話が噛み合わないのはなぜか?人との溝を埋める「具体と抽象」活用法
📝この記事はこんな方にぜひ読んでほしい
✅️ 上司や部下との会議がいつも平行線で、お互いに消耗している方
✅️ 同じ話を何度しても相手に伝わらず、非生産的な時間が続いている方
✅️ 「なぜあの人とだけ話が通じないのか」と悩んでいる方
平行線の会話、あなたも経験があるはず
「いや、そうじゃなくて…」
「話が見えないんですけど」
「で、結局何が言いたいんですか?」
こんな会話、職場で日常的に繰り広げられていないだろうか。
特定の上司や部下と話をすると、なぜかいつも噛み合わない。
お互い真剣に話しているはずなのに、会議が終わった後も「結局何も決まらなかった」という徒労感だけが残る。
そして最悪なことに、相手も同じように感じているということだ。
「あの人の話は毎回分からない」
「コミュニケーションが取りにくい人だ」
お互いがお互いをそう評価し、関係性はどんどん悪化していく。
でも、その「話が通じない」状況、
実は明確な理由がある。そして解決可能だ。
この記事を読み終わる頃には、あなたは「なぜすれ違いが起きるのか」の本質を理解し、明日からの会話で実際に使える具体的な技術を手に入れているはずだ。
見落とされがちな「思考の階層」のズレ
多くの人が気づいていない事実がある。
コミュニケーションがうまくいかない本当の原因は、「話し方」や「聞き方」ではない。
「思考している階層」が違うことだ。
例えば、こんな会話を想像してみてほしい。
部下: 「売上が落ちています。広告費を増やすべきだと思います」
上司: 「いや、そもそも我々のマーケティング戦略自体を見直す必要があるのでは?」
部下: 「戦略って言っても、まずは今月の数字をどうにかしないと…」
上司: 「目先のことばかり考えていてはダメだ。もっと本質的に考えろ」
この会話、どちらも間違ったことは言っていない。
しかし、完全にすれ違っている。
部下は「具体的な施策」について話している。
上司は「抽象的な戦略」について話している。
この思考の階層のズレに気づかないまま会話を続けると、永遠に平行線をたどることになる。
そして恐ろしいことに、このズレが続くと、お互いの信頼関係まで損なわれてしまうのだ。
「あの人は物事を深く考えていない」
「あの人は現実が見えていない」
このまま放置すれば、単なる意見の相違が、
人格否定にまで発展してしまうリスクがある。
もうひとつ分かりやすく例えてみると…
「犬が好きだ!!」
と言ったあなたに対して、
「でも私はチワワしか興味ないんです!!」
と相手が主張したとき、
あなたはきっと「なんだこいつは…話が通じない…」と感じるだろう。
しかし実際には、あなたが抽象的な「犬全般」について語り、
相手が具体的な「チワワという犬種」について語っているだけで、
本質的には同じ動物愛について話しているのだ。
お互い犬が好きなのに、
抽象度合いのピントが違うことで、
さも反対意見を述べているかのような錯覚をし、
その結果対立構造に陥るということ。
一見馬鹿みたいな話だが、複雑なコミュニケーションともなると案外気が付きにくいものである。
私自身が直面した「すれ違い地獄」
私自身、管理職になりたての頃、まさにこの問題で苦しんだ経験がある。
当時の私には、どうしても話が合わない部下がいた。
彼は優秀で真面目だったが、私との会議はいつも消耗戦になった。
「なぜこの施策が必要なのか、戦略的意図を説明してくれ」と私が言うと、
「具体的にどう動けばいいのか分からない」と彼は答える。
お互いイライラし、会議時間はどんどん長くなる。
最終的には、私が一方的に指示を出して終わるという最悪のパターンが続いた。
転機が訪れたのは、ビジネス書を読み漁る中で、
「具体と抽象」
という概念が書かれた本に出会った時だった。
人間は情報を処理する際、「具体的思考」と「抽象的思考」の2つのレベルを行き来していることを知ったのだ。
そして私は、自分が抽象的思考を好み、部下が具体的思考を好む傾向があることに気づいた。
お互い、自分の得意な思考レベルで話し続けていたから、永遠にすれ違っていたのである。
この気付きを得てから、私は意識的に相手の思考レベルに合わせることを始めた。
結果として、彼との関係は劇的に改善し、
チーム全体の生産性も向上することに。
そして現在、私が管轄する部門では、
この「思考の階層調整」を全メンバーが実践している。
3つの実践的アプローチで関係性を修復する
1️⃣ 相手の「思考の好み」を見極める
【観察フェーズ】
★なぜ重要なのか
相手がどの思考レベルを好むかを知らなければ、適切なコミュニケーション戦略を立てられない。
まずは相手を観察することから始めよう。
★具体的な見極め方法
以下のチェックポイントで相手のタイプを判断する
具体思考タイプの特徴
「具体的には?」「例えば?」をよく使う
数字やデータを求める傾向が強い
「いつ、誰が、何を」を明確にしたがる
抽象的な話になると「で、結局どうするんですか?」と言う
抽象思考タイプの特徴
「なぜ?」「本質的には?」をよく使う
全体像や背景を重視する
「そもそも論」を展開したがる
具体的な話になると「もっと大きな視点で考えよう」と言う
相手のタイプを見極めたら、まず相手の土俵で会話をスタートさせよう。
具体思考の人には具体的な情報から、
抽象思考の人には背景や目的から話し始めるのがコツだ。
2️⃣ 「思考の橋渡し」で相手の世界に歩み寄る
【調整フェーズ】
★なぜ重要なのか
異なる思考レベルの人と意思疎通するには、相手の思考レベルに一度降りてから、徐々に自分の思考レベルに引き上げる(または引き下げる)技術が必要だ。
★具体例とアプローチ方法
ケース1: 具体思考の部下に抽象的な戦略を理解してもらいたい場合
❌ NG例
「今期は顧客エンゲージメント向上を目指そう」
⭕ OK例
「今期は顧客エンゲージメント向上を目指そう。具体的には、まず既存顧客への電話頻度を月2回から4回に増やす。そして新規開拓では、初回訪問から2週間以内に必ずフォロー電話を入れる。この2つの行動を通じて、顧客との関係性をより深くしていこう」
ケース2: 抽象思考の上司に具体的な提案を受け入れてもらいたい場合
❌ NG例
「広告費を50万円増やしたいです」
⭕ OK例
「我々の中長期的な市場シェア拡大戦略を考えた時、まず認知度向上が急務だと思います。そのための第一歩として、今月の広告費を50万円増額し、ターゲット顧客への露出機会を増やしたいのですが、いかがでしょうか」
相手の思考レベルでスタートし、徐々に自分の思考レベルに引き寄せる。
この「段階的移行」が成功の鍵だ。
一気に飛ばそうとすると、再びすれ違いが発生する。
3️⃣ 「共通言語」を作って継続的な理解を深める
【定着フェーズ】
★なぜ重要なのか
一度うまくいっても、時間が経つとまた元のすれ違いパターンに戻ってしまうことが多い。
継続的な関係改善には、お互いが使える「共通言語」を作ることが重要だ。
★具体的な共通言語の作り方
「階層確認」の習慣化
会話の冒頭で「今日は具体的な行動レベルで話しましょうか、それとも戦略レベルで話しましょうか?」と確認する習慣をつける。
「翻訳」の実践
「私の理解では〇〇ということですが、具体的には△△という理解で正しいですか?」というように、相手の言葉を自分なりに翻訳して確認する。
「視点転換」の提案
「今度は逆の視点から考えてみましょう」
「もう少し大きな視点で考えると」
「もう少し具体的に考えると」
といった切り替えフレーズを意識的に使う。
★実際の導入例
私のチームでは、会議の最初に「今日のテーマレベル」を確認してから議論をスタートする。
また、ホワイトボードに「具体←→抽象」の矢印を書き、今どちらのレベルで話しているかを視覚化している。
共通言語は一朝一夕には身につかない。
最初は意識的に、そして徐々に無意識にできるまで反復練習が必要だ。
相手と一緒に「練習している」という意識を共有できれば、関係性はさらに深まる。
補足情報
FAQと落とし穴
Q: 「相手が全然変わろうとしません」
A: まず、あなた自身が変わることから始めよう。
相手に変化を求める前に、あなたが相手の思考レベルに合わせる努力を継続的に実践すれば、相手も必ず気づいてくれるはず。
Q: 「時間がかかりそうで面倒です」
A: 確かに最初は時間がかかる。
しかし、長期的に見れば圧倒的に効率的だ。
私の経験では、最初の1ヶ月間は意識的な努力が必要だが、
その後は自然にできるようになり、会議時間が大幅に短縮されるものです。
Q: 「相手が具体的すぎて、戦略的な話ができません」
A: いきなり戦略レベルに引き上げようとせず、まず相手の具体的な関心事に共感を示そう。
「確かにそれは重要ですね。では、それを解決するために、もう少し大きな枠組みで考えてみませんか?」
というように、段階的に引き上げる。
⚠️ 注意すべき落とし穴
完璧主義に陥らない
最初から完璧にやろうとすると、かえってぎこちなくなる。
70%の成功率でも十分に効果は実感できる。
一方的な調整をしない
常に自分が相手に合わせるのではなく、時には相手にもあなたの思考レベルで話してもらう機会を作ろう。
相互調整が理想的だ。
思考レベルのレッテル貼りをしない
「この人は具体思考だから」と決めつけず、状況や話題によって使い分けていることを理解しよう。
さいごに|明日から使える関係改善の道筋
話がすれ違う原因の90%は「思考の階層のズレ」だった。
相手を変えようとするのではなく、まず自分が相手の思考レベルを理解し、適切に調整することから始めよう。
今回お伝えした3つのステップを振り返ると
観察フェーズ: 相手の思考の好みを見極める
調整フェーズ: 思考の橋渡しで歩み寄る
定着フェーズ: 共通言語を作って関係を深める
明日からできる最初の一歩として、
まず今すれ違いが起きている相手が「具体思考タイプ」か「抽象思考タイプ」かを観察してみよう。
そして次回の会話では、相手のタイプに合わせた話の切り出し方を試してみてほしい。
きっと「あれ、今日はいつもより話が通じるな」という瞬間が訪れるはずだ。
すれ違い続けるあの人との関係は、必ず改善できるはずだ。
さいごに、冒頭で述べた「私の気付きのきっかけ」となった本をここに紹介したい。
文章だけでなく、漫画のような形で超絶分かりやすく「具体と抽象」を解説してくれているので、ぜひ読んでみてほしい。
参考書籍
『具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ』細谷功
この本では、今回お伝えした「具体と抽象」の概念について、より体系的かつ深く学ぶことができる。
ビジネスコミュニケーションの質を根本的に改善したい方には特におすすめだ。
