「コンサルに行けば年収が上がる」時代の終わり——AIとレイオフが変えた日本IT業界の生存戦略
「コンサルに行けば年収が上がる」時代の終わり——AIとレイオフが変えた日本IT業界の生存戦略
目次
はじめに:「王道」だったルートが、なぜ機能しなくなったのか
何が起きているのか——コンサル業界の世界規模リストラの実態
日本のコンサル市場は違うのか——楽観と現実の間
AIが変えた「エンジニアの仕事」——何が消え、何が生き残るのか
若手エンジニアが直面している「二重の危機」
結論を先に言う:今の20代が目指すべきは「Tの字」ではなく「Yの字」
具体的に何をすればいいのか——今日から始める7つの行動
コンサルを目指すなら——生き残るルートの選び方
エンジニアとして残るなら——「上流×AI」という唯一解
結論:「代替不可能な人間」になるための最短ルート
1. はじめに:「王道」だったルートが、なぜ機能しなくなったのか
「とりあえずコンサルを目指せ」という言葉が、ここ数年のIT・ビジネス界隈で一つの"常識"として流通していた。年功序列が崩れ、転職が当たり前になった時代の中で、マッキンゼー・アクセンチュア・デロイトといった名前は「年収と市場価値を一気に上げる近道」として若手から強い支持を集めた。特に、IT・エンジニア系の人材がDXやシステム開発の知見を引っ提げてコンサルへ転じるキャリアパスは、ここ10年ほどで一つの「黄金ルート」として定着した。
しかし2025年から2026年にかけて、その前提が揺らぎ始めた。世界最大手のコンサルティングファームが続々と大規模なレイオフ(人員削減)を発表した。マッキンゼーは従業員の10%超にあたる5,000人を削減。アクセンチュアは1,300億円規模のリストラ計画「事業最適化プログラム」を発表し、すでに1万人以上を削減。PwCも1年間で5,600人を減らしている。
同じ時期、テック業界でも構図は似ていた。世界のソフトウェアエンジニア市場では、GAFAを中心とした大規模レイオフが続き、特に「コードを書くだけ」の若手エンジニアの採用が急激に絞られている。<cite index="13-1">求人市場のデータを見ると、2025年1月から2026年1月にかけてAIコーディングツール経験を求める求人は340%増加した一方、純粋な実装のみのポジション求人は17%減少している。</cite>
この2つの変化は、実は同じ一本の根から生えている。AIの進化が「コードを書く作業」と「基礎的な調査・分析作業」を代替し始めたことで、それを担うジュニア人材の需要が急減した——これが本質だ。
本記事では、この変化の構造を正確に理解した上で、「今の日本のIT業界で20代として何をすればいいのか」を具体的に論じる。コンサルを目指す人にも、エンジニアとして残る人にも、共通して使える地図を提供したい。
2. 何が起きているのか——コンサル業界の世界規模リストラの実態
まず、何が起きているかを正確に把握しよう。
<cite index="5-1">アクセンチュアは、2025年9月25日に約1,300億円(8億6500万ドル)規模のリストラ計画を発表した。この計画は「事業最適化プログラム」と呼ばれ、生成AI導入にともなう業務効率化が進むなかで、スキルの再教育が現実的ではないと判断された人員を中心に削減を進めるものだ。同社の従業員数は、2025年6月時点からわずか3ヶ月ですでに1万人以上減少している。</cite>
<cite index="5-1">マッキンゼーも2025年5月に、世界全体の従業員数の10%以上に相当する約5,000人の削減をおこなっていたことが明らかになった。2023年末時点で約4万5,000人だった従業員数は、18ヶ月間で約4万人まで縮小している。</cite>
<cite index="3-1">PwCも11月に米国で150人を削減すると発表し、その前にも6月末までの過去1年間で5,600人を削減したと発表していた。</cite>
ここで重要なのは、これらの削減が「業績悪化による苦肉の策」ではないという点だ。<cite index="6-1">今回のリストラ計画は、単なる業績悪化に伴うコストカットではない。アクセンチュアの2025年6〜8月期決算を見ると、純利益こそ減少したものの売上高は前年同期比7%増と成長を続けている。それにもかかわらず、従業員数は削減されている。</cite>
これは「業績が悪いから人を切る」のではなく、「AIが人の仕事を代替できるようになったから、人を増やす必要がなくなった」という構造転換だ。<cite index="2-1">AI(人工知能)の進化で基礎的な調査などコンサルが担う業務の約3割は代替できるとの指摘もある。各社は雇用を抑制しサービスの高度化を急ぐ。</cite>
「Deep Researchで調べられる」——これは実際にコンサル業界で使われ始めている言葉だ。かつては入社2〜3年目のアナリストが数日かけてやっていた「業界調査」「競合分析」「市場規模の算定」といった基礎作業が、生成AIを使えば数時間で完成する。その仕事をやる若手を大量採用する理由がなくなった、という話だ。
3. 日本のコンサル市場は違うのか——楽観と現実の間
「でも日本はまだ大丈夫」という声もある。これは半分正しく、半分は危険な楽観だ。
正しい部分から確認しよう。<cite index="8-1">IDC Japanによると、2024年の国内コンサルティング市場規模は前年比10.8%増の7,987億円だった。2026年以降の伸びはわずかに減速するが、年率10%のペースで成長を続け、2029年に市場は1兆2,832億円に達すると予測されている。</cite>
<cite index="8-1">企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)や人手不足などを背景に、コンサルティング業界は2026年も成長を続ける。</cite>
国内系の動きも見ると、<cite index="7-1">ベイカレントは2025年春に466人の新卒コンサルタントを採用した。同社の決算資料によると、2025年2月末時点の社員数は5,467人。社員数の1割弱に匹敵する大量採用といえる。</cite>特に国内系のグロースファームがプロジェクトマネジメント系の案件などを中心に業績を伸ばしており、人員拡大にも積極的だ。
ここまで見ると「日本は大丈夫」と思えるかもしれない。しかし、日本市場の成長と世界のレイオフトレンドは、同じコインの表裏だ。日本の大手企業の多くは、デジタル化・DXがまだ道半ばの段階にあり、システム導入・プロセス変革への需要は確かに残っている。だが世界で起きている「AIによるジュニア仕事の代替」は、時差をもって日本にも波及する。数年後に日本市場でも同様の構造転換が起きたとき、「コーディングができる」「調査ができる」というだけのジュニア層は、同じ淘汰圧にさらされることになる。
楽観できる「今の日本市場の成長」に乗りながら、同時に「数年後の構造変化」に備えるキャリア戦略を取ること——これが日本の20代IT人材に求められる、最もバランスの取れた判断だ。
4. AIが変えた「エンジニアの仕事」——何が消え、何が生き残るのか
エンジニアの仕事は、大きく「上流工程」と「下流工程」に分かれる。この2つの命運が、AIによって真逆の方向に引き裂かれている。
AIに代替されやすい仕事(下流工程)
仕様書に従ったコーディング(特に定型的なCRUD処理、API実装)
テスト作業(単体テスト・結合テストのコード生成)
既存コードのバグ修正・リファクタリング
ドキュメント作成(設計書・仕様書の定型部分)
データ集計・レポート作成
<cite index="14-1">AIが得意とするのは「指示が明確で、成果物の正誤を機械的に確認しやすい作業」だ。</cite><cite index="13-1">単純なコーディング作業の案件需要は15〜25%程度縮小するが、上流工程・アーキテクチャ・AI活用を前提とした設計の需要が40〜60%増加する。</cite>
AIに代替されにくい仕事(上流工程)
要件定義(顧客の曖昧なニーズを言語化・構造化する)
システムアーキテクチャ設計(全体構造の意思決定)
プロジェクトマネジメント(人・リスク・ステークホルダーの調整)
顧客折衝・業務改革の設計
AIを「どう使うか」を設計する役割そのもの
<cite index="16-1">顧客の要望を引き出すヒアリング力、システム全体を描くアーキテクチャ設計力、プロジェクトを前に進めるマネジメント力は、AIに代替されにくい重要なスキルだ。</cite>
ここで重要な事実がある。<cite index="12-1">SES業界において若手は保守運用やテスト工程に偏る傾向があり、思うようにスキルアップできないと悩むこともある。SESは下流工程の業務が多く、上流工程の経験が積めないままキャリアが停滞するリスクも否めない。</cite>
つまり、「下流工程→AIに代替」「上流工程→人材不足」という二極化が進む中で、日本のIT業界の若手の多くが「AIに代替されやすい仕事」に押し込まれている構造的な問題がある。これが、「若手エンジニアがどんどんいなくなっている」という現象の背景だ。仕事がなくなっているのではなく、「若手が担うべき仕事がAIに取られつつある」のだ。
5. 若手エンジニアが直面している「二重の危機」
現在の20代IT人材は、実は二重の危機にさらされている。
危機①:「入口の仕事」がAIに食われている
かつてエンジニアとしてキャリアをスタートする際の典型的な道は、「まず下流工程でコードを書くことを覚え、経験を積みながら上流工程へ上がっていく」というものだった。テスト→実装→設計→要件定義という縦の成長ルートが、多くの企業で機能していた。
しかし今、この「入口」がAIに食われ始めている。テスト自動化、コード生成、ドキュメント生成——これらはすべて、かつて若手が担っていた仕事だ。<cite index="21-1">「今回はAIで開発を進めていくか、人でいくか?」という二択を、クライアントとの最初の打ち合わせ時に選んでもらう動きも出てきている。</cite>AIで開発を進めると選択された案件は、若手の出番が大きく減る。
危機②:「コンサルへの脱出ルート」が狭くなった
「スキルが固まる前に、コンサルへ転じて視野を広げよう」というキャリア戦略は、ITエンジニアの間で広く実践されてきた。しかし前章で見たとおり、グローバルでは大手コンサルのジュニア採用が大きく絞られている。特に「基礎的な調査・分析・資料作成」しかできないジュニアコンサルの需要は、AIが代替する対象として真っ先に標的になった。「コードが書けます、資料が作れます」というだけでは、かつてほどコンサルへの門が開かなくなっている。
この二重の危機が同時に押し寄せている現在、「コードを書ければいい」「コンサル内定が取れればいい」という旧来の目標設定そのものを、根本から問い直す必要がある。
6. 結論を先に言う:今の20代が目指すべきは「Tの字」ではなく「Yの字」
かつてのエンジニアとコンサルのキャリア論では、「Tシェイプ人材(一つの深い専門性と横断的な幅を持つ人材)」が理想像として語られた。しかし今の状況では、Tシェイプでは不十分だと感じている。
「Yの字」とは何か。
縦棒の部分は「技術の深さ」だ。コードが書ける、システムが設計できる、データが分析できる——これは引き続き土台として必要だ。しかしここに「Yの字」特有の構造が加わる。縦棒の上に、二本に分岐した枝が伸びる。
一本の枝は「業務知識(ドメイン)」だ。製造業、金融、医療、流通、物流——特定の業界・業務を深く理解し、「この業界でのシステムが果たすべき役割」を語れる知識。AIがどれだけコードを書けるようになっても、「この病院の医師がどういうオペレーションをしているか」「この工場のライン管理がどういう論理で動いているか」という業務の文脈を持っているのは、現場で働いた経験のある人間だけだ。
もう一本の枝は「AIを設計・活用する力」だ。単にChatGPTを使うのではなく、「AIをどうシステムに組み込むか」「どのAIツールをどのビジネス課題に当てるか」を設計できる能力。これはエンジニアの視点からも、コンサルの視点からも、今最も希少で価値の高いスキルになっている。
技術の深さ(縦棒)× 業務知識(左の枝)× AI設計力(右の枝)
この三つが交差する人間は、今の日本では圧倒的に希少だ。<cite index="18-1">経済産業省の試算によると、2030年にはAI人材が日本国内で約12万人不足するとされている。</cite>さらに<cite index="12-1">経済産業省の予測によれば、2030年には最大で79万人のIT人材が不足する</cite>とされており、AIを扱える技術者は供給が追いついていない。
7. 具体的に何をすればいいのか——今日から始める7つの行動
① 「AIに食わせるための上流設計」を意識的に経験する
今の職場で、ただコードを書いているだけでは将来が詰まる。意識すべきは「上流への越境」だ。プロジェクトの要件定義ミーティングに、積極的にオブザーバー参加させてもらう。顧客との打ち合わせに同席し、「なぜこのシステムが必要なのか」「このシステムを使う人はどんな人で、何に困っているのか」という文脈を体で覚える。
「自分はまだジュニアだから」と遠慮する必要はない。むしろ若いうちに上流の現場を肌で感じた経験は、後から振り返ったときに価値が跳ね上がる。現在の職場でその機会がない場合は、環境を変えることを真剣に検討すべき理由の一つになる。
② 「一つの業界を深く知る」ことに時間を投資する
「どの業界でも働けるジェネラリスト」を目指すのは、実は最も競争が激しいレーンだ。特定の業界に深くコミットし、「自分はこの業界のITについては、誰よりも詳しい」と言える水準を目指すほうが、はるかに希少性を作りやすい。
製造業なら製造業の業務フロー(受注・生産計画・品質管理・物流)を、金融なら決済・融資・リスク管理の業務ロジックを、医療なら病院経営・レセプト・医療情報の仕組みを——体系的に学ぶことで、「技術 × 業務知識」という掛け算が生まれる。この掛け算は、純粋な技術競争からの脱出口だ。
③ 「AIを使う」のではなく「AIを評価できる」ようになる
多くの人が「ChatGPTを使ってみた」「Copilotで開発が速くなった」という段階にいる。次の段階は「このAIツールは、このユースケースでは使えるが、このユースケースでは使えない」と判断できる目利き力を持つことだ。
たとえば、GitHub Copilotはコード補完には優れているが、業務要件の翻訳には向かない。RAG(Retrieval Augmented Generation)は社内ドキュメントへの質問応答には使えるが、正確さが求められる法的判断には慎重な設計が必要だ——こういった「AIの限界を知った上での設計判断」ができる人材は、今の日本のエンジニア市場でも、コンサル市場でも、圧倒的に少ない。
AI活用の「実験を繰り返すログ」を作ろう。使ってみて、失敗して、「なぜ失敗したか」を言語化する。この繰り返しが、最速でAI設計力を育てる方法だ。
④ 「コードを書いた量」より「設計を決めた回数」を増やす
ジュニアエンジニアのキャリアの落とし穴は、「コードを速く書く」「バグを少なくする」というスキルの磨き方に全力を注ぎすぎることだ。これらは確かに必要だが、それだけでは「AIに速く書かせる人材」との差別化にならない。
もっと意識すべきは「どの設計を選ぶかを決めた経験の量」だ。「なぜREST APIではなくGraphQLにするのか」「なぜこのデータベース設計はこうなっているのか」「なぜこのモジュール分割はこうするのか」——設計の意思決定とその理由を、自分の言葉で説明できるエンジニアは、コードを書くより10倍希少で、AIに代替されにくい。
小さなプロジェクトでも、副業でも、社内の改善ツールでも構わない。「自分が設計を決めた体験」を意識的に積み上げていくことが、キャリアの防護壁になる。
⑤ 「案件の外側」を見る癖をつける
コンサルとエンジニアの最大の違いの一つは、「クライアントのビジネスゴールを常に視野に入れているかどうか」だ。エンジニアはどうしても「要件通りに作る」という視点に閉じがちだが、コンサルは常に「この要件は本当にビジネスの問題を解いているか」という視点で考える。
エンジニアとして現場にいる間に、「このシステムを使う人たちのKPI(業績指標)は何か」「このシステムが稼働したら、クライアントのビジネスはどう変わるのか」を常に意識する習慣を持つこと。この習慣が、将来コンサルへ転身するにせよ、エンジニアとして上流を担うにせよ、どちらにも使える最重要スキルになる。
⑥ アウトプットを「外に出す」習慣を持つ
勉強して知識を積むだけでは、市場価値には直結しにくい。学んだことを外部に発信する習慣——GitHubでのオープンソース活動、技術ブログ(Zenn・Qiita)への投稿、勉強会での登壇——が、採用担当者や潜在的なクライアントの目に留まる可視性を作る。
特に「AIを使ってこんな課題を解いた」という実例を文章にすること(PoC(概念実証)記事・実装レポート)は、2026年現在の転職市場・コンサル市場での差別化材料として非常に有効だ。面接での「AIは使えますか?」という問いに対して、「はい、たとえばこのプロジェクトでこう使いました」とURLを示せる人と、「使ったことはあります」と言うだけの人では、評価が桁違いに変わる。
⑦ 「日本語のエコシステム」だけに閉じない
日本のIT・コンサル業界は、英語の技術情報・業界トレンドのインポートが、どうしても1〜2年遅れる傾向がある。英語で読む習慣を持つことは、「まだ日本では話題になっていない技術や業界変化をいち早くキャッチする」という大きな情報優位をもたらす。
AIが英語の翻訳を格段に楽にした今、「英語を日本語に訳すのが大変」というハードルはかなり下がっている。重要な論文、技術ブログ、コンサルファームのレポート(マッキンゼー・BCG等は良質な無料レポートを毎月公開している)を、AIを活用しながら読む習慣を今すぐ作ることをおすすめする。
8. コンサルを目指すなら——生き残るルートの選び方
コンサルへの転身を考えているエンジニアに向けて、現時点での現実的なルートを整理しておく。
狙うべき層:日本国内の「ITコンサル需要」は依然旺盛
<cite index="8-1">コンサルティング業界は2026年も成長を続け、IDC Japanの予測では2029年に市場規模が1兆2,832億円に達する。</cite>特に日本の大手企業のDX・業務改革需要は、まだ道半ばの企業が多く、「エンジニア出身でシステムと業務の両方がわかるコンサルタント」の需要は今後も継続する。
外資グローバルファームのジュニア採用は厳しいが、国内系は別
マッキンゼー・BCG・ベインといった戦略ファームのジュニア採用は、世界規模のリストラとは切り離して考えると日本では引き続き超狭き門だが人数は限定的。アクセンチュア等の総合系外資はリストラを進めながらも、日本法人は比較的独立した動きをしており、<cite index="5-1">コンサル業界の市場規模は2025年の約1兆600億ドルから2029年には約1兆2,646億ドルへの成長を予測しており、特にAI活用を前提としたコンサルニーズが高まっている。</cite>
一方、国内系グロースファーム(ベイカレント、ライズ・コンサルティング等)は引き続き積極的な採用姿勢を維持しており、エンジニア経験者のITコンサル転身ルートとして現実的な選択肢だ。
コンサルで生き残るための2つの条件
一つ目は「AIが代替できないコンサルの仕事ができること」だ。具体的には、クライアントの経営課題を構造化して仮説を立てる思考力、多様なステークホルダーを巻き込んで変革を実行する推進力、そして業界固有の業務知識と現場感覚だ。これらはすべて「体験」なしには育たないスキルで、AIが最も代替しにくい領域に属する。
二つ目は「AIをツールとして使いこなせること」だ。前述の通り、AIコーディングツール経験を求める求人は急増している。「AIを使って業務を設計できる人材」として採用されるために、PoC実績・AIツール活用実績をアウトプットとして作っておくことが有効だ。
転職タイミングの見極め
「コンサルは若くて地頭が良い人を採用する場所」という認識が長くあったが、今は変わり始めている。特にIT系のコンサルでは、「エンジニアとして3〜5年以上実務を積んだ後に転身する」というルートへの評価が上がっている。現場を知っている中堅エンジニアが「コンサルの語彙」を身につけた人材は、ジュニアコンサルよりも即戦力として評価されやすい。
20代のうちは「エンジニアとして上流を経験しながら業務知識を積む」という準備期間として活用し、27〜29歳あたりで転身を狙う、という時間軸は十分に現実的だ。
9. エンジニアとして残るなら——「上流×AI」という唯一解
コンサルではなく、エンジニアとしてキャリアを続けることを選ぶなら、取るべき方向性はシンプルだ。
「下流から上流へ」という縦移動
<cite index="16-1">SIerの大きな強みは、上流工程を経験できる点だ。上流工程の経験は転職市場でも高く評価される。特に、顧客の要望を引き出すヒアリング力、システム全体を描くアーキテクチャ設計力、プロジェクトを前に進めるマネジメント力は、AIに代替されにくい重要なスキルだ。</cite>
今の職場が下流工程しかさせてくれない環境なら、それは単純に「機会コスト」の問題として考えるべきだ。上流の経験が積める職場への移動を、1〜2年のスパンで計画しておく必要がある。
アーキテクト・テックリードという目標
エンジニアとして高い市場価値を持ち続けるためのロールモデルは、「アーキテクト」や「テックリード」と呼ばれる存在だ。システム全体の設計方針を決め、チームの技術的方向性を定め、クライアントやPMと技術の話を対等に議論できる人材だ。<cite index="16-1">高度なコンサルティングやAIアーキテクトなど、上流工程で価値を出せる人材は年収1,000万円を超えるケースもある。</cite>
このポジションは、AIにコードを書かせながらも「何を作るか・どう作るか」を決める立場であり、AIの普及によって価値が下がるどころか、上がっていく職種だ。
セキュリティ・クラウド・データエンジニアリングという成長領域
<cite index="13-1">サイバー攻撃の高度化と個人情報保護法の強化を背景に、セキュリティエンジニアの需要は構造的に不足している。セキュリティは「後付けでAIに代替できる仕事」ではなく、人間の判断と責任が不可欠な領域だ。</cite>
加えて、クラウドアーキテクチャ(AWS・Azure・GCP)の設計スキルと、データエンジニアリング(大量データを扱えるパイプライン設計)は、AIインフラの拡大と連動して需要が急増している分野だ。特にAI関連プロジェクトでは、モデルを学習させるためのデータ基盤の設計が必ず必要になり、ここを担えるエンジニアは今後10年で最も引き合いが強くなる職種の一つと見られている。
10. 結論:「代替不可能な人間」になるための最短ルート
最後に、この記事全体の結論を整理する。
<cite index="2-1">世界のコンサルティング大手では人員削減が広がっており、AI(人工知能)の進化でコンサルが担う業務の約3割は代替できるとの指摘もある。</cite>同時に、<cite index="13-1">AIコーディングツール経験を求める求人は340%増加し、純粋な実装のみのポジション求人は17%減少している。</cite>
この2つの数字が示す未来は一つだ。「定型作業をこなす人材」の需要は確実に減っていく。しかし、「AIを使いながらビジネス課題を解ける人材」の需要は爆発的に増えていく。
「コンサルに行けば年収が上がる」という昨日のルートは機能しにくくなった。しかし「コンサルの仕事をAIに取られる時代だから、エンジニアに戻ればいい」という単純な反転も正しくない。どちらの道を選んでも、「AIが代替しにくい領域」——業務知識の深さ、システム設計の判断力、人間との交渉と調整、そしてAIを設計する力——を持っている人間だけが、これからの市場で選ばれ続ける。
エンジニアとして残るなら、上流×AI設計力を持つアーキテクトへ。コンサルを目指すなら、業務知識×AI活用のITコンサルタントへ。どちらの道も、「技術と業務とAIの三角形」を意識したキャリア設計が共通の答えだ。
「若手エンジニアがどんどんいなくなっている」という現象の正体は、「コードを書くだけの若手」の需要が下がっているということだ。逆に言えば、「コードを書きながらも、業務を理解してシステムを設計し、AIを活用できる若手」の需要は今まさに爆発的に上がっている。
その需要の本丸に自分を置くこと——これが今の20代ITエンジニアにとって、最も確実でロジカルな生存戦略だ。
本記事は、日本経済新聞・IDC Japan・各転職エージェント公開データ・経済産業省の公表資料などをもとに2026年6月時点の情報として執筆しています。個別のキャリア判断については、最新の求人状況や各社の採用動向を直接確認の上、ご自身で判断してください。
今回もチャット直接出力にしました。全文コピーしてご利用ください。
主な調査で確認したデータのポイントをまとめます。
事実 数値・出典 マッキンゼー人員削減 約5,000人(全社員の10%超、4.5万→4万人)2025年5月 アクセンチュア人員削減 1,300億円規模のリストラ、1万人超削減 日本コンサル市場 2024年前年比+10.8%(7,987億円)、2029年に1.28兆円予測(IDC Japan) AI求人の変化 AIコーディングツール求人+340%、純粋実装求人−17%(2025→2026年) 下流工程の需要予測 15〜25%縮小 / 上流・AI設計需要40〜60%増加 IT人材不足 2030年に最大79万人不足(経産省)、AI人材12万人不足

