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【娘のこと|ep39】限界で倒れて——それでも家を支えた娘

Mちゃんへの「そっか。」という返信を最後に、
私からの連絡は途絶えました。

それからしばらくして。

心身の疲労が限界に達していたのか、
私は新型コロナウイルスに感染してしまいました。



我が家には、感染症にかかった際の
「厳格なルール」があります。

パンデミックが始まった当初、
夫によって決められたそれは、
徹底した「完全隔離」でした。



感染者は、自室に閉じこもる。

トイレや浴室の使用以外で、
部屋の敷居をまたぐことは許されない。



もし子どもが感染すれば、
看病はすべて私の役割。

一日中マスクをし、
家中の消毒に追われる。

夫は、その間一切関知しません。



そして。

私自身が感染したときも、
そのルールは、何ひとつ変わりませんでした。



看病側に回った夫は、
私の部屋に立ち入ることはほとんどありません。

食事を盆に乗せ、
ドアの前に置くだけ。

(心配はしてくれています)



家事のすべてを背負った夫は、
目に見えて苛立ちを募らせていきました。



俺が一人でやっている、という苛立ちと疲労。



階下からは、
些細なことで子どもたちに
怒鳴り散らす声が響いてきます。

特に、反抗期に差し掛かっていた息子への当たりは強く、
空気は常に、一触即発の状態でした。



発熱し始めたとき。

私は「どうかただの風邪であってくれ」と、
何度も祈りました。



病院で「陽性」と告げられた瞬間。

それを正直に伝えるべきかどうか、
本気で立ち尽くして悩んだほどです。



そして、案の定。

恐れていた現実が、始まりました。



隔離初日から、
夫の怒号が家中に響き渡りました。



何かにとりつかれたように、
息子に文句をつけ、追い詰めていく夫。

息子が反抗し、
それにさらに怒りを重ねる。

大きな声と、大きな音が、
閉じられた部屋まで伝わってきました。



40度を超える熱で、
意識が朦朧とする中。

私は、生きた心地がしませんでした。



今すぐ飛び出して止めたい。

でも、出ていけば、もっと悪化する。



その狭間で、
ただドアの前に立ち、耳を澄ますことしかできない。



同居している母は、
「私は何もできないから」と、
自室から一歩も出てきませんでした。



私が動けなくなった途端に露呈する、
この家の、あまりにも脆い現実。


そんな絶望の中で。


一筋の光になったのは、
高校生の娘でした。


彼女は、荒れ狂う父親に代わり、
黙って動き始めました。

自分のお弁当、弟の朝ごはん、
そして帰宅後の夕食作りまで。


二日目から、
娘が家庭を支えてくれたことで。

あれほど響いていた怒鳴り声が、
不思議と消えていきました。


ドアの向こうで、
静かに動く娘の気配を感じながら。


「ありがとう」と。

それ以上に、
「ごめんね」という気持ちで、胸がいっぱいになりました。

本当は、あなたが背負うことじゃないのに。


この時の出来事が、
後に、娘の人生観を変えていくことになります。

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softly.beyond                         〜そっと‥そのさきへ〜 最後までお読みいただきありがとうございます。 もしこの記事が少しでもお役に立てたり、心に響くものがあったりしたら、チップで応援いただけると嬉しいです。 いただいたご支援は、クリエイターとしての活動費に使わせていただきます

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