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音が上がる瞬間

ピアノの鍵盤に指が触れ、鍵盤が底まで下りた瞬間に音が鳴ります。しかし、音楽はその「鳴った瞬間」だけでできているわけではありません。

鍵盤は下りた後、必ず元の位置へ戻ろうとします。これは、地面に落ちたボールが必ず跳ね返るのと同じです。どれほどゆっくり落としても、どれほど勢いよく落としても、「下りる」と「上がる」は常に一対になっています。

音楽においても同じことが起こっています。

多くの人は表拍、つまり「タン、タン、タン、タン」という音が鳴る瞬間に意識を向けます。しかし、本当にリズム感の良い人は、その音と音の間に存在する「上がる瞬間」を感じています。

これを音の裏拍と伝えています。

裏拍とは単なる「弱い拍」ではありません。次の音へ向かうためのエネルギーであり、音楽に流れや推進力を生み出す見えない拍動です。

ジャズやポピュラー音楽で「ノリが良い」と感じる演奏は、この裏拍が豊かに感じられています。また、クラシックにおいてもワルツの揺れやショパンのルバート、ベートーヴェンの躍動感は、表拍だけではなく裏拍のエネルギーによって支えられています。

演奏中にリズムが重く感じたり、音楽が前へ進まなくなったりする原因の多くは、この「上がる瞬間」を聴けていないことにあります。

ピアノは打楽器的な要素を持つ楽器ですが、同時に歌う楽器でもあります。鍵盤を押した瞬間だけを意識すると音楽は点になってしまいます。しかし、鍵盤が戻る感覚、次の音へ向かう空間や呼吸を感じることで、音と音が線で結ばれ、自然なフレーズが生まれます。

ボールが弾むように、音もまた弾みながら次へ向かっている。

なので導入期にはボールを使用したレッスンを取り入れます。

その目には見えない「上がる瞬間」を聴くことこそが、豊かなリズム感を育て、音楽を生き生きとさせる鍵なのかもしれません。

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