誰が「物流」を殺すのか - ⑥システムで管理できない大事なこと
さあ、月曜日だ。
月曜日はボクの得意分野の物流について書く日だ。
先週は「データ管理と省力化をどう考えるか」というテーマの記事を書いた。
今日は、システムだけでは管理できないことについて書いていこうと思う。
システムだけで管理できないこと
先週の記事で、WMSとTMSのことを書いた。
この2つのシステムに会計管理のシステムを加えることによって、以下の角度から管理を進めていくことが可能になる。
・生産性の管理
・品質の管理
・納期の管理
・コストの管理
しかし、これらのシステムでは測れない管理ポイントがある。それは「安全の管理」「モチベーションの管理」「リスクの管理」「自然環境に与える負荷の管理」だ。
安全の管理
どんな場合にあっても安全は最優先されなければならない。安全を軽んじる会社は社会的に生き残っていくことができない。それは、万が一の事故が起きたときの補償のために保険をかけるだけでなく、事故や怪我を未然に防ぐための仕組み作りが求められるということを指している。
例えば、防護用の手袋や安全靴の着用や、危険を察知すると機械が自動停止するような物理的な安全具の導入だけではなく、作業導線の分離、作業手順の見直しなどといったソフトウェア面の安全管理も重要である。また事故や怪我が発生した場合、その事故を原因別、深刻度別にラベリングして記録していくことも必要だ。そうすることによって、どこに危険が潜んでいるかを浮き彫りにすることができ、また安全性が向上しているかどうかを計測することができる。
当然、その報告と記録には、事故や怪我が発生する前の「ヒヤリハット」も含まれる。ハインリッヒの法則によると、1件の重大事故の裏には29件の軽い事故や怪我があり、その裏に300件の怪我に至らなかった事故が存在するのだ。事故や怪我、ヒヤリハットの報告をされて記録に残すことは、管理側にナレッジを蓄積して、安全のための作業手順の整備に活かすだけでなく、作業をする人たちの危険に対する感度を上げることも目的の一つである。
モチベーションの管理
作業をしている人たちのモチベーションを維持向上させることも重要な管理ポイントとなる。モチベーションの低い現場は離職率が高い。離職率の高い現場は(慣れてない人が多いので)当然生産性が低く、また新しい従業員を採用するためのコストが必要になる。それは会社の利益を圧迫することになり、悪循環を生む。
ヒトのモチベーションを上げる最も簡単な方法は「よりたくさんの報酬を支払う」ことだが、それはそれでいろいろと問題がある。まず、利益は無尽蔵でないというところだ。作業に当たる人たちへの報酬を際限なく引き上げることはできない。そうなると、一定の評価基準に従って報酬を設定することになるが、どう工夫しても絶対的に公平な評価基準を作ることはできない。また、ヒトは報酬が上がったことにすぐ慣れてしまい、さらに報酬が引き上げられないことを逆に不満に感じるようになる。
なので、モチベーションの維持向上は報酬以外のところで行わなければならない。つまり、いかに従業員や関係者に労働環境が快適と思ってもらえるか、自分が成長していると実感してもらえるか、自分が会社に貢献していると思ってもらえるか、そういったところを工夫していかなければならない。最近よく「1 on 1の重要性!」みたいなことが叫ばれるが、こういうところで1 on 1やサーベイ(アンケートなど)を活用してほしい。
リスクの管理
ここで言う「リスク」は安全以外の部分で、会社にダメージを与えかねない事象の予測のことを指す。事故や労働災害以外の部分で言うと、自然災害やシステムトラブル、施設のトラブルなどがあるだろう。このあたりは保険をかけることくらいしか対処方法がない。
コンプライアンス違反(法令違反)は企業の存続を揺るがすような事案になりかねない。これはまず経営者自身が関係法令をしっかり勉強しなければならない。どんなビジネスを行うにしても、管轄省庁があり関係法令が存在する。それを理解しないで会社を運営するなんてのは無免許で車を運転するようなもんだ。少なくともその業界に精通した法令の専門家を顧問として付けておいて、適宜意見を求めるべきだ。
法令に定められているわけではないが、欠如した行動を取るとそこそこのダメージを負ってしまうのが「モラル(倫理観・道徳心)」だ。例えば、社内でハラスメントが横行するような会社であれば、従業員のモチベーションが低下し、離職率が上がるだろう。また、時折ニュースになるSNSに不快な動画をアップすることなどもモラルの欠如と言えるし、契約書などで約束したことに違反するようなことを(バレないだろうと)行うことなどもモラルハザードに含まれる。
自然環境に与える負荷の管理
物流は公共の場所や施設を利用して行われることが多い業態だ。なので、自然環境に与える負荷も管理していかなければならない。大規模に行おうとすると使用している機器や車両を環境に優しいものに換えなければならず、多額な投資が必要になることも多い。そういった大掛かりな対策も重要ではあるが、その企業の規模感やキャッシュフローのタイミングなどにもよる。
とはいえ、細かいところの「3R(Reduce、Reuse、Recycle)」はすぐ手を付けられるところは多いはずだ。まあ、それも安全やモチベーションとのトレードオフになる場合もあるので、事前の検証と効果測定が必要になるのは間違いない。
環境問題については、毎週火曜日にシリーズで書いているので、詳しくはそちらをご覧いただきたい。
(続きはまた来週)
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