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【家電恋愛小説】ひとり用冷蔵庫は、恋に向いていない(たぶん)


ひとり暮らしを始めた日、
部屋にいちばん最初に置かれたのは、冷蔵庫だった。

ひとり用冷蔵庫は、
恋に向いていない(たぶん)。


ひとり暮らし、開始しました



Image by StockSnap from Pixabay


引っ越し初日、
部屋に一番最初に設置されたのが冷蔵庫だった。

白くて、すっきりしていて、
ドアと天板がつながって見えるフラットなデザイン。

「ひとり暮らしなら、これで十分ですよ」

そう言われて選んだ
パーソナル冷蔵庫、NR-B16C2。


仕事のトラブル、母の干渉、
そして学生時代からの彼との破局。


そんなアラサーの私には、
その「十分」という言葉が、
少しだけ、救いに聞こえた。



この冷蔵庫、仕事ができる


Image by Vicens Dorse from Pixabay


生活は、思っていたより早く回り始めた。

冷蔵室には牛乳と卵。
冷凍室には冷凍うどん。

この冷蔵庫は、
何も言わないけれど、
いつも「ひとり分」を
ちゃんと守っている気がした。

そして冷蔵庫の上。

フラットなトップテーブルの上に
電子レンジを置いたら、
驚くほど、きれいに収まった。

棚を足す必要もなかった。

ひとり暮らしにありがちな
「家具の配置に悩む時間」が、
最初から、なかった。


――この子(冷蔵庫)、できる。


そう思い始めた頃から、
なぜか後輩くんが、
よく部屋に来るようになった。



完成してるって、言わないで



UnsplashJojo Yuen (sharemyfoodd)が撮影した写真


その日も彼は、
仕事帰りに寄ってきた。

「冷蔵庫、ちょっと借りるね」

彼がコンビニ袋を抱えたまま、
冷蔵庫を開けた。

一瞬、動きが止まる。

プリンが、二つ。

「……あれ」

声に出すほどでもない、
でも見逃せない、
そんな間。

私は少し遅れて言った。


「あ、今日安かったから」


誰に向けたでもない言い訳をして、
自分で少し笑った。


…そして彼が一言。

「この部屋さ、完成してるよね」

完成。

その言葉が、
胸の奥で、
少しだけ引っかかった。

ひとり用の冷蔵庫。
ひとり分に、
ちょうどいい大きさ。


なのに、
彼のものも、
すんなり入ってしまう。



静かな、モーター音



UnsplashAlexandra Golovacが撮影した写真


彼が帰る支度を始めたとき、
私はキッチンに立っていた。

私はグラスを出してから、
冷蔵庫を開けた。

ノンアルのカクテルが二本、
いちばん手前で冷えている。

その奥に、
プリンが二つ。

「じゃ、そろそろ——」

その声に、
私は振り返った。


「……泊っていく?」


彼は一瞬、驚いて、
それから、
言葉を探すみたいに笑った。

「いいの?」

私は、うなずく。

短い沈黙のあと、
時計の秒針が一つ進んだ。

冷蔵庫のモーターは、
いつも通り
回転数を上げた。





この恋の仕掛け人は…




運転音は、耳を澄まさなければ分からないくらい。
ひとり暮らしにも、2台目にも、無理なく置ける冷蔵庫です。



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※見出し画像: UnsplashKouji Tsuruが撮影した写真


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