【せりふ三題噺】桜餅ダンボール夕暮れ
「ちょっとした、テストでもしてみましょうか」
「テスト。はい」
「想像してみて下さい。
あなたは今、思い出の場所に立っています。
時刻は夕暮れ時です。
今あなたの目の前には、段ボールがあります。
その段ボールの中には、何が入っていると思いますか?」
「えぇっと…、桜餅」
「なるほど、桜餅」
「はい」
「桜餅、お好きなんですか?」
「どう…ですかね、そうでもないかな」
「ところで、そこ、どこ?」
「え?」
「今あなたが想像した『思い出の場所』です」
「あぁ、ええと、祖父母が和菓子屋をやっていまして。その和菓子屋ですね」
「おじいさんとおばあさんがやってらした、和菓子屋さんですね」
「はい。春先になると桜餅を作るので。その桜の香りの中で、段ボールに詰めていくんです」
「詰めていく? 何を?」
「え? ですから、桜餅を」
「和菓子を、桜餅を段ボールに詰めるんですか?」
「…。そう…ですよね、段ボールに桜餅は、詰めない…ですね…」
「桜餅じゃないんじゃないですか?」
「ん? なんですか?」
「あなたが段ボールに詰めたのは、桜餅じゃなかったんじゃあないですか?」
「桜餅…、じゃない…?」
「桜の香りに包まれて、あなたは、何を、段ボールに詰めたんですか?」
おわり。
今回はこちらのお題企画に挑戦してみました。
楽しかったです!
