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【高校受験:息子|ep9】「自分は大丈夫と思える場所」

高校の学校見学。

次に向かったのは、
第一志望だったA校でした。

とはいえ、

正直なところ、
この時の私はそこまで期待していませんでした。

先生から

「息子くんには合うと思います」

とは聞いていました。

けれど、
それ以外の情報はほとんどありません。

前に見学した二校も、
実際に行ってみて初めて分かったことがたくさんありました。

だから今回も、

行ってみないと分からない。

そんな気持ちでした。



A校までは、
電車を乗り継いで約45分。

駅からさらに徒歩十五分。

真夏の暑さもあって、
学校に着く頃にはすっかり汗だくでした。

校内へ入ると、
在校生たちが案内をしてくれました。

みんな明るくて、
自然な笑顔を向けてくれます。

息子は体験授業へ。

私は保護者向けの説明会へ向かいました。

そこで最初に挨拶をされたのが、
校長先生でした。

穏やかな口調の女性の先生です。

その先生は、
こんな話をされました。

「我が校は、
社会に出るための土台を作る学校です」

「自分はできるんだという自信」

「やれた、という経験」

「それが次の成長につながると考えています」

「自分を認め、
信じる力を育てたいのです」

さらに、

三学年が一緒に行う行事を通して、

先輩との関わり方。

後輩との関わり方。

社会に出てから必要になるコミュニケーションも学んでいくのだと話してくださいました。

私はその話を聞きながら、
しばらく言葉が出ませんでした。

成績を伸ばす。

資格を取る。

そういう話ではなく、

まず自信を育てる。

そんな学校が本当にあるんだ。

そう思ったのです。

息子はこれまで、

自分の特性をからかわれたり、

頑張っても勉強が思うようにできなかったりして、

何度も

「どうせ俺なんか」

と言ってきました。

そんな息子を見ながら、

私はずっと思っていました。

成績よりも先に、

この子には

「自分は大丈夫」

と思える経験が必要なんじゃないかと。

だから、

思わず胸が熱くなりました

さらに説明の中で、

案内役をしてくれていた在校生たちは、
先生に頼まれたわけではなく、

自分で立候補して参加していることも知りました。

自主性を大切にしている学校。

その姿勢にも、
私は強く惹かれました。



説明会のあと、
息子と合流しました。

けれど私は、
自分の感想を先に言わないようにしました。

まずは息子がどう感じたのかを聞きたかったのです。

「どうだった?」

すると息子は、

「うん。なんか良かった」

と答えました。

「学び直しもできるんだって」

「うん、そうみたいやね」

「先生も、
教えてくれた先輩も優しかった」

その表情は、
これまで見学した学校の時とは少し違って見えました。

そして最後に、

「今のところ、
ここが第一かな」

そう言ったのです。



家に帰ってから、
私は聞いてみました。

「D校の見学はどうする?」

今の成績だと、
少し頑張らなければいけない学校です。

すると息子は、

「行ってみる」

と答えました。

少し前まで、

「めんどい」

「どこでもいい」

と言っていた息子が、

今は自分で考え、
自分で選ぼうとしている。

その変化が、
何より嬉しかったのを覚えています

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