしてそれを地面にペーストして地形を整えていく。
左右の遠くのほうは、地面をスクリーンショットし、逆に空にペーストすることで壁を作っていく。
地形に関しては整え終えた。きれいなイチョウ型に地面がくぼんでいる形を作った。すなわち、スライムたちが街に進攻しようとすると、必ずイチョウ型の枝の部分を通る形になる。
こんなイメージだ。

私は、イチョウ型の枝の部分に行き、スキルを発動する。
「疾風突き(疾風のダガー+剣技:スピアー)(もちろん中二病)」
そしてスキルの発動した空間をすかさず
「スナップショット」
通路一帯に対して、スキルが満たされるようスキルを実行しスナップショットで保存した。
準備はできた。ので、前線でスライムを抑えているボブさんたちの脱出経路を作る。適当な地面をスクリーンショットして、扇型のくぼ地の向こうへとつなげる。
「ボブさーん、この通路を通ってこちらに帰ってきてください。スライムが多少ついてきてしまっても問題ありません。」
と声をかける。すると、ボブさんが回りの冒険者や騎士たちと一緒にこちら側に帰ってくる。
私はボブさんたちが通ったところを見計らって通路を削っていく。
哀れなロックスライムたちがしたのイチョウ型のくぼ地に落ちていく。
ボブさんたちの退避は完了した。
ボブさんが後ろを振り返って問いかける。
「ここは、くぼ地になっていますが、エリーさんがこの地形を作ったんですか?」
聞かれ、私はコクリとうなずく。
もどってきたボブさん、冒険者、騎士の皆さんと一緒にくぼ地のスライムを見る。
町に向かおうとするスライムたちは扇状のくぼ地に沿って進み、やがて枝の部分の通路に差し掛かる。
そこで私はスナップショットを復元した。
「復元」
すると、スナップショットとして保存していたスキルが空間に復元され、ロックスライムたちを攻撃する。スキルが再現され、ロックスライムのコアに直接スキルがヒットするものだから、ロックスライムたちもたまったものではない。"クリティカルヒット"のトーストメッセージとともに、ロックスライムが消えていく。
新たなスライムが通りかかるたびにスナップショットを復元し、たまに取りこぼしたロックスライムを冒険者と騎士たちで処理する。という流れ作業となってきた。
1時間もこの作業を続けただろうか。やがてすべてのロックスライムがこの場から姿を消した。スキル発動で迎え撃った場所には、ロックスライムの大量のドロップ品が落ちている。
私は最後の1匹が消滅するのを見届けると、今度は別のものをスナップショットから復元した。
「復元」
私がそう唱えると、私が作ったイチョウ型のくぼ地は姿を消し、左右の土壁も消えるとともに、元の田畑が姿を現した。まるでロックスライムの襲撃などなかったかのようだ。 大量のドロップ品を除いては。
冒険者や騎士たちが歓喜の声をあげるなか、ボブさんが近づいてきた。
「エリーさん、やるじゃないですか。」
私はニコリと返しながら答える。
「うまくいくかわからなかったんですが、自分のアイディアを信じて実行してみました。皆さん、ご協力ありがとうございました。」
とお礼を述べると、周りの冒険者や騎士たちは、「よくやった」だの「すげーじゃん」などがやがやとこたえてくれた。
こうして、ロックスライム襲撃事件は幕を閉じたのだった。
ただ一つの心配事を残して。
ボブさんの北の方を見つめる視線がその心配事を如実に語っていた。
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