【論文解説】アオダイショウ2個体間の餌をめぐる闘争行動
この記事では、国際学術誌「Herpetology Note」に掲載された短報「Interaction between two Japanese Ratsnakes, Elaphe climacophora (Boie, 1826), at the nest of Eurasian Wren, Troglodytes troglodytes (ミソサザイの巣の前でのアオダイショウ2個体間の相互作用)」について解説します。
短報は以下のリンクから無料で読むことができます。
はじめに
爬虫類の仲間は、従来、社会性が低く単独で生活することが多いと考えられてきました。しかし、近年の研究によって、実は様々な社会的行動を示すことが明らかになってきました。一方で、爬虫類の中でもヘビの仲間は、野生下での行動観察が困難なため、その社会的行動については少数の研究例しかありません。ヘビの仲間で生じる社会的行動を記録しておくことは、爬虫類の社会性を研究する上で役立つと考えられます。この短報では、京都大学芦生研究林においてトレイルカメラで撮影されたアオダイショウ2個体間の行動について報告しています。
観察された行動
文中のMovie_1からMovie_6までの動画は、以下のリンクから閲覧できます。
京都大学芦生研究林では、ミソサザイという小型の鳥類の繁殖生態調査が行われています。この調査の一環で、ミソサザイの巣の前にトレイルカメラが設置されており、2024年7月10日の19:45から20:04にかけて、アオダイショウ2個体の行動が撮影されました。
1匹目のアオダイショウ(以下ヘビ1)は、ミソサザイの巣の中にいた雛を食べていました。そこにヘビ1より大きな2匹目のアオダイショウ(以下ヘビ2)が現れ、ヘビ1の体の真ん中あたりに噛み付いてミソサザイの巣の中から引っ張り出しました(Movie_1)。ヘビ2は逃げようとするヘビ1を噛み続けましたが、次第に噛みつく位置がヘビ1の尾の方になり、最終的には離しました(Movie_2, Movie_3)。その後、ヘビ2は巣の中に頭を入れており、腹部に膨らみが見られたことから、巣の中に残っていた雛を食べたと考えられます(Movie_4, Movie_5, Movie_6)。
考察
ヘビ2がヘビ1に噛み付いた理由としては3つ考えられます。
理由1:ヘビ1を鳥の雛だと認識して食べようとした。
ヘビの仲間は食べ物を認識するのに主に匂いに頼っているため、ヘビ1に鳥の雛の匂いがついていたために、餌として認識された可能性があります。
理由2:共食いをしようとした。
共食いはヘビの仲間で稀に見られます。ただし、アオダイショウは餌となる生き物に巻きついて締め殺して食べることが多いのですが、ヘビ2はヘビ1に巻きつこうとはしていなかったため、共食いである可能性は低いと考えられます。
理由3:ヘビ1から餌を奪おうとした。
近年、ヘビの仲間で餌をめぐる闘争をする種がいることが明らかになってきました。たとえば、アカマタというヘビはウミガメの卵をめぐって闘争をすることが知られています。今回の観察でも、鳥の雛という一箇所に集中して大量に存在する餌をめぐり、闘争が生じた可能性があります。
おわりに
今回の観察は、私がメインテーマとして研究しているミソサザイの生態調査をしている過程で偶然記録できたものです。ヘビの研究者があまり観察することのない鳥の巣をモニタリングしていたことで、ヘビの珍しい行動を観察することができました。鳥を研究することで、捕食者であるヘビについても新たな発見ができるかもしれません。
論文情報
Soda, A. (2025) Interaction between two Japanese Ratsnakes, Elaphe climacophora (Boie, 1826), at the nest of a Eurasian Wren, Troglodytes troglodytes. Herpetology Note. 18: 463–465. https://herpetologynotes.org/index.php/hn/article/view/106
